忙しい! を解決する「習慣化」。だれでもできるシンプルな対策
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の387
イベント押し寄せる12月
日ごろ落ち着いた行動を心がける「師」ですら「走る」年の瀬。今年は国会のセンセも選挙で走りまわっていますが、一般的にも12月は忙しいものです。
12月が忙しい最大の理由は「時間」です。今年のカレンダーなら「御用納め」の28日が日曜日なので、26日の金曜日が年内最終営業日。つまり、通常月より「営業日」が少ないのです。
さらに12月は、「ボーナス商戦」「忘年会」「クリスマスパーティー」「大掃除」が重なり、忘れがちな年賀状は、デザインと宛名書きのダブルパンチで追い打ちをかけます。それが終われば門松を立て、年始の準備とイベントがめじろ押し。しかし「忙しい」はイベントの多さだけではなく「忘れている」ことも大きな理由。
残り1か月を切った、今年のラストスパートを助ける「心得」を紹介します。
当たり前という現実
会社員にとって、忙しいのは当たり前だという残酷な現実をご存知でしょうか。Web担当者に限らず、「社長」の立場になれば当然のことです。
社員1人が、1日の勤務あたり100個の製品を仕上げて利益がでるとします。100個の生産で社員に「余裕」があると社長が感じれば、ノルマは110個、120個と上方修正されることでしょう。余裕がある限りノルマは引き上げられ、そして社員の仕事は忙しくなります。ノルマ増加によって得た利益を社員に還元するなら「ブラック企業」の批判には当たらず、社員を忙しくするのは当然の経営判断なのです。
程度の差こそあれ、どの会社でも同じです。
忙しいを科学する
基本的に会社員は「忙しい」。これが出発点になります。そして12月は営業日数が少なく、イベントが多いので「忙しい」が増えます。
一般的に職場の仲間は、みな同じ状況に置かれているので救援は期待できません。また、少年漫画のように、ピンチに飛躍的に能力が伸びることは、まれに起こりますが一般論にはなり得ません。しかし「忙しい」を減らすことなら、わずかな取り組みで実現できます。
日々の業務や、週単位の作業は「習慣化」され、習慣化された作業は、取りかかった瞬間からトップギアで走り出せます。しかし、習慣化された仕事ばかりではありません。習慣化されていない作業は、「知らない」と「忘れている」の2種類に分けることができますが、それぞれ準備や学習といった個別の対応が必要で、処理能力を最大限に発揮することができないのです。その結果、「忙しさ」が増えていきます。
忘れている業務の多さ
「知らない」とは突発事項や緊急事態のことで、避けることができません。担当者の病欠によるピンチヒッターや、客都合による仕様変更などです。残念ながら即効性のある軽減策はなく、粛々と対応するしかありません。このときは、最後に紹介する「心得」を噛みしめてください。
一方、「忘れている」には対応可能なため、これを減らすことが「忙しい」の軽減策となります。
日々、CMSやアクセス解析と格闘しているWeb担にとって、「月次報告」の作成は作業手順を思い出すことが始まりです。あるいは、サイトのリニューアル案件ばかり手がけた後の「新規サイト」では、何から手をつけるか「忘れている」こともあるでしょう。
「習慣化」ができていない作業において、「忘れている=思い出せない」ことから生まれるロスは多く、それが「忙しい」ことの原因になっているケースは実に多いのです。
季節イベントの公私混同
作業を習慣化するための対策は至ってシンプル。空き時間を利用しての「復習」です。前回の事例、昨年のイベントを確認し、月例の報告書に取りかかる前には、先月はもちろん、前年同月の報告書に目を通せば作業効率は飛躍的にアップします。サイトの新設の「とっかかり」を忘れたなら、初めて手がけた案件の資料を読み返すだけでも「当時」を思い出すことでしょう。
残念ながら、この軽減策は「経験者向け」で「新人」には適用できません。しかし、どんな新人もいずれは経験者になります。そのときのための準備は、今から始めなければなりません。
具体的には、今年取り組んだ「イベント」に関する情報を、すべてデジタルデータとして記録し保存しておきます。Wordなどのデータはもちろん、リアル店舗においての飾り付けなどを、写メも含むデジカメで保存し、可能な限り「公私ともに」です。
デジタルデータはかさばることも色褪せることもありません。彼や彼女と眺めたイルミネーションが、来年のクリスマスイベントのイメージカットになることもある、とは経験談。良い意味での「公私混同」が来年の自分へのプレゼントです。特に「私的」な情報は、「クリスマスの空気」を思い出すのに役立ちます。つまり、デジタルデータは意識的に積み上げることができる「経験値」になるのです。
忙しいに秘められたメッセージ
当然ながら、すべてのデータの「上書き」は永遠に厳禁です。これも将来の「忙しい」軽減策です。手前味噌な例えとなりますが、2001年9月に独立して以来、13年分のデータが手元にあり、年賀状の「午(うま)」ならすでに2度を数えています。そのほぼすべてを保存しており、近年では12月の「忙しさ」はほとんどなくなっています。もっとも、空いた隙間に仕事をいれるのは、経営者としての自分の仕事なのですが。
最後に「忙しい」と、感じたときの心得です。「忙しい」とは、心を意味する立心偏に亡くすと書くように、心(の余裕)を亡くすと忙しさが増します。
わずかな時間を短縮するために、一時停止することなく黄色信号に進入する自動車は、師走の交差点でよく見かける景色です。しかし、それで短縮できるのはせいぜい、5分や10分に過ぎません。ところが一度事故を起こせば、軽度であっても最低でも数時間は拘束され、その後の交渉も含めれば膨大な時間をロスします。これはすべての作業に通じます。ミスでロスする時間は膨大で、なにより心をすり減らします。
「忙しい」と感じた瞬間、いつも以上に丁寧な仕事を心がけることが、「忙しい」を増やさないことにつながり、全体で見たときの軽減策となります。
今回のポイント
忙しいの最小化は「思い出す」こと
データは経験値と同義
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