コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の参十壱
まず今週号は始める前にごめんなさい。
先週号の記事でグーグルについて「ヤフーやMSNの検索エンジンに採用され」と取り上げましたが、ご指摘いただいたようにMSNにグーグルの技術が採用されたことはありません。グーグルの知名度向上に関しては「ヤフーやAOL」の方が適切で、ヤフーが独自検索エンジンに切り替えたころ、MSNがLooksmartとの契約を切ったことと重ねてしまっていたようです。
事実関係の確認不足でした。お詫びの上、訂正させていただきます。ご指摘、本当にありがとうございました。
夏休みの宿題ってやってましたか
公立の小中学校の多くが今週末から夏休みに入り宿題に追われる日々がスタートします。
夏休み前に「ミッションクリア」してしまったり、前倒しで終わらせてしまう友人を横目に、私は一週間後にはドリルを開かなくなり、最期の週になってから流れた時間を怨みながら学習机の付属品となる子供でした。
そして、悪知恵だけは発達するもので、高校生ともなると「いかに提出せずに逃げ切るか」がミッションとなっておりました。ところが人生はバランスがとれているもので、今は毎年「夏休みの宿題」をしています。
子供達にとっての楽しみな夏休みですが、俗に「ニッパチ」といわれる2月と8月は売上が落ち込みます。
しかし、この8月を上手に使うことで、9月の売上へと繋げレベルアップを図ることができます。
ニッパチという禁忌
ボーナス商戦も終わった8月はレジャー産業以外は苦戦します。特にお盆休みも重なる8月は経営者にとって落涙するほど辛い月です。
お盆が終わると徐々に動き始めますが、休みボケからか売上は芳しくありません。特に8月末は難しく、「一足早い秋セール」などと始めても、残暑も厳しくて秋気分からはほど遠く、失敗に終わることが少なくありません。
「まだ間に合う。夏休みの宿題完全解決」といった商品を扱っているなら話は別ですが、各企業の経営者や販促担当者が頭を抱えるのが「ニッパチ」です。そんな難しい8月に勝負に出る必要はありません。
「どうせ8月は仕事にならない」と、7~8月を見送り9月に照準を合わせるのです。
商売用だからこそ少しでも有利な時期を選ぶのも重要です。
魚が集まる季節の海に網を投げる
一般的に8月は市場参加者=客が少ない時期で、これはネットの世界も同じです。日常的に何千PVと稼ぐことがあるネットサービスの統計には表れませんが、商売用ホームページではトラブルがあったのではないかと疑うほど訪問者が少なくなります。
網を投げるなら同業者が少なく、魚が多い季節を目指すのが得策ですが8月のネット界は正反対です。
ホームページは24時間無人で営業できますから、お盆でも営業を続けます。通販ショップで発送が遅れることはあっても、「お盆だから閉鎖」というサイトはありませんし、手強い競争相手は営業しています。
客を魚に例えて恐縮ですが、魚の数は減っても仕掛けた網や釣り針の数は変わらないのです。これが「見送る」理由です。
しかし、準備はしておきます。これが商売用ホームページの「夏休みの宿題」という8月の使い方です。
撒き餌で魚を集める期間が必要
ホームページを公開しても、「検索結果」に反映されるのには時間を要します。そこで9月からの企画を一足早く公開したとします。しかし、8月の残暑の厳しい時期に「さわやかな秋風」とあれば、苛立ちを加速させるだけですし、時期尚早のページを晒すのは美しくありません(あえてミスマッチを狙うという手法はさておき)。また、「企画」を同業他社にパクられてしまっては目も当てられません。
検索結果での集客(SEO/SEM)には工夫が必要なのです。
オーバーチュアなどの広告を使えばキャンペーンに合わせることができますが、競合他社に参戦したことが知られる諸刃の剣だということは覚えておいてください。
そこで「捨てページ(遊びページとも、売上げに直結しない派生情報コンテンツ)」を用意して、関連する周辺情報、付随情報を充実させ検索結果に反映させます。これが「撒き餌」となり、企画周辺からの集客効果が期待できます。
カレンダーからコンテンツ
撒き餌ページを作るのには「カレンダー」を用意します。冬に水着フェアや、夏の暖房特集がないように、商業活動は季節と連動しているのです。
秋なら「十五夜」「敬老の日」といった日本全国共通のものから、リアルショップなら地域の「祭り」やイベントも効果的です。「ご近所情報SEO」で紹介したトモエハウジングは「練馬の大鳥神社」で酉の市の訪問者を稼ぎ、地元の足立区を南北に走る「つくばエクスプレス」が開通した当日は、「つくばエクスプレス」でSEOを仕掛けた撒き餌ページで1,000を軽く超えるPVを達成しました。開通後は紹介するサイトが激増しましたが、開通前は他に情報が少なくて簡単に狙えたのです。
カレンダーを眺めて「時機」(チャンス)を意識すれば「仕掛ける」ことができます。しかも、多くの会社が「時期」(チャンスになるタイミング)を目の前にしてからコンテンツを作り出すので、先んじればそれだけ有利なポジションをゲットしやすいのです。
「時機」から逆算してコンテンツを用意するのも「商売用」という視点です。
信号の変わり目で抜き去るテクニック
おんぼろの軽自動車でも信号が青になるタイミングで交差点を通過すると、信号待ちしていたフェラーリを「ぶっちぎる」ことができます。一瞬ですがこの「達成感」は小さな成功体験となり、次の活力を生み出します。
他社が夏の繁忙期からお盆休みをとっている間に9月以降の準備をするのはこの「ぶっちぎり」に似ています。信号待ち=お盆休みの前から、照準を9月に合わせて入念に準備をしておけばあとはアクセルを踏み込むだけです。
撒き餌ページは公開してからが本当の始まりです。アクセス解析から訪問者の動向をチェックして、導線が正しく機能しているか確認し、手を加えていきます。コンテンツは公開して終わりではなく何度も作り直すものです。
コツを掴むまでは夏休みの宿題にでた「算数ドリル」のように毎日チェックしてください。夏が終わる頃にSEOのコツが掴め、レベルアップしていることでしょう。これは宿題を達成した人だけのご褒美です。
7~8月を「見送る」ことで、9月以降の時機に備えることができ実力を備えるチャンスにも恵まれます。
比較的余裕のある8月の使い方はとても重要なのです。
そして、弊社は8月末決算ということで、たまった伝票の整理が私の夏休みの宿題だったりします。
♪今回のポイント
時機を仕掛けることができるというメリット。
8月は閑散期で激戦区。一方準備期間にはもってこい。
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