[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

マスメディアの新たなブランディング? Clubhouseによって変わるメディアと視聴者の距離

マーケターコラム、今回はテレビ東京・明坂真太郎氏。Clubhouseはテレビにどのような影響を与えるのかについて。
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こんにちは、テレビ東京の明坂です。

1月下旬から急速に流行したClubhouseですが、みなさんお使いになられてますでしょうか。

今までの歴史の中でも多くの新たなソーシャルメディアが生まれ、拡大・浸透したり衰退・消滅したりを繰り返してきました。2016年にリリースされ、今では若者を中心にメジャーになったTikTok、対して同年リリースで今では話を聞かなくなったマストドンなどもありました。

2021年においてClubhouseはどのように浸透、拡大をするのでしょうか。また、私が働いているテレビというメディアはClubhouseをどのように活用していくべきなのでしょうか。それが今回のテーマです。

マスメディアまで数日で駆け上がる激しいスパイク

Clubhouseの話題が急激に増えはじめたのは1月25日頃から。検索エンジンでの検索数についても4日後の1月29日には100倍以上の急速な増加をしています。

Googleでの「Clubhouse」検索数の推移

アカウント登録にはすでにアカウントを保有している人の招待が必要なこと、招待数が1ユーザーあたり2通まで(利用の時間経過とともに増加)という特徴から、招待を求める声がTwitterやFacebookで多く散見されました。

招待制SNSと言えば、2004年サービスリリースのmixiが思い出されるところですが、招待者をマイミク(友達リスト)から外すことができるmixiに対して、Clubhouseは招待者を自分のプロフィールから削除することができないため(2021年2月8日現在)、よりリアルなつながりでの招待が想定されているということも特徴です。

1月28日(木)にはテレビ朝日の「報道ステーション」、翌週の2月1日(月)にはテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト(以下、WBS)」といったテレビの報道番組でも取り上げられ、急速に世間の認知と利用者が増加。一時は接続者急増の影響から、接続が頻繁に切断されるといったサーバーの問題も発生しました。

コンテンツは音声のみ、リアルタイム以外の視聴はできず、話された内容の録音や書き起こしはもちろん、「オフレコ」と示した内容を他で発信することも禁止という利用規約です。

そのため機能はシンプルでありながらも、スピーカーがさまざまな話題を気軽に話せることと、リスナーはリアルタイムでしかそれを聴けないため、興味のある話題に常駐することになるなど、スピーカーとリスナー共に利用時間が長くなる中毒性があります。

なぜ他のSNSで発信しない人までClubhouseでは発信しているのか?

私がClubhouseで他のSNSと大きく違うと感じたのは、テレビ番組や芸能人など、しかも今までよりポピュラーとされてきたTwitterやYouTubeなどのSNSで発信してこなかったような発信者が積極的に発信をしているということです。理由として私は2点あると考えています。

①新たなプラットフォームで優位なポジションを築きたいという思惑

1つ目は、新しいプラットフォームで先行者優位を利用して有利なポジションをとりたいと考えている人が多いのではないか、ということです。

コロナ禍以降、芸能人のYouTubeチャンネル開設が相次いでいます。いまや人気芸能人に関してもテレビや舞台、イベントといった今までの主活動の場から、YouTubeをはじめとしたさまざまなソーシャルメディアへ活動を拡大して、認知を広めたりファンと濃いコミュニケーションをとったりすることが普通になりました。

これは、今まで番組や舞台といったコンテンツが生み出すマーケティングファネルの中の一要素として活動していたタレントが、それぞれが独立したコンテンツとしてカスタマージャーニーを構築するようになったということです。

個々が自らをコンテンツとしてマーケティング活動をする必要がある状況下において、各ソーシャルメディアで優位なポジションを築くには、なるべく市場が成熟する以前の競争が少ないうちに成果を出しておくこと、つまり先行者優位をとることの重要性を認識することは必然です。

そういった要素に基づいて、とりあえず伸びる可能性のあるプラットフォームにはまず手を出しておくべきという思考が働き、今まで見たことないような状況が生まれたのではないかと考えています。

②インサイトを捉えたうまいプロダクト設計

そしてもう1点は、Clubhouseのプロダクト設計です。普段はTwitterなどのSNSであまり見かけないような方々、例えば秋元康さん、リリー・フランキーさん、おぎやはぎの小木さんといった方々が普通にroom(特定のテーマで話し合われるClubhouse上の部屋)で会話されているのを見かけます。ここにはClubhouseのプロダクト設計のうまさがあると私は思います。

視聴者の人数や顔が見えるということはあるにせよ、コメントやいいねが飛んでくることもなければ、ログも残らない。

そして知り合いが集まって来ればスピーカーに上げて話題や知り合いの輪を広げる。

そういった地元のスナック感のある使い方は、むしろ過去に積極的な発信をしてこなかった方々にとってもスッと入ってくるUXなのではないでしょうか。

コロナ禍において雑談や情報収集の機会が減ったことに対する飢えといった外部環境的な要素もあるとは思いますが、ここまでさまざまな人が一気に使い出した背景には、うまくインサイトを捉えたプロダクトデザインが根底にあるのだと思います。

パーソナリティを伝え、コンテンツとの距離を身近にするチャレンジ

テレビ番組制作者も、芸能人の方々と同様、Clubhouseの活用には積極的です。具体的には番組の放送と同時間に「番組制作者(ディレクター)たちと、○○の放送を見る部屋」といった形でroomが作られています。

私が目視した中では「WBS」「ガイアの夜明け」「勇者ああああ」(すべてテレビ東京)など、制作者たちが裏配信roomを立ち上げて放送内容の裏話や、より発展した知見などを語っていました。「news zero」(日本テレビ)に至っては出演者である落合陽一さん自らが、放送の合間に「news zero」のroomで話し、また放送に戻るということまで行っています。

過去、テレビは出す情報の精度を担保するため、つまり信頼や権威を優先するために、あまりインタラクティブに踏み込んだコンテンツを提供するということはありませんでした。裏配信などもYouTubeやTwitterでライブ配信することは技術的に難しいことではありません。Clubhouseは家からスマホ1台で配信できるという簡便さという点で技術的にも進化している要素はあるものの、ここまでの変化が起こる背景にはテレビ番組制作者たちの「視聴者との距離」を変えようとする思考の動きがあるのではないかと考えます。

テレビというプラットフォームは、ソーシャルメディアによって極めてインタラクティブになったネットのコンテンツに対して、非インタラクティブな発信主体のメディアです。もちろん、それによって形作られているイメージもあると思います。

以前、友人の10代女性が「ジャニーズの人ってTwitterとかにいないから、ホントに実在するのかなって思う」という話をしていました。そういった情報の発信の方法を絞るということが、「なかなか会えない」「会えることが貴重」「崇高なもの」というアイドルとしてのブランディングなのだと思います。

話を戻すと、テレビにおいても今までは発信主体でブランドやそのパーソナリティを伝えるということをしてきました。しかし、ネットとSNSの発達によって情報が身近になり、情報発信者のパーソナリティが具体的にわかるようになった昨今の時代において、相対的に遠い存在になりすぎている可能性のあるテレビは、もう少しブランドのパーソナリティを表現する必要があるのではないでしょうか。

番組制作者の考え方や取材の裏側などを伝えて行くことで、野菜のパッケージにある「わたしが作りました」よろしく、単なる情報コンテンツではなく“生産者の顔が見えるコンテンツ”になり得ます。そのためのコミュニケーションの手段としてClubhouseの情報発信にチャレンジしているのではないかと思います。

とはいえ、常に親近感を持ってもらえればもらえるほどよいというわけではありません。先ほどのジャニーズの例の他にも、アパレルのハイブランドやAppleのCMのように洗練されたメッセージの発信で作るブランドパーソナリティももちろんあります。

テレビ番組の持つオーソリティ(権威)を保ちつつ、より深くパーソナリティを伝えていく。メディアとしての過渡期の中にあるテレビにおいて、Clubhouseにて見られるテレビのチャレンジが今後どのように評価されていくのか今から楽しみです。

本テーマやそれ以外についてもくわしく聞きたいこと、などあればぜひお気軽に私のTwitterアカウントへリプライをいただければ幸いです。Clubhouseでのディスカッションなどにもお気軽に誘ってください。

それでは。

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