Web担お悩み相談室

サイト制作で「適切にSEOして」と丸投げされた! 具体的な要件定義がないSEOにどう対応すべき?

「SEOを依頼されたけど、具体的な考え方や施策がなく丸投げされた。どう対処すれば?」サイト規模別に対処法を紹介!【Web担お悩み相談室】
ウェブパン

読者から寄せられた仕事の悩みをウェブパンが代わって解決するパン! 今回は、Webエンジニアさんから寄せられた「あいまいなSEO施策の依頼」の悩みを解決するパン!

読者からのお悩みを解決するパン!

読者のお悩み

ウェブサイトの開発案件で、SEOを求められるのですが、依頼者がSEOについての考え方や具体的な施策を明示してくれません。なぜでしょうか? そしてどう対処すればよいでしょうか? (ペンネーム:匿名)

ウェブパン

お便りありがとうパン! SEOのプロフェッショナル・木村賢さんに相談してみるパン!

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株式会社サイバーエージェント SEOラボ 研究室長 兼 メディア統括本部 SEO戦略室 室長
木村賢(さとし)氏
木村

ウェブパン、いらっしゃい! 私がそのお悩みを解決しましょう!

SEOをめぐるコミュニケーションの難しさ

ウェブパン

SEOに強いサイトを作りたいのはわかるんだけど、クライアントの依頼内容があいまいで困るパン……。

木村

質問者さんのケースでは、クライアントがSEOの知識を持っておらず、要件定義ができないのでしょうね。もちろん細かい背景まではわかりませんが。

ウェブパン

木村さんもサイト開発で苦い経験があるパン?

木村

ありますよ。私が制作会社さんに不動産サイトの開発を依頼したとき、URLが1つだけのサイトが上がってきたことがあります。URLが1つだとインデックスも1つになり、SEOどころではありませんでした。

事前に要件定義をガチガチにやっていたら防げたかもしれません。まあ結局、URLが1つは業界の常識的にありえないということで、サイトは作り直してもらいましたが……。

ウェブパン

それは冷や汗ものパンね……。
依頼者がSEOの要件定義をするとき、何かポイントはあるパン?

木村

SEOをめぐるコミュニケーションって意外と難しいんです。SEOの知識レベルもバラバラですし、どこからどこまでがSEOかは、人によって定義が異なりますから。

たとえば次のアクションは、SEO施策として実施を検討するものでしょうか?

  • URLをすべてユニークにすること
  • 各ページのタイトルをユニークにすること
  • クローラーを呼んでインデックスさせること

私からすると上記3つはSEOとしてやるのが当たり前のことなんです。これらを大前提として、やっと具体的なSEO施策を検討する段階になります。

でもたとえば開発者の中には、こうしたことを考慮しないで他のSEO施策を進めようとする人や、逆にSEO施策といえば上記3つを指すと捉えて、それ以上の施策を検討しない人もいるかもしれません。

失敗を避けるなら、しっかり要件定義していくしかありません

Abema Towersにて取材をしたパン
ウェブパン

依頼者にもSEOの知識があった方がいいパンね!
そうはいっても知識がない依頼者もいるだろうし、もし現場の誰もわからないときは、どうすればいいんパン?

木村

サイトの規模や特殊性によって対処法は変わると思います。

誰もSEOがわからない! そのときの対処法

大規模サイトの場合

木村

現場の誰もSEOの知識がない場合、大規模サイトならやることはひとつ。SEOの専門家をアサインすることです。周りに専門家がいなければSEO業者を探すしかないですね。

ウェブパン

SEO業者を選ぶときのポイントは何かあるパン?

木村

非常に難しい質問ですね。

大規模サイトのSEOをちゃんとできる人はかなり限られているので、信頼できるSEO業者を見つけるのはかなり難しいです。制作会社のパートナーを紹介してもらっても、その制作会社がSEOに明るくなければ、紹介してもらったSEO業者を信頼できるとは限らないというのも現実です。

本当は「SEOに詳しい人に信頼できる人を紹介してもらってください」と言いたいところですが、そのSEOに詳しい人とつながっていないならばどうしようもないですよね。

ですので、「頼んではいけないSEO業者を見極める」という観点からになりますが、次の2点がポイントです。

SEO業者選びのポイント①
悪い評判がないか調べる

恥ずかしながら、私がいるSEO業界は悪質な会社も多いので、まずはそういった会社に引っかからないことです。

依頼しようと思っているSEO会社に悪い評判がないか、ネットや人づてに調べましょう。悪い評判がないだけで合格点だったりします。

話は少しそれますが、最近はSEOについての情報発信をする会社が増えています。しかし情報発信をしているというだけで、その会社を信用するのはリスクがあります。というのも、優秀な会社であるが故に本業が忙しく、情報発信にまで手が回らない(あえて情報発信しない)こともありますので。

SEO業者選びのポイント②
ハイリスクなSEO手法への認識を聞く

評判を調べたら、その会社の担当者にいろいろと質問してみましょう

おすすめの質問は、リスクのあるSEO手法について「どう思う?」と聞いてみること。たとえば次のように:

  • 被リンクを買うのってどう思いますか?
  • サブディレクトリ貸しってどう思いますか?

こうした手法は、SEOの成果だけみればメリットがある可能性もゼロではありません。しかし同時にリスクもあります。どこかのタイミングで効果がなくなったりマイナス効果になったり、また、倫理面で企業ブランドを毀損したりというリスクです。

このような質問に対して「やってもいいんじゃないですかね?」といった回答があるようだと、お客さんのことを考えていません。その時点でアウトでしょうね。

「やめたほうがいいです」と言ったとしても、やらない理由をしっかり説明できるかも大切なポイントです。

ウェブパン

リスクのあるSEOをしてペナルティを受けたら大変パン……。木村さんのような信頼できる専門家を探さないといけないパンね!

木村

悪質な業者をスクリーニングできたら、あとはたくさん質問して、技術力の高さを測っていきましょう。まあ最後の決め手は、人として信用できるかですね。

中小規模サイトの場合

ウェブパン

専門家を呼ぶ予算がないプロジェクトの場合、どうすればいいんパン?

木村

中小規模のサイトであれば、実は専門家がいなくても「80点」のSEOはできるんです。ポイントは2つ。

予算がなくてもできるSEO①
UXファーストを意識しよう

UXを第一に考えれば、専門家がいなくても自然に80点くらいのSEOはできています。UXとはユーザー体験全体のことで、たとえばリンクの張り方、サイトデザイン、表示スピードなどがあります。

SEOの技術的な話は理解できなくても、ユーザーにとってより快適で有益なサイト体験にしようと心がけて改善してくことはできますよね。それがUX改善であり、80点のSEOへの道です。というのも、いまの検索エンジンは「検索エンジンに評価されるために」ではなく「ユーザーにとって良いように」しているサイトを評価する傾向があるからです。UX改善とSEOは表裏一体なのです。

予算がなくてもできるSEO②
Googleのドキュメントを読んでSEOの正しい知識を得よう

専門家なしでSEOを頑張るなら、Googleのガイドラインを読むのが一番です。初心者はスターターガイドから読み始めましょう。

私のおすすめは、『Google検索品質評価ガイドライン』を原文の英語で読むことです。英語なのでハードルは高いですが、読むとSEOレベルが格段に上がります。うちの新人メンバーにも必ず読んでもらっています。

トップダウンで丸投げされた時は、ガイドラインで知識を入れて、UXのことを考えて作れば、80点ぐらい取れると思いますよ。特殊なサイトの場合は専門化なしでは難しいですが。

ウェブパン

UXに気を付ければ、狙ったキーワードでばっちり1位表示されるってことパンね!

木村

それがそういうわけでもなく……。身も蓋もない話ですが、中小規模のウェブサイトはSEOで勝ちにくいんです。今はブランドの力を超えたSEOはなかなか難しいので。

サービス名や会社名などの「指名系クエリ」では上位表示できても、競合の多いトランザクショナルクエリなどでは、中小サイトは上位表示させるのが困難なことが多いです。なので、中小規模のサイトで高度で技術的なSEOを頑張っても、報われないことも。

※トランザクショナルクエリ ―― 購入や予約など「何か行動をしたい」意図が含まれるクエリのこと。

だからこそUXに配慮して、「指名検索で来てくれたお客様を大事にしましょう」「確実にコンバージョンしてもらいましょう」という発想です。

また、中小規模のサイトでも成果を伸ばす可能性がある施策として、コンテンツ制作に注力するのもいいでしょう。

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「SEOの知識を身につけるなら、Googleのガイドラインを読むのが一番!」

最近のコンテンツSEO事情

ウェブパン

どうして中小企業のウェブサイトは、コンテンツ制作に注力したほうがいいんだパン?

木村

一般的に「コンテンツSEO※」と呼ばれるものに関しては(私自身はこの表現は好きではないんですが)、専門家を必ずしも入れなくても結果を出せる可能性があるからです。

※コンテンツSEO ―― 検索エンジンに最適化したコンテンツを掲載し、自然検索からの集客を図るマーケティング手法。

基本的なところで言うと、見出しや本文でキーワードやその関連語を適切に使いましょう。これは、そのページでどんなトピックを扱っているのかを検索エンジンが理解しやすいようにすることを意図しています。

そのうえで私が、今のコンテンツSEOで大事だと考えているポイントは2つです。

  • 検索意図(インテント)の網羅
  • オリジナリティ

コンテンツSEOのポイント①
検索意図(インテント)の網羅

クエリに対してどういう検索意図(インテント)があるかを推測し、それらをある程度、網羅したコンテンツに仕上げないと、やっぱり上がりません。すでに上位表示されている競合コンテンツの分析、サジェストキーワードの分析、そして自身の業務経験なども駆使して、そのキーワードで検索する人がどんな意図(何を求めているか)を探ります。

ただ、それだけだと競合と横並びになるだけです。そこで必要となるのが、次のポイントです。

コンテンツSEOのポイント②
オリジナリティ

コンテンツを上位表示させたいのならば、検索意図を網羅するだけでは不十分で、オリジナルな要素も盛り込む必要があります。たとえば筆者の実体験や、取材でしか得られない情報などですね。キュレーションメディア全盛期の時代とは違い、ウェブ情報の寄せ集めだけでは上がりません。

ウェブパン

記事の量産ではなく、本当にユーザーのためになるコンテンツが必要パンね!

木村さん、ありがとうございました!
ウェブパン

お悩み解決できたかな?

「Web担当者Forum」では今後も読者のお悩みを解決するために頑張るパン!

用語集
SEO / インデックス / クローラー / コンバージョン / ディレクトリ / リンク / 検索エンジン / 自然検索 / 被リンク
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