衣袋宏美のデータハックス

月次データのトレンドを見る場合に注意すべきポイント [アクセス解析tips]

月次データを集計する場合に気をつけるべき落とし穴とは何か?
衣袋宏美のデータハックス

1月から3月までのサイトのアクセスデータをどう読むか?

最初に1つ質問だ。仮にある年の1月から3月までの毎日のユニークユーザ(UU)数、セッション数、ページビュー(PV)数の水準が同じだとした場合、月次データのUU数、セッション数、PV数も毎月同じになるだろうか?

A.そりゃ大体同じになるはずでしょう
B.正月はアクセスが少ないから、1月が少なくて、2、3月は同じくらいだろう
C.2月だけUU数が少し減少、PV数とセッション数は1割減くらいだろう

以下の答えを読む前に、まず自分で解答とその理由を考えておこう。

月次データを集計する場合に気をつけるべきポイント

まず、毎日のアクセス水準が同じと言っているので、「正月のアクセスが少ない」という勝手な条件変更はダメ。よってBは論外。

ここで気をつけなくてはならないのは、各月の日数だ。各月の日数は1月が31日、2月が28日(うるう年は29日)、3月が31日で、毎日のアクセス水準が同じであると仮定すれば(まあ世の中そんな単純なことは滅多にないので、現実は当然こんなことは起こらないのだが)、そのままの日数で計算すると、2月の対前月比は約1割減(1-28/31=0.097)、3月の対前月比は約1割増(31/28-1=0.107)となる。1年を通して、30日の月と31日の月がほぼ交互にやって来るが、2月前後は日数の変動が極端になるために、アクセス状況に変化がなくても、月次でまとめると変動が起こっているように思えることに注意しなければいけない。

一度失敗をしたことのある人は二度とこの単純な話を忘れることはないだろうが、こんな単純な理由だけで、アクセスは1割も増減することがあるということをご存知だっただろうか?

ただし、これが当てはまるのは、日別データの積み上げが月次データとなる指標のみなので、ページビュー数とセッション数だけがあてはまる(セッションは厳密には、日を跨ぐセッションをどう集計するかなどで少し食い違いは出てきたりするだろうが、この問題は目をつぶっておこう)。

ユニークユーザ数は、月次で全くリピートユーザがいないなら別だが、普通は同月内に同一人物が何回か訪問することもあるだろうから、日別のUU数の単純合計は月次のUU数より多くなる。なので日数が1割少なくても、月次データへの影響はそれより少なくなる。

ということで、この条件下で最もふさわしい答えはCとなる。

2大指標の月次データで重要なKPIは「1日当たりの××」

これまでは話を分かりやすく説明するための仮定の話で、現実は当然正月休みのアクセスは非常に下がるし、1月~3月の休みの日数も年によって違うし、サイトで実施中のキャンペーンやイベント、その他外部要因が絡んで、話は単純ではないが、逆に話が単純でないだけに、意外と忘れ去られる要因の1つでもある。大抵の人は知っている(あるいは知っているつもりの)ことだが、何の疑問も持たずに「2月に1割減で不調です」などと書いているレポートもあるかもしれない。社内や社外の誰かが作ったレポートで、月ごとに極端に増減がある場合は、念のために月ごとの日数の違いを計算に入れているかを確認した方がいいだろう。

他の月も同様で、たいていは30日と31日の月が交互に来るので、3%程度の上下動は統計的有意でもなんでもない。単なる日数の違いによる変動の範囲ということになる。

例えば、以下の図はYahoo! JAPANの月間合計ページビュー数と1日あたりページビュー数を比較した表だが、2月、4月、6月、9月、11月は月間合計が低めになっていることがわかる。

Yahoo! JAPANの月間合計と1日当たりのページビュー数(2007年)
図1:Yahoo! JAPANの月間合計と1日当たりのページビュー数(2007年)

つまり日別の合計が月次データと合致するページビュー(PV)数、セッション数の2大指標については、「月次の絶対値」を見るだけだと過ちを犯す可能性が高くなるので、この絶対値に加えて「1日当たりのセッション数」と「1日当たりのページビュー数」を書き添えておくのがよい。

一般的な季節要因とサイトに特徴的な季節要因

各月にはいろんな季節要因がある。その一般的な季節要因以外にも、どんなサイトでも各サイトに固有の事情による季節要因があるはずだ。例えば、自分の会社、商品で毎月の季節要因を挙げてみよう。サイトのアクセスも当然それにつられる。

表:サイトのアクセスが変動する主な季節要因
要因
1月 年初
2月 28日と最も日数が少なく、うるう年で変化する月(ニッパチとも言われアクティビティが落ちるとも言われる)
3月 年度末
4月 年度初め
5月 ゴールデン・ウィーク
7-8月 夏休み、お盆休み(ニッパチとも言われアクティビティが落ちるとも言われる)
9月 上期末
10月 下期始まり
12月 年末

一般論だけでもご覧のとおりだ。最近の就職活動のスケジュールは詳しく知らないが、企業サイトであれば、人材募集系のコンテンツへのアクセス状況は、それにかなり依存して変動しているはずだ。決算発表の時期しかり。日本では3月決算の会社が多いが、外資系では暦年と同じことがおおいなど、事情はそれぞれ異なる。

つまりその月の絶対値だけの指標で何か判断するのは危険が伴うと考えられる。だから金がかかっても、継続して同じ調査をする意味があるわけだ。思いついた時に散発的に行う調査(でしかも毎回やり方が変わる)というのは、出てきたデータの評価が難しい。だから、継続的に同じツール、同じ手法を用いて、トレンドでデータを見ないと正しい判断が下せないことが多い。

少なくとも13ヶ月データが蓄積されているのが望ましい。これだけあれば、対前年同月比もわかるし、上昇基調か下降基調かという方向性に加え、上昇スピードの勢い、つまり加速度も視覚化できる。

アクセス解析の実際の例で考えてみよう。直帰率が80%あったとしても、トレンドで見たら劇的に改善した月かもしれないのに、単月のデータしか分析せず、せっかく行った改善施策を元に戻して、その翌月に直帰率が90%に悪化ということだって普通に起こり得る。

1ヶ月だけのデータ分析は次善の策だが、大事なことは読み取れる

「お試しサービスとして、無料で1ヶ月分のログを分析します」というアクセス解析サービスがある。この手のサービスを行う業者は、基本的に無償あるいは安価で自分のサービスを理解してもらいたいということなので、それについて否定するものでないのだが、利用者としては気をつけるべき点がある。特に他のツールなどをまったく使っていなくて、これが初めてのアクセス解析である場合は要注意だろう。

じゃあ単月データだけの分析はどう活用すべきだろうか。アクセス解析を始めた初期にみつかる大問題はこの方法で分析しても顕在化するので、まずはそれから手を付けるというのがよいだろう。どういうものがあるかといえば、代表的なものは下記のようなものになる。

  • 直帰率が非常に悪いページの改善
  • コンバージョン率が悪いコンバージョン・プロセスのユーザビリティ改善
  • 全然効き目のないキャンペーンの廃止

しかし大きな問題点の発見は1回切りで終わり、長続きはしない。時々思い出したように実行するアクセス解析では、得るものは少ないだろう。「トレンドで見る」という視点が大事だ。つまり調査データは同じ方式で長く続けることが大事なのだ。無料のツールだってあるのだから、まずはすぐ始めてデータを溜めていくことが何より重要である。

大昔、私が仕事を始めた頃にコンピュータ系の商品を扱っていたが、「売れ行きってこんなに季節変動があるのか」とビックリしたものだ。しかし実は意外に数字を見る際に忘れ去っている人が多いのではないかと思う。これも「そんなこと知っているよ」の代表的な話だとは思うが、本当に実践できているかは、かなり怪しいのではないかと思っている。

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