「グーグルが検索順位を決める要因」の情報を正しく理解するためのプロの目線(後編)
グーグルの検索順位決定要因に関して解説するこの記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。前編では「都市伝説としての200要因」「インデックス化や順位付けの用語」などを解説した。
後編となる今回は、世の中で語られている「順位の決定要因」でどんなものが間違っているか、具体的に例を10個挙げて解説し、こうした情報のうち、参照して問題ないものやそうした情報の扱い方を解説する。→まず前編を読んでおく
SEOの耐えられない軽さ
SEO担当者とは、躁鬱を抱える傾向のある才能豊かな専門家である。
少し言い過ぎたかもしれない。しかし僕たちは(僕だってSEOに携わる者だ)自分の仕事によってオーガニックなトラフィックが正常に増加したときにはひたすら有頂天になるが、グーグルがアップデートを発表したり、トラフィックがわずかに減少したりすると、一気に(意識していなくても?)不安に満ちた暗黒期に入る。
だから、検索順位決定要因のリストが欲しくなる。.
リストを欲しがるのは、情報源になるかもしれないというだけではなく、安心感を得られるからでもある。
だから、たとえ都市伝説の寄せ集めにすぎなくても喜んで受け入れてしまうのだ。
具体例として、Backlinkoが公開している「グーグル検索順位決定要因200」を見ていこう。このリストを取り上げるのは、単にいちばん最近公開されて成功しているリストだからという以外に他意はない。
まず、わかりやすいものから始めよう。
1. キーワード密度〈検索順位決定要因17〉
「かつてほど重要ではないものの、キーワード密度は現在もグーグルがウェブページの主題を判断するのに使われている
」とあるのを読んで、僕は眼がちかちかした。
キーワード密度がグーグルの検索順位決定要因であったことは、これまで一度もない。一度もだ。
検索順位決定要因としてのキーワード密度を見つけようとするなら、1970年代や1980年代にさかのぼって、スティーブン・E・ロバートソン氏やカレン・スパーク・ジョーンズ氏らがOkapi BM25として説明した式を取り上げなくてはならない。
キーワード密度が検索順位決定要因に何らかの関連性があったとしても、それはいわば検索エンジンの先史時代に属する話だ。
2014年現在、グーグルが誕生してわずか16年だ。
ウェブドキュメントの文章に検索で取り上げてほしいキーワードが入っていることは、現在も確かに重要だ。
しかし、ページ内にそのキーワードがまったく入っていなくても、そのキーワードで検索結果の上位を獲得できることも僕らは知っている。関連性のある一貫した信号を十分に発していることがわかれば、グーグルはそのキーワードとサイトを関連づける。
2. 潜在意味インデックス(LSI)〈検索順位決定要因18/19〉
これについては、ビル・スロウスキー氏がInbound.orgのコメント欄で書いていることを引用しよう。
潜在意味インデックスは、まだウェブがなかった1990年に発明され特許が取得された。
変更がウェブほど頻繁でない小規模データベース(ドキュメントが1万件未満)のインデックス化を支援するために開発された。
同じ意味や似た意味の言葉や同義語を探し出すのに役立つとして、これまでいくつもの会社がLSIキーワード生成ツールを発売した。
これがうまくいかないのは、LSIによってどの言葉が同義語であるかを算出するには、問題の(ドキュメントの)データベースにアクセスしなければならないからだ。グーグルのデータベースにアクセスしてそのような解析ができるのはグーグルの人間だけだ(しかもグーグルのインデックスは巨大すぎるうえ変更の頻度も高すぎて、内部の人間であっても追い切れない)。
3. YouTube〈検索順位決定要因76〉
YouTubeの動画がSERPで優遇されているのは疑いようがない。
なぜこれが検索順位決定要因なのだろう。グーグルは検索エンジンで自社サービスをひいきしている。だからといって、それを検索順位決定要因と言えるだろうか。
こうしたリストが、得てして科学性に乏しいものであり、危険とまでは言えなくとも、信頼ができないことを示す典型例だ。
4. サイトの稼働時間〈検索順位決定要因69〉
ディーン氏が書いていることは正しい。何度か接続を試みてもサーバーエラーしか返ってこなければ、そのサイトはSERPから除外されるようになる。
正しくはある。
しかし、それはクローリング時の異常によるインデックス化の問題であり、検索の順位づけの問題ではない。
前述したように、「インデックス化」「順位付け」などの言葉の意味を知ることが重要なのだ。
5. ドメイン名の最初に置かれたキーワード〈検索順位決定要因3〉
このリストに順位決定要因としてこれが入っているのは、(僕を含む)SEO担当者の一団が、完全一致ドメイン名と(EMD)と部分一致ドメイン名(PMD)は明らかにランキングで優位に働いていると考えて、Mozの検索順位決定要因調査でそのように断言したからだ。
しかし、この調査の2013年に公開された新しい版では、同じSEO担当者たちがまったく異なる意見を述べている。
重要なのは、これがSEO担当者たちの意見にすぎないということだ。さまざまな但し書きをつけた上で事実そうである可能性はある。しかし、意見は個人の経験に基づいている。
権威があろうとなかろうと、意見はあくまで意見だ。それは科学ではなく、当然、検索順位決定要因でもない。.
6. 国別コードトップレベルドメイン名(ccTLD)(検索順位決定要因10)
グーグルのジオターゲティング(地域設定)は、どう行うのがいいのだろうか。サブフォルダやサブドメインでするよりも、国別コードトップレベルドメイン(ccTLD)でする方が強力だというのは正しい。日本ならば.jpだし、ニュージーランドならば.nzだ。
ただし、国際SEOを手がけている人ならだれでも認めるように、ドメイン名の最後にccTLDが付いているからといって、そのウェブサイトがジェネリックトップレベルドメイン(gTLD、.comや.netなど)のサイトより上位に表示されるとは限らない。
必ずしも正しいとは言い切れないのは、「.es」や「.it」が付いているウェブサイトは、スペインのグーグル(Google.es)やイタリアのグーグル(Google.it)以外ではそれほど上位に表示されないという点だ。
僕は、2014年4月にState of Digitalに書いた記事で、「ラテンアメリカの」ccTLDを持つサイトが、「Google.es」で「.es」のサイトより上位になっている例を数多く紹介した。記事に寄せられたコメントを見ると、これがあらゆる地域のグーグルで共通して見られる現象であることがわかる。
この「順位決定要因」は、この種のリストがいかに正しい情報と危険な無知を混同してしまいかねないかを明確に示している。
僕は「無知」という言葉を軽蔑的な意味で使っているのではない。ここでは世界規模のSEOという「特定のテーマに関する知識や情報の欠如」という本来の意味で使っている。
7. GoogleアナリティクスとGoogleウェブマスターツールの使用(検索順位決定要因78)
次のように説明されるものがなぜ、検索順位決定要因になり得るのだろうか?
これら2つのプログラムをサイトに設置しておくと、ページのインデックス化を改善できると考える人もいる。また、グーグルに提供するデータが増えることによって、検索順位に直接的な影響を与える可能性もある(後略)
「考える人もいる」? それはだれのことだろうか? 掲示板で元気に発言している大学生? 情報処理技術者? IT業界関係者? この記述は単なる推測にすぎない。
8. ゲスト投稿(検索順位決定要因91)
ある種のゲスト投稿がいかに危険をはらんでいるかについて話すとき、そこで問題にしているのはウェブスパムだ。
そのため、もしゲスト投稿に記載された(1つまたは複数の)リンクに人を操ろうとする意図が感じられる場合、僕たちが論ずるべきは、「スパムフィルタ」(検索の第3段階)についてであって、実際の検索順位決定プロセスについてではない。
繰り返すが、言葉の意味を知ることが重要なのだ。
9. Facebookの「いいね!」とシェア(検索順位決定要因157、158)
グーグルは、Facebookの「いいね!」やシェアを見ることはできない。そのため、これらの要素は検索順位決定要因にはなり得ない。
以上だ。
マット・カッツ氏は、このリストが引用元としている記事にもあるとおり、SMX West 2013のパネルディスカッションで次のように発言している。
われわれはオープンウェブで利用できる標準を利用したいと思っている。Facebookや、一時期Twitterで問題にぶつかったときのように、クロールできないものがある場合は、そのデータを当てにしたいとは思わない。
ただし、ここでの最大の過ちは、因果関係と相関関係を混同していることだ。ソーシャルシグナルの力は因果関係ではなく、相関関係にある。
僕が以前、マーカス・トーバーによるMozの記事(Web担掲載の日本語版はこちら)へのコメントで書いたように、ソーシャルでの共有は検索順位を上げる直接の原因ではなくても、上位獲得する助けにはなる可能性がある。
ソーシャルで共有されることで発見されやすくなり、(Topsyなどの)第2階層で被リンクを作成してもらえたり、共有されたコンテンツを発見した人たちから自然な被リンクを獲得する機会が増えたりする。
10. LinkedInに登録している従業員(検索順位決定要因172)
ばかばかしいにもほどがある。
Backlinkoはこれを、ブランドのシグナルとして定義している。問題は、ブランドのシグナルは順位決定のシグナルではないということだ。
Backlinkoは、少し古いが2011年にランド・フィッシュキンが書いた大変優れた記事に言及している。残念ながら、その記事で述べられているのはまったく別のことだ。ランドが提示した(正しい)仮説は、グーグルは将来、オンラインでのプレゼンスに対応するオフラインのプレゼンスを反映した名前付きエンティティを作り出すために、「ブランド」のシグナルに目を向けるようになるというものだ。
この記事で、ランドが「LinkedInに登録している従業員」を順位決定要因に挙げている箇所はどこにもない。
まだまだ言いたいことはあるが、反論を並べ立てるだけの記事にするつもりはない。
そうではなく、特に経験の浅いSEO担当者のみんなに、これらのリストを額面どおりに受け取っても良いことは何もないとはっきり言っておきたいのだ。
僕が言いたいのは、こんなものを作るなということだ。
優れたリンクベイトのアイデア(ディーン氏の記事のパフォーマンスがこれを証明しているとも言える)のように見えるものが、結局はSEOに関する誤ったビジョンを拡散させるものになってしまう。それが、企業の経営者やマーケティング担当幹部など、SEO担当者以外のメインストリームオーディエンスの目や心に届き、HubSpotやEntrepreneurのようなサイトでも、転載されたリストを目にすることになる。
グーグルの検索順位決定要因リストというものは、どれも有害なのか?
結論としては、ノーだ。
あるサイトがどうして他のサイトより上位に表示されるのかを理解するための本格的な調査はある。先ほど触れたMozの検索順位決定要因調査と、Searchmetricsの検索順位決定要因調査は、その最も優れた例だ。
とはいえ、これらの調査と、「200個の検索順位決定要因」とされるものを列挙したシンプルなインフォグラフィックや記事との間には、大きな違いがある。上述の2つの調査は、しっかりとした科学的手法に従って実施された、相関関係の調査なのだ。
この、相関関係の調査である点に注意してほしい。つまり、SERPで上位に表示されているサイトに共通する特徴を教えてくれるだけなのだ。
本当に自分のサイトで応用できるなら、成功事例のヒントを得るものとして取り入れてもいいが、それだけだ。
相関関係の分析を行わずに検索決定要因のリストを作成することもできるが、その場合は以下の3つの基準を満たす必要がある。
少なくとも、Search Engine Landがサイトで公開しているSEOの成功要因をまとめた周期表に匹敵するほど優れたものでなければならない。
検索エンジンの仕組みに関する深い知識に基づいていなければならない。
主観的性格のものであることを必ず明記しなければならない。
最後に、僕が提案する最善のアイデアは、リストを探したりしていないで、自ら実験してみることだ。サイトを作って、理論を検証し、ルールを破ってみることで、実際グーグルはどういう仕組みになっているのかが理解できる。
ひとりでは無理だと思ったら、ランドが数か月前に作ったIMEC Labへの参加を検討してほしい。
では、楽しんで検証しよう!
ソーシャルもやってます!