ネット選挙の本質が3分でわかる! 今すぐ専守防衛を構築せよ
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の386
ネット選挙の裏で忘れられた本質
2014年11月17日に発表された日本の7~9月期のGDPは、まさかのマイナス成長。増税どころではなくなり、解散総選挙で「国民の信を問う」といった政治問題は脇に置き、Web業界としては「ネット選挙」が気になるところ。Web制作会社には、立候補を予定していた「立候補予定者」からの問い合わせが増えているとテレビが報じます。
「ネット選挙」は、2013年の参議院選挙で解禁された、ネットを使った選挙活動の総称です。候補者はもちろん、有権者がネットを使って投票を呼びかけることができるようになり、これが「政治を動かす」と話題になりましたが、実際の影響は測定不能なほど軽微。理由は「ネット選挙」の本質が浸透していなかったからです。それは「有権者」にではなく「候補者」と「有識者」にです。
今回は急な解散総選挙に慌てふためく、政治関係者向けの特別版「ネット選挙2014」です。とはいえ、一般企業のWeb担当者にも通じます。
民主党に見た幻影
まず、投票まで時間がないので結論を述べます。今から「ネットからの集票」を期待して取り組んでも徒労に終わります。仮にお金を使い広告や、政治理念に賛同した著名人による呼びかけで、ネット上の「ファン」が増えたとしても、彼らが必ず投票所へ足を運ぶとは限らず、仮に足を運んでも、あなたの選挙区でなければ意味はありません。ネットに集うファンのリアルの住所は日本全国に広がっています。
ネット選挙が真価を発揮するのは、後援会のネット版「ネット支部」が設立され機能してからです。それは口で言うほど簡単なことではありません。
政権交代が叫ばれた当時、「民主党」のある候補者への後援会を観察していたことがあります。若手経営者(といっても40~50代ですが)を中心に結成された後援会は、フットワーク軽く、結束も固かったのですが、会のメンバーの頭数を超える票を集めることはできませんでした。彼らは後援会の外への呼びかけをせず、一種の「サロン」を作ったことに満足していただけです。
集票へのノウハウは
「ネット支部」は、新たな会員や賛同者を集めてこそ発展し、そこから当選への道が開かれます。身内の結束を高めるだけなら「飲み会」と同じです。先の民主党後援会は、若手経営者による「政治ごっこ」だったといっても過言ではなく、「政治」を熱く語る「ネットの住民」に重なります。さらに支部には、有権者の足を「投票所」に運ばせる役割が求められます。ネット選挙とはいえ、実際の投票はリアルであることを忘れてはいけません。ある党では投票日に、後援者同士を「待ち合わせ」させることで「相互監視」を実現し、投票棄権を防止しています。こうしたノウハウは一朝一夕に培われるものではなく、今から取り組んでも遅いとする理由です。
専守防衛に注力
だからといってネットの「放置」は厳禁、最も怖いのが「デマ」の拡散です。2013年の参院選挙では「みんなの党」から出馬していた桐島ローランド氏の検索結果に、関連語として「逮捕」が表示されました。ネガティブキャンペーンが疑われましたが、正体は「アフィリエイト(広告)」狙いで、「逮捕されたという噂があったが、逮捕されていませんでした」というもの。
検索結果対策である「SEO」を用いて、正しい情報を発信すれば「デマ対策」は可能です。実際に「桐島ローランド 逮捕」の1位で表示されるのは、対策の実例として書き下ろした私のブログです。
ネガティブなキーワードは「逮捕」だけではなく、「痴漢」「脱税」「窃盗」など限りがなく、すべてに事前に対策を講じるのは現実的ではありません。そこで選挙期間中は、「毎時」レベルで「エゴサーチ(名前検索)」し、ネガティブなキーワードが「関連語」が確認されてから即座に「防衛」にかかればよいでしょう。いわば「専守防衛」です。
こうした専守防衛の企業ニーズは高まっており、ソーシャルメディアの監視サービスやモニタリングツールは両手で数え切れないほど登場しています。
対策に求められるのは実務経験
自陣営で「専守防衛」に自信がなければ、迷わずプロへ発注してください。放置は「拡散」を呼び、最悪の場合「炎上」へと発展します。そうなると事実の有無は関係なく、なにより短い選挙期間でイメージの回復は不可能です。ただし、この「プロ」とは「実務に精通している」ことが絶対条件です。Web系の有識者として紹介される人でも、「実務経験」が乏しい人は少なくないからです。「解説」と「開発」は別物です。
また、広告代理店にはPRも含めた「総合力」がありますが、1分1秒を争うとき、第三者を経由するタイムラグはマイナス要素です。理想的には実務者と「直接」、それが無理でも可能な限り「近い」ことが重要です。炎上や誤報が拡大したときには、「SNS時代に沈黙は愚」でも語ったように、いち早く公式の情報をだすべきです。
ちなみに先の「桐島ブログ」は、情報収集を含めて3時間ほどで仕上げ、翌日には「効果」を発揮していたとは手前味噌ではなく、一定水準のノウハウをもっていればだれでもできるということ。
ネット選挙の実態は
日本の「ネット選挙」が普及しない理由は「本質」の取り違えです。日本のWeb有識者の大半は「世論」を動かすことで「政治参加」しようとしますが、それでは彼らにとっての常連客が反応するだけです。国民のすべてが無党派の浮動票ではありません。
ネット選挙先進国の米国では、Web技術者を筆頭とした「Web有識者」が直接「参謀」として選挙に参加することで、「選挙の現実」にアジャストしていきます。そこには人間くささがあり、現実に合わせてサイトを作り直すこともあります。それは日米共に選挙の基礎票となるのは「組織票」だからです。「後援会」や「ネット支部」とは、みずから作り出せる「組織票」です。これこそが「ネット選挙解禁」の本質です。
つまり「ネット選挙解禁」とは、日頃のネットを介した活動がより重要になったということです。そしてこれは一般のビジネスでも同じ。イベントやセールのときだけではなく、ネット空間は「常在戦場」なのです。現時点でネット空間を「常在戦場」としているのは「自民党」と「共産党」だけです。
今回のポイント
短期決戦は「防衛」に軸足を
常在戦場が「ネット選挙」の本質
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