衣袋宏美のデータハックス

アクセス解析の導入に必要な5つのステップ [アクセス解析tips]

アクセス解析を最大限活用するために必要な事前準備を、解析タイプごとに解説
衣袋宏美のデータハックス

アクセス解析というのは、とりあえずツールを使ってデータを集めれば何とかなるものなのだろうか?

一般的に言って、「調査データ」というものは、あらかじめきちんとした設計(準備)をして収集・集計したものでないと、ほとんど意味がないことが多い。アクセス解析も同様で、きちんとした準備をしたうえで解析を行えば、データ品質は格段に向上し、結果的には無駄な時間や、無駄なコストの発生を回避できる。

そこで、今週と来週の2週にわたって、アクセス解析ツールの導入の仕方について説明をしたい。

アクセス解析ツール導入のプロセス

自分のサイト特有の事情による失敗というものは事前にわかるものではないが、一般的によく知られていることに関しては、事前にきちんとクリアした上で、データの収集や集計に望むべきである。

アクセス解析ツールには、Google Analyticsなどのような無料のツールと、SiteCatalystやSiteTrackerなどの有料ツールがある。有料のアクセス解析ツールといっても、安いものは数万円から高いものだと数百万円まで、コストには無視できない大きな開きがある。

では、どのツールを選ぶべきなのだろうか?

自分のサイトで収集したいデータは何なのか、あらかじめはっきりしている場合は、それに合致するツールを費用対効果を勘案して選べばよい。

しかし、実際のところは、ツールを使ってみないと、自分のサイトでどういうデータが必要なのか、事前設計もままならないということも多いのではないだろうか。そういう場合は、いきなり有料ツールを導入するのではなく、まずは無料のツールでアクセス解析の経験を積んで、準備運動をしたうえで、有料のツールの導入を検討するという方法をお勧めする。

導入するツールが決まったら、どのようなプロセスでアクセス解析のデータを収集あるいは集計する準備をしていけばよいのだろうか? 以下に、サーバーログファイル型アクセス解析ツールとJavaScriptタグ型ツールについて、それぞれ大雑把に5つのステップを書かせてもらった。

当然、自分1人で全部できるはずもないので、サーバーログファイルを管理しているシステム部門やWebサイトの制作を手伝ってもらっている外注先、場合によってはツールベンダーかその販売代理店など、関係者は広範囲に及ぶことを知っておこう。

しかし、何を知りたいのか(どんなデータを取得するべきなのか)を考えるのは、マーケターのあなたであることは間違いないので、あなたが先頭に立って、具体的に取得したいデータやどう集計した数字が必要なのかを説明しかなくてはならない。

サーバーログファイル型の導入に必要な5つのステップ

サーバーログファイル型アクセス解析には、「Analog」や「Webalizer」のような無償のソフトウェアから、高額で高度なツールまでさまざまなツールが存在する。主な有料ツールとしては、

  • SiteTracker(サイトトラッカー)、(キーポート・ソリューションズ)
  • Urchin(アーチン)、(ラネクシー)
  • Web Mining for Clementine(ウェブマイニング・フォー・クレメンタイン)、(SPSS(IBM))
  • WebTrends(ウェブトレンズ)、(サムライズ)
  • LogChaser(ログチェイサー)、(アクセント)

などがある。

サーバーログファイル型のアクセス解析ツール導入に必要な5つのステップは、次のとおりだ。


ステップ1 サーバログの入手
・計測するWebサイト(ドメイン/サイト)の範囲を決める
・ログ形式を確認し、統一する
・ログ収集方法を決定する
・レンタルサーバなら対応ログ形式や保存期間などを確認する
ステップ2 ツールのインストールとログのインポート
・ツールをインストールする
・サーバ構成に対応した設定をする
・ログをツールにインポートする
・定期処理が自動に行われるよう設定する
ステップ3 集計仕様(プロファイル)の設定
(1)集計仕様の設定
・集計対象外とする拡張子を決める
・集計対象外とするアクセス元のIP(サイト関係者の排除)をピックアップする
・集計対象外とするユーザエージェント(ロボットの排除)をピックアップする
・ページタイトルを変換する(URLで表示しないでページタイトルで表示する)
・捨てるパラメータ情報を決める(セッションIDなど集計上意味のない情報を捨てる)
・残すパラメータ情報を決める(商品カテゴリーIDなど意味のある情報を残す)
・ユーザ定義の方法を決める(購入者だけがわかるような識別子を付与するなど)
(2)複数の集計仕様の設定
ステップ4 集計と結果の確認ステップ5本番開始と運用
・データが正しくインポートされているか?
・集計されたデータが望む形で出力されているか?
・レポートの設定変更などは必要ないか?
ステップ5 本番開始と運用
・レポート閲覧IDを発行する
・メールによるレポート配信やアラームの設定をする
・コンテンツ変更に合わせてプロファイルを変更する
・キャンペーンの設定をする
・ツール利用者へのトレーニングを実施する
サーバーログファイル型導入5つのステップ

JavaScriptタグ型の導入に必要な5つのステップ

JavaScriptタグ型のアクセス解析は、個々のWebページがブラウザに読み込まれる際に、各ページに埋め込まれたJavaScriptプログラムでデータ収集用のサーバーに解析用のデータを送信する仕組みである。代表的な無料のアクセス解析ツールとしては、

  • Google Analytics(グーグル・アナリティクス)、(Google)
  • Yahoo!アクセス解析、(ヤフー)

がある。

有料のアクセス解析ソフトには、

  • SiteCatalyst(サイトカタリスト)、(アドビシステムズ)
  • Visionalist(ビジョナリスト)、(デジタルフォレスト)
  • Sibulla(シビラ)、(環)
  • Comfy Analytics(コンフィ・アナリティクス)、(コンフォート・マーケティング)
  • SiteCensus(サイトセンサス)、(ネットレイティングス)
  • PowerROI(パワー・アールオーアイ)、(パワー・インタラクティブ)

など多数のツールがある。

JavaScriptタグ型のアクセス解析ツール導入に必要な5つのステップは、次のとおりだ。


ステップ1 計測目的の確認と集計仕様の決定
計測するWebサイト(ドメイン/サイト)(PC用/携帯用)の範囲を決める
プロファイル(集計単位のグルーピングなど)を決定し、設定する
各プロファイルを設定する
・集計対象外とするアクセス元のIP(サイト関係者の排除)
・捨てるパラメータ情報(セッションIDなど集計上意味のない情報を捨てる)
・残すパラメータ情報(商品カテゴリーIDなど意味のある情報を残す)
・サイト内検索の設定・目標設定やシナリオ設定
ステップ2 コンテンツの確認と計測タグ実装計画の立案
コンテンツの生成方法(動的/静的)や管理方法(CMSなど)を確認するHTML以外の計測(Flash、PDF、外部リンクなど)の有無を確認する
フレームの有無/URL転送/広告のダミーパラメータなどの有無を確認する
タグのカスタマイズが必要であれば設計する
ステップ3 計測コードの実装と確認
HTMLコンテンツへ計測コードを実装し、動作テストを行う
動的コンテンツやFlashコンテンツに計測コードを実装し、動作テストを行う
携帯サイトに計測コードを実装し、動作テストを行う
ステップ4 集計と結果の確認
集計されたデータが望む形で出ているか?
レポートの設定変更などは必要ないか?
ステップ5 本番開始と運用
レポート閲覧IDを発行するメールによるレポート配信やアラームの設定をする
コンテンツ変更に合わせてプロファイルを変更する
キャンペーンの設定をする
ツール利用者へのトレーニングを実施する
JavaScriptタグ型導入5つのステップ

無料ツールでも有料ツールでも、
真面目にやれば導入の手間は変わらない

もう1つのタイプである「パケットキャプチャ型」のツールに関しては、少し特殊であるため今回は(残念ながら)省略したが、いずれの場合をみても、無料ツールであれ有料ツールであれ、導入ステップの基本的な手間は変わらない

無料ツールは有料ツールよりも簡単に使い始められるのではと思っていた方もおられるかもしれないが、以上のステップを見ていただくと、無料ツールも意外と面倒だということがわかるだろう。ある程度の規模のサイトで、本番開始から運用までの5つのステップにまじめに取り組むとすれば、本業と兼務するとして、3か月くらいはかかってもおかしくはない。

しかも上記の例は、最低限の項目をピックアップしただけだ。大規模のECサイトなどでは、商品の数やカテゴリー数、URLの数などが膨大で、それらをどうグルーピングして設定すべきかなどで悩むこともあるだろう。またサイトの情報構造が整理されていない場合などは、サイトの構造から再設計しなければいけなくなる場合もあるかもしれない。

キャンペーンや検索連動型広告などの流入施策を積極的に行っているサイトなら、別の広告効果測定系のツールとの連携やバッティングにも気を配らないといけない場合もあろう。集計仕様もツールによって、指定できる項目や自由度には幅がある。

サーバーログファイル型にしてもJavaScriptタグ型にしても、基本的にサイト計測に対するさまざまな準備が必要だ。システム部門に任せるのでなく、マーケターもここまで関与して、自分の見るデータの精度を高く維持する努力をしてほしい。次回は上記で挙げたいくつかの設定について、具体的に説明したい。

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