disるよりも褒める。ビジネスチャンスを広げる褒める技術の基本
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の439
disってばかりですが
ブログやTwitterでは「批判」を目にすることが多いのですが、ビジネスシーンにおいて、批判や批評は百害あって一利なし、と言っても過言ではありません。
世界は想像以上に狭く、どこかで、だれかとつながっており、遠くに向かって投げた批判という小石が、映画『インディ・ジョーンズ』の迷宮トラップとして襲いかかる巨岩のように戻ってくることもあります。disって(批判して)ばかりいる私が言うのですから、間違いありません。
反対に「褒める」ことは、人脈とビジネスチャンスを広げてくれます。特に「人」は褒めるに限ります。褒める人のまわりには自然と人が寄ってきます。自己啓発的な話ではなく、だれだって批判されるより、褒められたいものだからです。また、コンテンツやブログでも人物紹介は多く、相手を上手に褒めることは、Web担当者の腕の見せ所と言ってもいいでしょう。「褒める技術」は「広告」に通じます。すなわち「褒める技術」は、Web担当者必携のノウハウです。
今回は「人の褒め方」の基本について。覚えておけば何かと便利です。
外見は広告に通じる
まず、お世辞と褒めるは似て非なるもの。お世辞には「嘘」のニュアンスが含まれますが、目に見えること、確認できる「事実」をもとにするのが「褒める技術」の基本です。見た目やファッションなどの「外見」から褒めるポイントを探します。換言すれば「外見いじり」。
もっともベタな外見の褒め表現は「美人」や「イケメン」。うっかり多用しがちなのですが、「こいつがイケメン?」と、読者の反感を買うこともあり、褒めたつもりが「褒め殺し」になっては逆効果。見出しや企画のタイトルなど、「ザックリ」したものならともかく、個人を褒めるには不向きです。「清楚」「華やか」「涼やか」「端正」と、外見から連想する「雰囲気」に視点をずらして褒めるといいでしょう。
イケメン注意
もちろん「美人」や「イケメン」と表現すべき人物もいますが、そのときは「瞳が印象的な美人」や、「唇がセクシーなイケメン」と外見をからめます。もちろん、これも外見いじりの1つ。
外見いじりのアプローチは広告にも通じます。たとえば、スポーツカーの写真付き広告なら、「300馬力のV6エンジン」と語り始めるより、「曲線美を追及したフォルム」と、外見を見出しに打ち出す方がお客や読者の共感を得やすいのです。
「見たらわかる」ことですが、わざわざ「文字」にすることで理解を助けます。また、理解という「カタルシス」と「シンパシー」は混同しやすく、そもそも「内面(スペック)」を言葉だけで伝えることが難しいことも、外見いじりを使う理由です。
タレントは要注意物件
注意が必要なのが「タレントの○○似」。褒め言葉かどうかは、タレント次第ですし、褒め言葉のつもりが逆の結果になることもあります。そこで直接表現は避け、そのタレントから連想するキーワードを「引用」するといいでしょう。いま、何かと話題の「スマップ」の草彅剛さんなら「良い人」のようにです。
「キュート」や「チャーミング」は便利な褒め言葉です。「可愛い」に隣接するこれらのキーワードは、昨今では、年齢の上下どころか性別を問わずに使っても、それほど失礼ではなくなっています。さらに「笑顔」を接続し、「笑顔がキュート」「笑顔がチャーミング」とすれば、ほとんどの人物に当てはまる褒め言葉となります。笑顔が不気味な人は少数派ですから。
ファッションの褒め方
笑顔の少ない人物なら「ワイルド」や「豪快」、神経質そうな人物なら「クール」や「理知的」、年輩の方なら「威厳」「貫禄」をチョイスします。言葉を選ぶ基準は、繰り返しになりますが外見いじり。第三者から異論がでにくい、過半数以上が同意するであろう外見からの印象を選択し、ポジティブな言葉に置き換えるのです。ぽっちゃり体型な人なら「ホッとできるオーラの持ち主」と表現するようにです。
この言葉の置き換えは、以前に紹介したブラックテキスト芸にも通じます。
外見いじりには、ファッションも含まれます。男性相手ならネクタイを褒めるのが無難。ノーネクタイなら腕時計やメガネ、いまどきならスマホカバーなども「褒め」の対象となります。
女性ならではのポイントは「ネイル」。ピアスなど「身につけるアクセサリー」は、ちょっと生々しく下手すればセクハラ。その点、ネイルは「見られる」ことを前提にしているので褒めやすいのです。ただし、ファッションやネイルについて、あまり詳しくないなら手を出してはなりません。知ったかぶりは嘘に近く、「お世辞」へと成り下がりやすいからです。
褒めるで身につく眼
客商売ならお客を褒め、取引先はもちろん、上司や部下、行きつけのラーメン屋だって褒めちぎります。練習ならば「心の中」だけでOK。繰り返すことで養われるのが「観察眼」。特に外見いじりをしていると、見た目のわずかな違い、変化に気がつくようになります。観察眼は公私を問わず、役立つことはいわずもがな。
disってばかりの私が、褒める技術と言っても説得力がないと思うかもしませんが、実は私のWeb屋としての得意技は褒めることです。なぜなら、Web屋の前職は広告屋で、広告の基本は商品やサービスを褒めることだからです。褒めるとdisるは、カードの表と裏。対象を観察し、褒めるかdisるかの立場によって表現を変えるだけのこと。
対面はもちろん、ブログなどのWebコンテンツでも、実際に褒める上での最大の難関は「恥ずかしい」という気持ち。また「上から目線」になるのではないかと躊躇する人もいます。しかし、どちらも「気にしすぎ」です。相手はそれほど気にしていませんし、なにより褒められて悪い気がする人はいません。また、自分を褒めてくれる人と批判する人なら、どちらと仕事がしたいでしょうか。そして、どちらから商品を買いたいかを考えれば、褒める効能は明らかです。
今回のポイント
「褒める」ことで養われる観察眼
褒められて嫌がる人は少ない
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