リスティング広告コンテストでサーチマーケティングのプロが一般投稿作品を講評
Webに特化した人材派遣事業やサイト制作を行うサポタント株式会社は、1月7日から31日にかけて募集を行った「リスティング広告コンテスト」の結果発表と授賞式を、3月7日に開催した。
コンテストでは、実在する松阪牛専門店の販売サイトと実店舗紹介サイトを対象に、オーバーチュアのスポンサードサーチの入稿規定に沿った内容(タイトルは15文字、説明文は33文字以内)でのリスティング広告の広告文の募集を行った。広告文の内容のみならず、リンク先ページ(ランディングページ)の選定まで評価の対象となる実践的なコンテストである。
一般のユーザーによるクリック投票の審査の後に、特別審査員による最終審査を経てグランプリが決定する。コンテストへの応募総数は、販売サイトと実店舗サイト合計で352作品にのぼった。
受賞イベント当日は、授賞式に先立ち、コンテストの特別審査員を務めた株式会社ルグラン代表取締役共同CEOの泉浩人氏と、セミナー前日(3月6日)にルグランとの業務提携を発表したDCアーキテクト株式会社、薬事法広告研究所代表の鈴木幸治氏によるリスティング広告セミナーも同時開催された。まずはその模様からお伝えしよう。
サーチマーケティングにベストプラクティスはない
元オーバーチュア取締役として、日本へ検索連動型広告を持ち込んだ一人としても知られるルグランの泉氏。サーチマーケティングにおける「広告文の作り方のノウハウ」と題して、決してテクニックありきではなく、いつの時代にも通用する普遍的なロジックをしっかりと学ぶことが重要だと説いた。
泉氏は、サーチマーケティングを航海にたとえ「管理運用のための基本的なロジックとは、いわば海に出るために必要な航海術のようなもの
」と語る。刻々と変わり続ける外部環境にうまく対応するための判断能力や、ゴールに向かって進み続ける持続力を養わなければならない。サーチマーケティングに「これだけやっておけば大丈夫」という最適な方法はないのである。
続いて、効果をあげるためにはどんな広告文が有効なのか、いくつか例をあげて説明していった。特徴的だったのは、リスティング広告を行ううえで、クリックをさせる工夫とクリックをさせない工夫が必要になってくるという点である。
クリックをさせる工夫とは、バナー広告やテレビCM、屋外広告にもみられるように、数ある広告の中で目を引いたり、いつまでも心に残って離れなくしたりというインプレッション効果を狙ったものだ。人気が高いキーワードにはそれだけ多くのリスティング広告が軒を連ね、激戦区となっている。その中でいかにして見込み客を自社のサイトに誘導するかが重要となる。
もう一つ重要なのがクリックさせない工夫である。一見矛盾しているかのように思えるが、リスティング広告の特質をよく思い出してほしい。リスティング広告はクリック課金であるため、クリックしたユーザーがその後コンバージョンに至ろうが、そのまま直帰しようが同じ料金のクリック単価が発生する。大風呂敷を広げて自社のターゲットではないユーザーを無理に引き寄せても、結果的にコンバージョンレートは低下し、費用対効果が悪くなってしまう。限られた広告予算を有効活用するためには、ターゲット以外の客をふるい落とす決断が必要となる。
そのためにリスティング広告で重要なのは、コピーライティングの能力やクリエイティビティではなく、無駄クリックを押さえながらいかにしてターゲットとする顧客を誘導させるかという点だという。そして、クリック率とクリックユーザーの質を高めることで、上位掲載を狙わずに訪問客を増やしたり、クリック単価の削減や広告効果を向上させ、結果的に同じ予算内でより多くの集客・売上を実現できるのである。
また、品質保持のためには、ライバル企業の広告文を定期的にチェックしたり、A/Bテストを行ったりして常に検証を行うことが必要だとして締めくくった。
ヤフーやグーグルといえど法律遵守には変わりない
続いて、薬事法広告研究所代表の鈴木氏が、薬事法の規制対象となる健康食品や医薬品を例にあげ、それらの商材の広告出稿に対する注意をうながした。
最近では行政が大学と連動して通信販売の健康食品や化粧品に対する調査を行い、誇大・虚偽広告などの不当表示を取り締まる動きが活発化しているという。学生が主体の調査といえど、その後、行政処分に発展するケースも出てきている。
リスティング広告に限らず、広告には景品表示法や特定商取引法、また健康食品や医薬品といった分野では薬事法、健康増進法などさまざまな法律が絡んでくる。もちろんそれらをすべてクリアしなければならない。リスティング広告の場合、広告の出稿先であるヤフーやグーグルといえど、一企業としてその国の法令を遵守しなければならないのは当たり前のことで、これだけ検索連動型広告の市場が大きくなった今日では、なおさら彼らの社会的な責任は高まり、媒体責任を回避するためにより徹底した管理を行って厳格な運用になっているという。
ある日、突如として出稿が停止されるといったことが起きないように、細心の注意を払って各種法律に対応していくことが重要だと語った。そして、過激な表現でお客を得たとしても、そこから固定客に結びつかなければ意味がない。法令違反という大きなリスクを犯してまでやることではないと指摘した。
応募総数352作品の頂点に輝いた広告文とは
2部構成のセミナーが終わると、いよいよコンテストの結果発表と授賞式にうつる。販売サイトと実店舗紹介サイトそれぞれの優秀賞と総合グランプリの発表が行われ、受賞した広告文に対して審査委員長であるルグランの泉氏より講評が発表された。
泉氏によると、一般審査の得票率が高かった作品でも、最終審査の対象から外れたものも多く、それらの多くはキャッチコピーを重視した広告だったという。セミナー内でのクリックをさせない工夫の解説にもあったように、リスティング広告の場合は、それらの多くは無駄クリックとなってしまう。しかし、逆にそれだけ多くの一般得票を得られたということなら、アドセンスなどコンテンツ連動型広告やバナー広告では、とても効果が高いものになるだろうと述べた。
以下、見事グランプリと優秀賞に輝いた計3作品を紹介しよう。
グランプリ
泉氏講評:地域が「千葉・船橋」に限定されていて検索ユーザーを絞れている。キーワードの「宴会」がしっかりとタイトルに入っていて、他の作品に比べて減点対象となる項目が少なかった。
販売サイト部門優秀賞
泉氏講評:「グルメ ギフト」のキーワードが押さえられている。ただし、毎月5名に松阪牛が当たるのはメルマガ登録をした場合のみで、リンク先はメルマガ登録ページではなくグルメギフトのページに設定されている。松阪牛目当てにクリックしてきたユーザーが混乱する恐れがある。
実店舗紹介サイト部門優秀賞
泉氏講評:「宴会」「お店」のキーワードが入っているが、松坂牛の「坂」がリンク先のサイトの表記と異なるうえ、検索ユーザーのことを考えるとより一般的な「阪」を使うほうが効果的である。また、リンク先ページは数ある店舗のうちの1つの店舗ページに設定されている。全店舗の一覧ページが自然だろう。
今回のコンテストを主催したサポタントでは、今後もさまざまなコンテストを計画しているという。すでにサイト上では、次なる「バナー“力”コンテスト」を企画中だ。
- リスティング広告コンテストの結果発表
http://www.webtant.net/contest/listing/result.html - サポタント株式会社
http://www.supotant.com/ - 株式会社ルグラン
http://www.legrand.jp/ - DCアーキテクト株式会社(薬事法広告研究所)
http://www.89ji.com/
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