企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用の現場

ソーシャル×オウンドメディアの力でコンテンツを拡散、ファンの心をつかむバランス感覚とは/マンション・ラボ

ソーシャルメディアとオウンドメディアを組み合わせてコンテンツ拡散・認知向上へ
企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用

コンテンツとして心がけているのは、テーマやボリュームのバランスです。ファンをつくるには、ロジカルなコンテンツと柔らかいコンテンツのバランスが大切です。

ソーシャルメディアで記事を拡散させるにはタイミングが重要です。過去の記事でも、時節にあったコンテンツであればまた拡散します。Twitterは過去のツイートでもお気に入りにされることもあり、アーカイブとしての価値も感じます。

マンション情報サイトの「マンション・ラボ」は、つなぐネットコミュニケーションズが2011年に運用開始したオウンドメディアだ。マンション居住者の生活に密着し、専門家コラムやインタビュー記事、編集部スタッフの体験企画など、さまざまなコンテンツを展開。翌年にはソーシャルメディアを本格的に開始し、オウンドメディアの認知拡大を図っている。

早くからオウンドメディアの運用に取り組み、ソーシャルメディアを組み合わせてメディアの価値を高めてきた、同社ソーシャルメディアアカウントを運用する伊藤鳴氏と井上栄里子氏に、クチコミされるコンテンツの秘訣や投稿のノウハウなど、運用の裏側を伺った。

※アカウント情報は2015年1月末時点の内容
ソーシャルメディアアカウント紹介
  • ツイート:1,430
  • フォロー:4,260
  • フォロワー:6,420

マンションに住まうを考えるサイト「マンション・ラボ」の公式アカウントです。新着記事情報や、人気記事をピックアップしてご紹介します!

  • いいね! 18,000件

マンションのライフスタイル総合情報サイト「マンション・ラボ」の公式Facebookページです。

運用目的
マンション居住者をターゲットにニッチなオウンドメディアを展開

――オウンドメディアであるマンション・ラボを開始したきっかけは何ですか。

株式会社つなぐネットコミュニケーションズ
事業推進本部 WEB事業部
WEB企画営業課
課長補佐
伊藤 鳴氏

伊藤マンション・ラボは、「マンションに住まうを考える」サイトとして、マンション生活をより豊かで快適にする情報の提供を行うことを目的に、2011年より運営を開始しました。

それまで、マンションといえば購入時やマンション管理に関する情報が一般的でしたが、マンション生活を送る上で必要な情報、たとえばご近所付き合いや収納の工夫といった細やかな情報も大切だと考え、専門家の方によるコラムや、積極的な取り組みを行うマンション管理組合、参考になる活動をされているNPOや企業・団体への取材記事などの情報提供を行っています。

また、マンション・ラボの強みとして、約1万6千人のマンション居住者の方に「リサーチ会員」としてご登録をいただき、さまざまなアンケート調査が実施できることがあげられます。アンケートの結果は、コンテンツとして配信するだけでなく、マンション・ラボの新しいコンテンツや企画に役立てています。さらに、リサーチの対象が「マンション居住者」という、非常に特徴のあるパネルのため、関心をお持ちいただいた企業様からのアンケート調査依頼も増え、マンション・ラボの収益源になっています。

多くのリサーチ会員を有するのもマンション・ラボの特徴

運用体制
コンテンツを拡散させるためのソーシャルメディアの運用のコツ

――オウンドメディアを運用するなかで、ソーシャルメディアのアカウントを開設した理由は。

株式会社つなぐネットコミュニケーションズ
事業推進本部 WEB事業部
WEB企画営業課
井上 栄里子氏

井上ソーシャルメディアは、マンション・ラボを立ち上げた当時から開設していましたが、最初は自動投稿のみでした。目的をコンテンツの拡散、認知度の向上に設定して本格的な運用を開始したのは、2012年の1月からです。運用を開始したときは、炎上などのリスクは特に考えておらず、コンテンツの拡散を目指して始めました。

――実際の運用はどのようにされていますか。

井上現在のFacebookとTwitterの運用は、基本的に私が担当しています。マンション・ラボで毎日新しいコラムが公開されるので、FacebookとTwitterで紹介しています。Twitterでは新着に加えて、関連する過去の人気記事なども投稿するようにしています。

運用では、メディア企業のアカウントとして、リツイートやお気に入りが多いギズモードのTwitterアカウントを参考にしました。始めたばかりのころは、140文字いっぱいでツイートしていましたが、ギズモードのツイートを見て、むしろ記事に関するちょっとしたコメント、ひねったコメントを入れる方が、ユーザーがクリックやリツイートをしたくなることがわかりました。

記事の拡散という意味では、タイミングも重要です。過去の記事でも時節にあったコンテンツであればまた拡散します。Twitterは過去のツイートでもお気に入りにされることもあり、アーカイブとしての価値も感じます。

また、コンテンツの拡散に加えて、マンション・ラボのファンも増やしたいので、新着コンテンツの紹介の後、編集部の顔が見えるようなコメントを入れたツイートをするようにしています。コメントのツイートがお気に入りにされるとうれしいですね。最近は、編集部がおもしろいと言ってもらえるように、顔の見えるサイト作りも意識しています。

――運用のマニュアルを作られたということですが、これは運用開始時からあったのですか。

井上いいえ、これは運用をしながら得られたコツなどをまとめているものです。たとえば、Facebookでは、「ファーストビューで見られる文字量に注意する」「途切れないようにコンパクトにまとめる」といったことがあります。

それからTwitterの場合は、ツイートするときURLを入れると、Twitterカードの設定で自動的に概要と画像が表示されますよね。その画像のツイートと写真を添付したツイートのクリック率を比較してみたら、写真を添付したほうの反応が良かったので、毎回画像を添付するようにしています。

量よりも質を重視。マンション・ラボの世界観を伝えるための運用

――FacebookとTwitterでは反応に違いがありますか。

井上Facebookは男性が多く、特にコミュニティ、街づくり、ボランティアなどに関心が高い方が多いですね。Facebookは投稿頻度も週に3回くらいにしているので、コンテンツを厳選して紹介しています。

Twitterは、主婦の方、学生さんなどもフォローしていただいていますが、Facebookでは反応が薄いガーデニングやインテリアなどの話題も反応があります。

前代未聞のセルフビルド建築、沢田マンションが今の時代に問うこと。

FacebookでもTwitterでも反応が良かった記事としては、「前代未聞のセルフビルド建築、沢田マンションが今の時代に問うこと。」があります。沢田マンションは高知県の夫婦2人が建築したもので、建築に関心のある人には有名なマンションです。

人気の記事は、ソーシャルメディアに投稿しなくても、記事のソーシャルボタンから自然に拡散していくことも多いです。

――いいね! やフォロワーを集めるための施策は何かしましたか。

井上Facebookの投稿の宣伝、Twitterのプロモツイートを広告として利用しました。ただ、「いいね!」やフォロワーなどの数を追いかけすぎて、ターゲットとずれた人を集めても意味がなくなるので、数値はそれほど意識していません。

広告ではFacebookでもTwitterでも、マンション・ラボのサイトの宣伝というよりも、軍艦島などの人気のコンテンツのリンクを広告として出稿しました。「宣伝だけどコンテンツがおもしろい」というような声もいただいたので、狙い通りだったと思います。

――ソーシャルメディアの運用で困ったことはありますか。

井上毎朝、いただいたコメントをチェックして、質問や意見などについてはコメントを返すようにしていますが、コメントの返しに困ることがあります。

たとえば、ガーデニングの記事で観葉植物を紹介したときに、ソーシャルメディアで「うちのはすぐ枯れてしまう、どうしたらよいか」という相談が寄せられました。私たちは、ショップに取材して記事を書いていますが、専門家ではないので、育て方の詳細までは答えられないので悩みました。わかる範囲で回答しましたが、こういう悩みはありますね。

信頼性と親近感、両方を満たすコンテンツのバランスとは

――マンション・ラボの企画やコンテンツ作りについては、どのように運用されていますか。

伊藤マンション・ラボについては、外部のライターやカメラマンの方などのご協力をいただきながら、主に私たち2人で企画・運用を行っています。

マンション・ラボのコンテンツとして心がけているのは、テーマやボリュームのバランスです。たとえば、すばらしい取組みを行う方々への取材は、単なる事例の紹介だけではなく、実施に至った背景や経緯、苦労されたポイントなどを詳しく丁寧に取材し、記事にします。当然ボリュームも多くなりますが、同様の悩みや課題を抱える方にとっては、とても貴重な情報として活用いただけるものと思っています。

マンションの「蹴破り戸(隔て板)」は、果たして簡単に蹴破れるのか!?

その一方で、ユニークな記事や動画などにも力を入れています。たとえば、「マンションの蹴破り戸(隔て板)は本当に蹴れば破れるのか」という体験レポートは、ユーザーとの距離が近いコンテンツです。ファンをつくるには、ロジカルなコンテンツと柔らかいコンテンツのバランスが大切です。たくさんの方に、マンションでの暮らし方に対してもっと気づきや関心をもっていただけるようなコンテンツづくりも、マンション・ラボを知っていただくきっかけになりますし、それだけ一緒に「マンションに住まうを考える」方が増える可能性もありますから。

もちろん今も試行錯誤しながらなので、うまくいかないこともたくさんありますが、マンション・ラボらしい、マンション生活にこだわった情報をこれからも提供して行きたいと思います。

効果測定
予約投稿、分析にツールを活用

――ソーシャルメディアの効果測定はされていますか。

井上細かくは測定していませんが、アカウント全体の運用状態をチェックするために、フォロワー数や「いいね!」の数は見ています。また運用ツールの「つぶやきデスク」で時間帯による反応の違いを見ることもあります。

――ツールの選定では、何を重視しましたか。

井上ソーシャルメディアは夕方に投稿するようにしていたのですが、2014年の1月くらいから取材などが増えて予定通りの投稿ができなくなることがありました。そこで、投稿をあらかじめ予約できるツールがないかと探していたところ、その年の5月に開かれた展示会でつぶやきデスクを見つけました。機能などを聞いて、必要な要件がそろっていることから、その後すぐに導入しました。

つぶやきデスクのいいところとして、活動しているユーザーが多い時間帯がビジュアルで見られるので、投稿するべき時間がわかることです。また他社との比較分析ができることもいいですね。

――つぶやきデスクを導入後、予約投稿以外で利用されている機能はありますか。

井上ツイートのお気に入り、リツイート数などが一覧で見られるのがいいですね。反応の良い投稿というのがすぐにわかります。今後、メンバーが増えて運用体制が変わったときには、承認機能なども使うことがあるのかなと思います。

メディア運営の収益源にもなるリサーチ会員

――リサーチ会員が1万6千人いるということですが、どうやって会員を集めていったのでしょうか。

伊藤最初は、当社のe-mansionインターネットサービス会員の方を中心に告知を行い、あとは自然に会員を増やしました。

井上ソーシャルメディアでフォローしてくれている人にもリサーチ会員になってもらいたいという思いがあるので、お知らせすることもありましたが、その投稿は反応が悪いですね。

伊藤リサーチ会員数が増えることは喜ばしいことですが、無理に増やすような施策は考えていません。たとえ少数でも、マンションの暮らしについてもっと考え、もっと豊かで快適にしていくというマンション・ラボの世界観をご理解いただき、そのためにご協力をいただける方にご登録いただくことを重視しています。その結果、アンケートの自由回答という手間のかかる設問にも、丁寧に回答いただける方に多数お集まりいただけるようになりました。本当に有難い限りです。

ソーシャルメディアで参加型のコンテンツを作りたい!

――ソーシャルメディアの運用上の悩みはありますか。

井上以前はFacebookに投稿すると、100くらいの「いいね!」がつくのが普通でしたが、Facebookの仕様変更でリーチ数が下がってしまったことですね。今後、また投稿の宣伝などをしたほうがいいのか考えています。

――今後やっていきたい施策はありますか。

井上マンション・ラボで、マンション内に図書館を設置してそこを住民のコミュニティにしていこうという企画があります。これはFacebookで反応が良さそうな企画なので、投稿で語りかけたり意見を募ったりしながら、一緒に盛り上げていきたいですね。これまで、ソーシャルメディアで参加型の企画はやってこなかったので、やってみたいです。

それとGoogle+ですね。SEOの効果もあるということなので、強化していきたいです。今アカウントはあるのですが、手つかずなのでフォロワーがほとんどいません。時間をかけてじっくり運用していきたいです。

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