編集部ブログ―鈴木教之

「Web Directions」がアジア初上陸 Webがもたらす新たな世界/「Web Directions East 2008」レポート

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去る2008年11月7日、国内外のWebに関する著名人によって繰り広げられるイベント「Web Directions East」が開催された。「Web Directions」は、2004年オーストラリア・シドニーでの開催を機に、主にオーストラリアを中心とした「Web Directions South」、カナダ・バンクーバーでの「Web Directions North」と世界規模で行われてきた。主にWebデザイナーを対象としたイベントで、デモを交えながらWeb関連の最新情報やエキスパートの知識・アイデアを共有できる場として知られている。

今回はSouth、Northに続く試みとして、アジア発上陸となる東京での開催を果たした。3日間の期日のうち、初日は「ユーザーに優しいウェブサイトの提供」をテーマとしたカンファレンス、翌日から2日間にわたって、講演者によるワークショップが執り行われる。ここでは初日のカンファレンスの模様をお伝えする。

開会に伴い「Web Directions」の共同創設者であるJohn Allsopp(ジョン・アルソップ)氏より、開催の挨拶がのべられた。

John Allsopp(ジョン・アルソップ)氏

Webでのコミュニケーションが全盛の時代に、こういった(リアルの)カンファレンスが行われることはある種、皮肉なことである。ただし、Webは過去の古典的なコミュニケーションを陳腐化させ、破壊するようなものではなく、変革するものと位置づけるべきである。最終的には人と人の関わりが重要であって、Webの技術はそれを可能にするものだ。技術的な側面から捉えがちではあるが、Webの本質は実世界を豊かにして人々を結びつけるものである。

続いて、WWW(ウェブ)の開発者として知られるTim Berners-Lee(ティム・バーナーズ・リー)氏によるビデオレター。W3Cの主宰でもあり、「Web Directions」の後援者でもある。

Tim Berners-Lee(ティム・バーナーズ・リー)氏

Web開発者がWebのスタンダードを活用していくことが重要である。すでに存在する多くの標準技術をなるべくシンプルに活用してほしい。そして、積極的にフィードバック、インプットを行うことで、Web言語が相互に活用されることを願っている。

2名の挨拶が終わると、いよいよ基調講演のスタートである。今回は国内外の10名の著名人によるスピーチが行われたが、このレポートでは国外スピーカーを中心にその内容をみていくことにしたい。※当初予定されていたJeffrey Veen(ジェフリー・ヴィーン)氏の講演は、諸般の事情によりによりMike Migurski(マイク・ミジャースキー)氏による講演に変更となっている。

ブラウザ視点からみるWeb開発のトレンド

カンファレンスのトップバッターはHTMLやCSSの第一人者として知られるEric Meyer(エリック・メイヤー)氏。「ブラウザの多様化でみる最良のWeb開発」と題し、今後のWeb開発の方向性を示した。

Eric Meyer(エリック・メイヤー)氏
Eric Meyer(エリック・メイヤー)氏

はじめにGoogle Chrome登場について触れ、その登場がコミックであった点は非常に面白いことだと述べた。今日では、新しいブラウザが発表されるということは非常に珍しいことであるが、Google Chromeは実質的には「Webkit(Safariに採用されているオープンソースのレンダリングエンジン)」で構成されており、既存の技術から作り出されたブラウザである。また、「Gekko(FireFoxで採用されているレンダリングエンジン)」ではなく「WebKit」を採用した点には驚かされたが、Safariでの使用例があることや今後のモバイルでの展開が(「WebKit」はすでにiPhoneに実装されている)原因なのかもしれないと付け加えた。

Google Chromeは、その使用法を記載したコミック画像のリークによって明るみになった。その騒ぎで正式発表が前倒しになったことは記憶に新しい。リンクはGoogle Chrome発表時の記事。

話は標準化の話題に移り、HTMLの時期バージョンにあたるHTML5に関して続く。HTML5が利用されるのは“2022年頃”になるだろうという予想もあるが、これは2022年まで待てというわけではなく、すでにHTML5に向かった試みがスタートしていると加えた。HTML5を語る上ではまず「Canvas」という新しいプロパティを紹介し、「Canvas」では豊かなインターフェースを再現することができる。Flashに似たようなイメージを持つかもしれないが、プラグインなしにブラウザの標準技術として実装されている点が重要である。

JavaScriptエンジンの進化はユーザーエクスペリエンスを豊かにする

エリック・メイヤー氏は「Canvas」を用いた例として、ブラウザ上であらゆるFontを再現する「typeface.js」を紹介し、これは現在7つと言われているブラウザ上でのFontの再現を超える取り組みだと説明した。JavaScriptが主要な実行環境であると話す同氏は、今後のブラウザ、ひいてはWebの開発においてはJavaScriptの実行速度が重要になってくるだろうと語った。WebKit1.3で刷新される「SquirrelFish」や時期Firefox3.1に搭載が予定されている新JavaScriptエンジン「TraceMonkey」は、ともに従来のJavaScriptエンジンの何倍もの効果を発揮するという。

以下は講演内で紹介されたJavaScriptの実装例
より多くのことがプラグインなしで実装できるようになる

280Slides
「280Slides」
  • Bluff:
    画像を一切使用せずにHTMLでグラフを作成
  • Raphael:
    Bluffと同様に、コードで定義しグラフを作成
  • 280Slides:
    ブラウザ上でプレゼンテーション用ドキュメントを作成、Objective-Cを派生させたObjective-Dを採用している
  • Processing.js:
    JavaScriptのライブラリ集

ただし、これらの技術を使用するには2年前のブラウザでは遅すぎるし、今後もJavaScriptエンジンが進化し続ける必要がある。また、今までのアプリケーション開発で培われた技術がそのままWebアプリの開発にも使用できるようなプラットフォームが望ましいとした。

モバイルデバイスはまだ発展段階

エリック氏の話は、iPhoneの登場に始まる今年のモバイル業界に移る。最近では、iPhoneやAndroidといった新たなプラットフォームが登場しているが、モバイルデバイスのブラウザやアプリケーションのインターフェースはまだまだ改善の余地が残されている分野だと語る。

これからはモバイルWebが必須となっていくことは皆が理解しているだろう。モバイルの利用は今までPCを利用したことがない層にも拡大しており、何十億人もの人たちがPCではないWebに触れている。WWW(ウェブ)の思想の根源は、世界のあらゆる人々が通ずるものであるから、いずれはモバイルがその道を推し進めてくれるのではないか。

そして、JavaScript、JavaScriptエンジンの進化、機能強化でWeb標準をサポートしていくことが2008年のトレンドであり、これは技術的な側面のみでなく社会的にも重要性を増し始めている。この変化にはあらゆるメディアが対応していく必要があるとして締めくくった。

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