イベントは企画次第で何でもできる。ニッパチ閑散期を乗り切る仕掛け
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の440
ニッパチとはなにか
早いもので来週から2月に入ります。2月と8月は、数字を並べて「ニッパチ(二八)」と呼び、ビジネスの閑散期とされています。だからといって、
とは、ならないのが会社組織。エスキモーに冷蔵庫を売れと言われるかはともかく、「前年対比の売り上げアップ」とのミッション発令に「Yes」以外の選択肢はありません。そんなときは、「イベント」を作り出し、消費者の財布のひもを緩めて、結果へのコミットを目指します。
成功例は「バレンタインデー」。チョコレートをプレゼントする風習の起源に諸説ありますが、お菓子メーカー主犯説が濃厚です。つまりはただの販促イベント。かくして、2月だけで1年の2~3割の売り上げを叩き出すようになります。
そもそもニッパチの落ち込みの半分は、「イベント不足」にあるというのがミヤワキ流の解釈。そこで、来週から始まる2月に仕掛けられるイベントを考えます。
2月3日の恵方巻き
昭和時代の2月3日のイベントといえば「節分」のみで、煎った大豆を年の数だけ頬張るぐらい。それが21世紀になったころから、「恵方巻きの日」となりました。
太巻きを恵方巻きと呼び換え食べる風習は、関西でも一部に過ぎません。私の父は大阪育ちで、風習があることは知っていても、食べ物で遊んでいるように見えるという理由から嫌っていました。これが、コンビニやスーパーが便乗したことで全国区に広がります。節分用の炒り豆を売るより儲かるからでしょう。
なお、ウィキペディアにおける「ニッパチ」の説明では、2月の落ち込みを年末年始の反動減で説明していますが、それだけでは恵方巻きが売れる理由を説明できません。日本の消費者はいつだって、「理由(イベント)」があれば消費するのです。
2月8日の正月
恵方巻きが恒例行事となった昨今、スイーツ店では「恵方巻き風ロールケーキ」や「クレープ恵方巻き」が登場し、昨年その存在に呆れたのは「食べやすい太巻き(恵方巻き)」なる、ただの「巻き寿司」が売られていたことです。
ここまで自由になったのなら、「恵方巻きイベント」を飲食に限定する理由はありません。円筒状の「ラッピング」で「恵方巻き風○○」とし、自動車のハンドルに布でも巻いて「巻物風」に仕立て上げ、「恵方巻き自動車」と強弁するのはイベントにおける許容範囲です。
恵方巻きの2月3日が過ぎた翌月曜日、2月8日は「春節」です。旧暦の正月で、前日の7日が大晦日にあたり、中華圏では1週間のお休みモードに入ります。新暦を採用する日本には関係ありませんが、「春節」という文字の並びはそこはかとなく縁起が良く、「春節フェア」「春節セール」と打ち出せます。飲食店なら中華に関係するメニューを、具体的には餃子あたりを「春節の定番」と勝手に宣言するのもアリ。本来、チョコレートはバレンタインデーと無関係ですから、何でもありなのです。
2月10日のバレンタイン
続いて2月11日「建国記念の日」は「飛び石4連休」のスタートです。レジャー関連はもちろん、レンタルビデオ店なら長編シリーズ物のセット貸し出し企画などを打ち出せます。もちろん、テレビゲームやスマホゲームでもOKです。
飛び石連休の最終日は、2月14日のバレンタインデー。今年は、
フライングでゲット! 愛はいつだって前のめり!
などと題して、「プレゼントの事前配布」を煽ります。「早割」と題して事前に値引き販売するのも一手でしょう。なぜかといえば、バレンタインデーが土日にかかると、いわゆる「義理チョコ」などの「社交辞令需要」が落ち込むからです。2年前は金曜日ながら「大雪」による混乱で、消費が伸びませんでした。
この数年を踏まえるなら、バレンタインデー当日の前に売るためのイベント=仕掛けが必要と考えるのです。お菓子業界がバレンタインデーにあぐらをかいているあいだに、「ハロウィン」に負けつつあるとは、余計なお世話でしょうが、イベントは絶えず新しい仕掛けをしなければ陳腐化します。
2月22日をめぐる解釈
今年の注目は2月22日です。昨今のペットブームにあやかり「にゃんにゃんにゃん」でネコの日に便乗します。ペット業界はもちろん、各種「ネコキャラ」にフォーカスし、飲食店なら「ネコに鰹節」から、鰹節を活かした「特製メニュー」を用意。スタッフに「ネコ耳」のカチューシャを付けさせ「にゃん♪」とさせるなど、イベントに明確な根拠と由来は不要です。思いつき、雰囲気でOK。
さらに「ニンニンニン」と読ませれば「忍者の日」になります。滑り出しも上々な今年の大河ドラマ「真田丸」ですが、その家臣といえば「真田十勇士」で、猿飛佐助、霧隠才蔵などは忍者ヒーローの元祖。その十勇士をもじった商品やサービスで、大河ドラマに便乗できるのが2月22日だと、勝手に企画します。
4年に1度の末日
4年に1度の大盤振る舞い!
最後は「うるう日」を打ち出します。どうですか? イベントなどいくらでも作り出せるのです。実際に「春節」は、20世紀から何度も売り出しに利用しています。
ニッパチに売り上げが落ち込む最大の理由は日数の少なさです。2月は28日しかなく、30日まである月と比較すれば、1日あたりは同じ売り上げでも、単純計算で月間6.6%は落ち込んでしまいます。8月はお盆休みという長期休暇によって、企業そのものの売り上げと関連消費が止まるのです。
そして次が「イベント不足」。年末年始、GWも休みが続きますが、消費をともなう「イベント」の存在が補っています。その点、今年の2月は29日までと1日多く、仮に1日当たりの売り上げが同じならば、前年対比は3.6%増加します。これが「結果にコミット」しやすいカラクリ。そして、その結果をイベントの「手柄」と喧伝すれば、称賛はその提案者、つまりはWeb担に注がれるという目論見。イベントに不慣れな会社なら、想像以上に社内評価が高まることがある、とは経験者談。
なお、ウィキペディアではニッパチの落ち込みが「2月は寒く、8月は熱いから」とも説明されていますが、暖冬になると「ユニクロ」の売り上げが低迷するように(2016年8月期 第1四半期決算)、はっきりとした季節性は消費を押し上げるので正しくありません。
今回のポイント
何でもないような日を特別な日にする
うるう年の2月はイベントデビューのチャンス
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