ソニー、ライオン、IBMなどのWeb担当者が明かすサイト運営ノウハウ「企業ウェブ・グランプリフォーラム」レポート

第4回企業ウェブ・グランプリの受賞サイトの担当者が、サイトの取り組みを紹介したフォーラムをレポート

企業ウェブ・グランプリ事務局は、2010年に開催された「第4回企業ウェブ・グランプリ」の各グランプリを受賞したサイトのWeb担当者がサイトの目的・背景・経緯・運用体制・組織などのほか、受賞後の反響を紹介する「企業ウェブ・グランプリフォーラム」を、3月7日にソニー本社ビルで開催した。この記事では、各企業の担当者が語った、サイトの企画意図やアイデア、苦労話、今後の展望などを紹介する。

企業ウェブ・グランプリは、企業ウェブサイトに携わる担当者が互いに切磋琢磨し、互いのサイトを評価し合う、ウェブ関係者によるウェブ関係者のアカデミー賞。2007年に第1回グランプリを開始し、毎年の12月にグランプリの贈賞式を開催している。

関連情報

ソニー「3D world Created by Sony」
「3D=ソニー」というブランディングに注力

3D world Created by Sony
  • 受賞部門:ベストグランプリ/コンセプト&アーキテクト部門グランプリ
  • URL:http://www.sony.co.jp/united/3D/
  • 企業:ソニー株式会社
ソニー 岩崎 克彦氏
ソニー株式会社
岩崎 克彦氏

フォーラムはベストグランプリを受賞したソニーの講演からはじめられた。ソニーでは、2010年を3D市場の立ち上げの年と定め、「3Dの認知拡大と先駆者としてのブランディング」「コーポレートメッセージ“make.believe”の具現化」「全世界における3Dの一斉導入とサポート」を目的に、「3D world Created by Sony」を2009年12月に公開した。テレビやブルーレイディスク機器、映画やゲームなどのコンテンツ、撮影機器、制作環境など、3D分野のすべてをカバーできる点をアピールするために、一般向けからプロ向けのコンテンツをそろえている。

プロジェクトは全世界で展開されたが、イメージを統一しながら各国のWeb担当者の負担を減らすために素材をモジュール化して配布し、各国ごとに共通のコンテンツとローカル情報を組み合わせて公開するという形がとられた。一般からプロ向けまで、あらゆる層に向けたコンテンツを展開するためターゲティングに苦労したが、サイトのコンテンツに集中してもらい、そのなかで3Dを感じてもらえるように個々の製品や3D技術に寄り過ぎない内容にしたという。

3D world Created by Sony
「3D world Created by Sony」デジタル感や先進性を表現するために黒を基調にしたという。

サイトの評価指標は、今回のプロジェクトが「3D=ソニー」というイメージを伝えるための素材作りとコーポレートメッセージの発信が目的であるため、ページビュー数やユーザー数などのトラフィックによる評価はしていない。また、「3D world Created by Sony」で直接コミュニケーションすることは考えておらず、ユーザーからのフィードバックの収集もしていないという。そのため、コミュニケーションは各国のFacebookページを通じて行うなど、集客やユーザーとのコミュニケーション施策などは各国に任されている。

グランプリの審査では、3Dのイメージが直感的に感じ取れることや、統一された世界観などが評価されている。一方で、全面Flashのサイトのため、HTML版やモバイルへの対応、SEOなどが今後の改善点として挙げられている。1年目はブランディングを重視し、リッチコンテンツで展開した「3D world Created by Sony」だが、今後はHTML版の制作、モバイル対応を進めていく予定だという。

ライオン「ライオンキッズ」
小学生ユーザーを意識した画面デザインと構成

ライオンキッズ
ライオン 有田 香織氏
ライオン株式会社
有田 香織氏

学生・子供向けサイトを対象とした「スチューデント部門グランプリ」を受賞したのは、2010年にリニューアルしたライオンの「ライオンキッズ」だ。ライオンでは、以前から子ども向けのサイトを用意してはいたが、運営の担当部門がなくなったため、しばらく更新されずにいた。そうしたなか、一部のコンテンツやウェブサイトの作りが古くなっていたサイトの見直しを図り、2010年のリニューアルを計画した。

リニューアルに際しては、「子供の生活力をつけるサイト」というコンセプトで、小学校高学年生を主な対象に家事などの生活に関する知識が学べる内容のサイトを構築した。これは、お客様センターに寄せられる問い合わせに、年配の方から洗濯の仕方などに関するものが多くあったことから、子どものうちから生活に関することを学んでおくといいのではないかという考えからだ。

ライオンキッズ
「ライオンキッズ」ライオンの仕事や製品を通してさまざまな生活の知識を得られる。

学びをテーマにした「ライオンキッズ」は、ライオンの仕事や身近な製品をモチーフにしたゲームやコンテンツを通して、生活のさまざまな知識を子供が楽しみながら学べるようにエンタメ性の高い表現を重視し、工場見学や買物をバーチャル体験できるコンテンツなどを用意している。また、ライオンという企業を知ってもらうにあたり、商品開発、生産、オフィス、店舗、家庭など、消費者行動に沿ったコンテンツテーマに切り分けるといった工夫もしている。

サイトの制作では、大人向けのサイトとは異なるノウハウに苦労したという。なかでも、サイトの展開速度に気をつかったといい、子供が認識しやすいように、一般的なサイトと比べてFlashの展開速度を遅めに設定するなどの工夫をしている。また、全体的な色調は、子供ははっきりした原色を好む傾向があるということから、ライオンのイメージカラーである黄色にしている。その他にも、随所に効果音を付け、漢字は小学校5年生までの常用漢字を使用するといった工夫がされている。

なお、スチューデント部門については、慶応義塾湘南藤沢中等部と高等部の生徒によって審査が行われ、「キャラクタがかわいい」といった評価コメントなどがあった。

日本IBM「IBM研修サイト」
研修コースの検索をさまざまな切り口で用意

IBM研修サイト
日本IBM 伊庭 まゆみ氏
日本IBM株式会社
伊庭 まゆみ氏

「コンテンツ企画&ライティング部門(B2B)」を受賞したのは、日本IBMの「IBM研修サイト」だ。日本IBMでは、IT関連のハードウェア/ソフトウェア製品やソリューションだけでなく、社内向けに行っている研修やトレーニングもサービスとして提供しており、人材供給会社としても定評がある。

「IBM研修サイト」では、IBMが培ってきたリーダーシップ、コミュニケーション、プレゼン、プロジェクト管理、営業など、多くのテーマごとの人材教育ノウハウを他の企業へも研修サービスとして提供するというもので、「研修に関する情報提供」「申し込みへの効果的な誘導」「お客様のリテンション」の実現を目的に運営されている。

IBM研修サイト
IBM研修サイト。研修コースの紹介や申し込みだけでなく、コラムなどの読み物も用意されている。

研修コースの種類が500以上もあるため、キーワード検索に加えて「対象者別」「研修形態別」「研修内容別」といった複数の切り口から最適なコースを探せるようにしている。また、製品カタログのように研修コースを並べるだけでなく、サイト自体をメディアとして運営しており、研修に関する最新情報や人気講師の自己紹介、悩み相談コーナーなどを設けたり、メルマガやキャンペーンとの連動を行ったりしている。特に研修というものは、他の商品とは違い講師の姿勢や想いも重要になるため、それらを伝えることで、ユーザーは研修コースの内容をより深く理解できるとともに、求めていた情報だけでなく思いがけない情報を得ることもできる。

審査コメントでは、文字が多すぎて情報をちりばめただけの印象があるという点や、ソーシャルメディアとの連動が弱いといった点が指摘されており、今後の課題として取り組むとしている。同時に、B2Bサイトでは利用者から使い勝手の感想や意見を聞く機会がほとんどないため、ウェブ・グランプリでの受賞と審査員からの指摘は担当チームにとって大いに励みになったという。

ファミリーマート「ファミリーマートCSR活動」
企業が伝えたいメッセージやコンテンツを前面に打ち出す

ファミリーマートCSR活動
ファミリーマート 浜尾 純子氏
ファミリーマート株式会社
浜尾 純子氏

「企業情報・IR・CSR部門」を受賞したファミリーマートでは、サイト内情報の蓄積からサイト価値の向上に取組んでいたが、CSR情報領域はコンテンツの継ぎ足しによってカテゴリ内の回遊と関連コンテンツへの遷移が阻害されてしまっていた。そのため、社会・環境情報へのユーザーニーズに対応しきれていないなど、課題を抱えていた。商品/キャンペーン情報など、更新系の業務にウェイトがおかれ、抜本的な改善ができずにいたが、社会・環境推進部で毎年発行している印刷物『ファミリーマート社会・環境報告書2010』を制作するのにあわせて、印刷物で紹介できない情報を含めて網羅性のある報告をウェブ上で実装するためにCSRカテゴリのリニューアルを実施することになった。

ファミリーマートCSR活動
「ファミリーマートCSR活動」CSR活動紹介や子ども向けのコンテンツがある。

ウェブでは、冊子に入りきらなかったデータ編を掲載するなど補完的な役割を担うとともに、ユーザーのジェネレーションごとにコンテンツを整理するなど、構造とデザインの見直しを行った。リニューアルに際しては、「会社の意志、未来のビジョンが明確に出ていること」「入口で中に入ってもらえるよう、関心を持ってもらえる工夫があること」「環境に関して生活者視点での実践行動を広め、環境行動を促す努力が見えること」「一方通行ではなく、対話を行う努力をしていること」の4つをサイト改善のポイントとして掲げて課題を洗い出した。

また、CSRに関する専門的な情報が必要なユーザーは、深い階層にあっても自力でたどり着けると判断し、代わりに企業として伝えたい内容をユーザーの目につくように配置した。具体的には、特集コンテンツの対談記事や子ども向けコーナーへのリンクをトップページに配置したり、頻繁に更新されるコンテンツとして毎月のレジ横募金合計金額を表示したりといった部分で、結果としてサイトの滞在時間と回遊の向上につながった。

今後の展望としては、アンケートによる傾聴機能の追加やユニバーサルデザイン/グローバル対応を予定している。

INAX「INAX商品情報」
使い勝手とブランディングのせめぎ合いから両立を実現

INAX商品情報
INAX 千葉 哲也氏
株式会社INAX
千葉 哲也氏

「商品・製品・サービス紹介部門(J-FEC賞)」を受賞したINAXは、トイレやお風呂といった住宅設備機器の製造販売を行っており、ウェブサイト「INAX商品情報」は商品カタログとしての役割を果たしている。商品は工務店や特約店などを通して提供されるため、一般ユーザーに向けたアプローチは受賞したウェブサイトが初めての取り組みだった。

INAX商品情報
「INAX商品情報」豊富な写真など、商品の利用イメージがよく伝わるような内容となっている。

これまでは、ユーザーの使いやすさを重視するか、プロモーションやブランディングのためのデザイン性を重視するかでウェブサイトの方針変更を繰り返してきたが、両立を目指して2008年に3年間でウェブの利用(訪問数)を2倍にするという中期計画を立案した。リニューアルに際しては、経営コンセプトにある「魅力の品質」「信頼の品質」をウェブで達成するため、コンセプトとして「安心基準」と「魅力基準」を設けたという。「安心基準」では、探しやすい、使いやすい、わかりやすいといったこと、「魅力基準」では、こんなイメージの内装にしたいと思えるか、他にないINAXのユニークさがあるかといったことを検討した。2010年の実績としてユーザー接触数と商品情報の総ページビュー数で目標を達成できた。

また、INAXはトステムやサンウェーブなどと大合併を行い、4月1日からLIXILとしてスタートする。これにともなってウェブサイトの大規模な統合整理も実施される予定で、新しいLIXILブランドの認知をどのように高めていくのか、サイトのどの部分を強化していくのかなど、既存の情報提供サービスを優先しながら各社の担当者で打ち合わせを行っている状況だという。

サントリーホールディングス「サントリーモバイル」
重要性を増すモバイルサイトとスマートフォン対応

サントリーモバイル
  • 受賞部門:モバイル部門
  • URL:http://m.suntory.co.jp/
  • 企業:サントリーホールディングス株式会社
サントリーホールディングス 三上 泰斗氏
サントリーホールディングス株式会社
三上 泰斗氏

モバイルを効果的に活用する「モバイルサイト部門グランプリ」を受賞したのは、サントリーが展開するモバイルサイト「サントリーモバイル」だ。「サントリーモバイル」は主要3キャリアの公式メニューから利用でき、商品情報や飲食店検索、レシピ、待ち受け画面やゲームなどの娯楽コンテンツを提供している。

また、ユーザー拡大のために、「週1回以上の更新と週刊メルマガの配信」「(モバイルユーザーの特性を考慮した)若者向けコンテンツの充実」「メルマガ会員を促進させるための会員限定コンテンツ」などを運営方針として掲げており、ユーザーニーズを把握しコミュニケーションを計るための試みとして「サンモ箱」というご意見箱を2010年から設置している。

サントリーモバイル
「サントリーモバイル」頻繁な更新と週刊メルマガによって集客を行っている。
スマートフォンにも対応している
既存のモバイル向けコンテンツを充実させながら、急増しつつあるスマートフォンにも対応している。

サントリーではグループ企業に飲食店が多いが、モバイルクーポンを使ったマーケティングに活用し、スポーツ活動や工場見学などの企業系コンテンツも公開している。ビールの店頭キャンペーン企画では、モバイルでの応募がパソコンの応募を上回っているものもあり、キャンペーン企画はいまやモバイル抜きには考えられないとしている。

また、「金麦」モバイルサイトでは、ターゲット層である30~40代男性から予想を上回るアクセスがあり、「モバイルは若者が使うツール」という考えを覆した結果が得られたという。他の製品では、店頭商品のQRコードからモバイルへ誘導した施策なども効果をあげている。

最近の動向としてはスマートフォンからのアクセスが急増しており、積極的に専用サイトを用意したり、アプリを制作したりといった取り組みを行っている。スマートフォン担当チームは、グループ各社や事業部のネットマーケティングをサポートする立場にあるが、2011年3月のリニューアルにあわせて自らのサイト運営で得たノウハウを生かした、スマートフォン用サイトの制作ガイドラインを整備するなど、スマートフォンの活用を促進させている。またガイドライン説明会を開くことで、グループ全体でモバイル・スマートフォンを活用していくための啓蒙活動も積極的に行っている。

◇◇◇

2007年に開始した企業ウェブ・グランプリは、年々その規模を拡大しており、2010年度は35社92サイトがグランプリへと参加し、トリプルメディア部門やアクセシビリティ賞といった新たな部門なども設け、活動の範囲を広げている。2010年度のグランプリはすでに終了しているが、企業ウェブ・グランプリ事務局では、日本のウェブ業界の発展に向け、第5回の開催要項を2011年6月に発表し、12月7日(水)に東京のサントリーホールで授賞式を行う。

企業ウェブ・グランプリの詳細は事務局まで

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