もしも、「よみうりランド」と「としまえん」を解析するなら [第26回]
誰もが知っている有名サイトをエキスパートレビューしながら、「もし、アクセス解析するなら」どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説。アクセス解析を用いてサイトの改善を行うための仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトをアクセス解析する際に役立ててほしい。

木曜9時は「かってに解析!」ということで、毎週連載「有名サイト、かってに解析!」では、有名サイトを取り上げ、アクセス解析で実際に解析データを見る前に、あらかじめサイトの問題点やチェックポイントにあたりをつける方法を解説していく。
いよいよ夏本番。今回は、東京近辺の代表的な遊園地である「よみうりランド」と「としまえん」を取り上げる(以下、カギかっこ付きで「よみうりランド」「としまえん」と書くときは、遊園地自体ではなくそれぞれのサイトを指す。他のサイト、団体、企業も同様)。
今回はおもにこの2つのサイトを取り上げ、課題の抽出や考察を行うのだが、筆者は特に、遊園地や遊園地サイトが直面している課題や戦略・戦術を十分に理解しているわけではない。あくまでもどのような点に着目したらよいのかを重視して読んでいってほしい。
「よみうりランド」と「としまえん」のファーストインプレッション
まず、それぞれの遊園地サイトのトップページを見てみよう。下の図1が「よみうりランド」のトップページで、図2が「としまえん」のトップページだ。みなさんはどちらの方が見やすいとお感じだろう。


にぎやかで、見ていてワクワクする感じは「としまえん」の方だが、情報が整理されていてどこをみれば何があるかパッとみて判断が付くのは「よみうりランド」の方だと感じた。
遊園地サイトを訪問する4つの動機
どのようなシチュエーションで閲覧するかは次の項でシナリオを設定するが、遊園地のサイトに訪問する際に考えられる立場は、次の4つ(それぞれの軸は別々なのだが)ぐらいになるだろう。
- 個人客の立場で遊園地について調べる
- 団体客の立場で遊園地について調べる
- スタッフとして応募する立場から調べる
- 運営会社について調べる
サイト訪問目的のほとんどはAの立場であることは想像に難くないが、両サイトのトップページは、B~Dのパターンで訪れたユーザーでも、すぐにその目的のページに誘導できるだろうか?
まず「よみうりランド」の方だが、プールのページ以外は、ほぼグローバルナビゲーション部分(図1の赤枠で囲んだ部分)が固定されていて、この中央下部分に「団体のお客様」と「スタッフ募集」の2つが目に入る。これが、BとCのユーザーに対応する部分になる。Dに対応する部分は、フッター部分(図1の黄枠で囲んだ部分)にまとめてある。
続いて「としまえん」の方だ。Bに対応する部分は、図2の赤枠で囲んだ部分の2か所からアクセスできる。右上の「利用目的で探す」メニューの中にある「団体・企業でご利用の方へ」というリンク、その上にある「企業の方」というリンク、そしてファーストビューの左下にある「団体でのご利用」のリンクだ。Cに対応する部分は、図2の青枠で囲んだ部分の「ピックアップ」というカテゴリーの2番目の「夏のスタッフ 大募集!」というリンクが該当する。Dに対応する部分は、フッター部分に最低限のリンクはある。
対応する目的に応じたリンクはそれぞれ存在しているのだが、配置やラベル(言葉使い)の統一感などから「よみうりランド」の方がわかりやすかった。
トップページでの「お知らせ」の見せ方はどうか?
続いてトップページのメインビジュアル下にある「お知らせ」的な情報の見せ方について考えてみる。ちょうど今の時期だと、プールが始まる時期になるので、プールのオープン情報などのお知らせが分かりやすいか、そして夏に始まるイベント情報が整理されて提示されているかどうかがポイントになる。
「よみうりランド」の方は、イベント情報、お知らせ、キャラクターショーの3カテゴリーに分けて、期間も合わせて明記してあるのでわかりやすい。しかし「としまえん」の方はというと、「としまえんからのおしらせ」という場所に全部告知コンテンツへのリンクが配置され、イベントなどはその開催期間がわからない。
これらの理由から、冒頭に述べたように“にぎやかでワクワクする感じは「としまえん」だが、情報が整理されているのは「よみうりランド」”としたのだ。
「よみうりランド」と「としまえん」の閲覧シチュエーションを想定
さて前置きはこれくらいにして、今回は次のような閲覧シナリオを想定してサイトを見ていくことにしよう。
今回の閲覧シナリオ
誰が? | 小学6年生 |
---|---|
何の目的で? | 遊園地のプールに行く |
何をしに? | プールをやっている日時の確認と同時開催しているイベントの確認、料金を調べる |
今回のシナリオは、小学生があらかじめ自分で少し調べ物をしてから、親御さんに一緒に遊園地に行ってもらうという想定だ。今回のシナリオにかかわらず、子供たちが見るサイトに共通して気を付けたいポイントとしては、「言葉使いを平易にすること」「難しい漢字を多用しないこと」が考えられる。そういう意味でサイト全体を見ると、どちらもその点については配慮をしている感じがある。
「としまえん」という名前も、昔は確か「豊島園」という漢字が正式名称だったように思うのだが、なるべく漢字を使わないということを意識しての名称変更なのか、あるいは別の背景があるのだろうか。ちなみに、「よみうりランド」の方も、1964年の開業当時は「読売ランド」だったのが、4年後の1968年には「よみうりランド」に変更されている。
デジタルネイティブとも言える今の小学生のデジタル処理能力は、われわれオジサンとはかなり違うものであるかもしれない。筆者は、今の小学生くらいの人たちにユーザビリティテストを実施した経験はないので、おもにキッズが見ると想定されるWebサイトについては、別の知見もこれからは必要になっていくものと思っているが、それは本稿の範囲外なので、これぐらいに留めておこう。

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