企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用の現場

フォロワー数278万人! 365日欠かさず天気予報を届けるtenki.jpのソーシャルメディア運用術

地域ごとに必要とされている天気・地震・火山などの情報を届ける
企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用

日本気象協会公式の天気予報専門メディア「tenki.jp」のTwitterアカウントは、2018年2月末時点で278万人のフォロワーを持つ。日々の気象情報をリアルタイムに教えてくれるこのアカウントをフォローしている方も多いだろう。

tenki.jpは日本気象協会とALiNKインターネットが共同運営している媒体だ。コンテンツを日本気象協会が提供し、ALiNKインターネットがサイト構築・運営などのシステム回りを担当している。

国内最大規模の気象情報メディアであるtenki.jpのSNS運用について、日本気象協会の岡村智明氏と、ALiNKインターネットの塚本真由子氏にうかがった。

生活に欠かせない天気予報を365日、休まず届ける

――tenki.jpは、どういう経緯で発足したのでしょうか。

一般財団法人 日本気象協会
事業本部 メディア・コンシューマ事業部
コンシューマ事業課 広告グループ
技師
岡村 智明 氏
株式会社ALiNK インターネット
マーケティング室/室長
塚本 真由子 氏

岡村インターネットの利用が一般の方にも広がり始めた1997年は、気象庁もまだホームページを持たなかったため、日本気象協会を含む数社の共同運営という形で、気象情報サービス(防災気象情報サービス)を開始しました。その後、2002年に大幅リニューアルし、名称もtenki.jpへと変更しました。

2008年から、ALiNKインターネットさんと共同運営することになり、それを機に現在のtenki.jpのような形にリニューアルしました。日本気象協会による気象情報、地震や津波などの災害情報を提供しています。

塚本tenki.jpのサイトでは、日本気象協会からもらったデータをもとに、弊社がユーザーに伝わるUIやデザインを考えて発信しています。

コンテンツとしては、リアルタイムに更新される全国の天気予報に加え、気象予報士が日々の気象を解説する「日直予報士のポイント解説」、花粉や台風など季節の話題を中心に解説する「tenki.jpサプリ」などがあります。

「tenki.jpサプリ」は、季節や天気を切り口にしたレジャー、ライフスタイルなど、ストックコンテンツとして幅広い情報を扱う。

――運用しているSNSアカウントの概要について教えてください。

岡村TwitterFacebookページを運用しています。

Facebookページでは、tenki.jpのコンテンツをピックアップして手動で投稿しています。

Twitterの投稿では、速報性やタイミングが重要になります。システマチックにボットを使って、tenki.jpの更新のタイミングや、コンテンツが読まれやすい時間を狙って自動投稿するようにしています。最近は、Twitter上で交わされているツイート情報などを見て、手動で投稿することもあります。

Twitterの日本上陸と同時に開始しておすすめアカウントに

――Twitterはフォロワー数278万人と、国内の企業アカウントではトップクラスのフォロワー数です。

塚本Twitterのサービスが日本で開始された当初からアカウントを運用していることもあり、蓄積がありました。Twitterが日本で始まったばかりのとき、ユーザーが新規にアカウントを作成するときの「おすすめのアカウント」として表示されていたので、最初から多くの方にフォローいただいていました。

Twitterが日本に上陸する前、tenki.jpではマイクロブログをやっていましたが、弊社代表の池田が「Twitterは日本でも流行る」と判断して、マイクロブログからTwitterに切り替えたのです。当時は、まだTwitterを知る人が社内にも少ないなかの英断でした。

岡村その後、2013年に100万人、2016年に200万人、2017年4月に250万人というように順調にフォロワー数が増加してきました。

さらに、天気予報は地域ごとにピンポイントで知りたい情報であることから、2014年から全国142都市のアカウントを作成しました。これは天気予報で良く目にする全国の主要な地域になります。

天気・地震・火山、地域別などのTwitterアカウントで情報発信する(tenki.jpの公式Twitterアカウント一覧

天気予報を必要とするすべての人に情報を届ける

――TwitterやFacebookを始めるとき、ゴールは何に設定しましたか。

塚本ユーザーが手軽に気象情報にたどり着けることを目指して運用しています。また、天気情報サイトが複数あるなかで、tenki.jpを選んでもらうためのブランディングも意識しており、TwitterやFacebookからtenki.jpへのアクセスにつなげられればと考えています。

SNSの目的はユーザーが手軽に気象情報にたどり着けること。ブランディングにもつなげたい。

――ターゲットはどんな人を想定しているのでしょうか。

塚本天気予報はどの属性の人にも必要な情報ですから、特定のターゲット層を対象とするのでなく、広く多くの方を対象に運用しています。

岡村できるだけ万人受けするように気を使っています。日本気象協会は名前が堅いので、SNSの投稿は少しやわらかくすることを意識していますが、やわらかすぎると、色にあわないということもあるので、嫌われないような語りかけを意識しています。

たまに、アンケートに回答してくれた方などにリプライすることもありますが、堅いイメージがあるだけに、返事が来たことにびっくりされたり、喜んでいただいたりすることもあります。すべてにお答えはできませんが、いただいたメッセージにはすべて目を通しています。

やわらかい投稿のチャレンジとしては、11月29日に発生した「#いいにくいことをいう日」のハッシュタグに便乗して、「あたらない日もある」とツイートしました。怒られるのではないか、とドキドキしながらやってみたのですが、「わかる、わかる」「がんばれ」というように、受け入れてもらえました。

晴れでも台風でも変わらない、投稿はブリーフィングで決める

――突発的に発生するハッシュタグにも対応しているのですね。Twitterの運用体制はどのようにされているのですか。

岡村ボットの自動投稿はALiNKインターネットさん、手動投稿は日本気象協会の4人のメンバーで担当しています。通常業務をやりながら、チラチラとTwitterを見て「からめそう」と思ったらメンバーで企画を立てるなど、相談しながらやっています。

――特に注目されるツイートにはどんな内容がありますか。

岡村やはり台風の話題などですね。1ツイートで6000リツイートされることもありますし、コメントもいただきます。台風情報は、逐次更新されていきますので、スレッド機能を使って自己返信の形で、次の更新時間をお知らせしたり、食料の備蓄を呼びかけたりしています。

1月に東京で大雪が降ったときも同じように、雲の流れをお知らせするなど、逐次更新していきました。

――気象情報は常に変わります。どのような運用体制で情報発信しているのでしょうか。

岡村日本気象協会では、どんな天気の日でも1日に数回、気象情報のブリーフィングを行い、発信する情報を統一しています。それを受けて、SNSに限らず、テレビやラジオなど、各チャンネル向けに最新情報をピックアップして配信しています。

ブリーフィングで発信情報を統一し、各チャネル向けに最新情報を配信する。

――緊急時にはサイト上でもお知らせをしていますね。どういった対応ポリシーでしょうか。

岡村tenki.jpのサイトの場合は、大雪や台風のときは、台風のコンテンツをトップに表示するなど、臨機応変に対応しています。

塚本システム面では、大雪や台風になるとtenki.jpへのアクセスが集中しますので、それに対応する必要があります。地震情報も配信していますが、深夜に発生した震度2くらいの地震でも、一瞬でトラフィックが集中することがあります。

2008年ごろは、台風が近づくとサーバーの状況を張り付いてチェックしながら運用をしていましたが、最近は知見もたまりまして、tenki.jpのサイトが落ちることはほとんどなくなりました。

今では、地震速報はtenki.jpのサイト上だけではなく、Twitterでも配信しています。震度1以上の地震情報を配信するアカウント「tenki.jp地震情報(@tenkijp_jishin)」もあり、2018年2月現在のフォロワー数は156万人です。

キャラクターを設定して中の人を感じられる運営スタイルへ

――Twitterのフォロワー数を増やすための施策は、何か実施していますか。

塚本tenki.jpのサイト内(モバイル版)に、スマホアプリの誘導枠を入れているのですが、その下に「忙しいあなたはSNSで毎日の天気をチェック」というメッセージで、フォローボタンといいね!ボタンを設置しました。いろいろなユーザーがいるなかで、Webサイト、アプリ、SNSなど好きなものを選択できるようにしたのです。

フォローボタンを追加した2015年当時、フォロワー数は162万人で法人アカウントではトップでしたから、フォロワー数を表示して信頼感を出したところ、フォローしてくれる方が急増しました。

岡村2016年から、手動での配信やリプライもするようにしました。堅すぎず、遊びすぎずと心がけながら、今まで受け身だったコミュニケーションについて、能動的にユーザーに話しかけるというようなこともチャレンジしたいです。

――中の人が見えるような運用をしていくうえで、参考にしたアカウントなどはありましたか。

岡村タニタさん、シャープさん、NHKさんなど、公式アカウントのキャラクターとして(中の人をだして)運用をされているところを参考にしました。また、何度かセミナーにも参加して勉強し、それらを参考にしながら自分の色を出していきました。

プロフィールには出していませんが、tenki.jpのアカウントは、男女のチームで運用しているという設定です。そのキャラクターには、tenki.jpを最もよく見ているだろうペルソナを参考にしました。

たとえば、男性は「40歳の会社員、既婚、子どもが2人」で、女性は「29歳で元気で気が強い、お酒が好き」という感じですね。その設定に合わせてツイートしています。偶然、運用するメンバーにも近いのでやりやすいですね。

tenki.jpのペルソナをもとしたソーシャルメディアのキャラクターを作り、チームで統一した運用をする。

天気予報が気になる時間帯はいつ? データから投稿時間を設定

――ソーシャルメディアの効果測定はされていますか。

塚本Twitterのアナリティクス機能と、運用管理ツール「つぶやきデスク」の分析機能を使っています。Facebookはインサイトを見ています。

Twitterは、ツイートが見られている時間を意識して運用しています。つぶやきデスクでは、フォロワーがオンラインになっている時間帯が色分けして表示されるので、特にユーザーが多い時間帯を意識して自動配信の時間を決めています。

ユーザーがアクティブな時間帯を分析して自動配信の時間を決める。

――tenki.jpのサイトも含めた効果測定はどうでしょうか。

塚本日直予報士のポイント解説と、季節ネタのtenki.jpサプリはコンテンツのタイプが違うので、それぞれどういう時間が読まれやすいのか、リンクのクリック率などを見て検証しています。現在は、日直予報士は朝の7時ごろと帰宅時間、サプリは帰宅時間と夜8時から10時くらいに記事を公開し、ツイートしています。

記事のリンクのクリック率はタイトルの付け方で大きく変わるので、検証しながら興味をもたれやすいタイトルを考えています。「ユーザーに自分と関係があることだと感じてもらえるように都市名や施設名を入れる」「写真や画像はひと目で言いたいことが伝わるものを選ぶ」といった工夫もしています。

岡村記事のタイトルは、「関東で大雪」よりも「東京で大雪」の反応が良いことがあります。具体的な地域名を出した方が、その地域の人が見てくれるようです。

また、「台風」などの重要キーワードをタイトルの前に入れるようにして、全部読まなくてもひきつけられるようにしています。

「いいね!数」や「インプレッション数」などの数値については、コンテンツを作る気象予報士にも伝えて、モチベーションアップにつなげています。

塚本サイトの解析は弊社で担当していますが、A/Bテストの結果などはtenki.jpにかかわる人に共有して、その後の運用にいかしてもらうようにしています。

ツール選びはユーザー分析やGoogle アナリティクス連携を重視

――SNSの管理ツールは、どんなことを重視して選びましたか。

塚本導入したつぶやきデスクは、ユーザーがオンラインの時間帯を分析する機能があり、影響力のあるユーザーが一覧でわかることなどを評価しました。

また、発信の機能では、URLに自動でパラメーターを付与してくれて、Google アナリティクスと連携できることも大きかったです。他社ツールとも比較しましたが、試用してみて運用の面でも便利だとわかりましたし、価格が圧倒的に安いのも魅力です。

導入してからは、サポート体制に助かっています。どんな小さな質問でも1時間以内で答えてくれます。新しいツールは、使い慣れるまでつまずくことも多いのですが、サポートがあるおかげで助かりました。

――運用を続けてきて悩みはありますか。

岡村手動で、tenki.jpの中の広告コンテンツをお知らせすることがあるのですが、そのタイミングやツイートする言葉選びなどに悩みます。冷え込むタイミングを見計らってツイートすることもありますし、逆に大雪などで困っている人が多いときはそうしたツイートは控えるなど、考えながら運用しています。

――今後の展開として、やってみたいことはありますか。

岡村担当者のリアルな声をツイートしてコミュニケーションにつなげたいですね。また、企業アカウントのフォロワー数ナンバーワンに返り咲きたいです。

塚本影響力のあるフォロワーがつぶやきデスクでわかるので、何かに生かせたらいいですね。

Twitterを始めた当初は、天候に関係のあるツイートを自動収集して分析し、人の気持にどういう変化があるのかをコンテンツとして提供していたことがありました。

しかし、時代が早すぎたのか流行りませんでした。今は、ビッグデータ解析の認知が広がったので、気象データとSNSのデータを組み合わせたデータドリブンなコンテンツをまた用意したいですね。

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