有料マーケティングとインバウンド・マーケティングを組み合わせて効果を出す10の方法(後編)
この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている記事の後編だ(前編を読む)。
(前回の続き)私は有料マーケティング担当として仕事をしているのだが、この記事で解説しているのは、SEOmozのコスト削減とリード(見込み客)獲得数増加のために私が実践しているインバウンド・マーケティングの活用法についてだ。
有料マーケティング担当者が利用できる(利用するべき)、インバウンド・マーケティング手法の活用方法トップテンの5位から1位までを紹介していこう。
5位 顧客のフィードバックを共有する
顧客のフィードバックは金、それも純金に等しい。インバウンド・マーケティングとは、コンテンツの公開やソーシャル・エンゲージメントといった多様な活動を通じて、オンラインで自分を見つけてもらうことだともいえる。こうした議論や交流によって得られる大きな恩恵の1つとして、自ら構築したコミュニティから豊かなフィードバックを貰えるということがある。
私たちはしばしば、SEOmoz PROサービスについて顧客が何を気に入ってくれているのかを把握するため、コミュニティグループに協力を求める。そうすることで、「顧客の満足度を維持している要素は何か」、そして「改善すべき点は何か」に関する情報を、コミュニティから直接聞ける。これは、マーケティング・メッセージや製品ロードマップを作り上げるのに役立つ。
顧客のフィードバックや意見を共有することは非常に重要であり、そういったものを組織内の複数のグループが共有することの持つ価値は計りしれない。
4位 リソースを計画的に利用する
ここ数年、私たちは1人のオンライン・マーケターに求められるものが変化するのを見てきた。私たちには、やるべきことが山ほどあり、利用すべきツール、活用すべきレポート、書くべきコンテンツなど、挙げれば切りがない。こうした要求を満たそうとするならば、当然、それがどのようなプロジェクトであれ、さらなるリソースと人材が必要になる。
、SEOmozのオーガニック・マーケターやコミュニティ・マーケターと話をして、現在彼らが取り組んでいることを聞けば、自分が担当している有料マーケティング・プロジェクトをもっとうまく企画できることに気がついた。
たとえば、あるコンテンツを書いてもらうために会社が1人のコピーライターと契約するとしよう。その契約の中に、広告文の見出しをチェックして手直ししてもらうという要望を滑りこませることができる。
ほかにも、バナーやランディングページを作成するために用意したデザイン・リソースを別の目的に利用することもできる。社内のインバウンド・チームが何に取り組んでいるのかがわかれば、全員がより多くのものをより速く作り出せる。これは、目標達成とリソースの計画的利用の両方の点で、2つのチームを連携させることから得られる大きなメリットだ。
3位 火に油を注ぐ
マーケティングに応用できるという点から、私は「ハロー効果」がとってもお気に入りだ。知らない人のために説明すると、ハロー効果というのは、過去の好印象や楽しい経験などから、ある製品やブランドに対して顧客が示す良いバイアスのことだ。このところ行われているようなマーケティングの取り組みに応用するうえで好都合なのは、ブランドの印象を高める機会はたくさんあり、しかもその多くが無料だということだ。
あるブランドの関係者がFacebookページ上でユーザーと楽しく交流していたとする。そうすると、そのハロー効果によって、ユーザーが別の場所でそのブランドのロゴを目にしたときに、たとえばリターゲティング広告のバナーをクリックするような動機に十分なる。この2つが結びつくことで、無料のトライアルを試してもらえるだけの信用は十分に得られる。私はこれを「火に油を注ぐ」と呼んでいる。
有料マーケティングはたぶんCPA(顧客獲得単価)で計測されるけど、コンバージョンの可能性に影響を与えるアクションが起こる前にも、いろんなことが起きている。インバウンド・マーケティングは、潜在的顧客に好意的なバイアスを持たせるさまざまな機会を提供してくれる。顧客がブランドに対して抱いている好意は、プッシュ・マーケティングの取り組みにはほとんど関係ない場合が多いが、こうしたよりオーガニックな体験には大きく関係してくる。
2位 メッセージを事前に吟味する
マーケターは、言うなればストーリテラーだ。私たちは説得することが大好きだ。有料マーケターとして、私が大半の時間を費やしているのは、オーディエンスにメッセージを伝える方法について考えることだ。ある時には新しいオーディエンスに対して、またある時には今抱えているオーディエンスに対して、いずれにしても彼らの注意を引くための新しい方法を常に試す必要がある。
しかし、事前にメッセージを吟味しておくことは、やり方によっては、時間を浪費したり大金を費やしてしまったりする可能性もある。
以前であれば、関連するブログ記事でバナー・キャンペーンを行い、クリックスルー率(CTR)やコンバージョン率(CR)などの指標を分析していたかもしれない。また、グループインタビューに大金を費やして(これは本当にお金がかかる)、私たちが練り上げたストーリーにどんな反応があるかを観察していたことだろう。
しかし最近では、ソーシャルメディアの力を使って記録的な速さでメッセージをテストできるようになっている。プレゼンテーションやホワイトペーパーをまとめて、共有、閲覧、ダウンロードされた回数を調べることも可能だ。こうした「ソーシャルな投票数」を数えることで、事前に吟味する手段として単なるクリック以上のものを手に入れられる。これは私にとって、良質のデータをすばやく収集する本当に優れた方法だ。
1位 ブランドのストーリーを強化する
ここまで述べてきた9つのアイデアもすばらしいが、私のお気に入りはこれだ。一貫したマーケティング・メッセージほど力強いものはない。私は何年もの間、リターゲティング広告、検索連動型広告、ランディングページ、アフィリエイト、ソーシャル広告を連携させ、強力で一貫性のあるメッセージを発信してきた。これらを眺めて、何か気づくことはあるだろうか? そう、どれもこれもお金がかかるということだ……これはいけない。お金の節約は楽しいが、お金を使い果たすのは楽しくない。
プロモーションや時間的制約のあるメッセージでは、もし本当に影響の大きさを知りたいのであれば、大きな予算をつける必要があるのは確かだ。でも、もっといい方法がきっとあるはずだ。それが何かはもうおわかりだろう。
有料マーケティングの取り組みにインバウンド・マーケティングの取り組みを結びつければ、より説得力のあるストーリーを半分のコストで作り出せる。
新しいものを世に出して話題を盛り上げようとする際に、「これは自分の時間とお金のベストな使い方だろうか?」と自問する必要がある。思うに、有料マーケティング担当者は、こんな風に立ち止まって考えることを往々にして忘れているのかもしれない(私も含めて)。自分のよく知っているチャンネルで満足してしまうのではなく、さらにその先へ進む必要があるということだ。
結びに
ランドは正しかった。実際のところ、SEO仲間は皆正しかった。
有料マーケティングには、果たすべき役割があるのは確かだ。しかし、ウェブが進もうとしている方向の先にある世界では、私たちマーケターに求められることは、今よりもはるかに多くなってくる。マーケターに必要なのはインバウンド・マーケティングだけ、などとは思わないが、「インバウンド・マーケティング」「有料マーケティング」の2つの手法には、大きな力を発揮する相乗効果があると確信している。もしも競い合う代わりに、リソースを共有し、データを連携させて協力するなら、ウィンウィンの関係になると思う。
このことが有料検索マーケティングの将来にどんな意味を持つのかを考えると、とてもワクワクする。有料マーケティングを手がけていて、オーガニック・マーケティングやソーシャルメディアを手がけるグループと連携がとれていない人は、きっと必要以上に仕事を困難にしているはずだ。
ソーシャルもやってます!