シックス・アパート株式会社 金子順氏
ブログからCMSへと進化した
Movable Type 4.1
取材・文:田中 誠
写真:渡 徳博
2007年8月8日にブログ向けシステム「Movable Type」の3年ぶりとなるメジャーバージョンアップ「Movable Type 4」がリリースされて約半年が経ち、最新バージョン4.1がリリースされた。ウェブサイトやブログを取り巻く環境の流れに柔軟に対応したMovable Type 4は、企業サイトのような大規模なサイトを構築、管理するに当たって便利な機能も盛り込まれ、ブログだけでなく、新世代のCMSツールとして十分活用可能と評判も上々だ。シックス・アパート株式会社の製品企画担当 執行役員の金子順氏に、その新機能と活用法、これからの戦略についてのポイントを伺った。
もはや必然の流れだったMovable TypeのCMS化
編集部 「Movable Type 3」(以下MT3)から「Movable Type 4」(以下MT4)へ進化する間に、ブログを取り巻く環境もだいぶ変わりました。MT4を開発するにあたってそのあたりもかなり意識しましたか?
金子 今でもMT2.6などを使っていらっしゃる方は多いので、単にブログを書くという意味では、これまでのMTも十分に完成度の高いソフトウェアだったと思います。
ただ、いろいろな用途に使いたいという人が増えてきて、こういう機能も作ってみよう、これもプラグインにしてみようと、ユーザーさんや企業さん自身が、どんどん高度なカスタマイズをするようになってきました。そのような活動は、弊社も大歓迎です。ですから、周辺から価値を付けやすいように、さらにアーキテクチャを改善しました。これはMT3にバージョンアップしたときと同じ方向性です。
もちろん、MTの本体自体をまったく新しいものにしていくという考え方も当然あるんですが、やはりMTは1つのプラットフォームなんですよね。ですから拡張性を上げることや、多くのユーザーのニーズを満たすために柔軟な対応をしていくということが、MT3、MT4を通じての姿勢です。
編集部 今回のMT4へのバージョンアップは、CMS(コンテンツ管理システム)の機能を大幅に盛り込んだ点が注目されていますが、ブログからCMSへという大きな流れがあったわけではなく、拡張性を追求していった結果、CMSっぽいものになったということですか?
金子 今までのCMSはシステムを設計して、コンテンツを公開するまでが大変でした。だれでも使えるわけではなく、ましてや個人がどんどんブログを書くというような感覚でサイトを更新していくのは、CMSベースではムリでした。
でも、インターネットの世界は日々状況が変わっています。きれいなウェブサイトを作ってそれを変えずに置いておくのが7年前の企業ホームページだとしたら、今はいかにリアルタイムで情報を出していくか、ユーザーが求めているような情報をいかに鮮度が高いうちに伝えるか、そこが求められていると思います。ブログツールはもともと個人の日記として作られたので、わかりやすくてだれでも更新できるという特徴があります。それを活用して企業のコンテンツ管理にも広げていったのがMT4だといえます。
編集部 つまり、既存のCMSを意識して近づけたというよりも、企業がウェブサイトに対する取り組み方を変えないといけなくなった現状があって、そこにMTというツールがマッチしたということなんですね。
金子 そうですね。しかも、企業ホームページで情報を発信していく場合、守らなくてはいけない部分があります。たとえば、記事を書く担当の人がデザインを変更できてしまうと、サイト全体が崩れてしまうかもしれません。あるいは、記事を書く人の中にも、書いたものをすぐにアップしていい人と、事前にチェックを受けなくてはいけない人はいるはずです。そういった、企業の運営上、気をつけなくてはいけないことを、MT4ではわかりやすく実現できます。CMSとして求められている部分を、だれでも扱えるツールで、しかも難しくならない形で実現できたのがポイントだったと思います。
編集部 では、単なるブログツールではなく、企業サイトを作るためのCMSとしてもMTは十分に使えるツールであると言っていいわけですね?
金子 はい。MT4.1から従来以上に使えるツールになったと思います。今までもCMSとしての機能は提供していたんですが、複数のプラグインを利用する必要がありました。MT4.1で新たに組み込まれた「カスタムフィールド」(ブログ記事の入力画面で、入力項目を自由に変更できる機能)や「テンプレートセット」などの機能が効果的で、4.1からは無理をせずにCMS的に使えるようになったと思います。企業でも十分利用できると同時に、個人も含めたプロフェッショナルなみなさんにも使っていただけるツールであることは確かです。
編集部 これまでもよく制作会社さんが頑張ってMTを使いこなして企業ホームページを作り上げていましたが、MT4.1を使えば工数も少なくて済むので安く頼めるんでしょうか?
金子 必要な作業が減ることは確かだと思います。その分の工数で、付加価値を付けて提供することが可能になり、今まで以上にクオリティの高いウェブサイトの構築ができるようになるのではないでしょうか。
CMSとして求められている機能を、
だれでも扱えるツールの上に載せることができた
ブログと検索エンジンの親和性を企業ホームページにも活用する
編集部 これからMTを導入したいと思っている企業は、既存のCMSとMT4を比較検討して導入を決めると思います。MT4をCMSとして使う場合、どういう部分が既存のCMSより優れているか、セールスポイントを挙げていただくとしたらどういう点ですか?
金子 ひとことで言えばウェブサイトを効率的に管理できるということなんです。サイトを作るうえで最も大切なのは、コンテンツを充実させることです。言い換えれば、それ以外のことになるべく手間をかけずに済むことが重要なんです。そこを追求したのがMT4ですね。
MTの場合は、最初に作ったブログを2つ、3つと増やすことも簡単です。ブログの数が増えてくると、デザインの管理を工夫する必要がでてくると思いますが、その場合は「テンプレートセット」や「グローバル・テンプレート」などの機能を使って全体のデザインを効率的に管理することが可能です。複数のブログから新着情報を集めて表示する「マルチブログ」という機能を使ってトップページを作ったりすることもできます。さらに、社員一人ひとりにブログを持たせようということになっても、Movable Type Enterpriseという製品を使えば横にどんどん広げていくこともできます。つまり、ウェブページやコンテンツを徐々に増やしていくそれぞれのタイミングで適切な管理ができるのがMTの大きな特徴です。
サイトを作る上で最も大切なのは
余計な手間をかけずにコンテンツを充実させること。
MT4ではそれを追求した
編集者 ブログツールとしてももちろん使えるが、今までのブログ専用ソフトという概念は捨ててほしいということですね。
金子 もちろん、ブログツールとしてもどんどん進化し、多くのみなさんに活用していただきたいという点は変わりません。ただ、ブログが騒がれた1つの理由に、検索エンジンの上位に表示されるというのものがあり、そういうメリットをブログだけに留めておくのはもったいないわけで、それをホームページ全体に広げていくのがMT4の持っている1つの方向性だと思います。
よくあるケースが、社員の1人がブログを始めたら、会社のサイト全体よりアクセス数が多くなったというものです。それはモチベーションの高い人がブログを更新していることに加え、ブログがもともと持っている仕組み、たとえば個別ページが作られたり、RSSフィードが作られたり、検索エンジンにクロールされやすかったりするということでアクセスが上がるわけです。そういう成功事例は重要ですよね。それを企業全体のサイトに応用していけばいいわけで、MT4はそこに十分に対応できるツールになっていると思います。ブログから企業ホームページ全体を変えていくというやり方は、技術的な意味だけでなく、企業のアプローチとして大事だと思いますよ。
編集部 いわゆるブログっぽい使われ方をしているものと、とてもブログには見えない、CMS的な使われ方をしているものの比率というは、だいだいどれくらいなんでしょうか?
金子 ブログっぽく見えないものには2つあって、1つはデザインで工夫されているものです。管理画面にはあまり手を入れず、MTタグを使ってテンプレートを作り、きれいなデザインにしていくもので、ユーザーさんが見ている分にはブログに見えません。これはかなりありますね。企業サイトに限っていえば、半分くらいはそういうカスタマイズがされていると思います。
もう1つはフィールド(記事作成画面の入力項目)まで変えるもので、これはまだそれほど多くはないと思います。MT3までは、「概要」「本文」などのブログ用に用意されているもの以外の入力項目を設けるにはプラグインを入れたりしないといけなかったので。でも、MT4の「カスタムフィールド」を使えば、MTのフレームワーク上で入力項目を拡張できるので、これからは増えてくると思います。
編集部 カスタムフィールドを使った事例ではどんなものがありますか。
金子 たとえば製品情報や不動産情報、ホテルの宿泊プランなど、定型フォーマットで入力できるようなものは、管理画面をカスタマイズして適切な入力項目を作っておけば、だれでも入力できるようになるので使われているケースは多いですね。
不動産情報の場合だったら、間取り、礼金、敷金、家賃、駅から徒歩何分などの項目を、あらかじめ「カスタムフィールド」で管理画面に表示できるようにカスタマイズします。そうすることで、技術に詳しくない現場の担当者でも、迷わずにコンテンツを更新できます。入力された情報は、ホームページ上できれいにデザインされて表示されます(図1)。これまではそれをやろうとすると、本文の中にHTMLで書いていくか、プラグインを使って入力項目を追加するなどしなくてはいけなかったんですが、MT4なら簡単にできます。
豊富なProNet企業との連携でさまざまな事例にも対応
編集部 企業のWeb担当者さんや制作会社のディレクタさんに対して、MT4をこうやって使ってほしいというメッセージは何かありますか?
金子 やはりポイントとしては、「テンプレート管理」「カスタムフィールド」「ユーザー管理」の部分ですね。この組み合わせがとても重要になってくるので、ここに関するノウハウを入手していただけると効率的に大きなサイトを管理できることができると思います。
また、MT関連の情報をまとめたサイト「MovableType.jp」をリニューアルして豊富な情報を提供していますので、ぜひ参考にしていただければと思います(図2)。
編集部 これまでのシックス・アパートは、どうしても開発系の会社というイメージが強かったのですが、CMSとしても使えるMT4の場合、一般の企業との接点も多くなると思います。そのあたりの対応はどう考えてらっしゃいますか?
金子 弊社にはProNet会員という経験豊富なパートナー企業のネットワークがありますので、その中から要件に最も適した企業と一緒に対応していくという形が多くなります。「MTを使ってサイトを作りたいんだけど、サイト構築の部分はだれにお願いすればいいのか?」というお問い合わせは多いんですが、それに対応できるProNet企業さんをご紹介して、一緒に対応していくやり方をとっています。
「Blog on Business」は、そういう目的を持ったサイトで、具体的な事例を出して、どこのProNet企業のどういうソリューションを使って作られているというようなことを紹介させていただいてます(図3)。
編集部 MTの今後のバージョンアップ予定は決まっていますか?
金子 現在MT 4.1の性能を改善する作業が進行しています。MT4はメジャーバージョンアップなので、4.0で土台を作って、4.1は本来4.0で入れたかった機能をすべて入れたものです。ですから4.1がひとまずの完成形ではあるんですが、アーキテクチャが変わったので、もう一度パフォーマンスを見直し、さらに改善していく予定です。
編集部 楽しみにしています。今日はありがとうございました。
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