在宅ビジネスとバーチャルビジネスのローカルSEO戦略 ―― 実店舗のないビジネスのためのローカルSEO【2021年版】(後編)
3回に分けてお届けしてきたこの記事も、今回が最終回となる。後編では、「在宅ビジネス」と「バーチャルビジネス」のローカルSEO戦略について見ていこう。 →まず前編と中編を読んでおく
2. 在宅ビジネスのローカルSEO
非店舗型ビジネスは、ほとんどの場合住所を非表示にするようグーグルに求められることを不便に思うことだろう。一方、在宅ビジネスでは逆に、住所は非公開にしておきたい。公開されている場所だと勘違いしてお客が玄関にやってこないようにしたいと思っているオーナーが多い。
しかし、在宅ビジネスといっても必要条件や機会がみんな同じわけではない。在宅ビジネスのマーケティングでは、次に示すどのシナリオが適しているのかを考えよう。
- 自宅で対面によるサービスを提供していて住所を公開したいケース
- 自宅で対面によるサービスを提供しているが住所を非公開にしたいケース
- 自宅で仕事をしていてサービスを客先で提供するケース
- 自宅から仕事をしていて対面の接客はしないケース
2-1. 自宅で対面によるサービスを提供していて住所を公開したいケース
これに該当するのは、次のようなビジネスが代表だろう:。
- デイケアセンター
- ペットのグルーミング業者
- 馬の厩舎
- 個人指導
- など
この場合、お金を払って道路に看板を出し、実店舗型ビジネスとしてのマーケティングのあらゆる利点を活用するべきだ。隠しておく理由はない。
グーグル対応: 予約限定のビジネスの場合、ビジネスリスティングに営業時間を設定しないのがグーグルの好みだ。ただ、GMBで選ぶカテゴリによっては、グーグルの予約機能を使える場合がある。また、予約限定であることをビジネスの説明欄で説明することもできる。
2-2. 自宅で対面によるサービスを提供しているが住所を非公開にしたいケース
グーグル対応: このケースは、明確なグーグルの規定が十分になく、基本的に、住所を非表示にする必要がある非店舗型ビジネスとして対処することになる。Googleマイビジネスのダッシュボードの情報欄から住所を消去するのがグーグルの望みだ。サービス提供地域を追加できる。
プライバシーを特に重視するビジネスが知っておくべきことがある。グーグル側にこちらの住所の記録があると、バグや方針変更の結果、住所が表示されるおそれがある。注意しよう。
グーグル以外: グーグル以外だと、掲載先に選べるのは住所の非表示に対応したディレクトリだけだ。
ランディングページ: 拠点に合わせたランディングページを作ることはないだろうが、住所がなくても近隣でオーガニック検索された場合のビジビリティをできるだけ高めるため、ウェブサイトのコンテンツでは地元の都市や周辺地区に関連する言葉をできるだけ盛り込むほうがいい。
2-3. 自宅で仕事をしていてサービスを客先で提供するケース
これに該当するのは、ビジネスの拠点がオーナーの自宅だが仕事の際はサービス提供地域内を移動するビジネスだ。たとえば、次のようなものが代表だろう:。
- 配管業者
- 会計士
- ハウスキーパー
- など
グーグル対応: このケースは、典型的な非店舗型ビジネスとまったく同じように、住所を非表示にしてビジネスリスティングのサービス提供地域を設定することをグーグルは望む。
ここで強調しておかなければならないが、Googleマップでは在宅の非店舗型ビジネスが許可されていない。そして、この問題の迂回策としてグーグルが用意したのが「住所を非表示にすることでGoogleマイビジネスに登録する」やり方だ。住所が非表示になっていないと、ビジネスリスティングの停止や削除の危険がある。
グーグル以外: グーグル以外では、希望するならビジネスリスティングに住所を表示してもいいし、プライバシーを重視するなら住所の非表示に対応しているディレクトリのみに掲載してもいい。
ランディングページ: サービス提供地域内のさまざまな都市に合わせて、質が高く興味深いランディングページを作るほうがいいのかについては、ほかの非店舗型ビジネスと同様だ。これまで説明してきたところを読み直してほしい。
2-4. 自宅から仕事をしていて対面の接客はしないケース
新型コロナウイルスのパンデミックに伴う緊急事態によって多くの人が自宅で仕事をするようになったことと、対面サービスをテレアポや遠隔コミュニケーションに置き換えるビジネスが多くなったことで、このケースは2020年に少しわかりにくくなった。
グーグル対応: これまで、バーチャルビジネスのモデルはGoogleマイビジネスへの登録を厳しく禁じられていた。しかし、COVID-19の大流行で世の中が大きく変わったことから、この点でどのようなスタンスの変化があったのかのを知るため、グーグル関係者に直接あたってみた。
私が質問したのは、次のようなことだ:
以前はオフィスを構えてクライアントと直接会っていたが、今は自宅から遠隔医療システムを使ってクライアントを診ているセラピストのような専門職が、どうビジネスリスティングに登録していくべきなのか。
ビジネスがバーチャルになったことでGMBに登録する資格はなくなったのだろうか。それとも、COVID-19以前のように在宅ビジネスとしてリスティングを作れるのだろうか?
次のような回答があった。
現時点ではバーチャルな環境で診療しているが、将来的には対面で診療するという場合は、当面は在宅ビジネスとしてページを作成して問題ない。
つまり、この担当者によると、「将来、安全になった時点で対面によるサービスを再開する意志がある場合、ビジネスリスティング掲載の資格は失われない」ということだ。このセクションですでに紹介したガイドラインに従い、在宅ビジネスの場合のようにビジネスのリスティングを作成しよう。グーグルがガイドラインを更新してこのタイムリーな情報を広めてくれればよいのだが。
ただ、完全にバーチャルなビジネスで、対面でサービスを提供したことがない場合は、次の「バーチャルビジネスのローカルSEO」セクションを参照してほしい。
3. バーチャルビジネスのローカルSEO
次のようなビジネスはいずれも「バーチャルビジネス」にあたる:
- Eコマース専業の会社
- デジタルのみの商品やサービスの提供業者
- 店舗を持たない全国規模や世界規模の大手メーカーや供給業者
こういった業種では、オンラインでのビジビリティを巡って実店舗のあるローカルなブランドと戦おうにも限界があり、そのことに不満を抱えているバーチャルなブランドから問い合わせを受けることが多い。
見込みのない戦略に時間とリソースを浪費するのを避けるには、バーチャルなブランドが競争のためにできることとできないことの線引きをはっきりさせるのがいちばんだ。そのうえで、グレーなゾーンにも光をあてるべきだ。
できないこと
マーケティングしているバーチャルブランドが対面によるサービスを提供していない場合、Googleマイビジネスに登録する資格がない。住所がない場合も登録できない。
Googleマイビジネス以外のディレクトリではビジネスを登録できることがあるかもしれないが、グーグルの世界においては、
- ローカルパック
- ローカルファインダー
- マップ
の掲載順位を競うことができない。この戦略には「×」を書いて消すしかない。
できること
コンテンツを公開し、リンクを集めてコンテンツのページオーソリティを高めれば、オーガニック検索の順位を競える。
重要な地域については、お金を払ってGoogle広告の地域ターゲティングでビジビリティを競うことができる(どちらもリンク先は日本語説明)。
グレーなゾーン
バーチャルが中心のビジネスでも、スタッフがいる本社を顧客ではなくB2Bパートナーなどの提携相手に見つけてもらう必要がある場合は、GMBに登録する資格が与えられるケースがある。
しかし、顧客が国全体や国の外にまで広がっているバーチャルブランドの場合、そのようなビジネスリスティングをどうしようとも、ローカルパックの順位を全国で競争する助けになることはないだろう。
バーチャルビジネスがローカル検索でオーガニックなビジビリティを獲得するには
グーグル関係者はこのところ、次のように主張している:
ユーザーの位置情報はほかのパーソナライズ要素よりも、グーグルの検索結果に与える影響がはるかに大きい。
いずれも完全なバーチャルビジネスからすると良いニュースではない。グーグルがオーガニック検索結果のローカライズを強めるならば、Eコマースやデジタル専業のブランドは競争が難しくなるばかりだ。
Mozが開催したオンラインセミナーで、次のような質問があった:
グーグルが本当にローカルなビジネスと大手ブランドを優先する可能性が高いのであれば、CarInsurance.comのような会社が「近くの自動車保険(car insurance near me)」のような検索で上位を獲得するにはどうすればいいのか。
現実をお答えすると、バーチャルビジネスでは、次のことが必要だ:
そのうえで、ブランドにとって最高に重要な諸都市に合わせて一部コンテンツを可能な限りローカライズする方法を見つける。
よくあるアプローチとして、次のような手法がある:
全国のすべての都市について内容の薄い重複したランディングページを作る
私はこれをおすすめしない。インターネットのあちこちで、都市ごとのほとんど価値がないページへのリンクが大量にフッターに並んでいるのを目にする。
関連性が高いとグーグルに見なされ、ヘッドタームのオーガニック検索で最高のビジビリティを獲得したいなら、企業はFarmers InsuranceやGEICOに匹敵するくらいオーソリティの構築に継続的に投資し、非常に競争の激しいキーワードで競わなければならない。また可能ならば、本当の意味で一流の地元情報があるランディングページを主要都市向けに作成し、場合のよっては、見返りの大きいロングテールタームを狙って最適化を進める必要がある。
これは簡単な仕事ではない。だからこそ多くのバーチャルブランドが、オーガニック検索の上位を求めて奮闘するのではなく、結局、あっさりお金を払って広告を出しているのだ。
しかし、元気を出そう。たとえばこちらのランディングページは、私のいるサンフランシスコ湾岸地区で検索すると、「サンフランシスコでいちばんいい安価な自動車保険(best cheap car insurance in San Francisco)」のようなロングテールターム寄りの検索キーワードでかなりうまくやれている(Mozのオンラインセミナー参加者の質問にあったCarInsurance.comののページだ)。
このURLをMoz ProのOn-Page Graderで見ると、非常に強力な取り組みがされていることと、それでも少し調整してさらにあと少し改善する余地があることがわかる。
自分の地元市場における競争相手を見つけたら、調査して、オーソリティと勝てる検索語句を適切に組み合わせたら競争できそうなところを探しだそう。Moz ProのLocal Market Analytics(ベータ版)は、オーガニック検索で上位獲得を目指すべき検索語句を、全国のさまざまな地域市場について調べるのに役立つように作られている。
Local Market Analyticsが画期的なのは、選択した地域で、最高のコンテンツでサポートする必要性が極めて高い検索語句について、競争相手をいろいろな表示のしかたで教えてくれる点だ。この楽しみな製品のベータ版に参加して、バーチャルではないローカルビジネスと競争するバーチャルブランドを支援しよう。
まとめ
実店舗を持たないそれぞれのモデルにも、かなりストレートなローカルマーケティングの方法があるが、2021年は踏み固められてできたこれまでの道が不鮮明になる1年になるとわたしは予想している。
業務の非接触化という要求に応えるため、これから数か月はデジタル販売を採用してハイブリッド化する実店舗ブランドが明らかに増える。実店舗を持つ小売業者は洗練されたEコマースソリューションを自社のウェブサイトに導入し、「近所で入手可能(available nearby)」フィルタを備えたGoogleショッピングにこっそり参入するだろう。
一方、デジタルのみのブランドは引き続き、ローカルパックに表示されることを目指し、完全なDirect-to-Customers(D2C)販売から実店舗併設に移行するWarby Parkerのアプローチを試すことになる。2021年は、COVID-19のパンデミックで対面ショッピングを制限することが必要なのは明らかなため、こうした試行はこれまでの数年ほど有望なものではなくなるだろう。
また、これもCOVID-19が原因だが、2020年は在宅ワークによる独立の可能性を調査していた起業家たちが、2021年は苦労の末に初の成功を収め始めるかもしれない。実店舗、非店舗型ビジネス、バーチャル、ハイブリッドのあらゆるモデルを自宅のリビングから経営するだろう。
グーグルは、こうした変化をすべて吸収し、「ガイドラインは商業の今の現実を反映しているのか、それとも更新が必要なのか」を常に再評価することで適切であり続ける責任を負うことになる。これから数か月、ガイドラインの修正やグーグルの新機能によって新たなチャンスが生まれるかもしれないので、油断せずに見守らなければならない。
ブランドとそのマーケターの目下の課題は、ビジネスモデルに基づいて簡単なものから難しいものまでローカルとオーガニックのさまざまな場面で勝利し、そのうえで、ほかの方法では勝ち取れない部分をペイドインクルージョン(有料検索エンジン登録)で補うことだ。
なかなか勝てないという人はMozに連絡してほしい。MozのSEOソフトを役立てる方法を知ってほしい。みなさんの2021年の幸運を祈っている。
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