インタビュー

クラウド対応も構想中? CMS「Movable Type」が目指す先をシックス・アパート代表の関氏が語る

シックス・アパート代表取締役の関氏に、Movable Typeが目指す方向を聞く
[Sponsored]
注目企業のネットビジネス戦略

ブログソフトの老舗、シックス・アパートが目指す先は
「Movable Type」のロードマップなど、代表の関氏が本音で語る

シックス・アパート
http://www.sixapart.jp/

取材・文:諏訪 光洋(株式会社ロフトワーク)

ブログソフト・サービス老舗のシックス・アパートは、2009年11月に発売した同社の主力ブログソフトの最新版「Movable Type 5(MT 5)」において、CMS(コンテンツ管理システム)の機能を大幅に強化している。Movable Typeをカスタマイズしたサイト構築の事例はこれまでも多数あったが、従来からのブログ機能に加え、サイト管理機能をより強化する方向へ舵を切っている。シックス・アパートで代表取締役を務める関信浩氏に、「CMSの今後はどうなるのか?」という世情的な話から、Movable Typeのロードマップ、戦略や展望など、本音を聞いた。

Movable Type 5はユーザーの声を取り入れ日本主導で開発
日本仕様で早くも高評価

シックス・アパート株式会社
代表取締役 関 信浩氏

●諏訪 シックス・アパートにとって、2009年の大きなトピックスは、やはり「Movable Type 5(MT 5)」の出荷開始ですよね。まだ発売して間もないですが、ユーザーやパートナーの評価はいかがですか。

●関 評価は上々です。従業員の評価も高いし、ユーザーのブログでも高く評価していただいているコメントもあります。まずは好調な滑り出しとなりました。

●諏訪 支持されているポイントは何であると分析していますか。

●関 先日の対談企画(対談記事はロフトワークのサイトで公開中)で登場させてもらった金子(執行役員製品担当)は、今回のMT 5でグローバルの開発責任者を務めました。当社は米国に本社を置く外資系企業ですから、普段は日本のユーザーやパートナーの要望を、ソフトに反映させることは結構難しいんです……。ですが、MT 5では、日本法人に籍を置く金子が陣頭指揮を執りましたので、日本の声をかなり反映させることができたんです。

日本のMTユーザー、10人以上にそれぞれ2時間ほど個別インタビューして要望を吸い上げるなど、日本の要望に合った開発に力を注いだつもりです。そのような“日本仕様”が高い評価を受けているのでは、と感じています。

●諏訪 MT 5では、ユーザーインターフェイス(UI)も変更しましたね。UIを変えると、既存ユーザーが嫌がるケースがあります。思い切りましたね。

●関 正直に話すと、変えるつもりはなかったんです。ですが、バージョンを上げる度に、複数の新機能を追加してきたので、ユーザーがある機能を使いたい場合、その操作数も増えてしまいました。新版ではそれを解消したかった。今回は操作数を軽減させることを優先して、UIの変更に踏み切ったんです。ちなみに、今回UIを担当したデザイナーも日本人なんですよ。

●諏訪 企業秘密かもしれませんが、開発は何人体制だったんですか。

●関 コーディング担当者は4人ほどで、デザイナーやQA担当者などを含めれば二桁くらいですね。

●諏訪 結構多いんですね。日本が開発をリードすることで得られたメリットは、MTユーザーの要望を反映させやすかったこと以外にありますか。

●関 トレンドに適した製品づくりですね。米国と日本では、進化の流行に若干違いがあるんです。ブログソフトウェアは、米国では「ソーシャル・パブリッシング・プラットフォーム」へと進化しようとしています。ブログを含めたコンテンツだけでなく、ユーザー管理やユーザー同士のコミュニケーション管理を含めた管理性が求められています。一方で、日本はCMSへの流れが強い。なので、MT 5ではCMSとしての機能強化を優先しています。日本の流れにマッチした機能を追加できたことは大きかったですね。

永続的サポートなくしてCMSは成り立たない
将来のクラウド対応も検討中

株式会社ロフトワーク
代表取締役社長 諏訪 光洋氏

●諏訪 今、日本では、CMS自体がトレンドですよね。企業がWebサイトでCMSを導入する機運は高まっています。市場環境としてはまさに追い風ですし、CMSツールもかなり増えましたね。ただ、新しい製品が登場する裏では、多くのCMSが消えています。生き残るCMSに必要な要素は何でしょう。

●関 CMSは、ユーザーにとって大切なWebコンテンツを預けるコンテナのようなものです。永続的に修正・更新できることが必須条件で、それを約束できない印象を与えれば、ユーザーはついてこないと思います。ソフトウェアメーカーとして、製品ロードマップをしっかりと示し、カスタマイズや使い方などの情報も無償で積極的に公開することで、安心してWebコンテンツを預けられると、ユーザーに認知していただくことが重要なのではないでしょうか。そこが生き残るか、消えるかの1つの境目だと思います。

●諏訪 なるほど。別の観点でトレンドについて言及すれば、SaaSやクラウドの流れがあります。2010年はますます発展しそうな気配ですが、シックス・アパ-トの考えは。

●関 ソフトウェアの利用形態は、確かに進化していますよね。サービス化の流れは着実に浸透すると私もみています。シックス・アパートもこのトレンドは確実に意識していて、クラウドに必須な仮想化や自動化のテクノロジーはすでに組み込んでいるんです。

それから、現時点ではあまり詳しく話せないんですが、ホスティング事業者との協業も今後検討していく予定です。シックス・アパートは、クラウドやSaaS型サービスを当社だけで提供しようとは考えていなくて、協業によるサービス提供を考えています。あくまでもシックス・アパートはアプリケーション開発に徹して、インフラは他社との協業で推進する。シックス・アパートを中心としたエコシステムを形成する戦略を取ります。

●諏訪 クラウドが浸透すれば、ユーザーはMT導入のためのシステム構築や運用負担を軽減でき、よりユーザー層を広げられそうですね。

いつか使うではなく、今すぐ、誰でも使えるCMSに

●諏訪 ユーザーのターゲットについて、ロフトワークのユーザーは、大規模サイトを構築・運用する企業が多いのですが、MTはブログツールから始まった経緯がありますから、小規模なサイトに適した印象があります。MTの対象は今後も小規模サイトが中心になるんですか。

●関 そうですね。大手企業の基盤CMSになるようなケースは多くありませんが、シックス・アパートのパートナー企業(ProNet)がMTのプラグインで機能を補完し、大規模なCMSにも対応できる製品を提供しています。

●諏訪 MT自身が大量のWebコンテンツを管理するような基盤CMSを目指す可能性は。

●関 今は目指すべきステージではないと思っています。シックス・アパートが今優先して目指すのは、CMSを利用しやすくして、Webサイト制作の敷居を下げることです。シックス・アパートは、アーリーアダプターの要望にマッチした製品を作る戦略で、絶えず新しい価値を提供することに重きを置いて開発を進めています。

ただ、誰でも手軽に使えるようなツールでもある。その点を訴求できていたかといえば、正直言って手薄な面があります。当社でやるべきこともたくさんありますが、広く皆さんに認知していただくにはパートナー企業の力も必要。ぜひ、ロフトワークさんにも協力してもらいたいですね。

●諏訪 それはもちろん。では、最後に2010年の抱負をお願いします。

●関 MTは、バージョン3でブログツールとしての強固な地位を確立させ、バージョン4でCMSに進化しました。今回の新版では、CMSとしてさらに発展させました。Webの職人ではなく、誰でも手軽にWebサイトの制作・管理を手がけられるツールになっています。「いつかはMT(を利用する)」ではなく、「誰でもMT」となるように日本でMTを広められるようにしたいと思います。

●諏訪 乗用車でたとえれば、外車や高級車ではなく日本で最も売れていると言われるホンダの「フィット」のような存在ですね。MTって日本のWeb開発者の登竜門的なイメージがあります。「Web制作を始めるならMT」みたいな。なので、シックス・アパートには、自社のビジネス拡大だけでなく、日本のWeb開発者を増やすという重大な責任もあると思うんです(笑)。MTの今後をロフトワークも応援させてもらいますね。本日はありがとうございました。

シックス・アパート株式会社 日本法人概要
  • 所在地 ● 東京都港区赤坂
  • 代表取締役 ● 関 信浩
  • 設立 ● 2003年12月
  • URL ● http://www.sixapart.jp/
  • 事業内容 ● インターネット上のウェブサイト構築・管理のための「ブログ技術」の開発と、関連する製品・サービスやコンサルテーションの提供

※2010-02-23 17:17 記事初出時点で、冒頭でのシックス・アパートさまの社名が誤って記載されておりましたので修正いたしました。関係各位にはご迷惑をおかけして申し訳ありません。お詫び申し上げます。

[Sponsored]
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

UCD
ソフトウェア/ハードウェアの制作において、エンドユーザーにとっての利便性を第一に ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]