チームで目標を達成するSEO戦略の概要と10のステップ ~無料のテンプレートも紹介~(前編)
この記事では、MozのSEOディレクターをしている筆者が必ずやっているSEO戦略とオーガニック検索の計測計画のまとめ方を、前編と後編にわけて解説する。前編となる今回は、
- SEO戦略の概要
- 「SEO戦略を改善する10のステップ」のうち4ステップ
を紹介する。
- サイトをクロールして、オンページSEOおよびテクニカルSEOの問題を明らかにする(この記事)
- 競合他社のSEO戦略を評価する(この記事)
- SEOの目標を設定して、チームを統率する(この記事)
- SEO施策の「工数vs影響度」マトリックスを作る(無料のテンプレートあり)(この記事)
- SEOレポートやダッシュボードを作る(後編記事)
- テクニカルSEOの修正を繰り返す(後編記事)
- 既存のコンテンツを検索エンジン向けに最適化する(後編記事)
- トピックの調査を通して、新しいコンテンツの機会を明らかにする(後編記事)
- ソーシャルメディアでコンテンツを拡散し、被リンクの機会を調査する(後編記事)
- 測定して、最適化し、テストする(後編記事)
僕はMozのSEOディレクターとして仕事を始めることには、少し不安もあった。10年以上にわたって検索マーケティング分野のオピニオンリーダーであり、業界標準にもなっているSEOツールを開発してきたMozという企業に、検索エンジンマーケターとして僕がどのような付加価値をもたらせるかわからなかったからだ。
地域に根差したビジネスから、ニッチなオンライン小売業者やフォーチュン500に名を連ねる大企業まで、規模にかかわらず新しい役割やクライアントを引き受けた場合、僕はまず、次の2つをデータに基づいてまとめることにしている:
- SEO戦略
- オーガニック検索の測定計画
それによって、次の価値を得られる:
- 改善の機会が浮き彫りになる
- 共通の目的に向かって組織を結集させるための目標が具現化される
Mozはデータ駆動型のSEOチームとしてスーパースター的存在だが、それでも戦略は僕が新たな仕事にかかるときの出発点となっている。今回はそのプロセスについて紹介しよう。
SEO戦略とは
まず、「SEO戦略」の考え方について述べよう。
多くの人が立てるSEO施策(アクション)では、通常は次のようなものを組み合わせる:
- オンページ最適化
- テクニカルSEOの修正
- コンテンツ戦略
- リンク構築
- SEOレポーティング
しかし、SEO戦略は、そうした具体的な施策よりも上位のものとして策定する。その目的は、GoogleやBingといった検索エンジンでウェブサイトのビジビリティを高めることだ。
強力なSEO戦略とは、次のようなことを定めるものだ:
すでに検索エンジンの結果ページ(SERP)に表示されるようになっている既存のキーワードに対して、ウェブサイトの表示順位を上昇させる。
組織内でSEOの認知度と影響力を高める。予算やリソースの課題を考慮し、チームから最大限の価値を引き出してSEOを改善する。
次のようなSEOのアクションを組み合わせることを規定する:
コンテンツマーケティングを通じて、検索結果に表示されるオーガニックキーワードの範囲を広げる。
ウェブサイトの技術的な問題を修正する。主に、次のような要素にマイナスの影響を与える可能性のあるものに取り組む:
- ページの読み込み時間(PageSpeedなど)
- 検索エンジンのクローラビリティ
- ユーザー体験など
ソーシャルメディアでの効果的な拡散やデジタルPR戦略を通じて、質の高いドメイン名から自分のサイトへのリンク数を増やす。
将来の行動の指針とする優先順位や信念、特に「行わないこと」を暗示または明示する。
初めて検索エンジン最適化に手を出すウェブサイトのオーナーでも、新しいプロジェクトやクライアントを担当する経験豊富なSEO担当者でも、明確なSEO戦略を立てて実践することは、サイトのオーガニックトラフィックとコンバージョンを改善するために不可欠だ。
SEO戦略を改善する10のステップ
どのような戦略でもそうだが、SEO戦略を立てる場合も、次のように進めるのがいい:
- 現状を把握する
- 達成可能な目標を設定する
- これを繰り返すようにプランする
ここからは、そうした機会や知見を見出すためにまずやるべき10ステップの計画を紹介する(この前編では10ステップのうちまず4つを解説)。
SEO戦略ステップ1 サイトをクロールして、オンページSEOおよびテクニカルSEOの問題を明らかにする
SEO戦略に着手するにあたって最善の出発点は、ウェブサイトのページを調査(独自にクロールして)、SEOのビジビリティを最大限に高めるために改善の必要がある問題がないかどうかを確認することだ。
検索エンジンによるウェブサイトのクロールを疑似的に実行できる技術的監査ツールには、多くの選択肢があり、ほとんどのSEO担当者に愛用しているツールがあるだろう。
もちろん、MozでもOn-Demand Crawlというツールを提供している(Moz Proツール群に含まれるSite Crawlツールの一部)。このツールを利用すると、サイト上で検出されたテクニカルSEOの問題や影響を受けたURLをすべて表示できる。On-Demand Crawlから得られるデータは、MozのUIで表示することも、CSVファイルにエクスポートすることもできる。
ここでは、SEO戦略の開始時に役立つ重要な情報に焦点を当てている。
サイトの監査を開始すると、完了までに時間がかかることがあるため、最初に始めておいた方がいい。クロールを実行している間に、次のステップである競合調査を開始できる。
SEO戦略ステップ2 競合他社のSEO戦略を評価する
競合他社のSEO戦略を評価することは、極めて重要なことだが、少なくともプロセスの初期段階では見過ごされがちだ。
競合他社のSEO戦略を分析することは、君のウェブサイトの現実的な目標を設定するのに役立つ。しっかり分析できれば、競合他社にとって最も価値のあるキーワードをイメージできるようになるだろう。そうした競合他社のキーワードは、君のサイトの主要なページを最適化することで上位に表示させたい検索キーワードを構成するものだ。
このステップは、「市場分析」の作業だと考えることもできる。
競合分析には調査ツールも活用したい。包括的なSEO競合調査の基盤になる「ギャップ分析」機能を備えたSEOツールを推奨する。
Moz Proの「Keyword Gap」機能を使うと、競合他社の主要なキーワードのうち、君のサイトの表示順位が上がる余地のあるキーワードをハイライトして表示してくれる。上位に表示されている競合他社のサイトを追い抜ければトラフィックを獲得できる可能性が最も高いキーワードから順に表示されるよう、結果が自動的にソートされる。
競合他社のほうが上位に表示されているキーワードがいくつか特定できたら、その理由を調査しよう。Googleから見て(さらに言えば、検索ユーザーから見て)、どちらのサイトを見たいと思うだろうか?
競合他社が上位に表示されているキーワードのうち、君にとって改善の余地があるキーワードを調査するだけでなく、競合他社が定期的に作成しているコンテンツの種類も調査しよう。調査するのは以下のような点だ:
- ブログをやっているか
- どのくらいの量のコンテンツを発信しているのか
- 配信頻度はどれぐらいか(毎日、毎週、毎月など)
- 専門性をどのような方法で示しているか
組織内で必要なチームを揃え、SEOの目標に向けて結集させるにあたっては、検索における自社の競争環境を把握する必要がある。
競合他社はSEOにどの程度注力しているだろうか? もし競合他社が検索に合わせてサイトを最適化していないようなら、差をつけるチャンスだ。
逆に彼らがコンテンツ制作に積極的に取り組んでいて、中核のテクニカルSEOが強固なら相手のサイトを監査して、何がうまくいっているかを判断して、相手の強みをSEOロードマップの指針にできる。
SEO戦略ステップ3 SEOの目標を設定して、チームを統率する
オーガニック検索の最適化によるビジネス目標の達成を専門とするプロのSEO専門家がいても、SEOはチームワークだ。優れたSEO戦略であれば、ウェブ開発者、コンテンツチーム、幹部からの支持を得られる。
また、SEO担当者はチームの垣根を超えて活動することも多い。たとえば、データ調査に基づいてブログ記事を作成する場合でも、SEO担当者だけでできるわけではなく、次のチームとの協力が必要な場合がある:
- コンテンツを作る編集チーム
- ページを作るウェブ開発チーム
あるいは、SEO監査を実施して技術的な問題が見付かった場合も、その解決には開発者の協力が必要だ。
先のセクションで触れたように、SEOが君の会社における新しい取り組みではないとしても、他のチームから同意を取り付けようとする前に、競合他社のSEO戦略を徹底的に調査することを推奨する。オーガニック検索向けにサイトを最適化する必要性を、競合他社と比較した自社サイトの欠点という視点からアプローチできれば、幹部や部門横断的なチームに対する説得力を高められる。
SEO戦略ステップ4 SEO施策の「工数vs影響度」マトリックスを作る(無料のテンプレートあり)
SEO戦略で調査のステップが完了したら、達成したいすべてのタスクを箇条書きにしたリストを作る段階だ。
このリストで挙げていくSEO施策には、たとえば次のようなものがある:
- 最初に実施した監査の結果を受けたオンページSEOの修正
- 最初に実施した監査の結果を受けたテクニカルSEOの修正
- ブログ記事の執筆
- 検索に合わせて最適化すべき既存のサイトページ
- などなど
こうしたステップの概要を示すために僕が推奨するのは、各項目を整理した「工数vs影響度」マトリックス(「施策を実行する労力」と「実行した場合の効果」の2軸で優先順位を決める枠組み)を作ることだ。
各項目を完了させるのに必要な工数は、会社によって大きく異なるだろうが、君のビジネスについて最もよくわかっているのは君自身だ。たとえば、「新しいコンテンツを書いて公開するための社内リソースを見つけること」のほうが、「リダイレクトのループを修正すること」より手間がかかる場合もあれば、その逆の場合もある。
君のビジネスが何を原動力にしているかに関係なく、この「工数vs影響度」マトリックスはSEO戦略を戦術的な作業項目に整理するのに役立つ。このマトリックスの無料テンプレートを用意したので、次のリンクから利用してほしい:
たいていの場合、Moz Proのようなツールを使ってサイトをクロールしてみると、それまで認識していなかったSEOの問題が大量に浮き彫りになるため、圧倒されることもある。しかし、Moz Proは、特定の項目を「重要」なものとしてフラグを立てることで、これらの問題に対処するためのガイダンスを提供できる。
SEOのアクションアイテムに優先順位を付けるのに、どこから始めたらいいかわからないという人もいるだろう。そういう場合は、最初にサイトのtitle要素に目を向けることをおすすめする。
title要素は、Googleがページの表示順位を決める際、対象のキーワードとどの程度関連しているかという点で考慮する主要な要素の1つだ。また、ユーザーがSERPのどこをクリックするかを決めるために読む要素でもあるため、クリック率に大きな影響を与える可能性がある。Moz Proを使うと、title要素が抜けているページや、Googleが推奨する60文字より短いページを見つけられる。
title要素を最適化したことがない場合は、サイトの重要なページをすべて手作業で見直し、ターゲットにしたいキーワードに対してtitle要素が最適化されていることをページごとに確認しよう。キーワード調査を実施してコアページのtitle要素を決めたら、あとはCMSを使って比較的簡単に更新できるはずだ。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。今回は、SEO戦略を立てるための10ステップのうち、4つ目のステップまで紹介した。後編となる次回は、残る6つのステップを説明する。
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