講座5 完全一致と部分一致で順位が変わる!?
文:鈴木綾香 監修:紺野俊介(株式会社アイレップ)
知って得する部分一致と完全一致
オーバーチュアのスポンサードサーチ(以下、スポンサードサーチ)では掲載順位は基本的にオークション方式で決まるが、実はそれ以外にも順位に影響する要素がある。広告主が登録したキーワードとユーザーが検索したキーワードがどのように一致しているかを判別する方式の“部分一致”と“完全一致”の違いだ。これを“マッチタイプ”と呼ぶ。
部分一致と完全一致の違いや、それぞれのメリット、デメリットをしっかりと理解して使い分ければ、漠然と標準のマッチタイプで出稿する場合よりも安いクリック単価で上位表示が可能となるのだ。キーワード広告を成功に導くために、部分一致と完全一致の仕組みの理解と、その使い分けについて考えてみよう。
完全一致——ピンポイントで誘導
“完全一致”では、その名のとおり、ユーザーの検索したキーワードと入札キーワードとが完全に一致している場合にだけ広告が表示される。「就職」のように1語の場合だけでなく、「就職 東京」といった複数語の場合でも、順序を含め完全に一致していないと広告が表示されない。
完全一致のメリットは、後述の“部分一致”と比べて、より目的が明確な、モチベーションの高いユーザーを誘導できる可能性が高い点だ。中でも、「紅茶 購入」のような複数語での絞り込んだ検索は購買意欲が高いとされている。必ずしも複数語の検索だからモチベーションが高いということではないが、タイトルや説明文を工夫することで、さらに絞り込める。
完全一致のみでの出稿ではインプレッション数が部分一致と比べて極端に減少するため、「とにかく多くのユーザーに広告を露出したい」「短期間で大きな結果を出したい」場合には向かない。その代わりに、クリック率は高くなる。
部分一致——広くリーチ
“部分一致”では、ユーザーの検索したキーワードの中に入札キーワードが含まれていれば広告が表示される。たとえば、登録しているキーワードが「就職」の場合、ユーザーの検索したキーワードが「就職 東京」でも広告が表示される。「仕事 東京」を登録していれば、ユーザーが「東京 仕事」と検索した場合でも広告が表示される。スポンサードサーチでは、“完全一致”での登録が基本となり、部分一致のオン/オフは管理画面の[検索方式オプション]から設定できる(図1)。
部分一致のメリットは、完全一致に比べてインプレッション数が多くなり、より多くのユーザーへのリーチが可能となる点だ。いっぽうで、クリック率が下がる傾向とインプレッション数の増加による想定外の広告費の増大というデメリットがある。
これは、たとえば人材紹介会社が「東京」というキーワードを部分一致で登録していた場合を考えると理解しやすい。「東京」というキーワードで検索する人には、仕事を探している人だけではなく、観光をしたい人や引っ越し先を探している人など、数え切れないほど多くのモチベーションが存在する。
「東京」と検索した人が必ずしも仕事を探しているとは限らないため、就職関連の広告をクリックする率が下がるのは当然だろう。
インプレッション自体ではコストがかからないことはメリットなのだが、モチベーションの低いユーザーの比率が増え、そういったユーザーに広告をクリックされる可能性が高くなる。また、「東京」などのいわゆるビッグワードでは「東京 仕事」という検索がされた場合での広告表示はもちろんのこと、「東京 観光」という検索でも表示されてしまうので、関係のない検索でも表示されることがあるので注意が必要だ。
ここまで違いが出るマッチタイプによる優先順位
最初に述べたように、スポンサードサーチでは、マッチタイプによって広告の表示順位が変わることに注意してほしい。スポンサードサーチには、マッチタイプによって次の順番で表示が優先される。
- 完全一致
- フレーズ一致
- 部分一致
完全一致のほうが部分一致よりも上位に表示されるということだ。
少しわかりにくいので、具体例で考えてみよう。たとえば、「就職」というキーワードに、表1の4社のみが入札をしているとする。
広告主 | キーワード | マッチタイプ | 入札額 |
---|---|---|---|
A社 | 就職 | 部分一致オン | 200円 |
B社 | 就職 | 部分一致オン | 100円 |
C社 | 就職 | 部分一致オン | 50円 |
D社 | 就職 | 完全一致(部分一致オフ | 80円 |
この状態でユーザーが「就職」と検索すると、表2のような順位で広告が表示される。この場合、ユーザーの検索キーワードと入札キーワードが完全に一致しているため、入札額の高い順での順位決定となる。
順位 | 広告主 | キーワード | マッチタイプ | 入札額 | 実際のCPC |
---|---|---|---|---|---|
1 | A社 | 就職 | 部分一致オン | 200円 | 101円 |
2 | B社 | 就職 | 部分一致オン | 100円 | 81円 |
3 | D社 | 就職 | 部分一致オン | 80円 | 51円 |
4 | C社 | 就職 | 完全一致(部分一致オフ | 50円 | 35円 |
では、今度は「就職 東京」と検索したらどうなるだろうか。表3のようになる。この場合だと、完全一致でのみ登録しているC社は不一致となり、広告が表示されない。部分一致をオンにしているA社、B社、C社は入札価格順で広告が表示される。
順位 | 広告主 | キーワード | マッチタイプ | 入札額 | 実際のCPC |
---|---|---|---|---|---|
1 | A社 | 就職 | 部分一致オン | 200円 | 101円 |
2 | B社 | 就職 | 部分一致オン | 100円 | 81円 |
3 | D社 | 就職 | 部分一致オン | 80円 | 35円 |
× | C社 | 就職 | 完全一致(部分一致オフ | 50円 | — |
では、ここにB社が、「就職 東京」というキーワードを追加で登録したらどうなるのか。表4のようになる。表3の例では、81円で2位だったB社が、3位のD社と同じ最低単価の35円で1位に表示されている。他の会社は部分一致での表示となるところを、B社は検索されたキーワードと完全に一致していたために優先的に上位に表示されているのである。
順位 | 広告主 | キーワード | マッチタイプ | 入札額 | 実際のCPC |
---|---|---|---|---|---|
1 | B社 | 就職 東京 | 部分一致オン | 35円 | 35円 |
2 | A社 | 就職 | 部分一致オン | 200円 | 81円 |
3 | D社 | 就職 | 部分一致オン | 80円 | 35円 |
× | C社 | 就職 | 完全一致(部分一致オフ | 50円 | — |
これがスポンサードサーチのもつマッチタイプの優位性だ。こうした特性を理解し、想定される複数語のキーワードの登録を上手にしていくことが、キーワード広告では求められるのである。
フレーズ一致——もう1つのマッチタイプ
前に述べたマッチタイプの優位性の中に、“フレーズ一致”なるものが含まれていたのに疑問を抱いた人もいるだろう。実は、スポンサードサーチの管理画面では設定はできないものの、マッチタイプを考えるうえでフレーズ一致の概念が入ってくるのである。
フレーズ一致とは、検索されたキーワードと、登録しているキーワードの順番が同じことである。たとえば「就職 東京 渋谷」とユーザーが検索したとき、「就職 渋谷 東京」を部分一致で登録している会社よりも、「就職 東京」を部分一致で登録している会社のほうが上位に表示されるのである(すべての完全一致は、フレーズ一致だとも言える)。
これまで説明してきた部分一致にはもう1つ重要な特徴がある。それが、スポンサードサーチにおける「部分一致機能の拡張」だ。これは、今までのキーワードにおける部分一致のみではなく、タイトル・説明文や、リンク先のページにも部分一致を適応させるものである。キーワード自体の登録がなくても、検索されるキーワードと関連性が高いと判断された場合に広告が表示される。その関連性の判断としてはタイトルや説明文、リンク先のページなどが含まれる。この機能は何度か更新されているので、注意が必要だ。
キーワード広告を出稿するうえでは、その媒体のもつ仕組みの理解はもちろんのこと、媒体から発信されている情報に対して常にアンテナを張り続けていくことが重要だ。こうした努力の積み重ねこそ、効果的なキーワード広告出稿への近道なのである。
部分一致と完全一致の理解があいまいだと
損をする。
しっかり身につけ、上手に活用。
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