バランス・スコアカードでCMS導入効果を評価する方法とは? 大手4社のBSC実例も紹介!
先端企業がCMS導入のノウハウを持ち寄り効果指標を議論
Webサイト制作のロフトワークは、同社が2009年から主催してきたCMS導入の効果指標を議論する勉強会「CMS学会」でまとめた研究成果として、「バランススコアカードによるCMS導入の指標と事例」をCMS学会のサイトで発表した。レポートとともに学会の様子がWebサイトで公開されている。
- CMS学会:http://cms.loftwork.jp/
CMS学会は、Webサイト構築・運営時に役立つCMS導入評価指標の考え方をまとめることを目的として発足した勉強会で、ロフトワークが企画・運営し、富士通デザインの高橋宏祐氏が監修。2009年7月から12月にかけて3回開催され、CMSを導入した先端企業の担当者15名と豊富なCMS構築実績を有するロフトワークが知見を持ち寄り議論を交した。
CMS学会では、業務評価システムのバランス・スコアカードを活用した指標(KPI)づくりを進めており、3回の開催を通じて、バランスコアカードで定義された4つの視点でにフォーカスした4社の評価事例を中心に成果を発表した。この記事では、CMS学会の発表より抜粋する形で、バランス・スコアカードとはどんなもので、どのような形でCMS導入を評価できるのかの実例を示す。
- 財務の視点 ―― キヤノンマーケティングジャパン株式会社
- 顧客の視点 ―― ヤマトシステム開発株式会社
- 業務プロセスの視点 ―― 大阪ガス株式会社
- 学習・成長の視点 ―― オムロン株式会社
4つの視点における各評価指標がCMS導入前後でどのように変化し、どれだけの効果が得られたか。定量的効果と定性的効果について、検証結果をもとに発表された。
財務の視点―キヤノンマーケティングジャパン
キヤノンマーケティングの増井氏は、
- Webサイトのメディアとしての価値が経営層に理解されていない
- Webへの投資予算の絶対額が少ない
- 売上貢献やコスト削減への関与度が見えにくい
といった課題を挙げ、財務視点での指標設定の難しさに言及。そもそもバランス・スコアカードが財務指標だけに偏らない業績管理手法であることを踏まえ、経営層に対し、コスト削減効果以外の説得力ある指標を見つけることに注力したという。
増井氏は、「バランス・スコアカードにおける財務の視点は、現在もしくは過去の視点なので、新規にCMSを導入する際に、財務の視点で導入効果を表現することは難しく、むしろリニューアルの時点で初めて重要になってきます。そこで、導入時の財務の視点は、CMSを導入する対象のWebがどういう価値を生み出している(あるいは生み出す)メディアなのかを説明するのに使うとよいでしょう。加えて、財務の視点だけでは明確にできない効果を他の3つの視点で補うことにこそ、CMS導入評価にバランス・スコアカードを適用する意義があると考えます
」と説明している。
検証方法
量、率、額を一定期間(年間)で実測
定量的効果
評価指標 | 参考データ | CMS導入前 | CMS導入後 | 効果 |
---|---|---|---|---|
サイト訪問者数(特定ページを通過する訪問者数) | アクセスログ | 約320万人/月 | 約450万人/月 | 40.6%増加 |
Webへの投入予算伸び率(一定期間の全社Web関連費用の総計) | 全社Web関連費用、広告宣伝費用(本社費、事業費) | (非公開) | (非公開) | 109.1%増加 |
マス媒体への投入予算伸び率(「一定期間のマス媒体広告費」-「一定期間の全社Web関連費用」) | 全社Web関連費用、広告宣伝費用(本社費、事業費) | (非公開) | (非公開) | 34.5%増加 |
コンテンツ内製額(一定期間、同一労働時間での内製額) | 社内経費振替費用、作業リスト(JOB履歴)、デザイナーの実労務時間 | 約2,200万円/年 | 約3,500万円/年 | 59.1%増加 |
コンテンツ開発効率(「コンテンツ内製額÷制作単価」÷実労務時間) | 社内経費振替費用、作業リスト(JOB履歴)、デザイナーの実労務時間 | 0.93 | 1.49 | 60.2%増加 |
定性的効果
- Web活用を中心としたコミュニケーション展開で広告宣伝費を削減
- 複数ターゲットへの正確な配信機能により利便性が向上
- コンテンツ開発効率が向上
- ワークフロー機能により掲載ミスを削減
顧客の視点―ヤマトシステム
ヤマトシステムは、CMSをプロモーションサイトに活用。コンバージョンアップに積極的に挑戦し、顧客の視点で常にサイトの改善を行っており、リニューアルの前後で効果を検証した。
「広告効果で訪問者数が一時的に増えるケースも多いため、当社は敢えて再来訪者数を採用して精度を高めたいと考えました
」(ヤマトシステム 大木氏)。問い合わせ率だけを見ると微増だが、2008年から2009年にかけてプロモーションの手法を変えたこともあり、これだけで評価するのは適切ではないと話し、「1つの数値だけを切り取ると理解が得られにくい場合でも、複数の数値と定性的効果を総合的に見ていくと、一定の成果が得られたことが確認できます
」と説明している。
検証方法
2008年5月~10月と2009年5月~10月を比較
定量的効果
評価指標 | 参考データ | CMS導入前 | CMS導入後 | 効果 |
---|---|---|---|---|
問合せ率 | アクセスログ | 1.22% | 1.25% | 0.03%増加 |
直帰率 | アクセスログ | 40% | 31% | 9%削減 |
再来訪問者数(1か月以内に再びサイトを訪れた訪問者数) | アクセスログ | 40,894人 | 47,557人 | 16.3%増加 |
定性的効果
- 目的のページまでの遷移が明解(顧客の声)
- きれいで見やすく、かつ理解しやすいWebサイトが実現(顧客の声)
- 知識がなくても更新が容易(制作者の声)
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