HCD-Net通信
「人間中心設計 (HCD)」を効果的に導入できるよう、公の立場で研究や人材育成などの社会活動を行っていくNPO「人間中心設計推進機構(HCD-Net)」から、HCDやHCD-Netに関連する話題をお送りしていきます。
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電子政府ユーザビリティガイドライン策定でユーザビリティ専門家認定の動き/HCD-Net通信 #14

ガイドラインには具体的な記述やサンプルが数多く掲載されています。
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世の中にはさまざまな資格があり、ユーザビリティに関係したものでは、認定人間工学専門家、認定心理士、情報処理技術者、TC(テクニカルコミュニケーション)技術検定、PMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)などがあげられる。しかし、ユーザビリティに特化した資格制度はこれまで存在しなかった。

ユーザビリティ専門家の資格認定にむけて、各国の動きは未だ概念的な検討段階に留まり、実際の認証システムが稼働しているところはまだないだろう。

電子政府ユーザビリティガイドライン策定へ

そんな中、日本では内閣官房の主導によって、電子政府システムのユーザビリティ向上のためのガイドライン策定作業が2008年10月に開始された。多額の予算をかけて構築した電子政府システムの利用率の低さが、システムのユーザビリティの低さによるものと考えられ、その改修や新規開発に向けたユーザビリティガイドラインの策定が必要と考えられたからである。その結果、2009年3月にはガイドライン原案が成立し、パブリックコメントを経て7月の公開に至ったのである。

この電子政府ユーザビリティガイドラインとその付属文章には、Webを利用した電子政府システムを新規開発したり改修したりする際に、「企画」「設計・開発」「運用」「評価」の4段階で、ユーザビリティを向上させるためにどのような活動をすべきかが述べられている。注目すべきは、その活動を行う中で、発注側の府省の関係者がユーザビリティに関する知識やスキルを十分持っていない場合には、ユーザビリティ専門家を選定しその支援を受ける必要性があると明記されたことである。また、受注側のベンダーにおいても、エンジニアや設計者を支援し人間中心設計を推進するために、ユーザビリティ専門家の支援が必要であると書かれている。

ガイドライン内の随所に「ユーザビリティ専門家」という表現が書かれているため、ガイドライン策定作業を行っていたユーザビリティ分科会で、そもそもユーザビリティ専門家は存在するのだろうか、といった議論まで出てくる状況となった。このガイドラインが具体的に運用されるのは2010年度以降と考えられる。それまでにユーザビリティ専門家という職能を明確化する必要性が出てきたのである。

ユーザビリティ専門家認定へのこれまでの動き

ただし、ユーザビリティ専門家の認定に関する試みが、過去何度か行われてきたのも事実である。ここで少し、これまでの資格認定に関する各国の状況を振り返ってみることにしよう。

イギリス・米国での動き

1990年代末頃、イギリスのユーザビリティ関連団体であるUK UPA(Usability Professionals' Association)を中心に、ユーザビリティ資格制度の基礎的な検討が行われた。その後2001年から2002年にかけて、イギリスでの成果を引き継ぐ形で、米国のUPAにワーキンググループが設置され、資格認定の枠組みが検討されてきた。そのワーキンググループでは、ユーザビリティに関連した能力をISO13407の人間中心設計プロセスに対応させ、さらに専門スキルを追加した形で、6種類26項目に分けてリストアップしたものが提案された。しかし、その能力をどのような形で評価するのか(テストなのか実績評価なのか)、資格を何種類・何段階に分けるのかといった具体的な検討に至る前に、活動は休止状態になってしまった。ユーザビリティ関係者に対して行われたアンケート調査の結果から、理事会が時期尚早だと判断したのである。

日本での動き

1998年、当時の通商産業省(現 経済産業省)の委託調査として「ユーザビリティ評価に関する環境整備の必要性 - 統一的評価手法の確立と資格制度・認証制度の導入に向けて」という調査研究が行われた。その後、2001年には、社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)のヒューマンセンタードデザイン小委員会において、『人間中心設計(ISO13407対応)プロセスハンドブック』がまとめられ、人間中心設計に関する3種類の職能が提案された。

  • リクワイアメントエンジニア(RE: Requirement Engineer)
    ユーザーの利用状況の分析、ユーザー要求仕様の立案などを行う
  • ユーザビリティエンジニア(UE: Usability Engineer)
    ユーザー要求仕様をベースにユーザビリティを配慮したプロトタイプを開発する
  • ユーザビリティアセッサ(UA: Usability Assessor)
    ユーザビリティ評価基準を作成しユーザー要求に沿っているかを評価する

この「RE」「UE」「UA」という概念は、もともとドイツのテュフラインランド社でユーザビリティ部門に所属していたThomas Geis氏が提唱したものである。2002年には、人間中心設計プロセス実践における人材育成と課題に関する検討が行われ、中項目で22、小項目で61にわたる能力区分が提案された。その能力には、3つの職能に共通するものと、それぞれの職能に特有なものが含まれている。

ドイツでの動き

「RE」「UE」「UA」という職能は、現在、次のように再構成されている。

  • ユーザビリティエンジニア(UE: Usability Engineer)
    上位レイヤーに位置づけられ、手法の選択や担当者の割り付け、ガイドラインの作成などのHCDの管理業務を行う
    • リクワイアメントエンジニア
      文脈の分析と要求定義などを行う
    • ユーザーインターフェイスデザイナー(UID: User Interface Designer)
      インタラクションデザインと情報デザインの設計を行う
    • ユーザビリティテスター(UT: Usability Testor)
      インスペクション評価とユーザビリティテストを行う

これらは現在、ドイツのGerman UPAで、ユーザビリティ資格認定制度を確立する方向で検討が続けられている。

HCD-Netにおける検討

話をまた現在の日本に戻すことにしたい。これまで述べてきた時代背景、今回の政府のユーザビリティガイドライン策定を受けて、HCD-Netでは公的資格としてではなく、民間資格としてユーザビリティ専門家の認証基盤を確立する必要性を強く意識するに至った。従来から、HCD-Net内の規格化/認定事業部においてその基礎的検討は行ってきたが、分科会での質問に対し、2010年の年頭には第1回の認定志願者を受け付け、年度末には最初の認定者を出すと回答したこともあり、システム構築が急務となったのである。

そこでHCD-Netでは、ユーザビリティ資格認定に関するアドホックワーキンググループを編成し、その枠組みづくりと運用体制の検討に入った。現在のところ、「企画」「設計・開発」「運用」「評価」という人間中心設計のそれぞれのプロセスに対応した職能と、それら全体を統括するマネジメントの職能とを想定し、必要な能力とその水準の検証方法、運用方法(能力検査か実績評価か、面接を実施する都市、費用など)についての具体的な検討を行っている。

外的要因によって駆動された形にはなったが、世界で最初のユーザビリティ資格認定制度を成功させるべく努力しているところである。今後の動向についてはHCD-NetのWebサイトやイベント内で随時報告されるので、ぜひ注目していただきたい。

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