企業ホームページ運営の心得

Google検索の悪貨を良貨で駆逐する、企業はクチを閉ざさずに情報発信を

自ら情報発信することで正しい情報を伝えることが大切です
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の466

かつては常識だった

Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

本サイトの人気連載「海外&国内SEO情報ウォッチ」で「グーグルは情報の正しさを保証しない。嘘情報でも上位表示することがある」と題した記事が紹介されていました。

Web業界の人であれば、何をいまさらと思うかもしれませんが、Googleの「中の人」が公式に認めたところに意味があります。なぜなら、「SEO」という手法が大ブレイクした背景には、一定の手順に従えば内容を問わず、簡単に検索結果の上位表示させることができた時代があったからです。キーワードを無造作に重複させるだけという乱暴な手口もその1つ。安易な手口は淘汰されましたが、「中身」については現時点では解決できていないという告白でもあります。

そこで今回は、コピペのみで作成された中身のないコンテンツを「上書き」する方法を紹介します。誹謗中傷対策としても使えます。

日米のキュレーション格差

Googleがコンテンツの内容を評価していないことは、現状の「キュレーションサイト」からも明らかです。本来のキュレーションサイトとは、運営者の知見や価値観によって分類、選別された情報を提供するものです。博物館や美術館がそれぞれの得意分野、方針によって展示物を選別すると考えるとイメージしやすいでしょう。海外ではBuzzFeedのように独自取材するサイトもあり、いわゆる「媒体」としての存在感を示しています。

さて、日本はどうかといえば「コピペサイト」の代名詞に成り下がった……とは過言でしょうか。しかし、あるDIYの方法を検索すると、住宅関連のキュレーションサイトの多数が同じブログからまるまる「引用」しており、そこには独自性のかけらもありません。

もちろん、まっとうなメディアもありますが少数派。IT業界の著名人の1人が立ち上げたキュレーションサイトに、コピペが記事として踊っていたことは記憶に新しいところです。少し探せば、今でも1記事いくらのコピペ記事の制作案件が簡単に見つかります。

2014年の初頭、Googleはコピペをはじめとする無断転載サイトや内容の薄いサイトに対する監視強化を打ち出しましたが、現実的には野放しのように感じます。

コピペだけで作れるレベル

芸能ネタを扱うキュレーションサイトはより無惨。タレントの醜聞が取り沙汰されると、タレント名とともに、スキャンダルに関連した「不倫」「略奪」「相手」といったキーワードがサジェスト表示されるようになります。

そして、往々にして検索結果に並ぶコンテンツは「ウィキペディア」からのコピペです。さらに関連語についても、「(調べてみたけど)わかりませんでした」と、回答を放棄しているものが珍しくありません。

これらの狙いは、アフィリエイト広告収入。訪問者の一定割合は必ず広告をクリックするので、内容は二の次にアクセス数だけを求め、そのために検索結果の上位に表示させること、すなわちSEOに注力しており、残念ながら「コピペ」だけで目的を達成しています。

いまでも便所の落書きか

かつて、ネット上の書き込みは「便所の落書き」と言われたものですが、中身のないクズ情報の散乱はユーザーの利便性を下げ、Web業界の評判を落とします。私も連載を持つ言論サイト「ASREAD(アスリード)」で、フリーライターの小山晃弘さんは、現状について「パクりとコピペで記事を量産、今や検索の1ページ目はクソの吹き溜まり(略)」と吐き捨てています。

正しい情報、価値ある情報を持っていれば、検索結果を上書きするのはさほど難しいことではありません。Googleがコンテンツの内容を精査していないことを利用した、いわば「毒をもって毒を制す」です。本稿では何度か紹介している「桐島ローランド逮捕騒動」において、実際に用いた手法を紹介します。

背景を補足しておきます。「ネット選挙」が解禁された2013年の参議院選挙、「みんなの党(当時)」から出馬したカメラマン桐島ローランド氏の名前を検索すると、「逮捕」というキーワードが関連語として表示され話題になっていると、当時「ネット選挙」の取材に協力していた大手新聞社の記者から連絡が入ります。あらかじめ断っておきますが、桐島ローランド氏に逮捕歴などありません。

噂の真相

盛り上がりの背景にキュレーションサイトの存在がありました。それは「逮捕という噂がある」と切り出し、桐島ローランド氏の出自、家族構成、過去の結婚歴など「ウィキペディア」レベルの情報がコピペされたサイトです。その果てにあるのは、「逮捕されていませんでした」とまとめただけのクズ情報です。

時系列から「火元」を探ったところ、落選を目指すネガティブキャンペーンが仕掛けられていた痕跡がありましたが、その後の「炎上」は「キュレーションサイト」の運営者が、「アクセス数を稼げる」とコピペをベースに記事化した可能性が強いようです。

これらを前述の新聞記者に報告すると、「そんな安易な記事(エントリー)が検索結果に表示されるなんて」と首をひねります。記者はGoogleが内容をチェックしていると考えていたのでしょう。そこで実演してみせたのが次の方法です。

引用して正しい主張をする

まず、キュレーションサイトの内容を大胆に要約した記事を冒頭に掲載します。続けてネガティブキャンペーンを示唆し、「桐島ローランド 逮捕」が広まった「真相」を紹介します。このエントリーはすぐに検索結果の2位にランクインし、いまに至るまで上位をキープしています。

これは正しい情報を発信するだけではなく、「誹謗中傷」の上書きにも使えます。タイで全裸になった某企業のような、強引なやり口で検索結果を操作しようとするやり方はおすすめしませんが、真に誤った情報であれば口を閉ざすよりも訂正すべきです。

その際は、先に述べたように自社に関する誹謗中傷の内容を「検索キーワード(クエリ)」を損なわないように要約して紹介したうえで、こちらの主張を述べます。単に正しい情報を主張するだけでなく、誤情報の元を引用するのがポイントです。そうすることで、双方の情報がヒットするようにします。これは、提供するサービスや商品、特性についての間違った情報を正すためにも使えます。

Googleは内容を精査しないと中の人はいいますが、かつてキーワードを並べるだけでSEOができた時代と比較した体感値では、内容をチェックしていると感じる事例が増えています。AIの弱点は自然言語の解析といわれていますが、コピペを多用したキュレーションサイトの撲滅は、かつて「多重キーワード」を撲滅した方法の延長にあります。何よりコピペサイトの監視強化を掲げてから約3年、そろそろ結果で応えてくれるだろうというのは、希望的観測でしょうか。

今回のポイント

Googleが内容を精査していない特性を利用する

良貨で悪貨を駆逐する

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