コンバージョン率はリタゲの2倍! 「これから買いそうなオーディエンス」を予測するYahoo!プレミアムDSPについてヤフーの小西さんに聞いてみた
そんな広告サービスがあれば、使ってみたいとは思わないだろうか。しかも、ブランド毀損の心配なしで。それを可能にするサービスが「Yahoo!プレミアムDSP」である。
枠ではなく適切なオーディエンスに対して配信できる。
効率を重視しつつ、より多くの見込顧客層に対してリーチできる。
ビッグデータを活用して潜在顧客層を発見できる。
ブランド保護を考慮しながら多様な媒体に掲載できる。
Yahoo!プレミアムDSPの特長をこのように表現するのは、ヤフー株式会社でプレミアムDSPサービスマネージャーを務める小西雅永氏だ。
インターネット広告の新たな潮流としてアドテクノロジーが注目されているが、その根幹となるのがDSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)である。そして「Yahoo!プレミアムDSP」は、Yahoo! JAPANが保有するビッグデータを使ったターゲティングが可能なDSPだ。
マーケティングソリューションとして広告とデータ活用を推進するYahoo! JAPANにとって、Yahoo!プレミアムDSPは代表サービスの1つとなる。各社からDSPが提供されている中で、Yahoo!プレミアムDSPにはどのような特徴やアドバンテージがあるのかを小西氏に聞いた。
「どこに広告を出したいか」ではなく「どのようなオーディエンスにアプローチしたいか」に応えるYahoo!プレミアムDSP
―― Yahoo!プレミアムDSPとはどのようなものなのでしょうか?
小西氏 Yahoo! JAPANが提供する広告ソリューションで、2014年1月から本格的に提供を開始しています。
Yahoo! JAPANで「プレミアム広告」といえば、広告枠を買っていただく従来の純広告があります。
それに対してYahoo!プレミアムDSPは、枠ではなくアプローチしたい適切なオーディエンスに対して広告配信が可能なサービスで、それが一番の違いです。「どこに出したいか」ではなく「どのオーディエンスに出したいか」という視点になります。
プレミアム広告に代表される純広告は、「ある期間内で確実に見せたい、伝えたい」という目的に適しており、広告クリエイティブもリッチな表現が可能です。Yahoo! JAPANのトップページ全体をジャックするような企画もあります。
一方、伝えたいオーディエンスが存在し、その対象に商品を訴求したいという場合、広告枠よりも対象に注目するほうが適しています。それを可能にするのがYahoo!プレミアムDSPです。「アプローチしたいオーディエンスに対して掲載する」という条件で、料金体系はインプレッション課金型です。
大規模キャンペーン向けに適したYahoo!プレミアムDSP
―― どのような企業がどのような目的で利用しているのでしょうか?
小西氏 ご利用いただく広告主さまとして想定しているのは、比較的予算規模の大きな施策を検討している企業さまです。これまで100社以上に導入されています。
Yahoo!プレミアムDSPは広告会社経由でご提供していますが、予算をかけて実施する大規模キャンペーンに適しています。
サービスプランとして、「ダイレクトレスポンス」「オーディエンス」「カスタマイズ」の3つを用意しています。
- ダイレクトレスポンス: 潜在顧客層を効率よく獲得し、獲得数を最大化
ターゲティング広告の「最適化し過ぎて全体の獲得数が減ってしまう」という課題を解決する。効率を重視しつつ、より多くの見込顧客層に対してリーチする場合に向いている。
- オーディエンス: 特定のターゲットオーディエンスへのリーチ
「こういうユーザー層にアプローチしたい」とターゲット像が定まっている場合に最適。Yahoo! JAPANが保有するマルチビッグデータを使ってターゲティング設計を行い、Yahoo! JAPANのファーストビューを中心とした掲載面に表示できる。
- カスタマイズ: オーダーメイドの広告配信
1や2で解決できない課題に、双方の特徴を合わせて広告主ごとに個別カスタマイズが可能。
潜在顧客層へのリーチとブランド保護がアドバンテージ
―― Yahoo! JAPANならではの特徴やアドバンテージはどのようなものでしょうか?
小西氏 一般的に、DSPといえばリターゲティング目的が多い傾向にあります。サイトを訪れるなどして一度顕在化したユーザー層に対して、訴求するというケースです。しかし、それだけではコンバージョン数で限界が来ます。
Yahoo!プレミアムDSPでは、Yahoo! JAPANが保有しているマルチビッグデータと呼ばれる複数のデータソースを使うことで、顕在化した見込顧客層だけでなく、潜在的な見込顧客層に対しても訴求できます。
より多くのユーザー層に訴求できるうえ、データ分析に基づいたターゲティングによってコンバージョン率も高いままというのは、Yahoo! JAPANならではだと思います。
また、安心・安全やブランド保護の観点からの取り組みも、Yahoo!プレミアムDSPの特徴です。
プレミアム広告は、Yahoo! JAPANという媒体に掲載されるという安心感があります。Yahoo!プレミアムDSPでも、同じようにYahoo! JAPANの広告枠で、PC、スマートフォン、タブレットに配信できます。
また、デバイスの多様化やそれによる消費行動の変化により外部媒体での掲載も必要であると思っています。外部媒体には2種類ありまして、Yahoo! JAPANが直接契約をしている媒体、こちらは事前に審査を行っていますので安心してご利用いただけると思います。もう一方のSSPやアドエクスチェンジなどの外部媒体はこれから拡大していく予定の領域でして、完全に把握していくのも難しいこともあり、ブランド保護のためのチェック(アドベリフィケーション)を自動的に行う仕組みの導入を予定しています。これは、Integral Ad Science社との提携によって実現できた機能で、Yahoo! JAPANの審査担当者と同レベルの精度でチェックできます。
Yahoo! JAPAN以外の媒体に配信しなければ、ブランド保護について心配する必要がないじゃないかという考えもあります。しかし、私たちが重視しているのはデータを活用したリアルタイムなマーケティングを実現することです。昼間はYahoo! JAPANを使っていて、夜は別のサイトを使うというユーザー層に対しても、最適なタイミング(リアルタイム)で広告を配信するには、パートナー媒体での掲載(ネットワークの拡大)も必要になります。
最適化の仕組みは機械と人手の長所をバランス良く採用
―― DSPにはターゲティングを自動化(機械化)しているものや人の手を介して対応されているものがありますが、Yahoo!プレミアムDSPはどちらでしょうか?
小西氏 完全な機械まかせと完全な人手がありますが、Yahoo!プレミアムDSPはその中間の仕組みを採用しています。
機械には、人手では不可能な緻密さで学習し、配信できるというメリットがあります。しかし、データがあって初めて学習が可能になるという前提があります。たとえば、男性向け商品なら、学習する前の段階に人手で定義したほうがいいわけです。
どちらにも強みがあるので、Yahoo!プレミアムDSPでは両方の長所を取り入れています。
さらに、Yahoo! JAPANのマルチビッグデータを活用することで、行動予測ターゲティングが可能になります。
大量かつ多様なデータだからこそ可能な行動予測ターゲティング
―― 行動予測ターゲティングとはどのようなものでしょうか?
小西氏 行動予測ターゲティングとは、先ほどご説明した潜在的な見込顧客層に対する訴求を可能にするための技術です。
まず、目標としているコンバージョンポイントにタグを設置し、一定期間データを収集します。その間にコンバージョンしたユーザー層に着目し、そのユーザー層がコンバージョン前にYahoo! JAPAN内でどのような行動をしていたかを分析します。
たとえば、旅行に行くときは数か月前から旅行の計画を立てます。海外か国内かなどを検討したり、各社のツアー商品を比較したりします。さらに、スーツケースやチケットなど、旅行関係の商品を購入するなど、さまざまな準備行動があります。
これらを分析していくと、「ある行動をしたユーザー層は、かなり高い確率でツアーを申し込む」といった行動の関係が顕著に見えてくることがあります。このような特徴的な行動を学習し、他のユーザー層に当てはめることで「これからコンバージョンに至りそうなユーザー層」を発見して広告を配信します。
Yahoo! JAPANのマルチビッグデータの特徴は、単に大量のデータというだけではなく、Yahoo! JAPAN内のさまざまサービスにおける行動など、多様なデータを持っているという点がポイントです。これらの多様なデータを掛け合わせることで、予測精度が飛躍的に上昇します。
DSPの定番手法は、一度サイトを訪れたユーザー層に対するリターゲティングですが、それに比べて行動予測ターゲティングではより多くのコンバージョン率と数が期待できます。
機械学習によるターゲティング最適化には期間が必要
―― 一定期間データを収集するということですが、導入してから効果が見えてくるまでどれくらいの期間が必要なのでしょうか?
小西氏 開始までには、事前に広告主さまにヒアリングして、ターゲット設計や企画検討を行います。
その後、実際にキャンペーンを走らせるわけですが、機械と人手の最適化のサイクルによって効果が見えてくるまで、ダイレクトレスポンスの場合は2~3か月ほど様子を見ていただきたいです。
広告主さまにぜひご理解いただきたいのは、機械学習では頻繁に手を加えずにしばらく様子を見たほうがよいということです。開始後何度もターゲティング設定の変更を望む広告主さまがいますが、そうするといつまでたっても最適化されません。
開始時点から徐々に効果は改善されていきますから、その点をご理解のうえ活用していただきたいです。
また、短期間のキャンペーンの場合は、サービスプランの「オーディエンス」が適しています。
Yahoo! DMPとの連携によって
さらなるデータ活用とターゲティング最適化を実現
―― 今後の展開について教えてください。
小西氏 現在、行動予測ターゲティングではYahoo! DMPの機能の一部を利用しています。今後、本格的な利用が始まれば、さらにターゲティングの精度が上がると期待しています。
Yahoo! JAPANが持つデータと会員データなどの広告主さまが持つデータを掛け合わせることで、よりコンバージョンしやすいユーザー層や価値あるユーザー層の発見精度が高まるはずです。また、デバイスを横断したキャンペーンなど、クロスデバイス施策も可能になります。
Yahoo! JAPANは、これまで広告事業を柱としてきましたが、これからはデータ事業にも力を入れていきます。その代表的なサービスが、Yahoo!プレミアムDSPとYahoo! DMPと言えます。
今後も、データを活用したこれまでにないソリューションを出していきますので、ぜひ活用していただきたいです。
2週間で獲得単価は目標値をクリア
オーディエンスデータから意外な潜在顧客を発見
トランスコスモス株式会社
広告代理店事業を行うトランスコスモス株式会社では、2014年5月からYahoo!プレミアムDSPの販売と運用サポートを開始している。金融系商材での導入と運用サポートを担当した同社の河津彩乃氏に活用のポイントを聞いた。
―― 広告主の課題と導入のきっかけは何でしょうか?
河津氏 金融業の広告主さまで、商材は保険です。何度もコンバージョンするものではないため、リーチを広げるためにYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)のリターゲティングを使っていました。また、純広告も以前から出稿されていましたが、それでもコンバージョン数が頭打ちになっていました。
そこで、さらに潜在顧客層へ向けたリーチが必要だと考えて、Yahoo!プレミアムDSPを2014年5月から使い始めました。「行動予測ターゲティング」「サーチターゲティング」「リターゲティング」の3つを中心に設定しましたが、このうち行動予測ターゲティング、サーチターゲティングは、2週間ほどで効果が出て目標CPAの半分程度になりました。当初は、もっと時間をかけてチューニングしていくつもりでいましたから、予想外の早さでおどろきでした。
―― 5月の開始から6か月が過ぎましたが、これまでの状況や感想は?
河津氏 オーディエンスレポートの分析は、うまくやれば潜在顧客層へのリーチを広げられそうだと感じています。当初は男性がメインターゲットと想定していましたが、レポートを見ると30~40代女性のクリック率が高かったです。
「専業主婦の方が、自宅にいるときに旦那さんの代わりに広告をクリックしているのかもしれない」といった話を広告主さまとしています。これまでだと見落としていたかもしれない潜在層を発見できたり、具体的なターゲット像についてデータを参考に議論できたりするのは面白いですね。
現在、純広告やYDNのサーチターゲティングも使い続けていますが、今のところお互いに食い合うことなく、それぞれで成果が出ています。
DSPサービスはいくつか使っていて、Yahoo!プレミアムDSPはCPC(クリック単価)が高めではありますが、その分コンバージョン率も高いので、結果としてCPAを低く抑えられています。
―― 今後Yahoo!プレミアムDSPを使った新たな提案の予定は?
河津氏 ダイレクトレスポンス系の広告は、定番の施策が決まっている反面、マンネリ感もありましたから、今回は非常にいいタイミングで導入できました。効果が想定よりも早く出たことで、広告主さまの評価も高かったです。今後は、広告効果の分析やクリエイティブの精査をしていきたいです。
私たち広告代理店としては、今回得られた運用ノウハウを他の広告主さまや業種に横展開していければと考えています。
※この記事の内容は、2014年10月現在の情報に基づいています。
※Yahoo! JAPANのマルチビッグデータは、Yahoo! JAPANでの検索履歴や、ページ閲覧履歴などをもとに構成されています。特定の個人を識別できる情報ではなく、また識別できる仕組みではありません。
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