Googleの検索結果の一部に表示される「+」マークに、みんなも気づいただろうか? 現われ始めたのは1か月ほど前で、「+」マークの隣には所在地の地図リンクや、株価情報のリンクが出てくる。
専門家たちは、これをポータルの機能だとし、Googleが検索一辺倒の方針を変更して、「ポータル化した非ポータル」(RC Jordan氏)になろうとしている、と結論づけた。Googleはポータルのコンテンツを検索結果に埋め込み、ブランドを拡張しつつ、ユーザーの利用機会を増やして競合からトラフィックを奪おうとしているという。実にありきたりな見方だ。
このユーザーインターフェイス変更について、十分な成果が上がっていないサービス市場でシェアを増やすためのGoogleの戦略だと片づけてしまうのは簡単だ。市場を支配しているプラットフォームを利用して、他の製品やサービスでもシェアを獲得しようとするのは、斬新でもなければ特別画期的な手法でもない。たとえそれが、非常に効果的だったとしてもね。
Googleは、検索とオンライン広告分野で大成功を収めているにもかかわらず、それら以外の資産は大半が成果を上げていない。Center For Media Researchが公開した、2007年1月のファイナンス系ニュースおよび情報サイト統計を見ると、Google Financeはトップ10にも入っていない。地図情報サービスだって、Hitwiseの2006年5月のデータを見ると、Google MapsはMapQuestおよびYahoo!のサービスに大きく離されて、第3位に甘んじている。
PlusBox(「+」マークの呼び名)は、確かにシェア拡大の目的には適うかもしれないが、そのために設けたわけではない。Googleは、アルゴリズム検索結果を自社およびパートナー企業の利益になるよう操作するという誘惑に、8年間も抵抗し続けてきた。この原則を明らかに逸脱した例外が、2006年12月にPicasaのプロモーションで一時的に採用した「Google Tip」アイコンだった。これはブログ界で広く大論争を巻き起こし、Googleにも一部影響を与え、すぐに消えていった。
PlusBoxには、金融情報や地図情報サービスの強化よりも重要な意味がある。つまりそれは、検索の未来像を垣間見せているということだ。検索エンジンはこの10年で、驚くほどの進歩を遂げた。でも関連性に関する進歩の一部は、僕らの検索方法が後押ししたものだ。僕らは、自分が何を探しているか検索エンジンに伝えるわけじゃない。僕らが入力するのは、複数のキーワードからなるクエリだ。そして、検索エンジンが僕らの求める情報を持つサイトを探し出すのに、そのクエリが役立つんだと僕らは理解した。
PlusBoxは、ユーザーのクエリ語を越えて本当に関連性のあるものを提供するために、最初のステップとしてOneBoxとサイト内リンクに加わった。徐々に検索結果を改善する人工知能と統計的に類似したものを構築するため、複雑なアルゴリズムを使い、本当に求めているものを見つけて、検索結果表示の中で提供する。
数週間前に「Children of Men」で検索したときの結果を見れば、違いがよくわかる。Google(とAsk)は、映画の情報を検索しているんだと正しく判断した。GoogleのOneBox検索結果表示には、郵便番号を入力すれば最寄りの映画館の上映時間を調べられるテキストボックスとボタンが出ていた。
Askの同じような機能では、作品レビュー、上映時間、そして公式サイトのリンクが出る(さらに、絞り込み検索候補としてchildrenとmenを出しているのもおもしろかった)。Yahoo!とMSNの検索結果では、Yahoo! Newsの記事に続いて、映画の公式サイトが出た。
ユーザーの意向を推測することで検索結果画面の情報量を増やすのは、ユーザーの振る舞いを統計的に分析すれば達成できる。Googleは、ユーザーインターフェイスの実験を通じて、ユーザーのクリック反応をモニターしていていることを認めた。Search Engine Landが掲載した最近のインタビュー記事で、GoogleのSearch Products & User Experience担当バイスプレジデントのMelissa Mayer氏は、そのプロセスを次のように説明している。Googleは、それら(OneBox表示)のクリックスルー率に非常に高い予測値を設定している。その予測値に達しなかった場合、その特定のクエリに関してOneBox表示は行わなくなる。クエリごとに、OneBox表示1件あたりのクリックスルー率を自動的に監視するシステムが存在する
これで、Googleがユーザーのクリック操作を監視し、検索結果とユーザーインターフェイス上に加える情報の有効性を確かめていることがわかった。Googleがこうして得た理解を活用し、ユーザーの意図を推測して、入力したキーワードと一致するページを提示する代わりに、僕らが本当に求めるものを提供しようとしていると想像するのは、そんなに無理がある話じゃないだろ?
これこそ、検索の未来像だ。なかなかおもしろくなってきたぞ。
ソーシャルもやってます!