「アドフロード」「ブランドセーフティ」「ビューアビリティ」をスマニュー・ソフトバンクが本気で語った
デジタル広告に携わっているあなたが受け取っている(提出している)広告配信レポートは、
- 支払われた広告費が適切にビジネスに貢献しているか
- 広告主にとって問題がある状況の可能性がどれぐらい生じているか
を正しく表しているだろうか。
そしてあなたは、昔ながらのレポートの裏に隠れている
- 広告が生み出す企業ブランドへのリスク
- 反社会勢力への資金提供を知らずに行ってしまっているリスク
などを正しく理解しているだろうか。
デジタル広告にかかわるすべての人が知っておくべき大切なこととは? スマートニュースの菅原氏をモデレータとして、ソフトバンクの岩本氏、国内メーカーの担当者をパネリストにしたディスカッションが「Web担当者Forum ミーティング2017 秋」で行われた。そのテーマは「すべての広告主が『アドフロード』『ブランドセーフティ』『ビューアビリティ』を本気で考えるべき時代が来ている(しかも経営レベルで)」だ。
自社の広告費が反社会勢力に流れているかも、ブランドを傷つけているかも
マスメディアからネットにユーザーが移ったためデジタル広告にシフトしたが、そのデジタル広告に不信感が生まれている
というのが、最初の問題意識だ。ソフトバンクは感度の高い企業だが、それでも経営層となるとデジタル世界の激しい変化に対応しきれるとは限らない。「問題提起する段階」の企業も多い。
タイトルにもなっている「アドフロード」「ブランドセーフティ」「ビューアビリティ」を、菅原氏が一枚にまとめたのが次の図だ。ちなみに「アドフラウド」と表記することもあるが、この記事では「アドフロード」に統一する。
これらは分けて語られることが多いが、広告主が意図しないところにお金がいってしまうという意味では同じだ。ざっくり説明すると、次のような問題のことである。
- ビューアビリティ
ディスプレイ広告(クリックではなく閲覧が目的)がターゲットユーザーにきちんと見られる状態にないのに「表示した」として広告費が発生してしまってる問題
- アドフロード
人ではなくボットが見た、またはドメインを偽装するなどして広告主が意図しないサイトに広告が掲出されたのに広告費が発生する(あるいはインプレッションが不正に水増しされる)ことで、悪意をもった者に広告費が流れてしまう問題
- ブランドセーフティ
公序良俗に反するメディアやフェイクニュースなどに広告が表示され、広告主のブランドを傷つけてしまう問題
海外では、フェイクニュースで貧しい国の青年が半年で数万ドルもうけたなどの例もある。また、2017年1月にP&Gがユーチューブ広告を引き上げたことで、反社会的勢力のサイトに広告が出てしまうリスクについても知られるようになった。
しかし、日本ではそこまで意識している企業は少ない。岩本氏も、スーパーアフィリエーターや個人的に金もうけをするサイトなどは広告の掲載先として意識していたが、ユーチューブのような場を通じて反社会的勢力に広告費が流れてしまうといったことまでは思い至らなかったという。
しかしアドフロードは実際に発生している。
私たちがかけた非常に高額な資金がどこかに流れてしまっている、その可能性があるのだということは脅威だし、納得がいかない(岩本氏)
もし広告が出てしまったらブランドに傷がつくことになるので、お金の問題ではない。また、仮に意図しないところ出るのは1%だったとしても、100億円の広告を出していたなら1億円が反社会的勢力に流れる可能性があることになる。上場企業で社会貢献活動をしているにもかかわらず、デジタル広告では正反対の行為をすることにもなりかねない。もし株主総会で指摘されたら、企業はどうしようもない。
ブランド価値を守る監視体制とエスカレーションフローが必要
お金が失われるというリスク以外に、変な場所に広告が出たためにブランドイメージが損なわれるというリスクもある。危険性のあるサイトは、フェイクニュースやテロ関連の他にも、一部のアダルトサイト、違法ドラッグ関係など、さまざまある。
まずは、担当者自身のリテラシーを上げることが第一だが、属人的になるのはよくない。そこで、純広告や記事広告など自社でコントロールできるものは、レギュレーションを設ける。さらに、コントロールしにくいものは、パートナーと協議しながらエスカレーションフローを決めておく。
また岩本氏は「『こんなサイトに広告が出ていた』とキャプチャーが送られてきたことがある
」というエピソードを紹介した。実際には、ソフトバンク自体ではなく、とある販売店が出した広告だったのだが、ソフトバンクの広告が公序良俗に反するサイトに出てしまっていた。ブランディングのコミュニケーションを行っている最中だったこともあり、目が行き届かないのは非常に問題だと思ったという。
パフォーマンスだけを追い求めるなら、(内容はともかく)動画を見るなら回線は速い方がいいので、キャリアの広告が出るのは正しいようにも思える。
しかし、ブランドセーフティの観点からは問題があった。特に昨今は、「こんなところにソフトバンクの広告が出ていた」とSNSでシェアされる可能性もある。アダルト動画を見た個人だけでなく、広く一般に知れ渡ってしまうリスクがあるのだ。このため、こういったリスクを経営層に説明し、問題提起することが必要になっている。
また、担当者がリスクがあると理解しリスク管理をしていれば、経営層との会話で慌てることもなくなる。ソフトバンクでは、ブランドセーフティとアドフロードの対策について社内で合意をとり、予算化したという。
このように意識を変えるのは、稟議や承認などが必要でなかなか大変な作業だ。岩本氏は次のように言う。
初期投資ですぐにコンバージョンが上がるわけではないため、目先の利益にこだわる経営層がいれば、リスク回避やCPA効率の改善の可能性があることを説得しなければならないこともあるでしょう
リスク回避するには直接取引も視野に入れる
菅原氏は、デジタル広告に携わるすべての人が知っておくべきこれらのトピックを次のようにまとめた。
- マーケティングにデジタル広告が重要だというのは、揺るぎない事実
- そこに危機が起きている
- アドフロードは経営課題として認識し、断固撲滅しなければならない
- 放置すると時間とお金をかけたブランドが壊れてしまう
- リスクがあることを経営層に提言すべき
また菅原氏は次のようにいう。
解決するには、高品質でリスクの低いメディアとの直接取引も視野に入れてほしい
広告主とメディアの間にいろいろなところが挟まれば、当然抜け道ができやすくなるからだ。
パネリストはビッグクライアントだったため、会場からは「中小企業はどう向き合うべきか」という質問が出た。それに対して菅原氏は、次のように答えた。
ネットワークを介して大量に広告枠を仕入れると発生しやすい問題だというのがポイントの1つ。中小企業は大企業のように大量に広告枠を買う必要はないので、自分たちに合う良質なメディアを見つけて直接取引するのが一番効果的
いずれにしろ、「リスクを抱えているのは広告主なので、原理原則として広告主が自分ゴトとしてやるべき
」だという。
ソフトバンクは、広告出稿量が多いため代理店に依頼しているが、ホワイトリスト・ブラックリストの考え方でポリシーを策定している。
代理店に「大丈夫ですか」と質問したら、「大丈夫」と答えてくるに決まっている。だから判断と評価のよりどころが必要なのだ。
「何もしなければ危ない」という前提に立って、「どう解決したらいいか」と質問するか、「ポリシーを策定したのでその通りにやってくれ」と言うかだ。レポートを見ているうちに、詐欺を見抜くリテラシーも上がってくる。そこから、排除すべきものを排除するという意識が必要だ。
\参加無料 11/19火・20水 リアル開催/
「Web担当者Fourm ミーティング 2024 秋」全50講演超!
ソーシャルもやってます!