初代編集長ブログ―安田英久

グーグル帝国から人材が大量流出?

Web担のなかの人

日本ではウェブといえばヤフーですが、英語圏では「グーグル帝国」といわれるほど、グーグルによる一極支配が懸念されています。ダブルクリック買収が米国とEUで認められたことにより、検索マーケティング、コンテンツネットワークに加えて広告配信システムまでグーグルの支配下に入り、その勢いが止まらないように見えます。

グーグルは、社員には「20%ルール」として就業時間の2割を自分の好きなプロジェクトに使っていいこと、豪華な食堂を用意して食事は無料であることなど、社員にとって魅力のある環境を整えていることで有名です。しかし、実は最近、多くの優秀なスタッフがグーグルから抜けてベンチャー企業に流れて行っているといわれているのです。

たとえば、最も勢いのあるSNSとして有名なフェイスブックは、COOやCFOを含めてスタッフの約10%、40人以上がグーグル出身だということ。

グーグルの社員は「Googler(グーグラー)」と呼ばれていますが、こういった元グーグルの人のことを「Xoogler(ズーグラー)」と呼ぶようです。

フェイスブック以外にも、新興検索エンジンのCuillやtopicle、複数のSNSでの自分の友人の動きを統合して教えてくれるFriendfeedのようなベンチャー企業で、多くのXooglerが活躍している模様。

グーグルはエンジニアに相当良い給料を払うということですが、グーグルに就職した人は、何かおもしろい問題を解決したかったのであって、給料に惹かれて行ったわけではないため、有能なスタッフに対する魅力的な新興企業からのオファーには抗えないのだろうといわれています。

では、こういった人材の流出でグーグルが危機に瀕するのでしょうか。私はそうではないと考えています。検索連動型広告に始まったグーグルのビジネスは、コンテンツ連動型広告、ビデオ広告、さらには貼り付け広告などに分野を広げており、最大規模の広告ネットワークを擁しています。補助ツール面でもアクセス解析のGoogle Analyticsだけでなく、広告配信システムのGoogle Ad Managerなども始まっており、その勢いはまだ止むことはないでしょう。

それよりも、Web担としては、Xooglerが活躍するベンチャー企業をウォッチしていくほうがおもしろいのではないかと思っています。そういった部分に、今後の新たなウェブサービスの動きが見えてくるのではないでしょうか。

この記事は、メールマガジン「Web担ウィークリー」やINTERNET Watchの「週刊 Web担当者フォーラム通信」に掲載されたコラムをWeb担サイト上に再掲したものです。

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