Googleアナリティクスの「参照元」は過去にさかのぼる。GA独自の定義を正しく理解する[第25回]
一般的なアクセス解析ツールにおける「参照元」とは「計測対象サイト外のリンクなどからサイトへ訪問した場合に、その外部サイトを指す」ということは前回解説したとおりだ。しかし、Googleアナリティクスの“参照元”の定義は少々特別な仕様になっている。今回は、その「特殊な」Googleアナリティクスの参照元データとレポートについて、詳しく説明しよう。
今回の記事中では、一般的な意味合いの参照元のことを「参照元」とかぎ括弧付きで表し、Googleアナリティクスの意味での参照元のことを“参照元”とクォーテーションマーク付きで表現することにする。
- Googleアナリティクス独自の“参照元”の定義を知る
- 定義の違いで起きる影響を知る
Googleアナリティクスの“参照元”は過去にさかのぼる
Googleアナリティクスの“参照元”も、「セッションベースの外部参照元(計測対象サイト内のランディングページの参照元」のことを意味しているのは、一般的な「参照元」の定義と同じだ。しかし、Googleアナリティクスではセッション(訪問)の「参照元」をそのまま表示するわけではないという点が異なる。
Googleアナリティクスは、実際のセッションが「参照元あり」の場合と「参照元なし」の場合で、“参照元”として利用するデータを切り替えるのだ。仕様はおおむね次のとおりだと思ってよい。
- 「参照元」が、「参照元なし」以外の場合
そのセッションの「参照元」をそのまま“参照元”として使う - 「参照元」が、「参照元なし」の場合
直前セッションの“参照元”を今回のセッションの“参照元”として利用する
わかりにくいと思うので、図で説明しよう。図1は計測対象サイトにおけるAさんの閲覧履歴だとする。大きな丸が計測対象サイト内であることを、小さな丸が各ページの閲覧(1ページビュー)を意味している。矢印の連続が1セッションだ。
Aさんは計測対象のサイトに3回訪問している。初回訪問の「参照元」はサイトAで、その次に検索エンジンが「参照元」の訪問があり、レポート対象月となる3回目の「参照元」はブックマークによる訪問(つまり「参照元なし」)だったとしよう。
この場合、普通のアクセス解析ツールではレポート対象月(図1の一番右側)の「参照元」は「参照元なし」と分類されるはずだ。
しかしGoogleアナリティクスではこの場合、レポート対象月のAさんの“参照元”は「参照元なし」ではなく「検索エンジン」となる。上記②のケースに該当するためだ。つまり、Googleアナリティクスでは、直前セッションの“参照元”である「検索エンジン」がそのままレポート対象月のセッションの“参照元”として利用されるのである。
もしレポート対象月の直前の訪問も「参照元なし」だった場合、さらにその前のセッションの「参照元」(つまりサイトA)が利用される。つまり必ずしも1つ手前とは限らず、何セッションも手前かもしれないということだ。
厳密にいえば、AdWordsとGoogleアナリティクスのアカウントが連携している場合やGoogleアナリティクスのカスタムキャンペーンパラメータ(次回紹介する予定)を利用している場合は、それらの情報が優先される仕様だが、ここでは詳しく触れない。まずは「『参照元』が判明するまでさかのぼる」ということを正しく理解しておこう。
「参照元」をさかのぼるのは「手がかりを増やすため」
なぜこのような仕様になっているのだろうか。筆者なりに付け加えておこう。実際の「参照元」が「参照元なし」なら、確かにその情報をそのまま表示するのが素直だ。しかし「参照元なし」というのは、「一切セッション参照元の手がかりはありません」と言っていることに等しい。
つまり「実際の施策の役に立つ情報を何も提供していない」ということにもなる。そこで、そのユーザー(Cookie)の過去のセッションにさかのぼって、どのような「参照元」で来たのか判明する一番新しい“参照元”を提示しようと考えたのではないだろうか。
AdWords広告などの運用型広告を考えてみよう。AdWordsでは、昨日ユーザーが広告をクリックしてサイトに訪問してその日は直帰し、今日ブックマークから訪問してコンバージョンした場合、昨日の広告にコンバージョンがひもづけられる。このAdWords広告のコンバージョン計測と同様の考え方なのだと理解するとよいのではないだろうか。
Googleアナリティクス独自の“参照元”定義が適用されているレポート
このGoogleアナリティクス独自の“参照元”の定義が適用されている範囲は、トラフィック系のレポートのうち、外部ツールと連携しているAdWordsとSearch Consoleを除いたすべてが対象になると考えておこう。
では、その“参照元”が確認できるレポートを具体的に見てみよう。詳細は別の記事で解説するが、「“参照元”をどのようにグルーピングして見るか」のディメンションは複数ある。大ざっぱに見たい場合や細かく見たい場合などで、見るレポートを変えていくことになる。
今回は、代表的な[集客]>[すべてのトラフィック]>[参照元/メディア]レポートを紹介する。“参照元”のグルーピングの単位としては「参照元」「メディア」「キーワード」などのディメンション(図3赤枠部分)があるが、[参照元/メディア]レポートは「参照元」と「メディア」を組み合わせた「参照元/メディア」ごとに集客状況を把握することができる。
たとえば広告でない検索結果ページからのセッションは、この[参照元/メディア]が「登録検索エンジン名 / organic」という表記になる。図3青枠部分の例では、第1位がグーグル検索結果ページ、第3位がヤフー検索結果ページのリンクからのセッションということだ。
第2位の「(direct) / (none)」は「参照元なし」を意味し、第4位にある「example.com / referral」といった表記パターンはその他の参照ドメインのリンクからのセッションを表している。
つまりここに表示されている「(direct) / (none)」は、過去にさかのぼっても「参照元」が見つからなかったセッションということになる。
一般的な「参照元」が素直に“参照元”として使われるレポート
一方、[コンバージョン]>[マルチチャネル]のレポート群では、セッションの「参照元」情報がそのまま素直にGoogleアナリティクスでも“参照元”として使われる。
たとえば、図4の[コンバージョン]>[マルチチャネル]>[コンバージョン経路]レポート(図4赤枠部分)を見てみよう。このレポートは、目標達成した人に対して過去30日間(1日~90日まで選択可能)までさかのぼって、過去のセッションの「参照元」の履歴を表示するレポートだ。このレポートではGoogleアナリティクス独自の定義による“参照元”ではなく、各セッションにおける「参照元」がそのまま使われている。
そのことは、図4青枠部分の「ノーリファラー」(「MCF チャネル グループ」というディメンションの分類で「参照元なし」を意味する)を見ればわかる。というのも、ここでの「参照元」がトラフィック系レポートと同様の定義の“参照元”であれば、この「ノーリファラー」は、直前の参照元である「オーガニック検索」でなければならないが、そうなっていないからだ。
[コンバージョン]>[マルチチャネル]>[コンバージョン経路]レポート(図4)は各セッションの「参照元」の履歴を把握するのが目的のレポートであるのに対して、トラフィック系のレポート群(図2、図3)は、直近で判明した流入原因である“参照元”を見るためのレポートだ。レポートの目的が違うので当然といえば当然だが、混乱しないよう気をつけたい。
定義の違いによる影響はどのくらいあるのか?
おそらく読者の方は、実際の「参照元」ではない独自の“参照元”がレポートに使われることで、ほかのアクセス解析ツールとの差がどのくらいあるのかという点に関心があるのではないだろうか。少し古いデータだが、大昔からこの仕様は変化がないので、一例を紹介しておこう(正確には細かい仕組みに違いがあるが、最終的にレポートに集計されるものは変わっていない)。
図5がそれだ。これはあるサイトに3つのアクセス解析ツール(すべてJavaScriptの計測タグ型)を実装し、同じ月の月次データを使い、それぞれの集計レポートをもとに作成したグラフだ。取得するデータは同じなので、ページビュー数や参照元の総数でもあるセッション(訪問回数)などの基本データはほぼ同じ数値だった。
わかりやすくするため、このグラフでは「参照元」の情報を、「参照元なし」「検索エンジン」「他サイト(前の2つ以外の意味)」の3種類に分類して、その割合を棒グラフで表している。一番上の棒グラフがGoogleアナリティクスのデータなのだが、ひと目見ただけで、他のツールのデータとかなり違うことがわかるだろう。
Googleアナリティクスの仕様から考えると、実際は「参照元なし」なのに、その多くが「検索エンジン」など他に分類されているということがわかる。
もちろん集客施策などの特徴によってWebサイトの実態はさまざまなので、このような実験をやらない限り皆さんのサイトについて正確なことを言うことはできない。ここに示したのはあくまで一例だが、Googleアナリティクスの“参照元”はかなり実際とは乖離がある可能性があるということを知っておこう。
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