マーケティングメッセージを変えたら、市場でのポジション作りができました
みなさん、こんにちは。村石怜菜です。
マーケターの皆さんは、市場の動向や顧客の声を聞きながら、リリース時に作成したマーケティングメッセージを常にアップデートしていると思います。「至極当然なことを…」とお思いの方も多いかもしれませんが、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)やマーケターにとって、プロダクトやサービスの市場でのポジション作りは重要なミッション。そして、ポジション作成のために、メッセージのアップデートはとても大切なアクションです。
そこで今回は、マーケティングメッセージのアップデートについて紹介します。
顧客の状況に応じる
マーケティングメッセージを作る場合、気をつけるべき観点はたくさんあります。私は、地域や業種・業態、企業規模など、顧客の状況に応じて変更しています。
ここで例をあげてみましょう。とある企業では、スマートフォンで某施設内の入退場やキャッシュレス決済などが行えるサービスを開発・提供することになりました。しかし、便利なサービスであるにも関わらず、当初はあまり利用されませんでした。
というのも、入退場やキャッシュレス決済といった主要機能を満たすプラスチックの会員証がすでに普及していたため、施設を利用するお客様には新サービスへ転換するメリットがあまりなかったからです。
もちろん物理的な会員証を一斉撤廃すれば強制的に新サービスへの転換は実現されますが、物理的会員証をすでにもっているコア層のお客様満足度に大きく影響するので、それは導入先企業の目指す姿ではありません。
他の施設も同じような状況があり、「電子化してスマートフォン一つで完結する」という便利さをアピールしたマーケティングメッセージを打ち出しても、なかなか導入先は増えていきませんでした。さて、あなたがこのスマホサービスを提供する企業のマーケターなら、どういうマーケティングメッセージを打ち出して、導入企業を増やしますか。
今まで通りの「電子化してスマートフォン一つで完結する」というメッセージを打ち出し続けるよりも、「スマホサービスに変えれば、新規の顧客を獲得でき、さらに顧客情報から新たなCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)が実現できる」などのメッセージに更新すると良いのではないでしょうか。
海外では、さまざまな事情・状況によって、単純に「XXを導入すれば〇〇レスが実現する」といった電子化をメインに打ち出すことが意味をなさない場合もあります。グローバル展開している企業などは、その国の文化や国民性などを理解することが大切だと思います。
地域性の違いを考慮
シリコンバレーのテック企業でも、自国のサービスをローカライズせずに海外展開してしまい、失敗、撤退に陥ってしまったというニュースをまれに目にすることがあります。ローカライズする際には、もちろん製品・サービスに備わっている機能のローカライズも重要ですが、それと同様にメッセージのローカライズも重要で、メッセージ一つで全く売れないものになってしまいます。
アメリカとドイツでの違いで、面白い話を聞いたことがあります。「アメリカでは、例えばバズワードをメッセージングに入れると、商品への興味・関心が高まるけれど、ドイツでは同様の効果は示されなかった」という話です。
ドイツでは、バズワードよりも「マニュアルで行っていた業務をオートメーション化させる」といった業務に直結した効果・メリットを実感できるようなメッセージに効果があるようです。
たとえグローバル展開していない日本のみのサービスでも、製品・サービスによっては地域性の違いが現れるかもしれませんね。私のこれまでの経験だと、アプリやWebサービス、ECなどでは、移動手段が電車やバスといった公共交通機関なのか、それとも自家用車なのかで、アクセスする時間帯など購買行動に違いがありました(ちなみに、SaaSでの経験はないです)。狭い日本にもこのような違いがあるのだなと思った記憶があります。
また、エンタープライズ企業なのか、それとも街の商店や中小企業が相手なのかによって、メッセージを変える場合が多いでしょう。
顧客の声を直接聞く
私がマーケティングメッセージを更新する際に大切にしているのは、直に顧客の声を聞くことです。できれば、顧客と直にコミュニケーションをとるようにしています。今はコロナ禍のため、大人数で顧客企業へ赴くことが禁止されている企業もあると思いますが、私の経験上、オンライン会議でも良いので、できる限り顧客の声を聞く機会を設けることが、刺さるメッセージ作りへの一番の近道だと思います。
そうすれば営業チームが顧客に提案する資料も顧客のニーズや実態に相応しいものとなり、商談に役立つものとなります。ただし、顧客との直接的なコミュニケーションには注意も必要です。以下は私の実体験からの反省点です。
- 顧客との商談・会議の前に、必ず事前に営業担当と認識を擦り合わせること
- プロダクトやサービスの要望が出ても、その場で合意しないこと
- 質問する機会があれば、正確な情報を引き出すように意識すること
1.顧客との商談・会議の前に、必ず事前に営業担当と認識を擦り合わせる
まず、大前提としてなぜマーケティング担当者が同席したいのかを明確にしないと、その営業担当者もその商談のストーリーが作りにくいですし、顧客の声を聞く好機を逸する可能性もあります。
2.プロダクトやサービスの要望が出ても、その場で合意しない
あなたがPMMであっても、顧客との会議ではあくまで自分は「マーケティング担当」である、というスタンスで参加するのがおすすめです。
顧客は自社が困っている点を改善したいので、そこにプロダクトチームのメンバーが同席となると、製品やサービスに対する改善や新機能の要望などが話題に出がちです。提供している製品・サービスがスクラッチ開発ならともかく、SaaSの場合、今後の事業の拡張性につながりにくいですし、独自開発は避けたいですよね。
私はもともとスクラッチ開発のWebディレクターや営業も経験しているので、営業側も顧客側の気持ちも痛いほど理解できるので、要望に応えたいという気持ちが出てしまいがちで、とても苦戦しました。もし打合せでプロダクトやサービスへの要望が出たら、必ずプロダクトマネージャーにフィードバックをしましょう。
3.質問する機会があれば、正確な情報を引き出すように意識する
より正確な情報を引き出すために、UXリサーチでのインタビューの手法などを学んでおくと良いと思います。マーケターなら日々、製品・サービスの分析データを見て仮説をもっていると思います。仮説が正しいかどうかを確認する場がマーケティング・リサーチですので、仮説をもとにした質問自体は良いのですが、誘導尋問するような質問の仕方などをしないように気をつけたいところです。
UXリサーチのインタビュー手法についての詳細については割愛しますが、一例をあげると、オープンクエスチョンなどがその例です。
「AとBの機能だとどちらが使いやすいと思いますか」
といった選択肢提示方式ではなく、
「売上データを確認するのであれば、どのように確認したいですか。今はどのように運用していますか」
といったように相手が自由に回答できるようにする、といったことがコツになります。あくまでもマーケティング・リサーチですので、デザイン・リサーチと混同しないようにしてください。
最後に、個人的な感覚ですが、PMMとして顧客と商談している際に出てくる話題ベスト4はこちらです。
- 顧客企業と自社サービスの相性/適合度と適合できない部分の対応策
- 顧客の競合企業がサービスをどのように活用しているか
- 機能要望やバグ、実態と適合していない困りごと
- 価格交渉/導入スケジュール
ご覧の通り1〜3についてはPMMやマーケターにとっては貴重な情報が溢れる宝の山ではないでしょうか。今後のメッセージングのアップデートに活かすだけでなく、かつプロダクトマネージャーや開発チームに顧客の声として伝えて、必要に応じては新機能を開発することで、LTV(ライフタイムバリュー)の向上やROI(投資利益率/投資対効果)の改善などにつながることも少なくありません。
言わずもがなですが、アップデートしたメッセージは展示会や製品カタログ、WebサイトやLP(ランディングページ)などにも反映し、一貫したメッセージを伝えていきましょう。
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