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リターゲティングに頼らない広告戦略! Facebook・Instagram/Twitter/LINE/SmartNews広告の攻略ポイント【電通デジタルコラム】

リターゲティング依存から脱却する広告運用ノウハウを解説します。

2018年のGDPR(EU一般データ保護規則)施行を皮切りに、ユーザーの個人情報保護の規制は強まり、これまでのCookieに頼った広告メニューは限界を迎えています。Facebook・Instagram/Twitter/LINE/SmartNews広告において、リターゲティングに依存した広告運用から脱却し、非リターゲティングメニューで広告運用のパフォーマンスを高めるためのポイントを、電通デジタル 平沢桃奈、岩瀬恵、中務翔斗、菅野杏菜が解説します。

リターゲティングメニューの限界

電通デジタル 平沢 桃奈(以下、平沢) : 広告市場全体では、2021年にインターネット広告がマス4媒体を抜いて、日本の広告費の中で最大規模へ拡大しました。中でも、ソーシャル広告への出稿構成比は増えてきており、2021年はインターネット広告媒体費の35.4%を占めるまでに成長しました[1]

ソーシャル広告の拡大を示すグラフ

一方、2021年4月には、Appleがアプリでの広告識別子の利用について、ユーザーの許可を必要とする「App Tracking Transparency」(ATT)と呼ばれる仕組みを導入しました。これは、アプリ上でユーザーに対して、リターゲティングやコンバージョン計測のトラッキングの許可を求めるポップアップの表示を義務づけるものです。

これにより、運用型広告では、

・そのユーザーを狙って再度広告を配信することができない

・広告に接触したユーザーがコンバージョンしたかどうか追跡できない

・広告に接触したユーザーの過去の行動などが分からなくなり、自動最適化入札戦略に生かせない

という3つの課題が顕在化しました。

アプリの配信面でポップアップ通知が表示されると、トラッキングを希望しないユーザーが増え、リターゲティング配信の対象オーディエンスは減少します。そしてオークションの競合が強まり、例えば手動入札で配信をしている場合は入札価格を上げざるを得ないことから、CPC(クリック単価)が上昇する傾向があります。

ここからはFacebook/Instagram広告、Twitter広告、LINE広告、SmartNews広告において、リターゲティングに頼らずに獲得拡大に向けて取り組むべきことを紹介します。

リタゲに頼らない獲得拡大に向けて取り組むべきこと

Facebook/Instagram広告はアカウント設計を見直し、デモグラターゲティングを実施する

Facebook/Instagram広告の運用における基本的な考え方は、以下の3つです。

・人間が行うのは、主にアカウント構造の構築、およびクリエイティブの開発

・入札最適化は基本的に機械学習に任せる

・できるだけ広いオーディエンスの中で、機械学習を促進させる

たとえば、「興味関心」「属性」で広告セットを分けて配信したり、「興味関心」「属性」を掛け合わせて配信設計を行うと、1広告セットあたりのオーディエンス数が少なくなってしまい、最適化が働きにくくなります。

そこで、デモグラフィックターゲティング(デモグラターゲティング)は、「年齢」「性別」「地域」「詳細ターゲット」の4つの設定項目のうち、詳細ターゲットは掛け合わせず、できるだけ広いターゲティングを推奨しています。

ある事例では、詳細ターゲティングとデモグラターゲティングを比較したところ、前者は約200~230万ユーザー、後者は約530~620万ユーザーのオーディエンスサイズになりました。そして、後者は前者に対し、CPA(獲得単価)も低減でき、かつコンバージョン件数も2倍以上と、効率よく獲得できることが分かりました。

Facebookデモグラターゲティングの事例Aのグラフ

2つめの事例では、「リターゲティングの広告セット」と「年齢と性別だけを掛け合わせたデモグラターゲティングの広告セット」で比較しました。結果、後者の方が圧倒的に安く、かつ大量のコンバージョンを獲得する結果となりました。Facebook/Instagramキャンペーンを実施する場合は、デモグラターゲティングから始めていただくのも一つの方法です。

Facebookデモグラターゲティングの事例Aのグラフ

こうしたターゲティングのポイントに加え、媒体側で計測環境を整え、最適化が機能するよう設計することも重要です。具体的には、CAPI(コンバージョンAPI)[2]を活用することです。

CAPIとは、Cookieに依存せずに広告のコンバージョンを計測する仕組みです。Facebook/Instagramを運営するMetaはこれを2021年に導入し、昨今のトラッキング規制に対応しています。

このアップデートを実装したところ、従来の計測方法のみで計測した場合と比べ、どのアカウントにおいても計測されたコンバージョンが多いことが分かりました。CAPIが未導入の場合は、この機にぜひ導入を検討してみてください。


Twitter広告は潜在層向けにキーワード・ハンドルターゲティングを拡大する

電通デジタル 岩瀬 恵(以下、岩瀬) : Twitter広告は手動でチューニングをしていくことが望ましい媒体です。

Twitter広告で獲得拡大に向けて最初に取り組むべきことは、広告ツイートへの反応をヒントに、潜在層向けキーワード・ハンドルターゲティング拡大を行うというものです。

なぜキーワード・ハンドルターゲティングを推奨しているかというと、最適なユーザーにリーチさせるシグナルとしてユーザーの意思がツイートに表れているからです。そのシグナルに対して直接アプローチができるのが、キーワード・ハンドルターゲティングです。

キーワード・ハンドルターゲティング、デモグラフィック、CV(コンバージョン)類似の配信を比較したところ、キーワード・ハンドルターゲティングはほかの2つのターゲティングと比較して獲得数が多く、CPAを低減できていることが分かりました。

Twitterのターゲット別配信結果を比較するグラフ

では、どのようにターゲティングを行えばより効果が得られるかを、顕在層・検討層・潜在層に分けて説明します。

一般的には、コンバージョンが高く見込める顕在層・検討層向けのキーワードやハンドルを多めに設定したいところですが、実は潜在層向けのターゲティングがカギになります。

Twitterは長期的にはコンバージョン率はほぼ一定の傾向があります。そこで獲得効率を高めるためには、低い入札価格で入札オークションに勝つことでCPCを抑え、低単価で配信することが重要です。

低い入札でオークションに勝つためには、オーディエンスボリュームを広く保つ必要があります。だから潜在層向けのターゲットを検討していただきたいのです。

電通デジタルで、オーディエンスボリュームに1000万以上の差がある検討層・潜在層の実績値を比較したところ、ターゲットの多い潜在層の方が低いCPCで配信でき、CPAは33%ほど低く、獲得数も1.7倍ほど多い結果となりました。

Twitterの検討層と潜在層を比較するグラフ

続いて、オーディエンスの選定方法について説明します。潜在層の軸を選定する方法には2つあります。

1つ目は、広告やオーガニック投稿についた「いいね」を参照する方法です。

たとえば、オーガニック投稿や広告ツイートについた「いいね」や「RT」「リプライ」をタップすると、それらを行った人の一覧が表示されます。

そして、ユーザーのプロフィールやツイートから「アイドルが好き」「○○ゲームをしています」という記載があれば、アイドル軸やゲーム軸へのキーワード・ハンドルターゲティングを行っていきます。

こうしたプロフィールからの属性分析を使用した場合と、既存のターゲットを比較した場合、アプリ内申し込みが1.5倍から3倍ほど高い結果が得られました。

Twitterのターゲット軸を比較する図

2つ目は、Twitterの公式クライアントアプリ「TweetDeck」を活用する方法です。

TweetDeckの検索に特定のキーワードを入力すると、リアルタイムでその言葉をつぶやいたツイートが更新されていきます。こちらに検討層向けのキーワードや競合商材のキーワードを入れて、表示されたユーザーのプロフィールなどから属性分析を行い、先ほどと同じようにキーワード・ハンドルターゲティングの軸を選定していきます。

この方法の長所は、参考にできるツイートがなくても、どの商品でも、誰でも行える選定方法である点です。ぜひ、潜在層の選定にお役立ていただければと思います。

TweetDeckの画面

Twitterでは2022年1月、最適化を向上するアップデートが追加されました。Twitter広告のクリック後のサイト訪問を、Cookieに頼らずに正しく計測する「クリックID」経由のシグナルを最適化に活用した「サイト訪問」という選択肢が、Webサイトトラフィックの目標部分に追加されました[3]

電通デジタルでは、この「サイト訪問」を使用した広告で、43%ほど低単価で獲得に成功した事例もあります。ぜひ、「サイト訪問」をキーワード・ハンドルターゲティングと併用することを推奨します。

コンバージョンとサイト訪問のCPAの比較結果を表すグラフ

LINE広告は類似配信を活用し、ボリュームを拡大する

電通デジタル 中務 翔斗(以下 中務):LINE広告で効率よく獲得件数を増加させるためには、任意のユーザーに近いオーディエンスに配信できる「類似配信」が有効です。機械学習をベースにしつつ、人手による調整を行います。

類似配信を実施する際に、考慮すべき点が2つあります。1つ目はオーディエンスサイズ、2つ目は類似度です。

1つ目のオーディエンスサイズは、シードに着目します。理想はCVRが高いと考えられるThanksページに訪問したユーザーをシードとしたオーディエンスを使用することですが、このサイズが少ないと類似ユーザーを抽出するためのデータが少なく、精度が落ちてしまいます。オーディエンスサイズは最低でも3,000以上を目安にして下さい。

2つ目の類似オーディエンスサイズは、1%からスタートします。目標CPAを守ることができ、日予算を消化できているようであれば、次に3%、その次に自動へと広げていきます。さらに徐々に日予算を上げて配信ボリュームを大きくし、獲得件数の向上を図ります。

自動を選択するのは3%の次です。理由は、そこまで成果を保つことができ、オーディエンスサイズを拡大できているのであれば、おそらく機械学習が機能しているはずだからです。

このようにLINE広告では、類似配信を1%から実施し、徐々にボリュームを拡大させ、リターゲティングの依存から脱却していくことを推奨しています。

類似配信の拡大ステップを示す図

LINE広告でも、Facebook広告で説明したCAPI(コンバージョンAPI)の利用が可能になりました。CVオーディエンスはこれまでお伝えしてきた類似配信のシードとして、できる限り使用したいオーディエンスです。類似ユーザー抽出の精度が高まることが見込めます。

今後はCAPIで計測できたコンバージョンを学習データとして用いることが可能になる見通しです。最適化の精度向上が期待できますので、ぜひ早い段階でのCAPIの導入の準備を進めていただくことをお勧めします。


SmartNews広告はオーディエンスサイズを意識し、キーワードターゲティングで拡大を図る

電通デジタル 菅野 杏菜 (以下、菅野) : SmartNews広告運用のポイントも、機械学習をベースに手動による調整を行うことです。SmartNewsのターゲティングは、配信データをもとにAIが学習することで、コンバージョンしたユーザーに近い特徴を持つユーザーに発信していく仕様です。

たとえば、コンバージョンしたユーザーが「30代の男性」「株や不動産投資記事の閲覧時間が長い」といった特徴を持つ場合、ターゲットユーザーの中でも、「30代の男性」「投資や資産運用に関する記事を見ているユーザー」に、配信が当たるようになっていきます。つまり、このような機械学習を促進しやすい設計配信を行うことが重要です。

SmartNewsのキーワードターゲティングは、特定のキーワードを含む記事を閲覧したユーザーをターゲティングする仕様です。コンテキストターゲティングではなく、オーディエンスターゲティングとなっており、獲得効率のよいターゲットに広告が当たるよう、機械学習が進んでいきます。

たとえば「転職」というキーワードを設定した場合、転職に関する記事の閲覧履歴のあるユーザーがターゲットとなります。

特徴としては、配信量はキーワードのデータ数によって大きく左右される点があります。そのキーワードを含む記事やユーザー数が少ないと、オーディエンスとして使用できない場合があることに注意が必要です。

もう1つの特徴として、拡張機能があります。作成したキーワードオーディエンスに対し、5~30%の範囲で類似拡張が可能です。たとえば「転職」というキーワードオーディエンスを拡張した場合、「中途採用」や「面接」といったキーワードを含む記事を見たユーザーまで、拡大することができます。

電通デジタルが推奨する拡大ステップとしては、まずキーワードを選定し、キーワードターゲティングによる配信を開始します。「目標CPAを遵守できている」「日予算を満額消化できている」「コンバージョンを50件以上獲得できている」と、学習がしっかり進んでいると判断された場合は、キーワードの類似拡張を始めます。

オーディエンスの拡張度は5%からスタート。CPAを遵守できている場合は10%に広げ、獲得数を伸ばしていきます。

一定の配信を超えると、SmartNewsから、コンバージョンユーザーの分析レポートがもらえます。すでに設定しているキーワードとは別軸のキーワードが含まれていないかを確認し、キーワードの拡大を検討することで、さらに配信量と獲得数の増加を目指していきます。

キーワードターゲティングの拡大ステップを表す図

電通デジタルでリターゲティングとキーワードターゲティングを比較配信した事例では、キーワードターゲティングはリターゲティングと比較して約10倍の配信量、コンバージョン数は約6倍という例もありました。キーワードターゲティングには、リターゲティングとは比較にならないほどの拡大ポテンシャルがあることがお分かりいただけると思います。

リターゲティングとキーワードターゲティングを比較する図

リターゲティングに頼らない獲得拡大に向けて取り組むべきこと

平沢 : 最後に、非リターゲティング拡大を行うにあたり、注意していただきたいのが、「正しい評価粒度で見ていただくこと」です。というのも、リターゲティングと非リターゲティングで単純に比較すると、リーチ拡大施策やコンバージョン件数に関しては伸び悩んでしまうことが考えられるからです。

ですから、キャンペーン施策全体で、ターゲティング追加前後のコンバージョン件数を比較して、拡大しているかどうかしっかり確認することが大事です。施策に対して正しい評価を行うことが、獲得数増加の近道になります。

現在運用されている広告アカウントで、課題を感じていらっしゃる広告ご担当者の方は、お気軽にご相談ください。


●脚注(出典)

1. ^ "「2021年インターネット広告媒体費」解説。ビデオ(動画)広告、ソーシャル広告、現在のトレンドは?". ウェブ電通報. 2022年4月21日(2022年6月24日閲覧)。

2. ^ "コンバージョンAPIについて". Metaビジネスヘルプセンター. 2022年6月24日閲覧。

3. ^ "パフォーマンス広告効果の改善と測定機能の強化". Twitterブログ(2022年1月27日)2022年6月24日閲覧。

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CPA / CPC / CVR / Facebook / Instagram / LTV / SNS / オーディエンスターゲティング / キャンペーン / クリエイティブ / コンバージョン / コンバージョン率 / ソーシャルメディア / ボット / リターゲティング / 訪問
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