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新規サービス立ち上げの成功確率を高めるノーコード活用メソッド【電通デジタルコラム】

ノーコード開発ツールを活用した新規ビジネス、サービス開発のポイントを紹介。

昨今の新型コロナウイルス感染症による急激な社会変化によって、ビジネスのデジタル化はいっそう加速しており、多くの企業が新たなプロダクトやサービスの開発によって、従来の顧客接点やビジネス自体を刷新しようとしています。

しかし、このような新しいチャレンジは、既存事業とは異なり不確実性が非常に高いためコストがかけづらいことが多いものです。にもかかわらず、構想に時間をかけるよりもプロダクトをいち早く世の中にリリースし、生活者のニーズを探索しながらサービス体験を向上していくことが、事業成功の勝敗を分ける時代になっています。

こうした中、プログラミングを行うことなくデジタルサービスを作ることのできる「ノーコード開発」が注目されています。ノーコード開発は、専用のノーコードツールを使い、直観的に実装を進めることができ、開発時だけでなく改善スピードも向上することから、サービス成長への寄与が期待できます。

本稿では、電通デジタル 佐々木壮一朗、佐々木星児、ノーコードラボ 岡崎達也氏、Walkers 池田龍一氏が、ノーコード開発ツールを活用した新規ビジネス、サービス開発のポイントを紹介します。

なぜ電通デジタルはノーコードを活用するのか

電通デジタル 佐々木壮一朗(以下、佐々木(壮)) : 電通デジタルでは、新規事業・サービスの立ち上げにノーコード開発ツールの活用を推進しています。その背景には、新規事業・サービス立ち上げに共通する3つの課題があります。

1つ目は、「構想期間が長くなってしまう」という課題です。構想している製品やサービスは本当に生活者のニーズに合致しているのか、社内議論に時間を要するケースがよくあります。しかし、生活者に受け入れられるかどうかは、実際の製品やサービスをリリースしてみないとわからない側面があります。

2つ目は、「不確実性の高い新規事業は社内合意に至りにくく、着手できないケースがある」という課題です。デスクリサーチや、顧客インタビュー、プロトタイピングツールによる検証だけでは、新規事業が成功するか否かの判断ができる材料が集めきれないことが多くあります。結果として、なかなか社内合意が取れず、事業内容の修正を繰り返し、本来可能性を感じていた新規事業の立ち上げに至らないというケースです。

3つ目は、「機能満載の事業をローンチしてしまう」課題です。機能が多すぎると、開発コストが増えるだけでなく、失敗したときの原因が特定しにくくなります。成功した場合も要因が可視化しにくく、サービスのグロースが難しくなります。

新規事業を成功させるには、早い段階で顧客ニーズに適合しているかを見極める必要があります。構想や検討に多くの時間をかけるのではなく、「MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)」をスピーディに作成し、市場で検証してみることが有効です。

MVPをスピーディに作成し、市場で検証する。そのためのツールとして、電通デジタルではノーコードの活用を進めているのです。

ノーコードのメリットと使いどころ

ノーコード開発ツールとは、プログラミング不要、直感的な操作でアプリケーション開発ができるツールのことです。

ノーコード開発ツール活用のメリットは、第一にスピードです。プログラミングが必要なサービス開発と比べ、各工程を短縮することができます。特に、実装・テストの工程は従来のコーディングに比べて大幅な時間の短縮が可能です。

第二にコストです。各工程にかける時間が短縮できるため、結果として低コストでの開発が可能になります。

スピーディかつ低コストで、ユーザーのフィードバックをすぐに反映できるノーコードは、不確実性が高い新規事業/サービスの開発方法として優れています。

一方、デメリットですが、ノーコード開発ツールは、ゲームなどの開発、初期から10万人以上のユーザーを抱えるようなサービス開発、金融のような高度なセキュリティが求められるサービス開発などには適していません。目的、開発期間、予算、メリットとデメリットをよく検討して使うのが良いでしょう。

プログラミングが不要とはいえ、ノーコード開発ツールを使うにも一定のスキルが必要です。事業会社の新規事業担当者がノーコード開発のスキルを一から獲得していくのは、あまり現実的ではありません。

そこで電通デジタルは、ノーコードのスペシャリスト集団「ノーコードラボ」と、国内で多数の実績を持つWalkersと共同で、ノーコード開発支援の専門チーム「NoCode Orchestra」を発足しました[1]

「NoCode Orchestra」では、ソースコードの記述をせずにWebサービスやアプリなどのソフトウェアを開発できるノーコード開発ツールを活用し、新規サービス開発における設計から市場投入、その後の改善までをスピーディに推進します。

ここからは、「NoCode Orchestra」のメンバーであるノーコードラボ 岡崎達也氏、Walkers 池田龍一氏に、ノーコード開発に関してよく聞かれる質問に答えていただきます。

MVPの開発期間は2週間から1カ月程度

佐々木(壮) : 一般的なノーコード開発にはどれぐらいの期間が必要ですか?

ノーコードラボ 岡崎達也氏(以下、岡崎): MVPの開発であれば、2週間から1カ月程度が弊社では多いです。です。すでに要件が決まり、画面デザインなどもでき上がっていて、それを弊社で受けて開発するのに、最低で2週間〜とさせていただいています。

クライアント側でMVPとして作成したいコア機能が明確になっている場合と、明確になってない場合で、開発期間は変わります。コア機能が決まっていなければ、その検証も必要になるので、もう少し時間がかかります。

MVP開発後に実証実験を伴う場合は、検証を受けた改善という形で開発が続いていきます。プロジェクト期間は、最長で1年ぐらいというのが当社の実績です。

Walkers 池田龍一氏(以下、池田) : 私たちも、要件とデザインがどの程度固まっているかにより、開発期間が変わります。要件とデザインが揃っていれば、1人の開発体制で1カ月の開発は可能というケースもあります。

一方、要件定義からデザイン制作まで丁寧に行う場合は、3カ月から半年ぐらい開発期間を要するケースもあります。ノーコード開発の優位性は、実装の部分のスピードなので、それ以外の部分に関しては、従来の開発とそれほど変わらないかもしれません。

ノーコード開発は1人体制が多い

佐々木(壮): ノーコード開発ではどのような体制をとりますか?

池田 : 「サービスの構想」「要件定義」「詳細設計」「実開発」という工程がある中で、ノーコードツールの特性上、実開発にフォーカスするなら1人で開発するという体制が多いです。リソース的に分業する必要があるという場合は、別にプロジェクトマネージャー(PM)を置いて管理する形をとります。PMは実装以外のクライアントとの調整や、プロダクトのサービスのクオリティコントロールといったタスクを担います。

実開発は、ネイティブアプリを開発できるスキルを持った人が担当するケースもありますし、ノーコード専門のエンジニアが要件定義から行うというケースもあります。割合としては半々ぐらいで、プロジェクトの特性に合わせてアサインしていくイメージです。

ノーコード開発のコストについて

佐々木(壮) : スクラッチ開発に比べて工数やコストはどの程度低減できますか?

岡崎 : 「ノーコードの開発スピードは通常の10倍」と言われることがあります。私の肌感覚としてはそれほど速いとは思いませんが、初期の開発であれば、3、4倍のスピードで開発が可能だと思います。その場合、コストも3分の1、4分の1となります。

海外の会社に「8020」(eighty twenty)というノーコード開発会社があります。この会社は「8割の機能を2割の価格で作る」というコンセプトを掲げています[2]。作りたい機能の8割でよければ、ノーコード開発なら2割ぐらいの価格で実現できるのではないかというのは、個人的にも納得できる数字です。

MVPではコアとなる価値の機能を実装する

佐々木(壮) :  一般的にMVPではどこまで機能を作り込みますか?

岡崎 : MVPでは、サービスのコアとなる価値を実装します。たとえば、シェアサイクル(自転車を共有できるサービス)のMVPであれば、「乗り物を予約する」という基本的な機能をまずは開発します。あまり難しく作り込みません。借りた自転車を必ず同じ場所に返却するシンプルな機能です。

もう1つ、ノーコードラボで開発を担当したオンラインの学習塾の事例で説明します。学習塾ですので、先生と生徒さんの間で学習内容について、質疑応答や指導など、いろいろなやりとりが発生します。そこで先生がiPadで問題集やノートの写真を撮影し、Googleドライブにアップして、生徒さんに見てもらえるようにする機能を開発しました。

具体的な開発工程ですが、一番最初はiPadで撮影した画像ファイルを Bubble 経由で Googleドライブにアップするということを行いました。この開発期間は2週間程度でした。

その後、LINEでアプリにログインする機能や目標を管理するような機能など、毎月少しずつ機能を追加・変更しています。

池田 : Walkersでは医療用のSNS、情報共有ツールの事例があります。MVPには、コミュニケーションができるメッセージング機能、さまざまな医療用のガイドラインを閲覧できる機能を実装し、開発期間は3カ月程度でした。

ノーコードツールは実績のあるツールを採用すべし

佐々木(壮) : ノーコードツールの採用基準について教えてください。

岡崎 : ノーコードツールは目的に応じてさまざまな種類があり、今も数がどんどん増えています。採用基準については、一概には言えませんが、ある程度実績のあるベンダー製のツール、コミュニティがしっかりしているツールを採用すると良いでしょう。

私たちがよく利用しているのは「Bubble(バブル)」というツールです。Webサービス制作系ツールに分類されており、自由にフロント部分のデザインもできるし、バックエンド機能の実装も行えます。多様なAPIも用意されており、簡単に決済機能も導入できます。それほど難度が高くないプロダクトであれば、MVP作成には適したツールと言えます。

佐々木(壮): 最後に「NoCode Orchestra」の紹介です。NoCode Orchestraは、ノーコード開発ツールを活用することで、サービス設計、開発、市場検証、改善までをワンストップかつスピーディに提供します。トライ&エラーをすばやく繰り返すことができ、サービス体験を短いサイクルで磨き上げていくことが可能になります。

3社はそれぞれが持つ知見を統合し、ワンチームとしてクライアントに伴走することで、企業のDX推進と新規事業創造の実現に貢献します。ノーコード開発、スピーディなサービス開発に興味をお持ちの企業ご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください


●脚注(出典)

1. ^ "電通デジタル、ノーコードラボ、Walkers社と、ノーコードで新規サービス開発を支援する専門チーム「NoCode Orchestra」を発足". 電通デジタル.(2022年6月16日)2022年8月10日閲覧。

2. ^ "An interview with 8020 CEO, Matt Varughese". Makerpad. 2022年8月10日閲覧。

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