大手小売業のECサイトがいかにSEOやユーザビリティで失敗しているかの具体例(後編)
この記事は2回に分けてお届している。前回に引き続き、英国の小売業者が犯しているSEO面でのミスを見ていこう。
複数のドメイン名を所有するのは構わないんだけど……
この記事で取り上げているブランドはすべて、英国人なら誰でも知っているので、これらの企業が自分たちのドメイン名に対するあらゆるバリエーションを所有する必要があるのはよくわかる。
けれど、それらのバリエーションを手に入れたら、常にメインサイトの方へリダイレクトするようにしとかなくっちゃ。でないと、重複コンテンツの問題に陥る可能性がある。
たとえば、「www.TheCarPhoneWarehouse.com」と「www.CarPhoneWarehouse.com」は両方とも同じサイトへとリダイレクトされるから問題ない。
ところが、異なるサイトが別々のドメイン名を持ちながら、同じコンテンツを表示している場合もある。littlewoodsとlittlewoods directという2つのページの違いを調べてみよう。どっちの方が信頼できるのか、ユーザーに判断できないのならば、検索エンジンも間違いなく苦労するはずだ。
そしていよいよ、僕たちは大変な状況に遭遇する。これはおそらく単なる間違いだと思うんだけど、だからといって見過ごしていい理由にはならない。「http://www.bodyshop.com」にアクセスしてみよう。本当なら「http://www.thebodyshop.co.uk/」にリダイレクトされるべきなんだけど、実際は下のようになる。
大した問題じゃないと思うかもしれないけど、このドメイン名は2000以上の外部リンクを獲得しているんだ。おかげでこのサイトは、検索エンジンにおける上位獲得と訪問者獲得のチャンスを逃してしまう。
コンバージョン率の最適化
e-consultancyがすでにこの件をしっかり取り上げているので、僕はここで掘り下げるつもりはない。それにしても、サイトにこんなボタンを作った人は一体、何を考えていたんだろうね? 商品の注文を破棄しろっていう呼びかけ? しっかりしてよ。
清算手続きへの進み方がちゃんとわかるまでに、ジーンズを7本も買い物かごに入れなきゃいけなかったっていう事実には目をつぶってあげよう。このほかにも、次のような誤りをよく見かける。
買い物かごに商品を追加したときに、かごの中身を表示しない。いちいち表示されると煩わしく感じるのは確かだけど、かごの中身を確認するのに5分もかかるよりはずっとましだよ……。
購入する前のユーザーに登録を強要する。記入項目が多いほど、購買意欲を失わせるのに効果的。
「今買う」(buy-now)機能のボタンの文字に「登録する」というようなあいまいな言葉を使う。「今買う」だと少し効果的すぎるからなのかな(僕にはわからないけど)?
下のスクリーンショットは、おしまい2つの基準に照らして失敗している例。ユーザーに登録を強要し、なおかつ「今買う」ボタンではなく「登録する」ボタンにしている。
今回の買い物でいくら割引してもらえなかったかを知らせる真っ赤なテキストが、支払いのページに追加されている。ちぇっ、ご丁寧にどうも! このサイトは割引がなかったことを赤字で2回も教えてくれている。
「顧客に興味を失わせるサイト」優秀賞の受賞者たち
最後に、ユーザーを混乱させるために作られたとしか思えないサイトをいくつか紹介しよう。これに対する説明なんてまったくない。
英国の大手靴小売店Clarksは、僕が大手のブランドで見た中でも、最も奇妙で不可解なウェブサイトを持っている企業の1つだ。およそ100社の大手企業を掲載したBritish Companiesのリストでさえ、Clarksに対し「難解なサイト」との烙印を押している。
すべてFlashでできていて、商品の画像とその横に価格の表示された靴のページを見つけるまでに、僕はポップアップを1つブロックし、10回クリックし、それぞれのページをロードするのに何分も待たされた(どの靴のページについてもだ!)。ご立派。しかも、写真と価格を提示するほかには、ページは何も行動を促さない。最寄の実店舗を探すためのリンクすらなく、ましてや電話注文のための電話番号なども書いてない(番号はあるはずなんだ。トップページには電話注文を促す文言があるからね)。何の役にも立たない「素敵な」Flashのウェブサイトに、これほど大金を費やすのはなぜ?
特別賞はもちろん、Tie Rackのウェブサイトに贈られる。このサイトは全部で5ページしかなく、訪問者に対して、最寄りの実店舗を調べるためにメールで問い合わせるよう要求している。メールしろだって?! 検索可能なリストが、あまり上手く機能しない場合もあるからっていうのが先方の言い分だ。
結論
英国の大手ブランドはオンラインマーケティングやSEOの取り組みに効果的な投資ができていないってことが、今回の記事を書きながらわかった。こんな企業の多くが自分たちのサイトに何千万円を費やしたとしても、オーガニック検索のトラフィックは大して獲得できないだろう。オーガニック検索による大量のトラフィックを実際に獲得している企業は、そのほぼすべてをブランド検索から得ている。これらの企業の多くは、ブランド検索でないオーガニックなトラフィックを追い求めるのではなく、自分たちのサイトへのトラフィックを促進するために、PPC広告にかなりの予算を割り当てている。
ではこのオーガニックなトラフィックはどこに行き着くのだろうか? 「洗濯機」や「メンズ・ジーンズ」のようなカテゴリ検索の大部分は、複数のオーガニック検索で上位にランクインしているいくつかのブランド(例:John Lewis、Tesco、Cometなど)のほか、オンライン小売業者(例:Amazon)やオンライン・ショッピング・ポータル(例:ciao、pricerunner)へとトラフィックを導いている。
控えめに見積もっても、英国の大手小売業者は1年あたり少なくとも100億円は逃しているって言えそうだ。
今回はご覧のとおり英国の企業に焦点を当てたが、米国市場の概要についてもぜひ知りたいと思う。もっと進んでいるだろうか? 概して米国企業はもっと「きちんと」やっているのかな? たぶん、ジェーンとレベッカもコメントをくれるよね?
この記事を読んだ人の中で、今回挙げたいずれかのブランドのために働いていて、自分のSEO戦略に確信が持てないという人がいたら、SEO業者からアドバイスを受けることを強くお奨めする。まずは、英国を拠点とするSEOmozのグローバルアソシエートか推奨業者に連絡を取るといいだろう。
更新情報(この記事を書いた後だが、発表する前):いかにGAPが英国のオンライン・キャンペーンでしくじっているかについての記事を、シアランが投稿している。これはとてもタイムリーで関連性の高い内容だと思う。
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