お客様の声をすぐに聞けるのがソーシャルメディアの魅力、サントリーが実践するブランド横断的運用
投稿すると、お客様がすぐに反応してくれるところがソーシャルメディアのおもしろさです。新商品の投稿をしたときに、すぐにお客様から「おいしかったです」と、感想のコメントをいただくこともあります。
サントリーホールディングスでは、サントリー公式のFacebookページとTwitterアカウントを広報部が運用している。サントリーは、以前からブロガーイベント、mixiアプリなどに取り組んでおり、ソーシャルメディア活用の先端企業だ。
今回はコーポレートアカウント運用について、同社コーポレートコミュニケーション本部 広報部デジタルコミュニケーション開発部の石原洋子氏、Facebookを担当する桜井弓子氏、Twitterを担当する長谷川真世氏に話をうかがった。
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SUNTORY サントリー
※アカウント情報は2014年9月時点の内容
運用目的
よりタイムリーに幅広い活動を発信
――サントリーでは広報ブログなど、いちはやくソーシャルメディアに取り組んでいますね。
石原 2006年から、山崎蒸溜所のご案内係によるブログ(現在はサントリーウイスキー蒸溜所ブログ)を開始しました。当時、ブログが注目され始め、一般の人がインターネット上で経験や気持ちを発信する場所として利用していましたが、企業としても活用できるということから始まりました。
その後2008年から、広報部ブログとして「サントリートピックス」を開始しました。このブログは、広報部員が取材し、“サントリーの今”や“こぼれ話”をレポートするというスタイルです。
――新たにTwitterやFacebookを始めたきっかけは何だったのでしょうか。
桜井 Facebookは2011年6月から開始しました。当時はまだ、現在ほどFacebookは一般に普及しておらず、とりあえず、部署のメンバーでどういうものなのか使ってみようということで始めました。そのなかでビジネス活用の可能性を感じ、公式アカウントを開始しました。
長谷川 Twitterは、2010年から広報部ブログに連動したアカウントとして運用を始めました。当時はブログの更新情報を発信していましたが、2013年4月から会社全体の公式アカウントとして本格的な運用を開始しました。ブログの更新情報だけでなく、新商品やキャンペーン情報などを発信できるようにしたかったからです。お客様との接点を増やしたい、という目的で開始しました。
石原 ブログを始めたときは、すぐに記事を更新できることがメリットでしたが、FacebookやTwitterが広まって、一言、一枚の画像でも投稿できるようになりました。TwitterやFacebookを開始したのは、サントリーの商品やイベント情報、サントリーグループの企業活動などをタイムリーに発信でき、お客様からの反応をすぐに知り得ることが大きかったです。
広報部のミッションの1つとして、サントリーという会社全体の最適化と、ガバナンスを図っていくということもあります。現在はサントリーの公式アカウントというプラットホームができあがってきたので、他の事業部やブランドの情報発信の場所としても活用できるようになってきました。
広報部だからこそブランド横断的な情報発信が可能に
――企業アカウントとして広報部が運用するなかで、投稿するネタはどのように選んでいますか。
桜井 Facebookの運用戦略として、第一義的は新商品情報を発信する媒体という位置づけで、ブランド横断的に投稿しています。広報部は、新商品のニュースリリースのスケジュールや発売日をすべて把握しているので、ブランド横断的な運用が可能です。まず情報を月間カレンダーに整理して投稿案を決め、投稿予定の1週間前には最終的な投稿を準備するという運用ルールにしています。
ニュースリリースは年間200~300本ぐらいあるので、実はネタに困ることはありません。ブランドの担当者からこういう情報を配信してほしいと依頼されることも多いです。商品の発売日が重なる場合は、会社として注力している商品を優先的に取り上げるというように、広報部で判断しています。
――投稿内容も広報部で作っているのですか。
桜井 運用を開始するときに、ブランドの情報は各ブランドで投稿文言を作成してもらうという案もありました。しかし、Facebookには短くキャッチーな文章が求められるという特性から、まず広報部で投稿案を作成してからブランドに確認してもらうほうがスムーズで、現在の運用になりました。
写真の撮影や投稿文の作成まですべて内製でやっています。写真はブランドから提供されるものもありますが、素人ながら一眼レフで撮影することも多いですよ。
長谷川 Twitterは、基本的にFacebookの投稿を参考にして投稿しています。その他に、「今日は○○の日」という投稿や、料理のレシピなどを投稿しています。Twitterは運用しているなかで若年層が多いと感じているので、顔文字や言葉遣いを工夫しています。
○○の日という投稿はハッシュタグをつけてツイートしていますが、その日は関連するツイートが増えて、ハッシュタグをつける人も増えるため、自然な形でお客様がいる場所に参加することができます。
ブランド戦略に基づいた運用を広報部がサポート
――Facebookでは、サントリー公式のアカウント以外にも、ブランド別のFacebookページがたくさんありますが、使い分けはどうしていますか。
桜井 ブランドのFacebookページは現在30ほどあり、2年ほど前から運用を開始しています(ソーシャルメディアアカウント一覧)。各アカウントはブランドの担当と宣伝部が協力して運用しています。
ウイスキーの山崎、白州、角ハイボール、ビールのザ・プレミアムモルツなどは、それぞれのブランドの世界観がはっきりしていて、その世界観のファンも多いので、盛り上がっています。それぞれに「いいね!」しているお客様もブランドごとに異なっているので、発信するトーンも違います。たとえば、角ハイボールは家で飲む方も多いのでカジュアルなトーン、山崎と白州は上質感のある、落ち着いた雰囲気の投稿になっています。
――広報部は各ブランドのソーシャルメディア運用に対してどのように関わっていますか。
桜井 ソーシャルメディアの活用は、各ブランドのマーケティング戦略に基づくものなので、各部が主体的に取り組み、私たちはサポートをしています。ただ、他よりも早くFacebookページを立ち上げ運用してきた経験が豊富にあるので、Facebookページのつくり方や使い方、投稿文を作るときのポイントなどをまとめて共有しています。
また、投稿するときの切り口などについて相談を受けることもあります。そうした場合は、これまでの経験で培ってきたポイントを伝えています。
石原 ソーシャルメディアアカウントの立ち上げについては、ガバナンスの観点から広報部で申請を受けています。アカウントを開設する目的はさまざまですが、申請を受けたときには、始めたらやめられないこと、必要な運用体制や予算について説明し、理解したうえで立ち上げてもらうようにしています。
公式ページが強力なプラットホームになる
――「いいね!」やフォロワーを獲得するための施策は行っていますか。
桜井 他の企業と同じようにプレゼントキャンペーンなどを行っています。ブランドのマーケティング戦略とマッチするような企画、たとえば新商品のモニターキャンペーンなどを実施して、マーケティング施策としても価値があるように実施しています。
長谷川 Twitterでは、キャンペーンのクリック率は非常に高く反応も良いです。他の企業のキャンペーンに埋もれてしまわないようなインパクトのある企画を考えています。また、リツイートするときにコメントを入れてくれる方も多いので、突っ込みたくなるような内容も意識的に用意しています。キャンペーンに関連してツイートされた商品へのコメントは、各ブランドの担当者にフィードバックしています。
――広告の運用はされていますか。
桜井 Facebookの投稿記事の宣伝やキャンペーンと連携した広告を行っています。広告といっても、通常の投稿と同じようにお客様の反応を考えながら作成しています。
効果測定
態度変容の影響度を測定する定点調査を実施
――効果測定としてどのような値を評価していますか。
桜井 Facebookページの「いいね!」数、記事のリーチ数、そして投稿を見た人のなかでアクションをした人の割合であるエンゲージメント率の3つを指標にしています。リーチ数とエンゲージメント率は、Facebookの仕様で数字が大きく変わることがあるので、目標数値は設定しにくいのですが、前月よりも上回るように振り返りをしながら運用しています。
長谷川 Twitterはフォロワー数とアクション数です。Twitterは拡散が見込めるメディアですので、リツイート数やURLのクリック数もチェックしています。
Twitterでは、主力商品である「ザ・プレミアム・モルツ」や「ほろよい」などの反応が良いですね。キャンペーンはクリック率が高く、レシピはお気に入りの登録件数が多いなどそれぞれ異なる反応があるので、複数の軸で評価しながら次月の投稿の参考にしています。
――テレビCMなどと比べて、ソーシャルメディアならではの特徴はどこにありますか。
桜井 投稿すると、お客様がすぐに反応してくれるところがソーシャルメディアのおもしろさです。新商品の投稿をしたときに、すぐにお客様から「買いました」「おいしかったです」というように、丁寧な言葉で感想のコメントをいただくことも多いので、ありがたく感じています。
ソーシャルメディアはファンづくり、ファン度を高めるのに効果的だと言われていますが、なかなか数値では判断できません。ソーシャルメディアのコミュニケーションを通して、どれだけサントリーの好感度が上がるかというところについては、別途調査で評価しています。
先日調査したばかりでまだ結果がでていないのですが、ファン歴が長いほど好感度が上がり、態度変容につながるという仮説をたてています。
現在は、サントリーのFacebookページやTwitterのファンの調査ですが、このつながりがブランドに対してどう影響しているのか、今後ブランドとも連携して評価していきたいです。
また、ソーシャルメディア上だけの調査ではなく、他のメディアもあわせて評価しないといけないですね。テレビのCMを見て、さらにソーシャルメディアも見ているとファン度が上がる、というような結果がでれば、お互いの活動の意味合いが出てくると思います。
だれでも直感的に使いこなせるツールを選択
――運用ツールはどんなものを使っていますか。また選定では何を検討しましたか。
桜井 Facebookでは効果測定はインサイトで十分ですし、投稿は直接Facebookから行っているので、特に運用ツールは使っていません。
長谷川 Twitterでは「つぶやきデスク」を使っています。TwitterはFacebookと違って予約投稿ができないので、予約投稿ができるツールを探していました。また、効果測定としてツイートにどのくらい反応があったかをリアルタイムで知りたいという要件もありました。
複数のツールを候補としてピックアップして実際に利用してみた結果、つぶやきデスクが見やすさ、使いやすさの面で優れていました。最初に利用したときから、ここに入力するんだな、効果測定はここから確認するんだな、というのが直感的にわかりました。
――普段はどのような運用フローで使われていますか。
長谷川 投稿予約は部内で運用しています。なので、「予約投稿」や「承認機能」はとても役立っています。
他に役立つ機能としては、フォロワーがアクティブな時間帯がヒートマップで見られる機能です。感覚として、お酒の情報が多いことから、夕方以降の時間帯がよいと思っていたのですが、実際にフォロワーのアクティブな時間帯を見てみると、違うことがわかりました。つぶやきデスクは、ツイートのリーチ数もわかるということなので、今後さらに活用していきたいです。
切り口のバリエーションとリアルタイム性
――運用に関して悩むことはありますか
桜井 Facebookページの記事投稿では、必ずしも「いいね!」やコメントがつくものばかりではありません。しかし、リーチ数を見てみると、「いいね!」はつかなくても結構見られていることがわかりました。コーポレートのアカウントとしてバランスよく投稿することで、サントリーファンを1人でも増やしていきたいと考えています。
――これまでの経験から、Web担当者へのアドバイスをお願い致します。
桜井 ソーシャルメディアは、常にその先に投稿を見ているお客様がいらっしゃいます。投稿は独りよがりにならず、語りかけるようなトーンで投稿することで、ニュースフィードに溶け込み、お客様にも喜んでいただけます。
長谷川 友だちや趣味・興味などをもとにフォローするアカウントを選んでいるTwitterで、あえてサントリーという企業のアカウントをフォローしている方は、情報を求めていると思うので、その方たちの期待に添えるような投稿を意識しています。自分がタイムラインを見た時にその投稿が目にとまるかということを考えながら投稿を考えることが重要です。
――今後の施策として何か考えていますか。
桜井 お客様に渡すボールの投げ方を変えるだけで反応が変わるので、自分の感覚を研ぎ澄ましていく必要があると感じています。自分自身もソーシャルメディアを使いこなし感覚を磨いて、サントリーならではの期待に見合うようなボールを渡していけたらと思います。
長谷川 Twitterはリアルタイム性が特徴なので、それを意識した情報を発信していきたいです。たとえば、CMの放送やリアルのイベントに合わせて、1分1秒のタイミングを逃さないような、リアルタイムな情報を絡めていけたらいいなと思います。アクティブサポートなども含めて、いろいろな使い方があると思うので模索していきたいですね。
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