なぜ成果が出ないのか!? サイト改善を成功に導くデータ活用の法則とは?
Webサイトの運営においてデータの取得は必然とはいえ、それらを有効に活用できているという企業はどれだけあるだろうか。はたして、Webサイト改善のためにどのようにデータを活用すればよいのか。エスファクトリーの代表であり、ウェブ解析士としても活躍する井水大輔氏が、 「Web担当者Forum ミーティング 2020 秋」に登壇。確実に成果につなげるためのポイントを、実際のGoogleアナリティクスデータと改善事例を交えて紹介した。
「ユーザーを理解しよう」という気持ちが重要!
データ活用とは?
「データ活用」とは何か。それは、多くの企業では「データを売上貢献につなげるためにデータ分析を行い、問題点を発見し、その改善案を実行することだ」と井水氏は語る。しかしながら、「この一連の流れをデータ活用というべきところを、データ分析だけをデータ活用と勘違いしている人が多い」という。
ユーザーレポートで一人ひとりの行動履歴をみる
Webサイトのデータといえば、まずは多くの企業で導入されているGoogleアナリティクスのデータを思い浮かべるだろう。アクセス解析のデータの扱いにおいて、井水氏は「データを単なる数字と捉えないでほしい」と語る。たとえば、よくあるのがこんな会話だ。
- 「直帰率が52%というのはどうなんですかね?」
- 「もっと直帰率を低くした方がいいですね」
- 「では、直帰率を下げる施策を考えましょう」
一見、データを活用して改善案を考えているように見える。しかし、これら一連のやりとりは「具体的でもなく、表面的であり、データを活用できていない」と評し、「Googleアナリティクスは、膨大なデータを収集してわかりやすく表示してくれているが、それに埋もれて活用できなくなっている人が多い」という。この状態から脱却するには、「データを情報としてみる」ことが重要になる。つまり、「一人ひとりの行動履歴情報」として認識すべきというわけだ。
たとえば、Googleアナリティクスの「ユーザー」の「ユーザーエクスプローラー」をみれば、ユーザー一人ひとりの行動履歴が把握できる。次の図のように、何度来たか、どのくらいの時間みていたか、どこから来たか、何を見たか、コンバージョンを何回しているかが一目瞭然だ。「実店舗ならば、喉から手が出るほどほしいデータのはずだ」と井水氏は話す。
ユーザー理解が改善施策につながる
「購入した人」と「購入しなかった人」とで、行動履歴を比較することもできるという。次の図をみてほしい。以下2つの行動を比較してみよう。
- トップページから「料金ページ」をみて離脱した場合
- トップページから「選ばれる理由」をみて、それから「料金ページ」をみて「申込み(購入)」に至っている場合
「購入しなかった人」の多くが料金ページをみてすぐに離脱したとしたら、「料金が高いのだろうか」と考えるきっかけになる。一方、もし「購入した人」が料金ページを閲覧する前に「選ばれる理由」を閲覧しているなら、高い理由に納得したから購入しているのではないかとの「気づきが生まれる」と解説した。
その気づきが、「料金ページ」の前に「選ばれる理由」を閲覧する導線へと改善する施策につながるわけだ。井水氏は、「こうした行動履歴から”気づき”を得るには、ユーザーを理解しようという気持ちが重要」と語る。
事実を基に話ができる
また、データによって「事実を基に話ができる」メリットについても話した。サイトで成果が上がらないとき、クライアントや上司から、「トップページのメインビジュアルがパッとしない、カッコよくしてよ」といった思いつきでの指示を受けたことはないだろうか。
こんな時、ユーザーの行動データがあれば、「トップページは問題なく先に進んでいますが、料金ページで離脱しています」といった”事実”に基づいた話ができるわけだ。
実行した施策を評価して、確実に成果につなげよう
コンバージョンが上がったのかをデータで確認する
次に語られたのは「改修の良し悪しを評価する」ということだ。たとえばトップページを改修したとき、一見印象としては改善されたと感じるかもしれない。しかし、以前と比べて成果が上がったことを確認できなくては、本当の意味での改善成功とはいえない。コンバージョン数が上がったかどうかを評価することが重要だ。
ECサイトなら「商品の購入数」、BtoBサイトなら「お問い合わせ数」などのように、成果を測定するための目標がコンバージョンだ。「もしコンバージョンの目標設定をしていない場合は、今日中にでも設定してほしい」と井水氏は重要性を語った。
仮説を立て、KPIを設定しておくことが重要
このように、コンバージョンの数値を施策の前後で比較し、成果が上がったかどうかを確認する必要がある。しかし、「コンバージョン数が本当に施策によって良くなったものなのか」と、井水氏はさらなる注意を促した。多くの場合、マーケティングの施策は複数行われており、トップページの改修が広告配信と重なることもある。SNSでバズった可能性もあるだろう。そこで重要なのが「ユーザー視点に立って仮説を立てておくこと」だという。
たとえば、「トップページのメインビジュアルに訴求力がないので、訪れたユーザーがスクロールせずにサイトから去ってしまっているのではないか? もし改善したらトップページの直帰率が下がるのではないか?」という仮説を立てれば、改善後に直帰率を確認すればよい。このように、「コンバージョンという最終指標だけでなく、その前の指標も大事になる」と語る。
メインビジュアルだけでなく、フォームの改修で「フォーム離脱率の低下」、リンクテキストの改善で「クリック数や遷移率の向上」など、変更・改修箇所に応じてさまざまな評価ポイントがあり、それが最終目標であるコンバージョンに対してのKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)となるわけだ。
重要なフォームの改善
特に井水氏が改善ポイントとしておすすめするのが「フォーム」だ。コンバージョンの1つ手前にあることが多く、ここが改善されることで得られる成果はそのままコンバージョンに直結する。たとえば実際にフォームを入力してみると、「この項目は任意なのか必須なのかわからない」「入力してみたらエラーが出た」など、ストレスになる問題が見つかる可能性がある。次の図に示した点を確認してみよう。
フォームで確認しておきたい箇所
さて、フォームを改善したら、フォームでの離脱率の確認を行うわけだが、「改修しても必ずしもよくなるとは限らない。反応がない場合もあれば、悪くなる場合もある」と井水氏はいう。「そういうときは、速やかにもとに戻し、別の施策を考えればよい。これを繰り返せば、必ずWebサイトの効果は上がるはずだ」と語った。
ここで井水氏は、「Web担当者Forumミーティング2020秋」への申し込みフォームを事例にとりあげた。実は知人から「フォーム入力に時間がかかる」という指摘があったのだという。具体的な指摘箇所は2点。「エラーメッセージ」と「注意書き」の色が同じことによる混乱と、参加したいセッション紹介ページの「参加申し込みはこちら」ボタンを押すと全セッションを探すページに遷移してしまい、該当セッションを探さなくてはいけない点だ。
改善施策として、「注意書き(エラー)の文字色を変更する」「エラー箇所を冒頭で指摘する」「各セッションLPに(画像)日時を加える」を提示した。「次回までには、きっと直っているでしょう(笑)。楽しみです」とプレッシャーをかけるのも忘れなかった。
改善事例紹介_ウェブ解析士協会サイト
最後に、井水氏は、実際のデータを使ってコンテンツの良し悪しを判断してサイト改善を行い、成果につなげた「ウェブ解析士協会」のWebサイトの事例を紹介した。
「ウェブ解析士協会」のWebサイトには1,000ページ以上のコンテンツが用意されており、1万人以上の会員、解析を依頼したい企業関係者、業界関係者など、さまざまな来訪者がいろいろな目的で訪れる。
しかし、サイトの最大の目的は「ウェブ解析士を増やすこと」であり、対象は「ウェブ解析士を目指して初めて来訪する受験希望者」になる。そこで、コンバージョンを「試験の申込み」として、サイトのなかのメインコンテンツの1つである「ウェブ解析士とは」についての改修を行った。
https://youtu.be/uOJdZsfL1Mc?
課題を確認してKPIを設定する
井水氏は「ウェブ解析士になりたいと思っている人」の目線でコンテンツを遷移し、余分なコンテンツが多いこと、下まで閲覧した後で申し込むために上部まで戻る必要があることなどを指摘した。
さらに、トップからコンバージョンまでのページ遷移について「ゴールデンルート」を想定した。そして、そのなかで「ウェブ解析士とは」から「資格取得までの流れ」の遷移率が、わずか17%しかなかったことがわかった。そこで、この遷移率をあげることをKPIとした。
なお、この遷移率および状況をGoogleアナリティクスで確認するには、「行動」→「サイトコンテンツ」→「すべてのページ」に行き、「ナビゲーションサマリー」のタブをクリックすると、当該のページから遷移の多い順番に掲載される。
主な改修内容
改修については、キャッチーなコピーを入れ、6つのコンテンツに分岐して遷移していたボタンをカットして、次に「ウェブ解析士のメリット」をページ内に掲載したという。これも前出の「ナビゲーションサマリー」で見ると、6つのコンテンツのなかで「ウェブ解析士のメリット」が最も見られていることが判明したためだ。他にもコンバージョンへの貢献が低いと思われるコンテンツへのリンクをカットするなど、シンプルな導線を設計した。
ボタンのカットは、遷移先コンテンツのコンバージョンへの貢献度をみて決定した。たとえば、改修前にあった「インタビュー記事」のコンバージョンへの貢献度をみるために、Googleアナリティクスの「セグメント」を利用したという。このセグメントを利用すると、「ウェブ解析士とは」をみた後に「インタビュー記事」をみた人のコンバージョン数がわかる。
具体的には、「特定の条件=インタビュー記事をみに行った人」のセグメントでユーザーを抽出し、「シーケンス」という機能を使ってその人たちのなかでコンバージョンした人を調べた。その結果、「ゼロ件」だったため、削除したというわけだ。
そして、井水氏はページの最後に「学習内容と取得までの流れ」「講座・試験スケジュールを見る」の2択のコンテンツボタンを配置した。いずれも「ゴールデンルート」で、どちらかに必ず流れるようにしたわけだ。なお、ちょっとしたコツとして、ボタンの上に「もっと知りたい」「今すぐ受けたい」というユーザーの気持ちを代弁するようなテキストを入れると、クリック率が上がるという。
改善結果
こうした改修・改善により、該当ページの直帰率は43%から27%へと減り、コンバージョン数は46から71へと増え、コンバージョン率も改善された。通常、ページの上部にコンテンツボタンを配置すると”コンバージョンにつながるかはともかく”、直帰率は下がる。
しかし、今回はコンテンツボタンを下部に置いた。そのため、直帰率が上がる恐れもあったが、幸いむしろ下がり、コンテンツをしっかりと最後まで読んだ人が次に行くという、ランディングページとしてはより良い形となったという。
なお、コンバージョンの設定を行うと掲示される「ページの価値」も、コンバージョンへの貢献度を測る数値としてチェックしたい。
そして、もう一つ「ゴールデンルート」上における「ウェブ解析士とは」から「資格取得までの流れ」への遷移率については、17.3%から36.9%と倍以上に上げることができた。また、今回は「試験を受けたい新規ユーザー」を想定した施策だったが、このような場合、セグメントで新規ユーザーだけに絞った数値を見る方法も有効だと語った。
改善時の3つのポイント
最後に、井水氏は本セッション内容を次の3点にまとめた。
- ユーザーを理解しようという気持ちがあれば、気づきを得て良い改善案を実行できる
- 改善箇所に応じた指標で改善の良し悪しを評価し、良ければそのまま、悪ければ戻す方法で進めればいい
- ユーザーになったつもりでサイトを閲覧し、データに基づいてユーザーにより良い体験をしてもらうことを意図する
そして、「ぜひ、データを活用して正しい方向へとサイトを導いてほしい」とまとめ、セッションを終えた。
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