サントリー120年の歴史をたどるCSR活動年表/アクセシビリティ レベルAAを達成する日本財団――Webグランプリフォーラム(1/3)
企業Webサイトの担当者らが互いのサイトを相互審査するWebグランプリ「企業グランプリ部門」。Web広告研究会が2月27日に開催した「Webグランプリフォーラム」では、「企業グランプリ部門」を受賞した企業が、受賞サイトの目的や狙い、企画立案の経緯、公開後の結果と評価などについて明らかにした。
2017年度のフォーラムでは、受賞者のなかから、サントリーホールディングス、日本財団 、KDDI、コクヨ、雪印メグミルク、三菱自動車工業の6社がプロジェクトの裏側を語った。
この記事では、サントリーホールディングスと日本財団の事例を届ける。
スチューデント賞 グランプリ
「響きあう、活動のすべて」サントリーホールディングス
企業理念を若者にもわかりやすく届けたい、120年の歴史とともにたどるCSR活動年表
「人と自然と響きあう」を企業理念に掲げるサントリーグループ。創業者の精神である「利益三分主義」のもと、社会や自然との共生を目指し、さまざまなCSR活動に取り組んでいる。今回スチューデント賞を受賞した「響きあう、活動のすべて」は、サントリーのこれまでの主なCSR活動を年表形式で紹介するサイトだ。
サントリーグループのCSR活動は、Webサイト上では「環境活動」「文化・社会・スポーツ」に大きく分けて紹介されているが、これまでは「環境活動のページには企業理念の紹介が無い」「文化・社会・スポーツ活動のページは整理されていないため見にくく、わかりにくい」「環境活動、文化・社会・スポーツともに企業理念に基づく活動であるにもかかわらず、それぞれのページが独立していて連動できていない」などの課題があった。
そこで「響きあう、活動のすべて」というサイトを設けて、それぞれのCSR活動は企業理念に基づいた活動であることを理解してもらい、ひいてはコーポレートブランド価値向上につなげることを目指した。
また、このサイトを通じて中学生、高校生をはじめとした若年層とのコミュニケーションを強化する狙いもあった。「アルコールを取り扱う会社でもあり、この世代へのコミュニケーションが課題であったが、我々が伝えたいところをしっかり訴求できたと思う」と松本氏は語る。
年表形式で活動を紹介し、企業理念につなげる
「響きあう、活動のすべて」のサイトでは、まずファーストビューのメインエリアで企業理念を訴求する。コンテンツは、若年層の主要アクセス端末であるスマートフォンでの視認性向上を念頭に、タップ操作(クリック)の開閉式にした。続いて、「その活動は創業からずっと受け継がれてきた…」というメッセージを表示して年表に誘導する。
年表では、およそ120年にわたるサントリーグループの歴史に沿って、CSR活動を振り返ることができる。「年表は、新しいものから古いものにさかのぼる形になっており、最後に創業者にたどり着くようにした」(松本氏)
サイトリニューアルでは、SEOを考慮して「テキストを画像にしない」「サジェストキーワードを分析してサイトに内包する」といった点にもこだわった。また、若年層が興味を持つ仕掛けとして、スマートフォンで見やすい文字数や行間を意識し、年表を読み進めるユーザーを飽きさせない工夫として、活動にあわせたアニメーション表示も取り入れている。
おかげさまで「響きあう、活動のすべて」サイトのアクセス数は、リニューアル前の3倍になった(松本氏)
松本氏はリニューアルした本サイトの効果についてこのように話した。また、Webグランプリの審査員からは、「企業からのメッセージが明確でわかりやすい」「その年の目標、活動理念がわかるのがすばらしい」「サントリーについて知らなかったが、一度目を通しただけでだいたいのことが理解できた」といった評価コメントが寄せられている。
講演の最後に松本氏は、今後の展望を次のように語った。
「若年層にサントリーの企業理念をどうすればわかりやすく訴求し理解してもらえるかを課題の1つに掲げ制作したが、審査員の方々からの、わかりやすさ、見やすさ、楽しさなどのご意見から我々の狙いが達成できたこと、そのことが受賞につながったことは大変自信になる。今後もユーザー目線をもって、さらにこのサイトを充実させていきたい」(松本氏)
浅川賞(アクセシビリティ賞)グランプリ
「日本財団公式サイト」日本財団
サイト全体をレベルAAに準拠、公共機関と同等のWebアクセシビリティに
公益財団法人日本財団は、公益競技であるボートレースの売上金と民間の寄付金をもとに、国際協力、子ども支援、NPO支援、災害支援など多岐にわたる活動を行う。数年前からWebアクセシビリティに力を入れており、2017年度の浅川賞グランプリ(アクセシビリティ賞)を受賞した。
日本財団の活動は多岐にわたるため、広報担当の橋本氏は、「いろいろな活動に携わりすぎているため、何をしている団体なのかわからないことが課題だった。それをわかってもらうのが広報の仕事で、Webサイトも悩みながら進んでいる」と話す。
Webサイトの目的は大きく3つある。
1つ目は、一般的な広報活動として日本財団の活動を知ってもらうこと。
2つ目は、助成金の申請窓口としての役割だ。「NPOなど申請をした団体にボートレースの基金を割り当てているので、申請の受付ページとしてわかりやすくなければならない」という。
そして3つ目が、民間から集める寄付金の受付だ。こちらも申請と同様にわかりやすくなくてはいけない。
Webサイトの訪問者は、福祉や障害者業界の人が多く、支援する人もいれば支援を受ける障害者の方や高齢者の方もいるため、公的機関と同等レベルのWebアクセシビリティであるJIS X 8341-3:2016のレベルAA準拠を目指した(橋本氏)
こうした背景から、2015年にWebアクセシビリティ改善プロジェクトが始まった。
以前からサイトの一部ではWebアクセシビリティに対応していたが、Webサイト全体での対応を前提に構築していたわけではなかった。しかし、フルリニューアルによる対応は予算の都合で難しく、「サイトの構造やコンテンツはそのままで、アクセシビリティを高める」ことになったという。
段階的にWebアクセシビリティ対応を進める
作業としては、「テンプレートのWebアクセシビリティ対応」「PDFや画像の読み上げ」「映像コンテンツの字幕対応」「弱視でも見やすいはっきりした色のデザイン」といった対策を進めた。公開は段階的に実施し、2016年8月にサイト全体のWebアクセシビリティをAAレベルに準拠させている。
「テンプレートを対応させることで、個々の記事をアップする時に、Webアクセシビリティを考えなくてもよくなった」と橋本氏。PDFの読み上げはまだ一部のみだが、需要が高いものから順次対応しているという。
今回の受賞では、達成したWebアクセシビリティ水準が高いこと、図表やPDFの読み上げ対応などが評価されたという。サイト全体でAA準拠は国内でもまれな事例だと橋本氏は自信を見せる。
「誰でも見られる(アクセシブルな)サイトなら、安心して情報を発信できる。また、受賞したことで社内にも活動が認知された」と橋本氏は話す。今後も常に改修を行っていくが、「公式サイト以外のサイトについての対応も考えたい」と話し、Webアクセシビリティ改善に積極的に取り組んでいくと抱負を語った。
Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:「Webグランプリ」受賞企業が語るサイト制作の裏側――2017年度Webグランプリフォーラムレポート(1)(2018/03/29)
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