ググるよりもキュレーターを探せ、検索結果に不満を覚えたときの対処法
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の499
白日に晒された信頼性
先の「WELQ」問題をきっかけに、グーグルの検索結果の信頼性に懸念を示す声を各所で耳にします。統計的なデータではありませんが、SNSで散見し、体感することもしばしば。WELQの一件は、検索結果はコンテンツの妥当性を意味せず、信頼に足らない情報であっても上位表示が可能だということが、白日の下に晒されました。つまりは「SEO」で、それはWeb担当者にとって常識だったとはいえ、信頼の体感値を下げている理由の1つでしょう。
新社会人向け心得の第2弾、いえ、すべてのWeb担当者への提案したいのが「キュレーターを探せ」ということ。キュレーターとは、博物館や美術館で資料を精査分類し、修復などに従事する「学芸員」であり、その道の専門家を指します。
WELQが名乗った「キュレーションサイト(メディア)」の本来の役割は、専門家により選別された情報を届けるためのものです。検索結果に不満を覚えたなら、自前の「キュレーター」を用意しておくことをオススメします。
配分も内容も違うレシピ
グーグルの検索結果は、必ずしも正確な情報を示すわけではありません。当たり前ではありますが、実例を見てみます。「酢の物」などに用いる合わせ調味料を作ります。
「三杯酢」とグーグルで検索すると、執筆時点でクックパッドのレシピがトップ3を占めます。そのうち、1位はクックパッド自身が提供している「料理の基本」で、次のように説明されています。
酢・醤油・みりんを1:1:1で合わせる(要旨、以下同)
ところが2位に表示される、ユーザー投稿のレシピでは、
酢・醤油・砂糖を3:1:1で合わせる
とあり、比率どころか、みりんが砂糖に変わっています。3位は投稿レシピの一覧ですが、やはりそれぞれ異なる材料と配分になっています。
検索結果4位のウィキペディアでは、酢・醤油・みりんを1杯ずつあわせるから「3杯(酢)」との解説。続けて現在は、
酢2:みりん2:醤油1が一般的である
と説明します。「三杯酢」と検索するユーザーが具体的に何を求めているかは賛否あるでしょうが、単純な説明だけならウィキペディアが詳しいといえるでしょう。
埋もれたプロの情報
さらに検索結果を見ていくと、5位にようやくプロの料理人のレシピが入り、「マルカン酢株式会社」や「ミツカン」といった専門家ともいえる調味料メーカーのコンテンツはさらに下です。
投稿型サイトはその構造上、更新頻度が高く、キーワードや関連語、共起語の集中が自動的に生まれます。何より、新しいレシピが次々投稿されることによって共有・拡散が生まれやすいのも、埋もれた企業コンテンツと比べて有利に働きます。料理、素材系の検索結果にユーザー投稿型レシピサイトへの傾斜を確認します。
一方で「三杯酢」の言葉の意味や、料理人やメーカーといった「プロのレシピ」を求めて検索したユーザーの期待にグーグルは応えていません。たどり着くには、ある程度の検索リテラシーが求められます。
ネットの物理法則
グーグルは低品質なサイトが上位表示される問題を改善しようと、アルゴリズムを改良していますが、現時点でいえば、飲食の専門家から見れば失笑が漏れる次元のトリビアでも、SEOを実現していれば、上位に表示されるのが現実です。一言で言えば検索結果の陳腐化です。そこで「キュレーター」による検索結果に左右されない「情報源」を確保しておきます。
方法は簡単。TwitterやFacebookなどで、これはと思う人物や、その人物がフォローしていたり、「友だち」になっていたりする人とつながること。ポイントは、飲食系の情報収集なら「和食の専門家」「洋食のプロ」「焼肉のマニア」と、ジャンルごと、目的ごとのキュレーターを意識的に「探す」こと。なぜなら「漠然」と探してもキュレーターは見つからないからです。
これはネットの物理法則なのでWeb担当者なら必ず覚えておいてください。ネットの情報収集は「リンクをクリック」に代表される能動性が必須で、自ずと興味の対象に傾斜します。すると、興味の内側にとどまる情報の「たこつぼ化」が起こります。キュレーターの確保は、視野が狭くなることを抑制する効果も期待できます。
有名人ではなく実践者
たとえば、当サイトであれば安田編集長のアカウント、アクセス解析や統計に興味があるなら衣袋教授がオススメです。2人の名前を挙げたのは、どちらも「現場の人」だからです。現場の視点、着眼点から得るものは多く、「経験談」とは「疑似体験」です。他にも、本稿で挙げたSEOであれば、SEOコラムの鈴木謙一氏といった具合です。現場系のキュレーターには「過去ログ(過去の発言やツイート)」を備忘録としている人も多く、それを拝借することもできます。
反対にネットの著名人には注意が必要です。知識が豊富なだけの「評論家」も多く、2ちゃんねらーがふとした拍子に有識者になったケースもあれば、HTMLを読解できないWeb情報サイトの編集長も実在します。有名なだけの人はキュレーター向きではありません。
IT業界は総じて、情報発信や共有ツールとしてソーシャルメディアを使う人が多く、Web担当者の情報収集は恵まれた環境にあるといえるでしょう。餅は餅屋、現場で実践する業界の専門家から情報を得ることができます。検索結果に疑問を持ったらキュレーター、つまりは「人」を頼ってください。これは社会の真理でもあるのですが、この話はいずれ機会があれば。
今回のポイント
検索結果の偏りに注意
専門家という「人」に答えを求める
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