検索結果から自社に都合の悪い記事を追い出すには——評判管理キャンペーン
グーグルのウェブスパム部門(検索品質部門に属する)を率いるマット・カッツ氏が最近、「なぜグーグルはあなたの気に入らないページを排除しないのか」というブログ記事を投稿した。少し引用してみよう。
だいたい数週間おきに、誰かからこういう質問を繰り返し受ける。
「
やあマット、私について書いてあるページで実に気に入らないのがあるんだ。グーグルのインデックスから消す方法はないかな?」これはまだ上品なほうで少数派。もっと多いパターンはこんな感じだ。
「
この人物がウェブ上で私にクレイジーな言いがかりをつけてるんだけど、言ってることはとにかくイカレてる。グーグルはこのクレイジーな人物のページを削除できるかな?」
通常の返答メールでは、削除のための選択肢を2つ提示する。
当社から見て、あなたにとって最善の行動は、2つの選択肢のうちいずれかでしょう。
1つは、WebページBを掲載している人に連絡を取り、そのページを修正または削除するよう説得すること。もう1つは、そのページが法に反しているなら、裁判所にWebページBの削除または修正を命令してもらうことです。
当社は、誰がこう言ったああ言ったという論争で一方の側につくことを望みません。そういうわけで、通常はこう答えています。
「そのページを修正/変更/削除するよう働きかけてください。そうすれば、グーグルは次にそのページをクロールしたときに、その変更をインデックス化します」
この記事では言及されていないけど、第3の方法がある。多くの困難な作業と不断の努力が必要だし、往々にして出費もかさむが、このような問題にぶつかった企業や個人が使える手で、有効でもある。SEOの世界で「評判管理」と呼ばれる方法だ。
評判管理キャンペーンの基本となるのは、次の3ステップだ。
好ましくない結果が目立つ場所(通常は上位10位以内、つまり検索結果の1ページ目)に表示される検索クエリ(キーワード)を把握する
好ましくないコンテンツの順位を下げることを狙って、複数のサイトにコンテンツを掲載する(グーグルは通常、検索結果のページに1ドメイン名あたり2ページまでしか表示しないことを覚えておこう)
それらのページをコンテンツとリンクで最適化し、好ましくないページより高い順位を獲得して、対象のページを検索結果の2ページ目以降に「押し下げる」。
これは、SEOの分野でもとりわけ難しい課題であると一般的に思われている。最大で10サイト、場合によってはそれ以上のサイト/ページの検索順位向上に取り組むだけでなく、多くの人がグーグルの検索アルゴリズムにおける重要な要素だと考えているQDD(Query Deserves Diversity:話題の多様性優先の検索)とも勝負しなければならないからだ。QDDは、グーグルがどういうタイプの検索結果をトップ10に表示するかという優先順位について、厳密なアルゴリズム的「強さ」(リンクジュース、アンカーテキスト、最適化など)一辺倒ではなく、多様なページを表示する方向に影響を与えると考えられている(一説には、肯定的感情や否定的感情の分析が行われており、それが評判管理キャンペーンに影響を及ぼすのではないかともいう)。
では、どうすればいいのだろうか? どのようにコンテンツを作成すれば、否定的な結果をうまく排除できるだろうか?
手始めに、「初めからある」有利な状況をできるだけたくさん活用することだ。それには以下のものが含まれる。
キーワード/キーフレーズにぴったり一致するドメイン名
キーワードに一致するドメイン名を所有し最適化すれば、そこから必然的に生じる検索順位を押し上げる力が役に立つ。たとえば、誰かが小説家のF・スコット・フィッツジェラルドに関してよからぬことを書き、僕が評判管理キャンペーンを実施するとしよう。僕はきっと、戦略の一環として「fscottfitzgerald.com」というドメイン名の最適化と順位獲得のために力を尽くすだろう。
ただし、このやり方は有効性に限界がある。(僕らがこれまでに取り組んだり、話題として取り上げたりしたことのあるキャンペーンでは)「fscottfitzgerald.com」と似たような複数のサイト(たとえば「fscottfitzgerald.net」や「fscottfitzgerald.info」など)の順位を上げるのは、かなり難しくなるようだ。
オーソリティのあるドメイン名
FacebookやMySpace、LinkedIn、Twitterといったユーザー生成コンテンツのポータルのように、価値が高くオーソリティのあるドメイン名でコンテンツを利用したり作成したりすることは、強力な戦略になり得る。そのドメイン名がすでに持っているコンテンツのクローリングとインデックス化に関する強さを利用できるだけでなく、グーグルの検索順位に見られる「オーソリティのあるドメイン名」の優遇も当てにできるからだ。
ただし、この目的にWikipediaは使わないこと。なぜなら、(項目として掲載する価値のある著名な名前やブランドの場合は)否定的な記述が見つかって記事に書き加えられたり、(項目としての価値がない場合は)単に削除されたりする可能性が高いからだ。
そのクエリですでに順位の高いページ
評判管理が必要な場合はたいてい、検索上位10~20位の中に肯定的、また中立な内容のページがあるもので、それらは最適化の対象になり得る。そういうページを制御したりページ内部の要素を最適化したりするのは不可能だろうが、最適化したアンカーテキストでそこへリンクを張れば、そのページの順位を上げることができて、自分の目標を達成するのに役立つ。
ここに挙げた3種類のドメイン名/ページから、評判管理キャンペーンを開始する際に実施すべき戦術のリストを作成できるだろう。ただし、そのほかにも僕の好きな方法があるので、紹介しておこう。
- 実際に大手メディアや通信社に取り上げられるプレスリリース
- 記事のタイトルにキーワードを入れたペイパーポストブログ(リンク獲得目的では利用しないこと、ペナルティの対象となる)。
- キーワード/キーフレーズを活用するリンクベイトの作成(これは自分のサイト上でなくてもいいし、テーマが違っていてもいい)
- ブランド名/個人名を「冠した」慈善寄付事業を発起し、報道メディアに取り上げてもらう
- 垂直検索の結果に表示されやすいマルチメディアコンテンツを作成する(動画やニュースの検索結果が特に有効)
評判管理キャンペーンは途方もなく難しいから、膨大な出費を覚悟する必要がある。僕らはこれまでに何度か、この種のサービスに対して10万ドル(1,000万円)を超える契約の見積もりを出したことがある(当然、成約例も多くない)。他の会社でも、通常料金は5万ドル(500万円)以上だ。こうした価格帯でも、出費が仕事の契約料を超えてしまうことがある。ある同業者が結んだ成果報酬型契約では、請求額が8万ドルを超えたが、つぎ込んだ時間と労力と経費を合わせると10万ドル近くになり、赤字になってしまった。
つい最近、予算制限がない評判管理の契約を取ったら何をしたいか、と質問された。僕の答えは、検索順位を上げたいキーワードや名前をタイトルに入れたハリウッド映画に出資する、というものだ。時として、最良の攻撃は単に問題を避けて通ることだったりもする(^^)。
いくつか有用な資料を追加しておこう(残念ながらすべて英語の記事だが)。
- トッド・マリコート氏の「『オンラインで自分を所有する』10の方法」
- アンディ・ビール氏の「グーグルのネガティブな検索結果を修正する10の方法」
- ヨースト・デ・ファルク氏の「自然に見せかけろ」
- クリス・ベネット氏の「評判管理のコツ」
- ヤーン・カネリス氏の「評判管理、簡単な方法(8つの作戦)」
場合によっては、グーグルが勧める2通りの方法のいずれかを採用する(または単純にオンラインでのトラブルを避ける)のもいいけど、そうでないなら、SEOによる評判管理は常に選択肢の中に入れておこう。
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