日本の“電子政府ユーザビリティガイドライン”が具体化、その優れた内容とは?/HCD-Net通信 #17
以前に「電子政府ユーザビリティガイドライン策定でユーザビリティ専門家認定の動き」の記事でお知らせしたように、日本では、内閣官房の主導によって、電子政府システムのユーザビリティ向上のためのガイドライン策定作業が進められてきた。
その「電子政府ユーザビリティガイドライン」が、パブリックコメントの募集を経て、7月1日についに決定された。
- 電子政府ガイドライン作成検討会
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/guide/index.html
ガイドラインは、次の2つ要素で構成されている。
- ユーザビリティガイドライン――基本的にやるべきことをまとめた文書
- ユーザビリティガイドライン付属文書――どのようにしたやるのか手法、事例、テンプレートなどをまとめた文書
具体的な記述やサンプルも多く、とても役に立つ内容になっており、政府でユーザビリティに関して、このように具体的に、まとめたのは画期的なことだ。
ユーザビリティ向上4つの局面
このガイドラインの特徴は、いわゆるインターフェイスや画面デザインの仕様を定めた「画面デザインガイドライン」のようなものではなく、どのように開発やデザイン進めたらよいか記述してある「プロセスガイドライン」であること。
ガイドラインでは、ユーザビリティ向上の取り組みの段階を、
- ユーザビリティ向上の基本方針と目標の設定
- 利用者特性と業務の把握・検討
- ユーザビリティ向上を実現するための技術検討
- ユーザーインターフェイスの検討
の4つの局面に分けたうえで、そのうち①~③を主な対象としている。④「ユーザーインターフェイスの検討」については、共通設計指針を示すに留め、具体的なユーザーインターフェイスについては、各手続きの特性を踏まえたうえで、個別に検討する必要があるとしている(今後のガイドラインの追加や改定などで加えていくことになるだろう)。
ユーザビリティ向上4つの実施プロセス
ユーザビリティ向上の実施プロセスとしては、
- 企画
- 実施(設計・開発)
- 運用(メインテナンス)
- 評価
の4段階を設定しており、特に企画段階での活動を重要だと考えて、企画段階のやり方について詳しく記載されている。
企画段階
企画段階では、アンケート、インタビュー、ユーザビリティテストなどを通じて、利用者の要求を明確化し、BPR、技術検討を行った上で、ユーザビリティ向上計画の作成・公表を行う。
企画段階は「実施体制の構築」から開始するが、ガイドラインでは、電子政府の開発活動の中で、ユーザビリティの専門家を含めると定義している。そして、ガイドラインではユーザビリティ専門家を下記のように定義して、ガイドラインの付属文書にその選定方の例も示してある。
ユーザビリティ専門家:
オンライン申請システム等のユーザビリティ向上の企画段階において、ユーザビリティ向上の基本方針の検討や、現状システムの課題分析、要件の検討・提案依頼書作成等で各府省の支援を行う専門家を指す。
実施(設計・開発)段階
実施(設計・開発)段階では、仕様書のユーザビリティ要件に則った開発が行われているか、各府省は、要件定義の確定、設計、結合、総合テストなど、および受入テストの各工程で、確認・管理する。
運用(メインテナンス)段階
運用(メインテナンス)段階では、ヘルプデスクなどの利用者支援体制の構築や利用者教育などを行う。また、ユーザビリティ向上に資するデータの収集に努める。
評価段階
評価段階では、定期的に実施状況、達成状況を評価し、必要に応じてユーザビリティ向上計画の改定や新しいユーザビリティ向上計画の策定を行う。
このガイドラインは国の行政機関を対象としているものだが、当然のことながら、それ以外の組織にも参考となるものとして作られている。たとえば、地方自治体、独立行政法人、国立大学法人や、公的な活動を行う民間法人などのような分野でも、このガイドラインを参考にすることにより、ユーザビリティの向上が図ることができるはずだ。
早ければ来年度から、少なくともいくつかの省庁では、このガイドラインが適用されるようになると思われる。
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