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マイクロソフトのヤフー買収関連まとめ(後編)

前編ではマイクロソフトがヤフー買収に動くまでの流れを概説した。

後編となるこの記事では、マイクロソフトがヤフーに買収を持ちかけるという、センセーショナルなニュースに対して、ウェブの世界で巻き起こった反応を紹介しつつ、Randがこの買収話をどう捉えているのか見てみよう。

偽スティーブ・ジョブズ氏の発言:

たとえば、サーカスだ。2頭の巨大で不器用な象が、互いに嫌い合っているにもかかわらず、建前上仲良くスケートボードに乗る出し物を想像してほしい。

そして幸運なことに、あなたはサーカスの花形ピエロだと想像してみよう。自分よりずっと体の大きな2頭の象の脇に立ち、この不自然きわまりない出し物をなんとか成功させなければならない。

この買収劇のために、上を下への大騒ぎで今後2年間の人生をめちゃくちゃにしてしまう人たちが何百人、いや、おそらく何千人と出るだろう。

自分の子供のことだって、こんなに大騒ぎにはならないだろう。週末にスキーへ行く? そんなものはなしだ。こんな騒ぎを尻目に、グーグルがますます差を広げていく。

フレッド・ウィルソン氏の発言:

ヤフーを買収してもマイクロソフトにとってはあまり意味がない、と僕が考える理由がまだある。

それは、ヤフーの最高のサービスもマイクロソフトの傘下に入れば、その多くが魅力を損ない、結果としてユーザーは離れていってしまうだろうことだ。同じことはすでに、ヤフーがFlickrやdel.icio.usやMyBlogLogといったサービスを買収したときにも起きている。マイクロソフトのもとでは、さらに事態が悪化するだろう。

ウェブサービスというものは、大手企業の手の中で発展しない。むしろ悪くなってしまう。

ウェブサービスの買収を重ねていくことは、インターネットの世界にとって良いことではない。インターネットというものを考えた場合、これは膨大な分散ネットワークで、文字どおり何百万もの組織が所有し運営するサービスが、緩やかに結合したものなんだ。

ロバート・スコーブル氏の発言

電子メールは金の生る木ではない。グーグルはそのことを知っている。

したがって、そんな世界をマイクロソフトとヤフーが独占したからって、だれが気にするというのだろう? マイクロソフトのHotmailかヤフーのメールサービスを使っている6億人の利用者から利益を得るなら、その方法は1つしかない。それは、利益性の高いサービスに引き込むことだ。

ダニー・サリバン氏は、この買収の目的が検索にあると僕に話した。そう、彼の言うとおりだ。しかしその6億人に、自社のメールサービスだけでなく、自社の検索を利用してもらわなければならない。グーグルは、まさにその方法で両社を押さえ込もうとしている。

しかし、グーグルは知っているんだ。たとえマイクロソフトとヤフーがメールサービスを統合し、首尾良く検索サービスをあてがったところで、それでもなおグーグルはメールと検索の両面で、マイクロソフトとヤフーを上回る成長を遂げるということを。

それはなぜか? グーグルのサービスを他と比較してみたことがあるだろうか? 僕は、やったことがある(ちなみに僕はホットメールのユーザーだ)。たとえ僕がホットメールだけを使っているとしても、僕のメールアドレスはウェブ上のいたるところに出ているから、実際にはGmailを利用しているようなものだし、それにグーグルのサービスのほうが上手く統合していて、造りも優れているんだ。

さてと……、今度は僕の意見だね?

  1. まず、現時点で判断するかぎり、この買収は成立する可能性が高いと思う。もちろん、これが間違っている可能性もあるけど、マイクロソフトが買収案提示のタイミングを慎重に計っていたのは明らかだし、必死でこの買収を成立させようとしてくるだろう。

    ヤフーは今、CEOのジェリー・ヤン(Jerry Yang)氏が投資家の信頼を失って厳しい立場にある。はっきり言って、見るに忍びない状態だ。けれどもそれは、ヤフーがFlickr、Upcoming、del.icio.us、MyBlogLogといったサービスを、より速く、より強力な、より優れた製品にできなかったことで、自ら招いたんだと思う。無駄にしてきたチャンスは、あまりに多かった……。

  2. 次に、ヤフーとマイクロソフトの従業員は、企業文化的にそりが合わないという見方がウェブの世界で一般的になっているけれども、これについては僕も同意見だ。

    僕らはマイクロソフトともヤフーとも仕事をしたことがあるし、僕自身どちらにも多くの友人がいる。実際、SEOmozの技術チームに最近入ったなかの2人は、両社に所属した経験がある。

    マイクロソフトは、中間管理職からまさに技術者レベルまで、徹底して官僚的な、組織化された体制を敷いている。率先してカジュアルな服装規定やフレキシブルタイム制などを取り入れてきたものの、その社風にハイテク界の「ベンチャーっぽさ」はほとんどなく、その傾向は同社を離れる人よりも、雇用側に見て取れる。

    一方、ヤフーの企業文化はこれとまったく違う。ヤフーも大企業なのだが、それぞれベンチャーのような雰囲気の部門が多く、実質的に従業員全員がそうした考え方をより強く持っている。

    買収したとしても、体制の移行をよほど上手く行わないかぎり、従業員間の摩擦や衝突、離職が続いて、会社として落ち着くまでに何年もかかることになるだろう。

  3. そして、誰もがこの買収を検索目的のものだと言ってる点だ。あとで僕の意見を書くけど、その前に1つ見ておきたいことがある。

    たしかに、検索の関連性とスパム検知の面で、Yahoo! Searchはマイクロソフトよりおそらく1年か2年先を行っている。両社はもう一度、MSN Searchに立ち返るほうが良いし、そうすべきだと思う。

    両社が統合されて検索マーケティング部門が1つになり、市場シェアが30%に近づけば、大半の真摯なマーケティング担当者にとって、Micrahoo!(Yahrosoft)上の広告展開が不可欠なものになる。そして、統合によりMicrahoo!(Yahrosoft)は、たとえ小規模なキャンペーンでも投資に見合うだけの十分なトラフィックを動員できるようになる。

    マイクロソフトには、コンテンツ連動広告プログラムがどうしても必要だが、それはヤフーが持ってきてくれる。統合すれば、シェアも採用率(両社のそれぞれのパートナーが統合されるので)も増加するため、このプログラムを利用する広告主が増えて、アドセンスと本当に勝負できるサービスになるかもしれない。

    両社の研究者やIR(情報検索)技術者は、クローラ、アルゴリズム、スパム検知、検索体験の質などをおそらく向上させるだろう。だが、相乗効果が実効性を発揮するには、2年から3年かかる可能性もある。

  4. 4つ目。この買収話が検索絡みでないとしたら、どうなるだろうか? あるいは、少なくとも検索だけが目的じゃないとしたら? もしマイクロソフトが、オンライン・ディスプレイ広告事業など、実際にはもっと別のことを念頭に置いている可能性はあるだろうか?

    ちょっとここで空想の話をさせてほしい。話題がずれるように見えるかもしれないけど、ちょっと待ってて。今から12年後の世界を想像してほしい。

    ある国があって、テレビはほぼ完全にオンデマンドだ。

    CMがない代わりに、iTunesのようにペイパーウォッチ式で視聴料を支払い、番組を見る。番組の存続は週ごとの視聴者数で決まり、番組で製品を映してもらうことだけが、唯一の広告機会となる(ただし映画のように、番組前のCMだけはおそらく残っている)。

    そのような世界では、大手ブランド広告主が広告を出す「マスメディア」が存在しない。忘れないで欲しいのだが、ラジオも新聞も絶滅種の動物と同じ道を辿っているんだ。したがって、大手ブランド広告主もユーザーの心をつかむため、ウェブベースのメディアに切り替えざるを得なくなる(それとも、20人かそこらの若者にブランドを想起させるうえで欠かせない、7回ばかりのブランド露出をひねり出すか)。

    このすばらしき新世界では、デジタルのディスプレイ広告が主たる宣伝媒体で、広告主は競ってバナー広告を掲載し、口コミやリッチメディアを使ったキャンペーンを実施する。そしてできる限り双方向メディアの力を利用する。こうした世界では、マイクロソフト(もし存在するなら)のヤフー買収という動きは、ただ単に検索目的だけというより、むしろオンラインのディスプレイ広告における関連性と競争力を維持することに重点を置いた行動と映るだろう。

    マイクロソフトが考えている可能性があるのは、こうした立場だけにとどまらない。

    ウェブの世界でユーザーの目的地として明確なトップの地位を獲得すれば、ほかにも大きな特典がたくさん付いてくる。たとえば、どこよりもかつてないほど多くのユーザーに、どこよりもかつてないほどすばやく接触できるというようなことだ。マイクロソフトとヤフーが合併し、状況を一変させる何かを構築して展開するなら、そのほうが確かに良いだろう。

    しかし残念ながら僕は、この理屈がそれほどうまくいくとは思わない。マイクロソフトは、ウェブの世界における革新の起点にならないし、なったこともない。僕には、現在の首脳陣が、探求的な起業家スタイルを取り戻すのに必要な変化を引き起こしたがっているとは思えない。そうした姿勢は、グーグルキラー(あるいはeBayキラー、Craiglistキラー、Amazonキラーなど)を生み出すのに必要なものなのに。

ちょっと、検索マーケティングの話はないの?

えっと、みんなのことを忘れていたわけじゃないから、心配しないで。SEOやSEMキャンペーンのことを考えると、展開先が2社しかないというのは、多くのキャンペーンや最適化作業にとってかなり楽になる。

ヤフー(オーバーチュア)の使っている関連性評価システムは、グーグルにとてもよく似ているので、SEO担当者は両方を同時に扱うことができて、作業がかなりシンプルになる。PPC広告も、3社ではなく2社から購入すれば済むので、その分煩雑さや混乱も少なくなり、相手にする検索エンジンが「全部」から「両方」になることで、僕らみんなにとって利益をもたらす。

こうした側面について、もっとスマートなことを言う人は他に大勢いるし(特にローレン・ベイカー氏とアーロン・ウォール氏の記事は読む価値あり、ただし英文)、僕が付け足すことはもう何もない。ヤフーのメディアグループの資産が、MSNのメディア資産(自動車、ニュース、金融、その他)に組み込まれるのか、それとも別々の状態で存続するのか、興味深く見守っていきたい。

◇◇◇

最後まで読んでくれてありがとう。でも、長くなってごめん。ここで言っておきたいことがたくさんあったんだ。みんながコメントを付けてくれれば、僕がいい加減に見過ごしたすばらしい洞察がほかにも聞けるんじゃないかと、楽しみにしているよ。

日本語で読めるマイクロソフトによるヤフー買収関連の記事(Web担編集部)
用語集
Google / Microsoft / PPC / SEM / SEO / Yahoo! / オーバーチュア / キャンペーン / マスメディア / 検索エンジン / 買収
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