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【SEOスプリント事例】検索訪問を3倍にし、チャネルを超えたマーケ展開に役だった施策とデータとは

2回のSEOスプリント実施で大きな成果を得たデンマークの眼鏡店チェーンを事例として紹介。SEOがマーケ全体と協調できると、こんなに価値を生み出せるのだ!
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この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。前回はSEOスプリントについて基本的な説明をしたが、後編となる今回は、ケーススタディとしてデンマークの眼鏡店チェーンで実施したキャンペーンについて見ていこう。→まず前編を読んでSEOスプリントの基本を理解しておく

それではSEOスプリントの枠組みの実践に入ろう。実践した舞台はデンマークの眼鏡店チェーン「Nyt Syn」で、ZEISSの眼鏡レンズに関するキャンペーンでSEOスプリントを2回行った。

SEOスプリント事例:デンマークの眼鏡店チェーン

Nyt Synは57の眼鏡店で構成されるデンマークの眼鏡店チェーンであり、大手3社が支配する市場で6%の市場シェアを持っている。

僕は2018年と2019年に、Nyt Synの「DriveSafe」キャンペーンSEOスプリントを2回実施し、成功させた

DriveSafeはZEISSが製作するレンズだ。このレンズを使った眼鏡は通常の眼鏡としても使えるが、夜間に対向車のヘッドライトで目がくらむのを回避するのに特に役立つ。眼鏡の小売価格は約500ドルと低価格商品ではないが、市場のソリューションでは最も安全性が高い。

DriveSafeのキャンペーンのターゲット層は主に35歳以上の女性だった。男性よりも夜間の見えにくさに困っているわけではないが、この問題への対処に男性より前向きであることがわれわれの調査で明らかになった。

キャンペーンの主たる目標は、地元にあるNyt Synの店舗で視力検査を予約してもらうことだった。

結果

2018年第4四半期に実施した最初のDriveSafeキャンペーンはまずまずの成功を収め、その1年後に実施した2回目のSEOスプリントでは、オーガニックトラフィックを3倍に増やすことに成功した。

2回目のキャンペーン中は、nytsyn.dkのオーガニックトラフィックのうち23.7%がDriveSafeのページだった。そしてもっと大事なのは、実際の視力検査の予約数が大きく伸びたことだ。2回目のキャンペーン時の予約数は、1回目に比べて73%増加した。

成功した方法

では、前編で紹介したSEOスプリント5つのステップに沿って、われわれがどのように施策を進めたのかを解説していこう。

1. 戦略

SEOのタスクに着手する前に、DriveSafeキャンペーンの目標を把握し、SEOで事業目標をどのように支援していくのかをはっきりさせる必要があった。

マーケティング戦略をSEO活動に翻訳するために、僕はカスタマージャーニーを使って顧客のニーズを割り出し、グーグルでタッチポイントになるコンテンツを明確にすることにしている。

この時、SEOの基本理念は次のようになった:

SEOを進める基本理念

ユーザーが問題解決の意図を持って夜間の視力に関連する検索をしたときに、キャンペーンサイトがグーグルの検索結果に表示されるようにし、そこから視力検査の予約に導く。

2. データ

戦略を実行に移すには、まずユーザーの行動を把握する必要がある。幸い、データの入手はこれまでなかったほど簡単になっている。

いまだにGoogle Keyword PlannerやMozなど1つのツールに固執しているところが多いが、ツールを増やすほど検索者の意図がはっきり見えてくることを僕は悟った。グーグルのツール(Google Search ConsoleやGoogleアナリティクス)とさまざまなクリックストリームツール(Moz Keyword Explorerなど)を使っているが、それぞれのツールが新しい発見をもたらしてくれる。

さらにここに、ライブチャットなど企業独自のデータソースを僕は加える。ライブチャットは顧客とのコミュニケーションのためだけのツールではない。世間話だけのために企業に連絡する人はいない。チャット履歴のデータはユーザーが抱く疑問の宝庫だ。また、Zendeskのようなサポートツールとサイト内検索も過小評価されている情報源であり、ここでの小さな観察から大きなインサイトが得られる可能性がある。

こうして、一般的な症状の検索から特定の製品の注文まで、幅広いたくさんのキーワードを割り出せた。

3. インサイト

インサイトはデータの量に左右される。データ探索で十分に深く掘り下げることができなければ、検索者の行動をしっかり把握できず、重要な検索意図を見逃すことになる。われわれはキーワードのリストを見てさまざまな検索意図を特定した。それを使ってカスタマージャーニーを作成し、どんなコンテンツを制作または再利用すべきかを割り出した。

このキャンペーンでまとめたカスタマージャーニー各段階の検索意図は以下の通りだ。

  • 認知フェーズ: 夜盲症とは何か。

  • 検討フェーズ: 自分は夜間の視力が悪いのだろうか。黄色みがかったレンズの眼鏡は使えるのだろうか。

  • 決定フェーズ: ZEISSのDriveSafeレンズの眼鏡にしよう。

データからは、興味深いインサイトが4つ見つかった。

  • ファネルの初期段階に対するコンテンツは過小評価される傾向が強いが、われわれはデータ収集とカスタマージャーニー 作成を経て、初期フェーズでのアプローチを定めた。具体的には、

    • カスタマージャーニーの初期段階における「夜盲症」の症状検索
    • 夜間の安全運転のニーズ

    をつなぐものを突き止めたのだ。「夜盲症とは?」というページを作成し、そこで症状の疑問に答えることで、われわれのソリューションに向かうファネルの先へ検索者を進ませたのだ。

  • キーワードのデータから、オンライン視力検査のニーズが明らかになった。通常の視力検査を基に夜間視力検査を作成したところ、好評を博した。最終的に、さまざまなチャネル経由で18万人以上が夜間視力検査を完了した。

    また、DriveSafeのページ、とりわけこのオンライン検査ページのオーソリティを全般的に高めるため、リンクを獲得した。オーソリティの向上に加えて、参照トラフィックもしっかりと得られた。

  • ソリューションを探しているユーザーが早まった選択をしていることがわかった。マウンテンバイクに乗る人は、黄色がかったプラスチックの安価な眼鏡を使うことが多い。しかし実は、黄色の眼鏡は夜間の運転には適していないのだ。

    というのも、デンマークの眼鏡専門学校の教授に取材してわかったことだが、黄色いレンズの眼鏡はブルーライトを過剰に透過させるのだ。われわれの目が夜にさらされている光だ。

    そこで、黄色いレンズの眼鏡を探している検索者を無視するのではなく、注意喚起することにした。「黄色がかった眼鏡を使ってはならない」としたこのページは、たくさんのトラフィックを集めた。また、検索者の主要意図とは反対のキーワードでグーグル検索の1ページ目の1位になれることが判明した。

  • 「眼鏡の業界用語」と「検索者が使う用語」は違う。検索者が使う用語にサイトを最適化しようとすると、会社の方針が妨げになることがある。しかしNyt Synは、社内の用語ルールにしがみつくことなく、この機会をしっかりとものにした。

    「natbriller(夜用眼鏡)」というクエリが毎月800件ほど検索されている。業界用語ではないが、われわれはこの言葉を使ったページを作成した。すると成果があがった。現在、Nyt Synはこの重要キーワードで1年以上にわたりグーグルの1位と2位を維持しており、収益につながるトラフィックを大量に得ている。

最後の2つのインサイトで取り上げた検索ワードは、競争が穏やかで変動性が低いキーワードだったので、順位はすぐに上がった。短期間で結果を得られたことは、チームのモチベーションになると同時に、グーグルが目にするオーソリティの構築につながった

現在は、ブランド名を含まないキーワード100件以上でトップ3を獲得しており、検索10件のうち1件がDriveSafeのページのクリックにつながっている。

4. 実行

このようなインサイトを得たNyt Synのコンテンツチームは、グーグル内のすべての重要タッチポイントに表示されるのに必要なページに取り組んでいった。

チームは小規模で、コンテンツライターは1人しかいない。しかし、注力するポイントさえわかっていれば大きなチームでなくても競合相手に勝てることを、この事例は示している。というのも、ぜんぶで、作成したページが5つ、再利用した既存ページが2つだけだったのだ。

すばらしいコンテンツを書くには時間が必要なため、このステップは時間がかかる。また、ここではあわせて広告に基づいたリンク構築戦略を準備し、後にキャンペーンで展開した。

こうしてキャンペーン開始の準備ができた。

5. 計測

ダッシュボードを使って常にパフォーマンスを計測し、新たなインサイトを入手した。こうすることで、必要な場合には途中で方向転換が可能だった。

良い例を2つ紹介しよう。

  • 2回目のSEOスプリントの開始から1か月後、Nyt SynはSEOデータに基づいたFacebookキャンペーンを2つ実施することに決めた。最初のキャンペーンでは、オンラインの夜間視力検査を受けてもらうことを目指した。2番目のキャンペーンでは、夜間の運転では黄色がかったレンズの眼鏡を避けるように呼びかけた。

    この2つのキャンペーンは大成功し、予約が大幅に増えた。チャネルを超えたSEOデータ活用の典型例になった。

  • キャンペーン中に顧客の声を募集し、好ましいものがいくつか寄せられた。許可を得てDriveSafeのページに掲載すると、グーグルのSERPに5つ星の評価を表示できるようになり、全体のCTRが一晩で2~5%上昇した。

学習と調整はSEOスプリントの中核だ。グーグルでは絶え間なく状況が変化するため、迅速に適応していく必要がある。われわれはそれぞれのSEOスプリントから学び、うまくいったものを次のスプリントに使うことで成績を上げていった。

DriveSafeの3回目のSEOスプリントは2020年の9月に予定している。過去の成果を土台に、さらに上積みするには何ができるだろうか。

僕たちが得たインサイトを書き残しておこう。みなさんのキャンペーンに活用できるかもしれない。

  • インサイト1 Google Search Console(GSC)のデータから、夜間視力に関連する語句の検索がいつごろから始まるのかがわかる。つまり、次のキャンペーンをいつスタートさせるべきなのかがわかる。

    1回目のSEOスプリントの時はこれが白紙で、Google Trendsのデータしか使えなかったため10月に開始した。今はサイトへの検索トラフィックが増えたことからデータが増え、グーグルでの検索がもっと早く始まることがわかっているので、9月中旬からキャンペーンを実施している。

  • インサイト2 データは蓄積されていくので、GSCのデータから新たな検索意図がわかるようになる。GSCのデータと顧客からのフィードバックを組み合わせると、より適切なコンテンツを制作する基盤になり、引いては、グーグルで最重要タッチポイントを獲得する可能性が高まる。

  • インサイト3 PPCのデータによって、「注文につながるキーワード」と「注文につながらないキーワード」を把握するためのデータが増えている。GSCのデータをさらに拡充して、Google広告に新たなキーワードを追加していくことにしている。

  • インサイト4 Google広告とFacebookで広告メッセージのA/Bテストを実施して、うまくいく言葉とUSPがわかっている。このインサイトを使ってtitle要素とmeta descriptionタグを更新すれば、より直接的にグーグル上でコミュニケーションをはかれる。

  • インサイト5 SEOのインサイトがFacebookキャンペーンを成功させるのに使えることはわかっている。Facebookでは勝負をかけつつ、Instagramなどのほかのチャネルをテストしていくことになるだろう。

  • インサイト6 どんなリンクが参照トラフィックをもたらすのか把握できているので、3回目のスプリントでは似たようなリンクに注力する。

    相関データでしかないが、検索順位の履歴と記事広告出稿を比較して、順位が向上したタイミング見つけることが可能だ。駄目な広告があれば当たりの広告もある。これはよりよいリンク機会を選ぶのに役立つ。

  • インサイト7 DriveSafeのページで星による評価を獲得した。グーグルの現状を研究すれば、ほかにも追加すべき構造化データを見つけられるだろう。

まとめ

企業は今、手っ取り早い結果を求めており、そのせいでSEOに二の足を踏むところがある。しかし、SEOスプリントを適切に実施すれば、すぐに結果を得られる機動的な枠組みが得られる

グーグルのインデックス化と検索順位のスピードは、自社が有利になるように活用可能だ。うまくやれば、SEOをマーケティングミックスに組み込める

グーグルでは今や数日から数週間で検索上位獲得が可能であり、どれだけ早く上位を獲得できるかは、SERPの1ページめの競争がどの程度かにかかっている。競争が穏やかで変動性が低い戦略的に重要なキーワードは、即効性がありながら安定したトラフィックを長期的に得られるスイートスポットということになる。

SEOスプリントは5つのステップで構成され、少ない予算によって短期間で実施可能だ。学んだことを次のスプリントに引き継げば、うまくいったものを再利用できる。

みなさんのSEOスプリントの成功を祈っている。

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