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「エンゲージメント」視点の企業コミュニケーション戦略

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「エンゲージメント」視点の企業コミュニケーション戦略

●諏訪 パブリック・エンゲージメントに取り組んだ事例を紹介いただけますか。

●リチャード シェルのガソリンスタンドの事例を紹介しましょう。シェルでは、Webサイト上でドライバーに対して、どのように運転すればより燃費を節約できるかという情報を伝えるとともに、燃費節約のクイズを出題するキャンペーンを行いました。このクイズには、2週間で10万人が参加し、後日それぞれのユーザーにクーポンを送付しました。

シェルの他にも、スターバックスの事例などがあります。

シェルの事例

将来の代替燃料に対する課題や排出ガスによる環境破壊の問題がある中で、エデルマンはグローバル規模で直接ドライバー向けのPRキャンペーンの実施をサポート。世界10か国でグローバルリサーチを実施し、ドライバーはどう考え、ガソリン経済に対してどのようなアクションを起こしているかを調査。どれぐらいのガソリンを使用しているか、ガソリンの節約方法を把握しているかなどを調査し、各ステークホルダーとの透明性高いコミュニケーションを実施した。

その後、シェルは事業を進める一方でドライバーがガソリン消費量を10%節約できる情報を提供。続いて、誰しもが10%節約できることを紹介し、「Shell FuelSave Challenge(シェル・ガソリン節約チャレンジ」というキャンペーンでは、世界規模で2000名のドライバーを募集して(地元新聞、リサーチ会社と連携)、2か月間かけて平均10%節約(最高24%)を達成したという。この情報はオンライン上でも共有されている。

スターバックスの事例

スターバックスでは、「Vote=Coffee」と「I'm In!」という2つのプログラムを実施している。

  • 「Vote=Coffee(投票=コーヒー)」プログラム
    「Vote=Coffee」は、2008年米大統領選で行われたプログラム。大統領選の当日、各地元のスターバックスでコーヒーを無料にするという大胆なプログラムで、スターバックスの顧客が積極的に大統領選に参加してもらう施策として行われた。この「Vote=Coffee」はまさに歴史が動いているその時にスターバックスと顧客とのつながりを深めることを目的に行われた。

    米国NBCの番組、Saturday Night LiveでのスポットCMを皮切りにスタートした本プログラムは、1450万人にリーチ。4日間に渡り、各メディアにて紹介され、最終的にリーチは全米7,000万人に達した。

  • 「I'm In!(やります!)」プログラム
    スターバックスに来店した顧客が店舗で5時間のボランティアを行うと誓った時点で、無料コーヒーを提供するというこれも一風変わったプログラムだ。このプログラムは、オバマ大統領が国民にコミュニティとのより深い係わり合いを持つことを呼びかけた大統領就任式の直後に実施された。

    「I'm In!」プログラムはオンラインとオフライン(店舗)、両方を組み合わせたプログラムで、「Pledge(宣言)」カードに記入し、無料コーヒーをもらった顧客は5時間のボランティアに加わる。ボランティアの様子はサイトで確認できるようになっておりプログラムに参加したスターバックスの顧客がコミュニティに関わることをネットを通して見る事ができる。

◇◇◇

勘の良いWeb担当者であれば、これらのプログラムがどのようなクチコミ効果を生み、そして企業に対してどれだけ強い信頼関係を生むかをイメージできるだろう。広告プロモーションとも異なり、ウェブサイトを基点とした広報とも異なる。これらの手法は日本でも今後徐々に取り入れられてくるのではないだろうか。

●諏訪 今後メディアはどう変化していくと思いますか。

●リチャード いわゆる「メディア」は生き残るでしょう。ただし数は少なくなるでしょう。そしてそのコンテンツはどこの端末でも見る事ができる。携帯であろうとPCであろうと紙であろうと。そしてここが重要なポイントですが、企業がそれらメディアやソーシャルメディアのコンテンツを強化するように独自「コンテンツ」を提供し始めるでしょう。

●諏訪 今日はありがとうございました。

なお、11月11日にエデルマンはTwitterユーザーの影響力を自動計測する無料サービス「TweetLevel」を発表している。

一見すれば、何故PRコンサルティング会社がTwitterに関連する無料サービスを提供するのかわからないがこれまでの対談と事例を読めばエデルマンがTweetLevelで何を得ようとしているのかがわかるはずだ。企業が社会に対して何を提供しているのか、どう信頼を得ているのか。そして信頼をどう高めるのか。この「エンゲージメント」という視点で企業のコミュニケーション戦略を考えてみてはいかがだろうか。

Daniel J.Edelman Inc.
  • 本社所在地 ● 米国(シカゴ、ニューヨーク)
  • 創業者 兼 会長 ● Daniel J. Edelman
  • 設立 ● 1952年
  • URL ● http://www.edelman.jp/
  • 事業内容 ● 業界第3位、世界最大の独立系PRコンサルティング会社。Relationship Imperative(クライアントとステークホルダーの間の強固な戦略的関係構築)をフィロソフィーとして掲げ、世界中の幅広い分野のリーディング企業に、常に最先端のPRプログラムを提供。

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