初代編集長ブログ―安田英久

ネットのファスト風土化と、なんてことはない情報に価値がある話

ネットでも「見たような場所」ばかりになってきているような気がしませんか?
Web担のなかの人

今日は、「ファスト風土化するネット」の話題を。いろんな場所で似た景色ばかりになっているリアルと同様に、ネットでも「見たような場所」ばかりになってきているような気がしませんか?

ファスト風土がネットにも?

ファスト風土

「ファスト風土」という言葉があります。ファストフードにかけた造語で、多くの地域で同じような風景になっていく様子を指しています。

多くの地方都市で駅前に立って周囲を見回すと、どこでも同じコンビニ、ファミレス、チェーンのドラッグストア、大手都市銀行があり、消費者金融の看板が並んでいます。また、郊外を車で走ると、さらに大型ショッピングセンター、家電量販店、カラオケ屋、パチンコ屋、レンタルビデオ屋と、どこへ行っても似たような景色です。

「ファスト風土」という言葉は、そこから生活や家族のあり方、人間関係といった社会の状況を論ずるものですが、ファスト風土をウェブにからめたおもしろい意見を目にしました。日流eコマース5月27日版の編集後記での下山編集長の文章です。

思い出の店がコンビニ、牛丼チェーン、ドラッグストアなど、どこにでもある店ばかりになっていて、街に「顔」がなくなっている。

(中略)

似た現象がネットでも起こっているのではないかとふと思った。キーワード検索してみても、前に表示されていた店がない。幅を利かせているのは大手企業の広告と有名店ばかり。

(中略)

低価格合戦、広告・SEO、モールの独占でギスギスしてばかりいては、ネットも街の魅力がどんどん薄れていく。

たしかに、何かを検索すると出てくるのはWikipediaにアマゾンに楽天と食べログやクックパッド、ニュースを見るのは新聞サイトではなくYahoo!ニュース。インターネット上には、駅前にある店舗の数どころではない大量の情報があるはずなのに、検索結果には必ず強力な巨大サイトのページが入り込んでいて、ユーザーも結局「既知の慣れたサイト」に行く状況は、ファスト風土が指摘する状況と、多少なりとも共通する部分があるのかもしれません。

もしそうだとすると、企業のWeb担当者は、何を考えてどうアクションするべきなのでしょうか。おそらく1つの答が、「各サイトが独自の価値をしっかりと出していく」であり、それが進めば、検索エンジンやユーザーがその価値を評価するようになっていくのでしょう。

そのために重要で、意外とできていないのが「自社が顧客に提供する価値の再検討」ではないでしょうか。

御社が顧客に提供できる「価値」はたくさんあるはず

先日のコラムウェブには編集力が必要だにも通じるのですが、「自社がどんな価値を顧客に提供できるか」を突き詰めてコンテンツ化していくことで、各サイトの価値が上がっていくはずです。

少し話題が変わりますが、私はこの週末に、父の日の贈り物をネットで手配しました。ここ数年、父の日は毎年、福井県にある生さば寿司の萩さんで送っていて、今年も利用させていただきました。

ネットでも人気の萩さんですが、それはもちろん、商品である鯖寿司が絶品であること、つまり非常に大きな「価値」を提供できているからでしょう(本当においしいのです)。しかし、そういった「商材がもたらす直接的な価値」だけが「顧客に提供する価値」かというと、そうではありません。もっと小さな「ちょっとした価値」はどこにでもあるはずです。

たとえば萩さんを例に挙げると、次のような情報も「価値」です。

  • 「父の日に喜ばれる」「大阪人に食べさせると喜ぶ」といった商材の利用方法
  • 「芸能人でこんな人が食べた」という話題の提供
  • 素人でも参考にできる調理法や鯖の加工法
  • サバそのもののうんちく
  • 鯖寿司という食べ物のうんちく
  • 塩や米のうんちく
  • 鯖寿司以外のサバの食べ方の、懐石料理店ならではの情報
  • 懐石料理店という業態の裏側の話
  • 福井という地域の歴史やうんちく

「売るための文句」として使われることが多い要素も、その情報そのものが価値になるものです。

また、それこそ、なかの人からみると「え? そんなくだらないことが情報になるの?」というような、プロにとって当たり前で基本的なことが、一般の人には価値があることが非常に多いのです。上記以外にも、板前さんがお客さんに話して喜ばれる「ちょっとした話題」は山ほどあることでしょう。

そういった「ちょっとした」「自分には当たり前の情報」を、サイト上でそれぞれ単独のコンテンツとして、少しずつ出していくというのはいかがでしょうか。そうすることで、あなたのサイトは「そのテーマの情報が詰まった小さな情報誌」になり、サイト全体の価値が上がっていくのです。

◇◇◇

余談ですが、萩さんの鯖寿司はびっくりするおいしさで、自宅で(奥さんが)鯖寿司を作るほどの「サバイーター」(しかも鯖好きの大阪人)である私が惚れ込んでいる絶品です。「ネット通販でそんなにおいしい押し寿司が食べられるか?」と疑問の方、ぜひお試しください。この時期は鰺寿司もおいしいですよ。

・生さば寿司の萩
http://www.sabazushi.co.jp/

ちなみに、萩さんとは利害関係もなくアフィリエイトでもありません。福井に取材に行った際に必殺めっき職人さんに教えていただいて以来の純粋なファンとしてのご紹介です(Web担には何の関係もない情報ですいません)。

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