【レポート】Web担当者Forumミーティング 2012 in名古屋

成果に繋げるネット広告効果測定データの上手な活用法|ロックオン

広告効果測定とアクセス解析ツール、それぞれの特性を理解したうえで効果的な運用を行う方法を解説
【レポート】Web担当者Forum ミーティング2012 in名古屋

セミナーイベント「Web担当者Forum ミーティング2012 in名古屋」(2012年9月27日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。

ネット広告の効果測定は、利用媒体が増加したことやデバイスの多様化によって非常に複雑になってきている。ロックオンの高橋悟氏は、自社の広告効果測定ツール「アドエビス」を例に、アクセス解析ツールとの違いや組み合わせによって、どのような効果測定を行えるのか解説した。「成果に繋げるネット広告効果測定データの上手な活用法」と題した講演で語られた内容をレポートする。

広告効果測定ツールはなぜ必要か

高橋 悟氏
株式会社ロックオン
営業ユニット
高橋 悟氏

広告効果測定は、多くの企業が実践している意識はあるが、実際にはGoogleアナリティクスを使ってサイト内行動を分析しているだけの場合や、媒体ごとの管理画面で見ている場合、代理店に任せてしまっている場合が多い。また、広告効果測定の指標として流入数やコンバージョン数を計測し、CPC、CPA、ROASなどの目標を立ててはいるが、データの分析や活用はできていないことが多くの企業で課題となっていると高橋氏は話す。

目的のない会議は、ゴールが見えず眠くなってしまいます。広告効果測定も、何となく行っていると改善までのイメージが出てこないため、目的が重要となります。

まずは、「何を目的に効果測定を行うのか」を考えることから始めてみてください。

広告効果測定の目的は、効果の良い広告と悪い広告を見つけて、顧客の動きを見ることだと高橋氏は説明する。さらに、単に広告で顧客を獲得するだけでなく、何をキッカケに態度変化していったのかを見ることも重要だ。ブランド力の高い商品を扱っている企業では、インターネット広告を利用しなくともブランド力だけで自然に顧客が集まってくると考えてしまうことがある。しかし、インターネット広告を利用して顧客のネット上の動きを見ることで貴重な情報を得られることも多い、と高橋氏は説明する。

効果測定には、広告効果測定ツールまたはアクセス解析ツールが必要だ。この2つは混同されやすいが、広告効果測定ツールは広告効果を検証するためのツールであり、サイト内の閲覧状況も検証できるが得意ではない。一方のアクセス解析ツールは、サイト内の閲覧状況を検証するためのツールであり、広告効果の検証は得意ではない。ロックオンの広告効果測定ツール「アドエビス」を利用するユーザーは累計5,000アカウントを上回るが、その大半がアクセス解析ツールを併用し、目的別にツールを使い分けているという。

広告効果測定ツールとアクセス解析ツールの使い分け
広告効果測定ツールとアクセス解析ツールの使い分け

広告効果測定ツールとアクセス解析ツールは、その計測方法にも大きな違いがある。広告効果測定ツールではリダイレクト方式が使われており、広告から広告主のサービスサイトなどに直接リンクせずに、一度、計測用のサーバーを経由させてからリダイレクトさせる。計測用サーバーにアクセスした際に発行されたCookieによって、その後の広告接触などの情報を収集できるため、精度を約97%前後に高められるという。

一方、アクセス解析ツールはダイレクト方式が使われている場合が多く、アクセスした際のURLのパラメータ(リファラー)などで情報を収集するため、ブラウザ環境などで情報を取れない場合もある。アクセス解析ツールは閲覧状況の傾向がわかればよいため、精度は70%程度になることもあるという。

また、Cookieの保持期間を調整できることも広告効果測定ツールの特徴の1つだ。アドエビスでは、基本設定でCookieの保持期間が90日(最大で9,999日まで変更可能)となっているが、リスティング広告などでは30日の保持期間となっている場合がほとんどだ。

たとえば、ある商品を購入したユーザーが、その情報を購入の90日前にメールマガジンで知ったとする。さらに購入60日前にその商品のディスプレイ広告に触れ、30日前にYahoo!で検索し、1日前にGoogleで検索を行ってコンバージョンに至った場合、Cookieの保持期間が30日しかなければYahoo!とGoogleの接触データしか取れない。これでは、メールマガジンやディスプレイ広告の効果はわからないことになる。

実際に某人材系企業では、コンバージョンのうち42%が30日より前の潜伏期間データのためにコンバージョン計測されず、CPAに大きな違いが出ていたという。広告効果測定ツールを導入することで、コンバージョン数は変わらなくても、広告の評価軸が変わることが多いと高橋氏は説明する。

某人材系企業のコンバージョンまでの潜伏期間データ
 全体1~30日30~90日90日以上
直接応募(CV)2,2991,32390372

Cookieの種類の違いも広告効果測定で重要なポイントだ。アクセス解析ツールのなかにはサードパーティCookie(現在アクセスしているドメイン名のサイトとは別のドメイン名から発行されるCookie)を使っているものもあるが、ブラウザやその設定、ウイルス対策ソフトなどによってサードパーティCookieが受け付けられない場合も多いため、計測値が不正確になってしまう。広告の効果測定には精度の高さが求められるため、ファーストパーティのCookieを利用している広告効果測定ツールを使うことが重要だ。

広告効果測定データの活用方法3つのポイント

続いて、測定データの活用について、リスティング広告、間接効果、ロックオンが独自に開発した広告効果指標であるTCPA(Total Cost Per Action)評価の3つの側面から高橋氏は解説を続ける。

1. リスティング広告

広告効果測定ツールを利用することで、媒体の管理画面や代理店のレポートでは見えてこない、リスティング広告の効果が明らかになってくると高橋氏は話す。広告効果測定ツールでは、Yahoo!やGoogleなど複数媒体のデータをワンクリックで、共通の指標で見ることができる。たとえば、アドエビスではリスティング連携機能で広告登録作業をボタン1つで行うことができ、キーワード別に表示回数やコストを自動取得し、CPC、CPA、ROASをリアルタイムに確認することが可能だ。

また、リスティング広告の効果をCPAだけで判断している場合もあるが、直接コンバージョンにつながったものだけでなく、初回認知に効果のあったキーワード、間接効果としてコンバージョンにつなげたキーワードも存在する。これらのキーワードを広告効果測定ツールで分析することにより、間接に強いワード、直接も間接も効果がない除外対象ワード、初回認知に強いワードなどの傾向を評価できるという。

自然検索ワードも加えてコンバージョンまでの流れを見られるため、コンバージョン数の多いリスティング向きのワードと流入回数の多い、SEOに向いたキーワードの可視化も可能だ。自然検索でコンバージョンに影響を与えているワードなどもわかるようになるため、広告として採用していない潜在ワードも見つけられる

2. 間接効果

続いて、間接効果測定のポイントとして、高橋氏は次の4つを挙げる。

  1. 媒体ごとの強みを把握

    広告効果測定ツールでは、リスティング広告と同様に、アフィリエイト、リターゲティング、ディスプレイ広告でも媒体ごとの直接効果と間接効果を把握できる。直接と間接の比率も数値化でき、たとえば、認知を狙って掲載したディスプレイ広告の効果の違いをすぐに比較できる。

  2. 重複コンバージョンの排除

    媒体ごとの管理画面でコンバージョンを計測すると、初回認知や間接効果も重複して1つのコンバージョンとして計測されてしまう。広告効果測定ツールでこれらの重複コンバージョンを排除すると、直接コンバージョンに影響した広告を明らかにすることができ、正しく評価ができる。

  3. 効果的な組み合わせを知る

    効果的な広告の組み合わせについて、高橋氏は実際にアドエビスの製品ページを訪問し、申し込みに至ったケースを紹介した。検索キーワードが「アドエビス」というブランドワードにどのタイミングで変容したのか、キーワードごとに「注目」「興味関心」「ブランド検索」などのグループを設定することで分析し、変容直前のキーワードを可視化した。ブランドワードに至るまでの経過を分析することで、効果的なキーワードの組み合わせを見つけ出した。

  4. CRMデータとの連携

    Web上の広告では、資料請求がコンバージョンに設定されていることは多いが、企業としての最終目的は商品やサービスの契約であるため、属性情報をもとにCRMデータと連携させることも重要だ。コンバージョン属性情報の問い合わせIDや注文ID、会員IDなどをキーにCRMデータと連携することで、資料請求以降のリアルでの顧客の行動や契約をトラッキングすることができ、実店舗に来店したときにWeb上で出された要望をすぐに把握することもできる。これらのデータを蓄積することによって、新規顧客の傾向やリピーターが最初に接触する広告の傾向などを分析している企業もあるという。

3. TCPA(Total Cost Per Action)評価

ロックオンが考案した広告効果指標であるTCPA評価は、コンバージョンまでの接触回数を加味してトータル(T)のCPAを算出するというものだ。直接効果のCPAだけを見るだけでなく、間接効果も含めたCPAを出すという考え方となっている。TCPAでは、アドエビスの管理画面からコンバージョン属性情報を抽出し、コンバージョンまでの接触回数で各広告の補正コンバージョン数(1回でのCVとなった場合は1/1、3回でCVの場合はそれぞれ1/3)を出していく。

補正コンバージョン数の算出
直接効果間接効果1間接効果2間接効果3間接効果4CV数広告接触数
広告C:1/111
広告A:1/3広告B:1/3広告C:1/313※1
広告A:1/5広告A:1/5広告A:1/5広告A:1/5広告B:1/515※2
※1 CVをA,B,Cで3等分する
※2 複数接触も1カウントする
各広告の補正コンバージョン数
広告補正コンバージョン数
A1/3+4*1/5=17/15
B1/3+1/5=8/15
C1/1+1/3=20/15

この補正コンバージョン数で各広告のコストを割ったものがTCPAとなる。TCPAを見ることによって、CPAで直接コンバージョンに効果があるものを評価するだけでなく、間接効果があるもの、または直接と間接の両方で効果があるものを評価することが可能だ。TCPAを自動計算するExcelマクロも無償配布されているので、ぜひ使ってほしいと高橋氏は話す。

ブランドサイトでの態度変容を測定

高橋 悟氏

講演の最後には、アドエビスを利用したいくつの効果測定事例が紹介された。最初の事例は某消費財メーカーのブランドサイト事例で、高橋氏は「ブランドサイトは資料請求や商品購入などのコンバージョンポイントがないので計測する意味がないと思われがちだが、面白い取り組みができている」と話す。

同ブランドサイトでは、サイトのコンテンツの狙いとユーザーの訪問同期がマッチしているかを調べるため、商品を好きになってくれたと定義できるページをコンバージョンポイントとし、その流れを計測してユーザーの態度変容を分析した。商品名や機能などのメジャーなワードではなく、マイナーなワードを調べることにより、特定のタレント名から商品名に態度変容が行われることがわかったという。

Webサイト上で単純にお客様に物を売るというよりも、お客様の実態を知ってもらうこと、最終的に物を買っていただくためのプロモーションをどう設計していくか、それを考えるためにも広告効果測定ツールを使っていただけます。

ビュースルー測定で見えてくるディスプレイ広告の効果

広告表示はされてもクリックされなかった場合の効果、閲覧によってどのような態度変容が起こるかを計測したビュースルーコンバージョンの事例も紹介された。ディスプレイ広告を見たユーザーが、「ノーリアクションなのか」「クリックするのか」「サーチ(リスティングまたは自然検索)するのか」「別の広告をクリックするのか」などを計測したところ、この事例ではディスプレイ広告をクリックしたコンバージョンとクリックしなかった場合のコンバージョン数はほぼ同数だったという。

商材によっては異なる結果になる場合もあるが、広告を見た後のアクションで最も多いのは、別のクリエイティブのディスプレイ広告のクリックだという結果も明かされた。これは、クリエイティブを変えることでクリックにつなげたり、広告閲覧後のサーチにつなげられることを示すもので、クリックさせるだけでなく、サーチさせるためのクリエイティブを作ることも1つの有効な手段だと高橋氏は説明する。

1人のユーザーに何回広告を見せるのが効果的か

また、アドネットワークを使った計測で、1人のユーザーに何回くらい広告訴求するのがコンバージョンにつながりやすいか調べた結果も公開された。もちろん、商材によって異なるが、今回の事例では最適な広告接触回数は約60回、それ以上になるとコンバージョンにつながりにくいという結果だった。このような最新の広告計測は、ロックオンのマーケティングメトリックス研究所とユーザー企業が共同で実証を行っているおり、「マーケティングメトリックス研究所」で検索すると、さまざまな事例を見ることができるという。

広告効果測定データを上手に活用するには、目的に合ったツールを選定することが重要で、広告効果測定ツールとアクセス解析ツールを切り分けて使う必要があります。また、計測方法の違い、Cookieの保持期間、Cookieの種類の3つのポイントを押さえ、まずはリスティング広告から効果測定を行ってみてください。そのうえ間接効果を見て仮説と結果を分析し、コンバージョンを媒体軸だけでなくコンバージョンに至るストリームで見てもらえば、より深くお客様の動きが見えてくるようになります。

以上のようにまとめた高橋氏は、自然検索もストリームに加えることによって、より細かな分析が行え、単純に広告の良し悪しだけではなく、見えずに仮説を立てられなかった顧客のリアルな動きがわかるようになると付け加え、広告効果測定の解説を終えた。

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