[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

プロダクトマーケティングを知るために、押さえてほしい3つのこと

マーケターコラム、今回は村石怜菜氏。プロダクトマネジメント知識のうち、マーケターに知っていてほしいTIPSを3つ紹介します。

みなさん、こんにちは。村石怜菜です。

前回の「プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)になりませんか?」では、「PMMという職種の役割」をテーマに解説しました。今回は、より具体的にPMMを把握してもらうために、知っておくと良い(と思われる)プロダクトマネジメント知識を私的チョイスでティップス(TIPS)としてまとめてみました。なお、「PMMが何かを知りたい」という方は、前回の記事を先に読んでいただけると嬉しいです。

「マーケティング専門でキャリアを積んできて、プロダクト開発に携わった経験がないけどPMMになりたい! 挑戦したい」という方々にも、この記事がさらなる興味発展、深堀のきっかけになれたら幸いです。

ITのプロダクト/サービス開発(自社サービス)に限定します

では、さっそくTIPSを紹介していきます。ただし事前にお断りさせていただくと、本記事における「プロダクト開発」とは、ITのプロダクト/サービス開発(自社サービス)に限定させていただきます。

当然といえば当然ですが、「プロダクトマネジメント」という言葉は、別にITに限ったことではなく、古くから存在しています。業界も製品(物理的な製品からIT製品まで)も広義に渡ってしまうと、収拾がつかなくなってしまうためです。

TIPS①
アジャイルの登場でプロダクトマネジメントはIT独自に進化した

前述したように、プロダクトマネジメントは突如出現した手法ではなく、日用品や家電といった消費財を中心とした「製品を開発するための手法」として昔から存在していました。消費財の製品開発は、製品の企画から設計、開発、テスト、販売開始までに長い期間を要します。

IT業界の製品・サービス開発においても、当初はウォーターフォールによる開発が主流で、機動性の低い状態でした。開発よりも計画や文書化に時間が割かれ、本来の目的である製品の卓越性や差別化、価値を追求しにくい状況でした。

ウォーターフォールによる開発は要件定義からリリースまで順番に進められる

そんな状況を打破するために、2001年に登場したのが、アジャイルマニフェストです。それ以降、アジャイルはIT業界全体へと受け入れられ、プロダクトマネジメントもIT独自に進化しました。アジャイルについてはTIPS③で概要を説明しますが、開発をよりスピーディに行える手法です。

TIPS②
市場と消費者マインドの変化が、マーケティング指針やプロダクトマネジメントに影響を与えた

「市場や消費者のマインド」が変化すれば、「マーケティング指針」「プロダクトマネジメント」もそれに応じて進化する必要があります。マーケティング指針が進化しても、プロダクトマネジメントが従来のままであれば、適切な製品を適切なタイミングで投入できません。市場のニーズに応えられずに好機を逸してしまいます。同様に、プロダクトマネジメントが進化しても、マーケティング指針が従来のままであれば、市場ニーズに応えることはできません。

そのため、両者は不可分な関係だと私は考えています。マーケティング1.0から5.0までの変遷を理解したうえで、プロダクトマネジメントを紐付けて考えてみてください。プロダクトマネジメントのマーケティング部分を担うPMMの必要性、その背景をより理解しやすいのではないでしょうか。

たとえば、一番理解しやすいのが、1.0から2.0への変化です。大量生産で、需要が供給を上回る大量消費だった1.0時代は「製品中心」のマーケティングでしたが、その後、機能的価値や価格競争だけでは消費者の心理を動かしにくい時代へと突入し、「消費者中心」という2.0の考えが登場しました。今年の4月に5.0について解説されている書籍が販売されましたが、2.0以降、消費者・顧客への提案価値は時代とともに増え、多様化しています。

そうした市場の変化によってマーケティングが変わるのに合わせ、大量生産ではなく多様性に合ったプロダクトマネジメントに進化する必要があります。

TIPS③
アジャイルによって開発期間が短縮し、イテレーション(反復)回数が増加した

基本的にPMMの役割はビジネスサイドとのコミュニケーションや調整が中心ですが(前回記事の図「プロダクトマネジメントアングル」参照)、開発チームがどのような思想で開発しているかを理解すると、業務や戦略立案時に役に立つでしょう。

そうした意味からも、TIPS①で触れた「アジャイル開発」の概要は、PMMとしてプロダクト開発に関わるのであれば前提知識として持っていた方が良いと思います。10年位前まではプロジェクトマネジメントといえば、ウォーターフォール開発を採用する場合がほとんどでしたが、今現在、IT企業の大半はアジャイルを採用している企業が多いのではないでしょうか。

アジャイル開発では、機能ごとに各工程を進行する

アジャイル開発というのはプロジェクトマネジメントの一種で、一般的に1~2週間、長くても1ヶ月の「スプリント」という開発期間の単位内に機能を開発し、リリースしていく手法です。

ウォーターフォールでは、機能単位ではなく、すべての機能の企画・設計・実装・QA/テストを同時進行し、最後にすべての機能をリリースします。しかし、次図のようにアジャイルは機能ごとに各工程を進行しますので、イテレーション(反復)がウォーターフォールよりも多くなり、開発スピードは向上します。

アジャイルは、1つのスプリントに1つの機能を開発していく。機能ごとに各工程を進行し、次々とリリースしていくことになる

レビュー会の活用がマーケティング戦略立案に効果的

アジャイルのフレームワーク(手法、進め方)の1つに「スクラム」というものがあります。そのステップの1つに「スプリントレビュー」があるのですが、ざっくりと説明すると、そのスプリント内での成果物をリリースするか否かを判断するレビュー会です。

このレビュー会には、エンジニアやデザイナーといった開発担当だけでなく、PdM(プロダクトマネージャー)やPMM、ステークホルダーといったメンバーも参加します。実際に動くものを確認できるので、UI/UX観点の意見やフィードバック、市場の受容性なども確認されます。さまざまな意見を聞いたり、発言したり、マーケティング戦略の立案にも非常に役に立つ場だと思います。

「社内初のPMMになって戸惑っている」「アジャイルを導入したがうまく運用できていない」といった課題を持っている場合には、自らこのような場に参加するように動くと、よりPMMとして精度の高いパフォーマンスを実現できるのではないでしょうか。

今回はアジャイル中心に解説しましたが、アジャイル以外にも、省エネルギーで効果検証しやすい手法は存在します。リーンスタートアップといった手法でMVP(Minimum Viable Product:必要最小限の価値をもつプロダクト)を作成するとか、パイロットテストやスプリットランテストを開発と並行して実施する手法などです。これらの手法によって、無駄な開発を減らし、より市場に受け入れられる確度を高められるでしょう。

◇◇◇

今回は3つのTIPSをお伝えしました。あくまでもTIPSとしての紹介なので、大事な部分のみを要約したつもりですが、プロダクト開発とマーケティングは切っても切れない存在であることを、お伝えできたでしょうか。各領域で入門書やWebサイトも多く存在するので、興味を持った方はぜひ深堀してみてください。

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