INTERVIEW: [上編] DeGeyter氏の語るSEO、検索業界、そしてバイラルキャンペーンの仕掛け (と脅迫状)
この記事は、これまでに取り上げた中で、いちばん楽しめるインタビュー記事になったかもしれない。
ストニー・ドゥジェイテ氏は、ネバダ州リノに住むSEOとインターネットマーケティングの専門家で、ポール・ポジション・マーケティング(Pole Position Marketing)という、すばらしい人材でクライアントを幸せにしているSEO/SEM企業のオーナーをしている。
インタビューの中でドゥジェイテ氏は、SEO関係の問題に対する自分の見方に加え、このブログ記事のきっかけとなったバイラルマーケティングについてすばらしい話を披露している。
「次に来るキーワード群」を探し続けるSEO
●まずはよく知らない人のために、経歴と、検索とインターネットマーケティングの世界に関わるようになった経緯を教えてもらえますか?
▼ドゥジェイテ氏 僕はいってみれば、起業熱の中で成長したようなものなんだ。両親は壁に掛ける飾り額を販売する事業をやっていて、毎日学校から帰ると、飾り額を入れて出荷するのに使っていた「箱を折る」仕事をやっていた。大学を卒業した後は人並みの仕事に就いたけど、まあダメな社員だったね。同じところにはだいたい1年しかいられないようで、自分から出て行きたくなるか、やんわりと退職を求められるんだ。だから仕事を辞めて次の職に就くまでは、管理スタッフだの秘書だのグラフィックデザイナーだの、家の仕事を何かやった。
12歳のとき、僕は『24時間で学ぶHTML』という本を見ながら初めてウェブサイトを作ったんだ。かなりへたくそだったけど、当時はみんなそうだったからそれは問題じゃなかった。オンラインで音楽CDの販売を始めたのだけど、それがウェブサイトの制作に変わっていった。父がウェブサイトを持っていたので、作り直してもっとよいものにしようと言って、フレームなんかをやった。すると父は僕に「Web Position」というソフトを買ってくれて、僕はそれを使って父のサイトが検索ランキングで上位入りする手伝いをした。
こうして僕は「SEO」というものを知り、結局ウェブサイトのデザインからは手を引くことになった。僕には創造的なグラフィックのスキルがなかったし、ちょうど出てきていたデータベース開発についていく技術スキルもなかったからね。
●ポール・ポジション・マーケティング社について少し話してもらえますか? 会社はできて何年目になるのか、どこにあるのか、どんなクライアントがいるのか、主にどのような仕事をやっているのか。
▼ドゥジェイテ氏 検索エンジンのランキングなどに僕が実際に取り組み始めたのは、1998年くらいだった。CD販売からウェブ制作、そしてSEOへといたるあいだ、会社名はいくつか変わった。「Pole Position Web」に落ち着くと、数年間はこれを社名に使った。本当は今もこの社名なのだけど、ビジネスで使う名前は数年前から「ポール・ポジション・マーケティング」にしている(もうすぐ法的にも変わる)。こっちの方が会社の方向性に合っていると思ったんだ。それに、何をやっているのかが社名からわかる方がいいに決まっているしね。
会社はネバダ州のリノにあるけど、クライアントの大半は州外なんだ。数年前に会社をカリフォルニア州のサクラメントからここに移したときは、インターネットにつなげるならどこにいても同じことだと妻に話をした。今は、有能な人を雇うことなどを考えると、絶対にそうだとは言えないと思っている。この点に関して僕は運に恵まれていて、こんな立地にもかかわらず、すばらしい社員を抱えている。
うちは特定の「専門」というのはない。幼児用品店から流量計メーカーまで、業種を問わずクライアントがいる。こうして多様な業界の人たちと仕事をするのはすばらしいことで、興味を持続させるのにとても役立っている。
うちはページ自体の最適化(On Page Optimization)とビジターのユーザビリティに特に力を入れている。キーワードに関してページにSEOを施すのは簡単だけど、読みやすくて、ビジターを魅了できて、コンバージョンに持ち込めるような文章にするのは別の話だ。良質なリンクを獲得する新しいやり方はいつも検討していいて、それは従来のリンク構築の手法を使うものも、ソーシャルメディアマーケティングやバイラルマーケティングを利用するものも関係ない。ただ、いちばん自慢できる点を1つ挙げると、最適化のプロセスになるかな。
うちの場合、最適化のプロセスはずっと進行している。キーワードを15個あるいは50個決めてそれに取り組むというのではなく、いつも次に来るキーワード群を分析していてその最適化をサイトに施していく。クライアントとは1年間の契約を結び、その後は毎月仕事をしていくのだけど、クライアントが逃げることは滅多にない。次のキーワード群に最適化していく限り、検索エンジンにおける勢力を毎月伸ばし続けられるとクライアントが理解してくれていて、それがうちの売りになっている。
検索マーケティング特化のソーシャルニュースサイト「Sphinn」
オンラインマーケティングに特化したソーシャルニュースサイト。Search Engine LandのThird Door Media社が運営しており、検索マーケティング関連の話題が豊富。
●ストニー、あなたはSphinn※に熱心に参加していますよね。Sphinnのサイトとコミュニティ、そしてそこで支持票を集めているストーリーについて意見を聞かせてください。
▼ドゥジェイテ氏 Sphinnにはなるべく関わろうと思ってるのだけど、あまり時間がないんだ。ついていくのがだんだん難しくなってる。新着投稿のフィードはとても処理しきれないので、最近登録を解除しなければならなかった。今は「ホットトピック」だけ目を通している。新規投稿を読む人がいないとホットトピックにはならないわけで、フェアじゃないとわかってはいるのだけど。Sphinnのコミュニティの責任ある参加者ではないんじゃないかな。
「これをSphinnで投票して」という、仲間からの電子メールやインスタントメッセージにかなりお世話になっている。これについてタマル氏が討論の口火を切ったらしいけど、信頼している人からお願いされるのは僕は構わない。こうしたリクエストをきっかけに、自分ひとりなら時間がなくて見つけられないようなコンテンツにたどり着くことが多いんだ。それを気に入ればSphinnで投票するし、そうでなければ僕は投票しない。僕の親しい仲間はみんなそれを理解してくれていると思うし、適宜対処することを互いが尊重していて、最初のお願いに加えてさらに面倒をかけることはしない。
サイトのストーリーについては、高品質なものがたくさんあるけど、興味を持てないストーリーも1日じゃ数え切れないほどある。たとえホットトピックに昇格したものでもね。ただ言うまでもなく、だれかがいたからこそ、そのストーリーは話題になったのだけど。僕にとって大事なのは、僕と自分のチームが興味を持てることを探すこと。たいてい、それは僕がSphinnで支持したストーリーなんだ。
●関連して、Sphinnで一貫して互いのコンテンツに投票している掲示板やサイトや友人グループがあることがわかっています。同じ10~15人くらいが、そのうちのだれかが作ったり投稿したりしたストーリーに頻繁に支持票を投じています。このことはSphinnのコミュニティを損なっていると思いますか? それとも、検索マーケターを歓迎している投票サイトでは自然なことなのでしょうか?
▼ドゥジェイテ氏 ふーむ、その点をSEOのコミュニティが自己管理できるのか、それとも覚悟するしかないのかという問題だな。つい先日、僕自身が書いたストーリーを投稿するよう、社員のひとりに頼んだ。彼女が投稿すると、チームの人たちがすぐさまSphinnで支持票を投じた。1時間後、支持票を投じているのはチームのメンバーだけだった。間抜けだった。
今では、(投稿されてから)ほかの人たちから支持票が十分に集まるまでは、自分のストーリーへの投票は呼びかけないことにしている。やっぱり、自然に支持されるほうがよいし、僕のものは多くがそうなっている。ただ、虚栄心を抑えられないことはある。
それでも、質が良ければ、Sphinnでだれが投稿してだれが投票するのかは僕は気にしない。仲間がSphinnで投票してくれたというだけで僕のストーリーがホットトピックに昇格しても、見返りというのは本当にないし、それで何か得られるとは僕は思わないから、そんなことをしても意味はない。SphinnはDiggではなくて、次に投票するものを探してばかりの愚かなコミュニティじゃない。質が良ければ、Sphinnではだれかの目に留まって支持票を得られると思う(まったく知られていない人は、自分で投稿することになるけど)。ホットトピックに昇格する価値があるものは、おのずとそうなるんだ。
このインタビューは上・中・下の3回に分けてお届けする。
中編となる次回では、ドゥジェイテ氏に有料リンク問題、サイト単位で力が強くなりすぎているSEOの問題、そして、SEOで陥りがちな失敗パターンなどに関して語ってもらう。
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