インタビュー

ソーシャルメディアで成功するには経営層の理解を得ること

ソーシャルメディアで成功するには経営層の理解を得ること

ジョシュ・バーノフ氏

●編集部 ソーシャルメディアへの対応は、どのような部署の人間が行うべきですか。

●ジョシュ 逆に質問を返したいのですが、では社内でインターネットの担当は誰にすべきでしょうか。

ネットワークインフラの担当であったり、ウェブサイトの制作部隊であったり、eメールマーケティングであったり、企業の中では多くの人たちがインターネットに関わっています。それと同様に、ソーシャルメディアの場合でも、それぞれのアプリケーションの性質に応じてさまざまな部署の人たちが担当すべきです。ソーシャルメディアは「どのような担当者か」というよりも、まずは「何をしたいのか」からスタートするべきではないでしょうか。そして具体的な目的が明らかになった段階で、協力を求めるべき部門を考えます。

特別な目的がある場合、たとえば企業の存在を広く認知させるためにブログ始めるというのであれば、広報が主導的に取り組むべきでしょう。また、純粋にマーケティングキャンペーンとしてのメッセージを広めて行きたいという場合は、その担当者には広告部門のような働きが求められます。お客様からの質問に答えることを主眼に置いた取り組みならば、顧客サポート部門の人たちが主役になるかもしれません。このように、1つの部門の人だけが取り組めばいいというわけではありません。

良い例として、PCメーカーのデルがあります。デルはコミュニティフォーラムやブログなどを以前からやっていましたが、当初は別々の部門がバラバラに取り組んでいました。それを2008年の初め頃に1人の責任者のもとにまとめ、200人からなるチームを作りました。

その後、その責任者は会社を去りチームも解散することになりましたが、すでにソーシャルメディアに対する考え方が確立されていたので、すべてのアプリケーションがさまざまな部門にスムーズに移管されました。集中的に管理していたものを、分散的に管理する体制にうまく移行できた例です。

●編集部 デルの成功はよく知られていますが、すべての会社がデルのように上手くいくものでしょうか? また、デルの成功はその責任者の資質によるものか、それともデルの企業カルチャーに寄るところが大きいのでしょうか。

●ジョシュ 確かにソーシャルメディアへの取り組みは簡単ではありません。だからこそ『グランズウェル』が8万部も売れたのだと思います(笑)。私たちフォレスター・リサーチがソーシャルテクノロジーの分野で成功を収めたのも、ソーシャルメディアへの取り組みが簡単にはいかないからではないでしょうか。

デルの話しに戻れば、デルがソーシャルメディアへの取り組みで成功した最大の理由は、もともとデルが持っているカルチャーによるところが大きいでしょう。早くからオンラインフォーラムを設置するなど、直販メーカーだからこそ顧客と直に接する機会が多かったという背景もあります。ただ、先ほどソーシャル部門を1人の責任者がまとめたと言いましたが、決して彼がキーパーソンというわけではありません。デルのキーパーソンと言えるのは、創業者のマイケル・デルです。彼がソーシャルメディアを使っていくことを、社内の機会を通じて明らかにしたため、デルはうまくいったと言えます。

特に大きな企業の担当者に対して私が話すのは、たとえば、Twitterを使った取り組みを始めようとしたときに、その承認を得るために三段階くらいの階層を行ったり来たりしないといけないような体制では、決してうまくいかないということです。

成功法則2
ソーシャルメディアに対する経営層の理解が必要

Twitter、ブログを始めようはNG
ソーシャルメディア戦略の一手は目的設定から

●編集部 ソーシャルメディアに取り組むべきか、悩んでいる経営者を説得するための良い言葉はありますか。

●ジョシュ 私もフォレスターの社員としてクライアントを訪れ、経営者に対してソーシャルアプリケーション上でクライアントがどのように言及されているかを話します。そこで20分くらい話をすれば、ほとんどの経営者は危機感を覚えます。これでスタート地点に立ったも同然です。

そこで、mixiをやるべきか、Twitterをやるべきか、ブログをやるべきなのかという話になるのですが、そういうアプローチは間違っている。そういうツールの話しが先ではなくて、あくまでもクライアントが何を達成したいと考えているのかという目的が最初に来るべきです。その後にツールと測定という話になります。

ですから、まず企業のトップが何をやりたいのか、そこをきちんと押さえるのが成功の第一条件になると思います。

いずれにしろソーシャルアプリケーションに取り組む際は大きなチームでやるのではなく、小さなグループでスタートすべきです。どの会社でも新しいアイデアが出たときに、3人~15人くらいは賛同する人たちが集まるものですが、そのくらいの小さなグループが理想的です。

私が大企業にお薦めするのは、ソーシャルメディアに取り組む場合、まずは1つのエリアに集中してスタートするということで、そこでまず成功してから手を広げるべきです。そうやって小規模な取り組みでソーシャルアプリケーションを始めれば、経営層はすぐに止めないものです。そして、ソーシャルアプリケーションに成果があるということを証明してから、徐々に規模を広げていくべきです。

成功法則3
小さな成功をもとに大きなプロジェクトへとつなげていく
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