編集部ブログ―鈴木教之

Web制作の現場担当者が語る2008-2009年のWeb業界/第21回WebSig会議レポート

前回会議に引き続き、12月6日に開催された第21回WebSig会議に参加した。WebSig会議とは、Web業界の健全な発展を議論していく任意団体「WebSig24/7」が、Webのさまざまな分野の第一人者をゲストに招き隔月で開催している勉強会である。

今回の会議は「Web業界の2008年を振り返り、2009年を考える」がテーマ。第一部には、規模と分野が異なるWeb制作会社から4名のゲストスピーカーを招いてのセミナー形式の発表が行われ、続く第二部では、参加者全員による勉強会が行われた。当日の様子を写真を交えてレポートしていこう。

Web制作は宅地建設からリフォームの時代へ

株式会社メンバーズ 塚本氏
株式会社メンバーズ 塚本氏

第一部のトップバッターは大規模案件を数多く手がけてきた株式会社メンバーズ 塚本氏。2008年を振り返り、景気後退に伴うクライアントの予算縮小の影響を受けて、大規模案件は減少し、小規模なリニューアルや運用案件が増加したという。Web制作自体が真新しいものではなくなった今日では、新規立ち上げのケースは減り、運用やメンテナンスのニーズが高まっている。「Web制作は宅地建設からリフォームの時代に移った」と表現していたのが印象的だった。

また、Web制作の現場では、そういった業界動向を背景に大規模案件の中で生かされるような専門職ではなく、中小規模の案件を効率よく運用できるポリバレント(多能工)な人材が必要になってくると予想している。

不況そのものがトレンドとなる2009年に生き残るためには、コスト削減を軸にした提案で差別化・さらなる改善を図っていく考えだ。大幅な収益が見込めない場合はいかにして収益性を上げていくかがカギとなる。

モバイルの売上が初めてPCを上回る

株式会社アイ・エム・ジェイ 渋谷氏
株式会社アイ・エム・ジェイ 渋谷氏

続いて、こちらも大規模案件を得意とする株式会社アイ・エム・ジェイ 渋谷氏のスピーチに移る。2008年は、前述のメンバーズ同様、新規案件の獲得が難しくなり、運用のニーズが増えた年だったと語る。コンテンツを含めた総合力が自慢のアイ・エム・ジェイだが、この経済状況では総合力だけでは勝てないと痛感した年でもあったという。

2008年のトピックとしては、四半期決算で初めてモバイルセグメントの売上高がウェブセグメントを上回ったことをあげ、モバイルの需要は今後も順調に延びていくと予想している。2009年も厳しい状況に変わりはないだろうが、不況だからこそしっかりとした効果検証が必要であり、いかにしてROIを高めていくかが重要だと語る。効果検証に関しては、ブランディングやエンゲージメントと呼ばれる単純な数値で比較できない指標をいかにして可視化していくかが難しい。またネット以外のデータとの連携がさらに進むだろうとした。

Web業界を魅力的な業界へ

株式会社コンセント 河内氏
株式会社コンセント 河内氏

先の2名とはやや異なり、小規模/フルサービスの制作会社という立ち位置から株式会社コンセント 河内氏によるWeb制作現場の現状を語っていただいた。コンペ自体の数が減って直接注文を受けることが多くなったと語るコンセントでは、景気後退の影響は2社ほどはなかったという。

企業のWeb施策への投資があまり見込めないと予想される来年以降は、クライアントに対してより深くコミットしていくタイプの制作会社と、完全に作業を請け負うだけの専門業者のようなタイプとの2極化が進行するだろうと述べた。今後は、Web以外への取り組みとの連携やWeb業界全体のイメージの底上げ、そして新たな人材に対して魅力的な業界にみせていくことが重要だと語った。

2009年はリアル連動・携帯連動、そしてエコ

株式会社カヤック 鈴木氏
株式会社カヤック 鈴木氏

最後は「面白法人」としても有名な株式会社カヤック 鈴木氏が登壇した。“つくる人を増やす”をコンセプトに掲げ、周りを巻き込んで面白いことを展開している同社は、もともと採算度外視で行っている事業も多いということで、終始笑顔で2008年の実績紹介と、2009年にこれが“くる”というものをあげていってもらった。

鈴木氏の得意とするブログパーツの話に移ると、さすがにもう真新しさはなくなったが、最近ではクライアントから「やってみたい」と声がかかるケースが多いという。ブログパーツは一昨年(2006年)は専門のデザイナーによって広められ、昨年(2007年)は代理店からの提案で見かけるようになった。それだけ周囲にもWebマーケティングツールとしての認知が広がったといえるだろう。ただし、ブログパーツに限った話ではないが、今後はいかにして数を獲得していくか、その後の効果を測定していくかが重要だと語る。

2009年のトピックとしては、リアル連動、ケータイ連動、そしてエコ事業があがっていた。

どうすれば2009年のWeb業界をHAPPYにできるのか

ワールド・カフェ

カフェや休憩室のようなリラックスした空間での会話を、職場での会議やミーティングの場に取り込みアイデアを誘発させる方法

ゲストスピーカーによるセッションの後は、参加者による全体ミーティングの時間だ。今回はワールド・カフェスタイルで「どうすれば2009年のWeb業界をHAPPYにできるのか」を討論する。参加者はコーヒーを片手に自分の好きなテーブルに座り、初対面の人たちとコミュニケーションをとりながら議論を進めていった。

一定時間が経過すると、各テーブルの代表者1名を残し、他のメンバーは異なるテーブルに移動する。移動先のテーブルでどんな内容が議論されていたかは、そのテーブルの代表者からヒアリングを行い、さらに自分なりのアイデアを加えてマッシュアップさせていくという試みだ。このやり取りを数回繰り返した後にはテーブルのメモはいっぱいになっていた。それらの中から各自1つ選んだアイデアをホワイトボードに貼ってまとめとなる。特徴的だった意見を少しあげてみよう。

  • 自分のやりたいことをやる
    ルーチンワークがつまらなくて嫌だという人もいれば、好きな人もいる。まずは自身にとって本当に幸せな仕事は何かを考えることから始めよう
  • Webの制作物にもエンドロールを
    Webの世界ではクライアントの要望で制作を担当した会社を明かしてはいけない条件(機密保持契約)をつける場合が多い。映画のエンドロールのように、制作に携わったすべての人の名前を出して評価を受けられるようにすべき
  • もっと世界へ
    マンガやケータイのように日本のWebサービスをもっと世界に認知させる

WebSig会議では、毎回参加者による会議の時間を設けている。このような討論の場が、その場だけのものではなく何らかの形で実際の仕事にフィードバックされると良いのではないだろうか。

メモでいっぱいになったシート
メモでいっぱいになったシート
ホワイトボードに貼られたアイデアの数々
ホワイトボードに貼られたアイデアの数々

第一部のゲストスピーカーによる講演資料はWebSig24/7サイトで公開されている

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