HCD-Net通信
「人間中心設計 (HCD)」を効果的に導入できるよう、公の立場で研究や人材育成などの社会活動を行っていくNPO「人間中心設計推進機構(HCD-Net)」から、HCDやHCD-Netに関連する話題をお送りしていきます。
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HCDになじみのないデザイナー諸氏へのメッセージ/HCD-Net通信 #11

ユーザー調査の結果をうまく使えない、デザインに対して評価をしない、そんなデザイナーの皆さんへ
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HCD-Netの活動の中でお会いするデザイナーの皆さんは、ある意味で当然のことながらHCDという概念について、またその実践のあり方について理解しておられる。そういう方々とお話をすることが多かったので、デザイン界全体の現状についてまだ正確な理解をしていなかったように思う。実際にはまだまだHCDは浸透していないのだ。そうした現実について、ちょっとの反省だ。そこで、今回は、HCDについて理解されていないデザイナーの皆さんへの要望事項をまとめてみた。

1.ユーザー調査をないがしろにしているデザイナーの皆さんへ

テーマが与えられて、さてデザイン活動を開始しようというときに、まずアイデアを練ろうとするデザイナーがいる。そういうデザイナー諸氏に「どうしていきなりアイデアを練ろうとするんですか?その前にユーザー調査をする必要は感じませんか?」と問うと、

このテーマについては大体わかってる。ユーザーがどんなことを求めているかとか、ユーザーにはどういうものが受けるかということは経験でわかってる。
だから後は新規で斬新で魅力的なデザインをすればいいんですよ。

と言われる。

もちろんそれで成功する場合もあるだろう。ただ、その歩留まりをあげようとするなら、やはりユーザー調査はやった方がいい。自分のなかのユーザー像が現実のユーザーとずれている可能性があるかもしれない、という反省的な気持ちは常に持ち続けるべきだと思う。

世の中は急速に変化している。デザイナー自身の世代とユーザーの世代のずれがあるかもしれない。デザイナーの性別とユーザーの性別が違えば、考え方も感じ方も違う可能性がある。都会の中だけで仕事をしているデザイナーに地方に住む人々の暮らし方や感じ方がわかるといえるだろうか、等々。いろいろな疑問がわいてくる、そういうことであるはずだ。

2.ユーザー調査をしてもその結果をうまく使えないデザイナーの皆さんへ

それなりにユーザー調査をするデザイナーもいる。方法的に自己流であっても、ユーザー調査をしないよりはした方がいいだろう、とは思う。しかし、ユーザー調査をした結果と考え出されたデザインコンセプトの間にどのような有機的関係があるのか、理解に苦しむようなものが生み出されてしまうことも多い。

そういうデザイナーに「あのユーザーはこれこれというようなことを言っていましたね。それとこのデザインはどのような関係にあるんでしょう?」と問うと、

いや、ユーザー調査っていうのは、着想の幅を広げることに効果があるんで、ユーザーの言うこととデザインとの間に直接的な関係はないんですよ。
ともかくユーザーの声を聞く、っていうのは、アイデアの着想にとって、とても有効だと思いますよ。

というようなことを言われる。

たしかにユーザーの発言や行動は、デザイナーの発想を刺激するということはあるだろう。また、特にユーザーが、自分の直面している問題点ではなく、こういうものが欲しいというような発言をした場合、想像力に富むデザイナーにとっては、ユーザーから呈示されたデザイン案など取るに足らないもののこともあるだろう。

しかし、そうだからといって、ユーザーの問題指摘までを無視してしまうのであれば、ユーザー調査をやった意味がない。それは感性デザインの世界だ。デザインがデザイナーの感性だけで成立する世界はアートだ。工業デザインというものには、それなりのロジックがあるはずだと思っている。

デザイナーは自分のデザインについての思いをよく語る。しかし、どちらかというと、それは自己弁護、自分のデザインの擁護のための発言であることが多い。

工業デザインの世界では、デザイナーとユーザーをつなぐものはデザインされた製品だけだ。大量生産の世界では、デザイナーとユーザーは切り離されているのだ。できあがったデザインを受け取ったユーザーが、デザイナーの思いを理解してくれる保証はない。その点に意識を向ければ、ユーザーの発言や行動という情報に対してもっと謙虚になるべきだろう。

3.デザインに対して評価をしないデザイナーの皆さんへ

デザイナーは工期に追われている。それはわかる。工期の最終段階に近づいてからデザイナーにデザインが要求されるようなケースは、現在でも結構多い。その結果、デザイナーはコンセプトデザインに参加できず、自分たちなりにコンセプトを打ち立てても、結果的には、その段階になってからでは、もう自分のコンセプトを製品のデザインに込めることができず、色と形のデザインに終わることが多かった。

以前、そうしたデザインを皮被せデザインと呼んだ人がいた。あるデザイン部署の所長さんだ。そして皮被せデザインから脱却するために、デザイナーは上流工程を目指すべきだと考えて、事業部門への接近を試みた。しかしそこで仕事をしているデザイナーの皆さんは、必ずしもその考え方を理解していなかった。誰でもそうだが、自分が慣れ親しんだやり方で仕事をするのが楽だし、それでこそ自分の実力が発揮できるのだ、と思いがちだからだ

しかし、限られた時間の中で、自分のデザインしたものが、ユーザーにとって理解しやすく、使いやすいものであるかどうかを確認することは大切だ。時間がないからと作りっぱなしにしてはいけない。

評価の結果は厳しい。現実のユーザーは、デザインされたものをうまく使えないことが多い。それを謙虚にうけとめる姿勢のないデザイナーの中には「そういうユーザーには使えなくてもいいのです。ちょっと考えれば使える筈なんだから、使えるユーザーに使ってもらえばいいのです」とまで言う人がいた。

◇◇◇

このようにHCDにおけるユーザー志向の姿勢は、まだ十分にデザイナーに浸透していない。それが現状だと思う。

仕方ないんですよ。そういう人たちは頭が固いから、それを変えるのはとても大変です。まあ世代交代を待つしかないんじゃないんですか」という発言を聞いたこともある。

たしかに若い世代のデザイナーには期待できる余地が大きいと思う。しかしデザイン部門という組織の中に入り、その組織のやり方にしたがって仕事をしていかざるを得ない若いデザイナーは、だんだんと「伝統的」デザインのやり方に染まってしまう可能性もある。

やはりHCDの考え方は、多少なりとも強制的にデザイナー諸氏の頭の中に染みこませていかねばならないのだろう。

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